『すべての国の民への証言』
エホバの証人の1968年度年鑑より
ブラジル
人口: 85,000,000人
伝道者最高数: 46,849人
比率: 1,814人に1人
過ぐる年は,ブラジルのエホバの民にとって繁栄の年でした。ベテルの家,事務所,工場の新築工事は,奉仕年度の終わりまでにかなり進み,また多くの会衆が御国会館を建てました。新しい出版物「神の自由の子となって享ける永遠の生命」は,すでに広く配布されています。
伝道者の心に残り,また大きな祝福となったのは,1月に開かれた「神の自由の子」大会です。これはブラジル以外の19か国から600人あまりの代表者を迎えた国際的な集まりで,講演会の出席者数は4万6000人に達しました。プログラムは兄弟たちを霊的に強め,またエホバの証人の統治体のメンバーが幾人か出席したことも,すべての人の喜びでした。大会の益は今後,何年にもわたって感じられることでしょう。
直接の証言によらずに真理を学びはじめる人もいます。ひとりの姉妹はある晩,家庭聖書研究を司会しての帰り道,かばんを奪われました。ひとりの若者がかばんをひったくり,待たせてあった自動車で逃げ去ったのです。3週間後にひとりの人がこの姉妹を尋ねてきました。むすこが,拾って家に持ち帰った聖書に名前と住所がしるされていたので,帰しに来たとのことでした。その人は事の仔細を聞いても信じませんでしたが,むすこはかばんを奪ったこと,お金がはいっていなかったので聖書以外の全部のものを捨てたことを遂に告白し,聖書だけはどうしても捨てる気にならなかったことを話しました。3週間たってから帰しに来たわけを尋ねられて,父親はこう答えました。「聖書の中にあった,『聖書の話の筋書』を読んでいたのです。そのおかげで,以前わからなかった多くの事を理解できました。またわたしが教会で聞いた,エホバの証人に対する攻撃も正しくないことがわかりました。この冊子を手に入れることができますか」。かばんを奪った青年をも含めて家族全部と研究が始められました。家族は良い進歩を見せており,父親はバプテスマの準備をしています。
学校の先生をしているひとりの証人は,学校のグループの指導者に任命されました。彼女は宗教教育の時間に「楽園」の本の研究をすることにしましたが,エホバの証人の親を持つ子供は4人だけなので,ほかの子供たちは不参加を申し出るに違いないと考えていました。しかしまず母親を呼び,エホバの証人の出版物を用いて聖書を研究する計画を説明したところ,嬉しいことに16人の子供が1回目の研究に参加し,研究が進むにつれて他の子供たちも参加しはじめました。やはり教師をしている別の証人も,宗教の時間に「楽園」の本を用いており,夜,読みたい人には本を貸しています。毎週末,本を借りる生徒がいるので,聖書にどれほど興味があるのかと思って,彼女はその家庭を訪問してみました。するとその少女は借りた本を使って両親と研究していたので,証人はいっそうの援助を与えることができました。のちに家族は別の町に越しましたが,研究はつづけられ,家族3人そろってエホバに献身しました。
先生にかぎらず,エホバの証人である子供たちも学校で教えています。幼稚園に通うある男の子は,神のことばから見て正しくない事柄が幼稚園で行なわれる場合のことについて,母親から言い聞かせられていました。母親は先生にもそのような事柄について聖書から説明しておきました。ある日,子供を迎えに来た母親は,子供が信仰の立場を守ったので感心したということを先生から聞かされました。ひとりの子供が誕生日を祝うケーキを幼稚園に持ってきたのです。エホバの証人が誕生日を祝わない聖書的な理由を聞かされていた先生は,その男の子がどうするかと思って見ていました。すると他の子供が誕生日の歌を歌っている間,男の子は無言ですわっており,ケーキをすすめられた時には,ていねいにことわって自分の弁当を食べました。母親は,子供の持つ理解を誇らしく思いました。なぜなら,母親の言うように,その子はケーキが大好きだからです。
御国会館の建築は,週末を利用してほとんど兄弟たちの手で行なわれました。ある会衆が建てた御国会館の両隣りはカトリックとプロテスタントの信者で,両方ともエホバの証人を敵視していました。建築が始められた最初の日曜日に,彼らは連れだって市役所に行き,日曜日にこっそり不法建築をしていると言ってエホバの証人を訴え,すぐに工事をさしとめてほしいと申し入れましたが,役所では月曜日にしらべることにして二人を帰しました。翌日調べた結果,建築許可を得ていることもわかり,また日曜日に働くのは,自発奉仕をしているためであることも判明したので,係りの人は良い印象を受けて好意的にいろいろ便宜を図ってくれました。りっぱな御国会館が10週間で完成し,献堂式には500人以上が集まりました。
香港
人口: 4,000,000人
伝道者最高数: 261人
比率: 15,326人に1人
過ぐる年のあいだ香港の人々は,御国の音信を聞く機会を得ました。8万4319時間が伝道に費やされ,多くの人が音信に耳をかたむけたことは,「ものみの塔」,「目ざめよ!」両誌の予約が90,677も得られ,また近年になく多くの雑誌が配布されたことからもわかります。さらに以前よりも多くの人が研究を司会してもらっています。しかし証言のわざの拡大にもかかわらず,伝道者の人数はやや減少しました。それは土地の不安な状態のために香港を去った人がいるためです。香港の支部は香港とマカオにおける伝道のわざを監督し,中共にいるエホバの証人と連絡をとることに努めています。しかし昨年中,中共との連絡は不可能でした。
昨年,香港ではいろいろな騒動がありました。共産党はその要求をいれるよう政庁に迫りましたが,人々から十分の支持を得られませんでした。暴動や不穏な状態が見られ,テロ行為に訴えた共産主義者は,バスの停留所や無心の子供が遊ぶ横町,公園にも爆弾を仕掛けています。昨年の地域大会においても,会場の庭に爆弾が3箇仕掛けられていることが発見され,日曜日のプログラム開始前に警察の手で除去されました。事態は決して平穏ではなく,人々は将来を恐れています。それにもかかわらず,良い証言が行なわれました。
地域大会は進歩を大きく助けます。最近の地域大会で兄弟たちは,2年前に英国へ行った姉妹から話を聞きました。彼女は英国で地域大会に出席し,証言のわざを緊急に行なう必要を考えさせられました。また香港で証言のわざをすすめるため,協会がさらに宣教者を派遣したことを聞きました。彼女はこのように語っています。「証言に参加するため,中国語をこれから習う宣教者が香港に派遣されたとすれば,中国語を話す若い伝道者であるわたしは香港にもどらねばなりません」。彼女はいま香港で開拓者となっています。