世界展望
珍しい早老症患者
◆ 早老症という珍しい病気にかかると,年若いうちに早くふける。子どもがこれにかかると,皮膚にはしわが寄り,髪の毛にはしらががまじり,体の組織も非常に年老いた人のそれと同じようになる。そうした例がブラジルの北東部で報告された。ホセフア・ダ・ルスという10歳の少女はまるで80歳のように見え,幼いにもかかわらず,「高齢」のためにたいへん弱っていてほとんど立つことができない。声は子どもの声をしているが,皮膚はしわだらけである。この病気は脳下垂体腺に関係があると考えられているが,確かではない。そうした患者は世界じゅうに40人ほどいることが報告されている。
役にたたない喫煙者の血液
◆ アメリカのフロリダ州,ゲインジビルにある一病院で,喫煙者の血液は十分な酸素を運ばないため,輸血用には使いものにならないことが研究員たちによって発見された。研究員らは,喫煙している供血者の血液を拒絶するように勧めた。心臓外科のグラディ・ホールマン博士は,「輸血を受ける患者はだれでも,血清肝炎にかかったり,その反応でショックを引き起こす危険にさらされている」と述べた。輸血が原因で死亡することは珍しくはない。
ドイツのサリドマイド裁判終わる
◆ サリドマイドの薬品が鎮静剤として西ドイツに紹介されたのは1957年であった。それは特に妊婦たちのあいだで非常な人気を博したが,多くの国で胎児に大きな害を及ぼすことが明らかになった。以来,奇形児あるいは手足のない子どもが約6,000人生まれ,そのうちの4,000人はドイツ人の子どもであった。西ドイツではこの薬を製造した会社が訴えられ,長いあいだ裁判が行なわれた。12月になって会社側は生存している2,000名のドイツの子どもたちに対し,1万9,000ドルずつ,計2,700万ドル(約97億円)の損害賠償をすることに同意した。さらに薬を服用して神経障害を起こした800人の成人に対しても賠償金が支払われた。また英国では,薬を販売した英国の会社により,奇形あるいは手足のない「サリドマイド児」に対して,240万ドル(約8億6,000万円)が支払われている。
血の誤用
◆ 最近,アメリカの国立科学アカデミーの特別委員会は,ある医師たちが血を誤用している事態を批判した。1970年12月18日号のメディカル・ワールド・ニューズ誌はこう報じている。「手術の際患者に輸血を施す必要がないにもかかわらず,引き続き輸血をする医師が多いことに委員たちは苦情を述べている」。輸血に対する態度は変化しつつあるが,その速度は緩慢である。
高い死亡率を示す喫煙
◆ 喫煙が健康をそこない寿命を縮めることを示す証拠は引き続きふえている。アメリカのカリフォルニア大学のサムエル・プレストン博士は,西欧17か国の高年齢者のあいだの「法外な」― 同博士の表現 ― 死亡率の主因が喫煙にあるらしいことを発見した。40歳から69歳代の喫煙者の死亡率は,タバコをすわない人のそれより88%も高い。喫煙の最も盛んな国々では,高年齢者の死亡率が一番高い。
医師たち喫煙を非難
◆ 英国の国立医科大学によれば,喫煙は英国で「大量の犠牲者」を出しており,年間2万7,500人の男女がそのために死んでいるという。医師たちは「わが国で1世代前の人々に影響を与えた腸チフス,コレラ,結核などのような大きな疫病と同様,現在喫煙は重大な死因となっている」と述べ,さらに次のように語った。「妊娠中の喫煙が胎児の成長をおくらせることには疑問の余地がない。妊娠中に喫煙した母親には流産や死産のケースが多く,誕生後まもなく死亡する子どもを生みやすいことも知られている」。
科学者たちは脅威となりうる
◆ アメリカのスチュワート・ユーダル前内務長官はある演説の中で,環境の危機の増大を数年前に国家に警告しなかった科学制度を非難した。警告しようとした者たちは「非科学的な成り上がり者」として攻撃されたのである。ユーダル氏はこう語った。「手短に言えば,指導的な科学者の中には,彼らの職業が公の責任を問われることなく,相当する価値を返すとの保証をすることなく,そうした多額の贈与が長期的な国家利益に用いられるという保証を何ら与えることなくして,一般の支持を受けるだけの価値があると断言した人もいるようである。科学が概して科学的な成果の点で,相当の価値を返したことには疑問の余地がない。だが,今日わたしたちすべての目に明らかなとおり,科学が将来を見通す倫理的社会的なビジョンを欠くなら,人間にとってそれは恩恵となるばかりか,脅威ともなり得る」。
生きている胎児の中絶
◆ アメリカのニューヨーク州で妊娠中絶法が実施されて以来,生きている胎児の中絶が26件あった。そのうち1件の場合,堕胎児の体重は約1キロあって生き延び,養親をさがしている。他の25件では,胎児たちは心臓の鼓動やあえぎ,筋肉運動といった生きているしるしを見せたが,わずか数分で死亡した。
妊娠中絶に対する医師の見方
◆ アメリカのインジアナ州,フォート・ウェインのザ・ニューズ・センチネルが発行した1970年12月28日付の書簡の中で,ある医師が妊娠中絶に対する率直な考えを次のように述べた。「妊娠中絶に関して根本的な問題は,実はその行為が殺人かどうかということである。次いでそれは胎児が人間かどうかという問題に関係してくる。なぜなら,一個の人間として認められている者が他の者の便宜上殺されることを法律上あるいは道徳上許している文明社会はどこにもないからである。しかも多くの国々では死刑すら禁じられている。……明白な法的権利を胎児に与えることはできなくても……いかなる理由であれ,胎児が人間であることを否定するのは事実の回避にすぎず,また,たときわめて望ましくない状態において胎児が存在するようになったにせよ,あるいは他の理由があるにせよ,その胎児を故意に殺すのは,600グラムの未熟児を入れた保育器の熱源を故意に絶つことが疑いなく殺人であるのとまったく同様,殺人の要件を全部そろえている」。
戦争犯罪
◆ 1970年12月30日付のニューヨーク・タイムズ誌によれば,「アメリカがベトナムで取っている行為は,第二次世界大戦後にドイツと日本が告訴されたものに等しい」という。次いで同紙は,ウィスコンシン大学の法律学教授ジョージ・バンの,民間の作物を破壊することは三つの国際協定の違犯であるということばを引用した。1970年12月14日付のミネアポリス・トリビューン紙に寄せられた投書で,ベトナムのマイ・ライにおいてなされた,米軍による男女および子どもの大量虐殺は,第二次大戦中,チェコスロバキアのリディス村の男子員がナチの軍隊によって殺されたことと比較されていた。戦争犯罪の調査に当たった国連委員会は,その大量虐殺の責任を持つドイツを裁判にかけて,有罪の判決を下したのである。