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超高層ビルが天を“摩する”のはなぜか目ざめよ! 1984 | 4月8日
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あるフランクリン・W・ウールワースが,1913年に建設されたニューヨーク市の60階建てのウールワース・ビルについて述べたことに注目してください。(242㍍のこのビルは,当時では世界一高いビルでした。)「これまでにどの商人も建てたことのないほど大きな物を建てたいと思った。その結果がウールワース・ビルである」。同時に,ウールワースは実業家として以前にも増して有名になりました。しかしその“塔”は,1930年に摩天楼リーグの中で,77階建て,高さ319㍍のクライスラー・ビルに追い抜かれました。クライスラー・ビルが君臨していた期間はごく短く,すぐにそれよりも高い建造物,すなわちニューヨーク市で1931年に完成した,381㍍のエンパイア・ステート・ビルに取って代わられました。
世界中に超高層ビルが急増した背後には,二つの要因がありました。限られた土地を最大限に利用したいという願いと,ある場合には,財政面の後援者たちがもっている,自分たちの名誉を高めたいという心理的な必要です。著述家のジェームズ・ギブリンはこう述べています。「ニューヨークの摩天楼のデザインにはまた,その建物の資金を出した人々の野心や願いが影響している。資金を出したそれら不動産開発業者,産業資本家,および商人たちは,自分たちの名前が堂々たるビルと結びつけられて,それらのビルを見上げる人々すべてに彼らの富と権力を示すことを望んだ」。
建築技師は何から着想を得たか
現代の建築技師たちはどこから着想を得たのでしょうか。ギブリン氏はさらに続けてこう述べています。「[彼らは]発注者を満足させる最善の方法は,摩天楼設計のアイデアを古代ギリシャやローマの神殿から,また西欧のゴシック式大寺院から借りてくることであった。それらの建造物は皇帝や神々の記念碑として建てられた。それなら,20世紀の大富豪の記念碑である摩天楼のモデルとして,それらの建物を使ってはどうか,というわけである」。
興味深いことに,現代の摩天楼の中には,寺院と同じ意味の殿堂と呼ばれているものがあります。例えば,一聖職者は,現代のゴシック風建築物の際立った例であるウールワース・ビルを商業の殿堂と呼びました。やはりゴシック風の建物であるピッツバーグ大学の摩天楼は,学問の殿堂として知られています。また作家のギブリンは,シカゴ・トリビューン新聞社の36階の摩天楼をジャーナリズムの殿堂と呼んでしかるべきだと述べています。
現代における最初の摩天楼はどこにあったか
現代における最初の摩天楼はいつ,どこに建てられたでしょうか。摩天楼の景観で最も有名なのはマンハッタンなので,自然に,摩天楼のできた最初の都市はニューヨーク市だと考えるでしょう。ところが,その“名誉”をめぐって北米の三つの都市が争っています。それらの都市とは,ニューヨーク市,シカゴ市,そしてミネアポリス市です。その栄誉を受けるにふさわしいのはどの都市でしょうか。
摩天楼の定義を10階以上のビルとすれば,1868年から1870年にかけて建てられたエクイテブル生命保険協会ビルのあるニューヨーク市がその栄誉を勝ち得るでしょう。しかし,建築技師や土木技師に言わせると,摩天楼とは単に“天を摩する”建物ということではありません。真の摩天楼は,19世紀の設計上の革命的な新機軸であった鉄あるいは鋼鉄の枠組を使った建物です。それによって,ビルは非常な高さや重さに耐え得るようになりました。それでは,この栄誉を勝ち得るのはどの都市でしょうか。
権威のある答えは,スイスの美術史家ジークフリート・ギーディオンの著わした,「空間,時間そして建築」の中に出ています。「近代的な建築原理に従って……実際に建てられた最初の摩天楼は……シカゴ市のホーム保険会社の10階建てのビル(1883 ― 85)であることはよく知られている」。シカゴが,真の意味での摩天楼のできた最初の都市だったのです。
さて,シカゴ市とニューヨーク市の間では,世界一高いビルがあるのはどちらかということで,競争が続いているようです。長い間,ニューヨーク市がその栄冠を保ってきました。ところが1974年に,シカゴ市のシアーズ・タワーにその座を明け渡すことになりました。しかし,それはどのくらい続くでしょうか。ニューヨーク市にそれよりもさらに高い摩天楼を建設する資金を出す人がいるでしょうか。いるとすれば,その動機は何ですか。もう一つの摩天楼が建つということは,実際にニューヨーク市にとって益になるでしょうか。
超高層ビルは人間にとって有益か
これはさらに広範な疑問につながります。摩天楼や高層ビルは一般の人々にとって本当に恩恵となるものでしょうか。限られた面積に,非常に大勢の人々を詰め込むことは,人間関係の向上を促すでしょうか。公共の交通機関や都市の衛生施設に与える重い負担はどうでしょうか。火災の危険も,考慮に入れなければならない要素です。
超高層ビルの総合的な有効性については,特に環境や生態への脅威を心配する人々が深刻な疑念を表明しています。ルイス・マムフォードはそのことについて次のように述べています。「実際のところ超高層ビルは最初から最後まで,知的な都市計画や建築の進歩にとって大きな障害になってきた。その主な用途は,都市自治体にどんな負担をかけようとも個人の経済的利益のために土地を過密にし,宣伝や広告の高価な媒体を作り出すことであった」。ですから,どうして天を“摩する”のかという疑問は妥当なものと言えます。
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『魂を売る』目ざめよ! 1984 | 4月8日
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『魂を売る』
スウェーデンのストックホルムス・ティドニンゲン紙によると,過去数十年の間にスウェーデンのある会社は,教会の登録,国の公文書,裁判の記録などを徹底的に調査して,できる限り多くの故人の名前を集めました。その数は約1,500万に上り,中には16世紀にまでさかのぼるものがありました。そのような名前を記した記録はマイクロフィルムに収められ,そのフィルムは米国のモルモン教徒に売られています。死亡した世代,それも特に自分自身の先祖が救われるのを助けるために,モルモン教徒は故人のためにバプテスマを受けます。リコリドと呼ばれるこのスウェーデンの会社は,利益の上がるこのような『魂を売る』商売によって,ほぼ100万㌦(約2億4,000万円)をもうけたと言われています。
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