-
ハビタット会議 ― 人類の希望の担い手?目ざめよ! 1977 | 3月8日
-
-
および人種差別の一形態であるシオニズムを非難する決議を採択していました。この問題が再燃して,ハビタット会議を混乱させるのではないかという懸念がありました。事実,各新聞は,不穏な事態を予想させる見出しを掲げました。一新聞は,「カナダ,ハビタットでのシオニズム問題の棚上げを期待」という見出しを,別の新聞は,「イスラエル,良識ある政治活動を期待」という見出しをそれぞれ掲げました。
しかし,シオニズム問題は政治的なあらしを引き起こし,“ハビタット”号は難船の危険にさらされることになりました。早くも会議の4日目に,“第三世界”の多数の代表者は,イスラエル代表団の団長が登壇したために退場してしまいました。また街頭では,他の政治問題をめぐって,幾つかの抗議デモが行なわれました。会議の演説の中でも,さらに別の政治的な問題が取り上げられ,議事の進行が妨げられました。対立を生じさせる政治上の諸問題には触れないという会議の目標が達成されなかったことは明白です。
行動指針宣言を票決に付す日が近づいても,妥協が成立し,全体の賛同が得られるであろうとの楽観的な見方を抱いている人がまだいました。シオニズム問題をめぐって,いわゆる“77か国グループ”(アジア・アフリカ・ラテンアメリカの発展途上国の連合体)と西側陣営との決裂を回避できるよう,宣言文の表現を調整するために,舞台裏で必死の折衝が重ねられました。
しかし,あらしはついに吹き始めました。“第三世界”の“77か国グループ”を中核とする“新多数”派は,今や100か国を超える大グループと化し,同グループは,まず動議の採択に必要な条件をそれまでの三分の二の多数決から単純多数決に改正することを議決してしまいました。次いで同グループは,「強制あるいは占領によって獲得した土地」への占有権を強化するための入植を非とする行動指針宣言修正案を通過させましたが,その修正案は激しい論議の的となってきたものでした。修正案の中で言及されている事柄には,イスラエルによるアラブ領土の占有も含まれているのは明らかです。
会議の最終日に修正された行動指針宣言が上程され,これを境に,“ハビタット”号は二つに裂けてしまいました。同宣言の採択には,カナダ,米国,イスラエルを初めとする15か国が反対しました。カナダの主席代表は,こうした結末を,「実に遺憾な悲しむべき事態」と評しました。米国の代表は,「この種の駆け引きが続けられるなら,今後我が国が,世界問題を扱う国連主催の会議を支持し,それに参加してゆくことに良い影響を及ぼさないであろう」と語りました。もちろん,他の国々はこの点に関して異なった意見を持っていました。
国連主催のこの大会議によって,理想と現実との間には,政治上の事実というグランド・キャニオンほどの深い隔たりのあることが再度示される結果となりました。ハビタット会議が残したのは,深刻な分裂でした。確かに,世界の貧窮者たちに同情の念を表わした人は少なくありませんでしたが,その理想も,諸国家の激しい抗争の前で影が薄くなってしまいました。カナダの首相が望んだ“愛の協議”は,結局憎しみの謀議に終わってしまったのです。地元紙の一コラムニストはこう書きました。「確実に訪れる国連の死の喘鳴を,我々は耳にしたのだろうか。それとも歴史が耳にするのだろうか」。
-
-
「ダリク」に換算してあるのはなぜか目ざめよ! 1977 | 3月8日
-
-
「ダリク」に換算してあるのはなぜか
● 「ダリク」というのは,ペルシャの金貨のことです。歴代志略上 29章7節では,ダビデ王の治世中に神殿のためになされた寄付の一部が,ダリクに換算されています。ダビデの時代にダリクは知られていませんでしたから,歴代志略の筆者であるエズラが,元の数字を,同書が書かれた当時流通していて,読者になじみ深かった単位に換算したものと思われます。これは,今日の英語訳聖書の中で,貨幣価値を表わすために行なわれていることに幾分似ています。例えば,欽定訳聖書は,「デナリ」を「ペニー」と訳出しています。―啓示 6:6。
-