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コンピューター時代を迎える植字・組版目ざめよ! 1981 | 6月8日
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コンピューター時代を迎える植字・組版
コンピューターは至る所に使われていると言っても過言ではありません。人々はコンピューターでセットされたデジタル時計の目覚ましで朝,目を覚まし,コンピューターが燃料噴射量を調整する自動車で出勤します。コンピューターで制御されたロボットは自動車を組み立てる際の自動溶接も行ないます。
特定の言葉や語句を記憶したタイプライターなど,超小型のコンピューターで動く新型の事務機も広く使われるようになっています。買い物に行けば,コンピューターが自動的に代金を計算し,同時にその店の在庫量を修正します。
コンピューターはあなたの読む朝刊の印刷にも一役買っているかもしれません。
近年,印刷はコンピューター時代を迎えました。米国の主要紙の大半は既にコンピューターを使って紙面を作製しており,ヨーロッパの新聞のほとんども同様の方向にあります。世界で最も多く新聞が読まれている日本では,1960年代から紙面作りにコンピューターが使用されています。世界中でこうした変化が見られるのはどうしてですか。
小さな回路素子と大規模なプログラム
人件費の上昇に悩む新聞業界は,オフセット印刷の普及や紙面に融通のきく中小新聞との競争もあって,1970年代にコンピューターを導入する方向に進みました。しかし,コンピューターの性能そのものが向上しなかったならそうした切り替えは不可能だったでしょう。
コンピューターがこれほど有用なものになった原因はどこにあるのでしょうか。その理由の一つは,より良いプログラミング,つまりソフトウェアにあります。また,微小なシリコンチップ(回路素子)という形でもたらされたハードウェアの進歩もコンピューターの処理速度を高め,記憶容量を一層増大させています。
これらのチップを作るには,最初に,大都会の街路図のような非常に複雑な電子回路図を作製します。次にその回路図を写真に撮って縮小し,特殊処理を施したシリコン片の上に食刻<エッチング>します。チップが改良されるにつれ,コンピューターの処理速度は速まり,性能も向上しました。しかも,小型化とコストダウンが実現されました。例えば,1975年から1978年の間に,ある会社のチップの記憶容量は8倍になり,値段のほうは71%も安くなりました。別の会社が開発したチップは,それ一つだけで「ほんの五,六年前の非常に大型の機種1台分に相当する」性能を備えていると言われています。
こうしたハードウェアの進歩には目を見張らせるものがありますが,適切なプログラムによる命令つまりソフトウェアなしには,どんなに容量の大きなコンピューターも無用の長物にすぎません。プログラムを作らずにコンピューターを用いるのは,装丁は立派でも中身は白紙の百科事典を引くようなものです。印刷業界が紙面作りにコンピューターを利用するようになる前に,優れたソフトウェアを開発する必要がありました。
コンピューターに分綴法を教える
英文の「目ざめよ!」誌をご覧になるなら,ほとんどの行が同じ長さになっていることに気づかれるでしょう。行によって文字の数に違いがあってもこれは変わりません。英文の「目ざめよ!」誌の1節をタイプするなら行末が不ぞろいになりますが,雑誌に印刷されている活字の各行は長さがきれいにそろっています。これは行がすべて同じ長さになるように,単語と単語の間隔が(また時には文字と文字の間隔も)調整されていることを示しています。
従来の方法では,植字の際にこれを機械的に行ないました。しかし,コンピューターには,1行のスペースを計算し,そこに幾つの単語を入れたらよいかを決定する方法を教えなければなりません。それから,残りのスペースを単語の間に均等に配分する必要があります。ほとんどのコンピューターにとってこれはさほど難しい仕事ではありません。アルファベットを用いた言語で特に問題になるのは,行末をきちんと合わせるために単語を途中で切らねばならない場合です。単語をハイフンで正しくつなぐ方法,つまり分綴法をコンピューターに教えるにはどうしたらよいでしょうか。
腕の良い秘書に尋ねれば分かりますが,単語を正しく分割してハイフンでつなぐのは見掛けほど簡単なことではありません。英語のように非常に不規則な言語の場合には特にそう言えます。
分割する必要があると思えるすべての単語を収めた辞書のようなものをプログラムしてコンピューターに組み込めばよいのではありませんか。それで簡単に解決するように思えるかもしれませんが,あるプログラマーが指摘したように,「残念ながら,それは実際的な方法ではない」のです。どうしてですか。「それには,植字を行なう言語ごとに膨大な単語集が必要になるでしょう。その各々には,コンピューターが扱うすべての単語の様々な変化形一つ一つが収められていなければならないのです」。
では,どのようにこれを解決しますか。分綴法の規則すべてをプログラムしてコンピューターに組み込み,その上でそれらの規則に従わない単語のために特別の例外単語集とでも言うべきプログラムを作製しなければなりません。英語の場合,優れた分綴法プログラムを使えば全体の95%の単語を正しく分割し,ハイフンでつなぐことができます。これは例外単語集に収められる単語の数が比較的少なくてすむことを意味しています。
それでは,コンピューターは決して間違いを犯さないのでしょうか。間違うこともあります。“former”のような単語の場合はどうでしょうか。この言葉は名詞として用いられると,「製作する人」という意味になり,form/erと分けます。ところが,形容詞として用いられると,「前の」という意味になり,for/merと分けます。人間はそれがどのような意味で用いられているかを文脈からすぐに判断できますが,コンピューターにはそれが非常に難しく,こうした同形異義語を分ける場合には人間の指示を必要とします。「コンピューターが校正者に取って代わることは決してないでしょう」と,ものみの塔協会の電算植字組版計画の調整者の一人は語っています。
ものみの塔における電算植字組版
ニューヨーク法人ものみの塔聖書冊子協会は,70年以上にわたってエホバの証人のために聖書文書を出版してきた宗教法人です。同協会はニューヨークのブルックリンに大規模な印刷工場を所有していますが,そこでは現在,鋳造活字を用いる植字からコンピューターを使った写真組版へ切り替えが行なわれています。これにはどんな利点があるのでしょうか。時間,エネルギー,スペース,作業人員数を大幅に削減できます。その理由をご説明しましょう。
ものみの塔協会のブルックリン工場で出版する文書のために鋳造活字で植字をするには20台のライノタイプが必要です。この機械の構造は複雑なため,二人の機械技師が修理と保守のために1日中忙しく働かねばなりません。今では時代遅れになったこうした機械の部品を手に入れるのも難しくなっています。ライノタイプはスラッグと呼ばれる活字塊を1行分ずつ作り出しますが,それに用いる鉛を溶かすには多量のエネルギーが必要とされます。また,こうした機械の操作に熟達するには半年ないし1年の期間を要します。
次に版が組まれます。つまり,活字のスラッグがさし絵と一緒にチェースと呼ばれる特別の金属枠の中に配列され,望みどおりの紙面が作られるのです。高度の技術を備えた植字工がこれを行ないます。植字工が骨の折れる仕事を行なう重いテーブルや特別の備品を置くために広いスペースが求められます。
こうした作業はいずれも多大の時間を要します。ものみの塔版の聖書1ページ分のスラッグをライノタイプで作るには約45分かかり,組版のためにさらに15分が必要です。
次に,数ページ分の活字を収めたチェースを用いて特別の紙型<マット>を作らなければなりません。さらにこのマットに溶けた鉛の合金を流して,重い鉛版(ステロ版)を鋳造します。こうした工程には熟練した働き人,広いスペース,かなりの量のエネルギーが必要とされます。この鉛版で大量の印刷を行なうには,さらにニッケルメッキを施して版を一層堅ろうにしておかなければなりません。これでも印刷の準備が整ったわけではありません。なぜでしょうか。鉛版の表面にわずかばかり不規則なところがあり,そのままでは印刷物に明暗のむらが出てしまうのです。それで十分というような印刷物もあるでしょうが,これではものみの塔協会の品質規準にかないません。問題箇所を修正し,輪転機が動き始めるまでに,何時間も,時には1日以上もかけて,根気のいる“むら取り”をしなければなりません。
それに対して,コンピューターを使った電子植字システムが一式そろっていれば,20台のライノタイプと鋳造活字を用いた鉛版作製設備がすべて不用になります。これによってスペースと人員を大幅に削減できます。コンピューターで原稿を組み,写植機を使ってそれを感光紙に焼き付けます。これを写真に撮って,オフセット印刷用の版を作るのです。
原稿をタイプしてシステムに入れてしまうと,何時間もかけて行なわれていた組版の仕事は数分で行なえます。スラッグや鉛版を作るために鉛を溶かす必要はありませんから,高価なエネルギーを節約できます。紙面の作製に携わる人員も少なくてすみ,そのほとんどについては熟練工である必要はありません。こうして作られるオフセット印刷用の版は薄くて軽く,数分で輪転機に取り付けることができます。調整もずっと少なくてすみ,印刷に要する貴重な時間を節約できます。
独特の必要にこたえる
こうした目的のためにIBMのコンピューター・システムとオートロジック社の写植機が導入されました。南アフリカでは土地の九つの言語で書籍や雑誌が出版されていますが,高性能のコンピューグラフィック社のシステムを導入したおかげで,輪転機で印刷を行なう前の作業が簡略化されました。興味深いことに,ブルックリンでコンピューター組版を行なうのに必要なソフトウェアつまりプログラミングの大半はエホバの証人自身の手で開発されました。一体なぜでしょうか。
ニューヨークのブルックリンでこの仕事に従事するシステム・アナリストの一人は次のように語っています。「わたしたちが必要としているのは他に例を見ない独特のものなのです。確かに植字用のプログラムも商品化されていますが,わたしたちの目的に十分かなうものではありません」。どうしてなのでしょうか。理由の一つは,ものみの塔協会がその形式や品質規準を商品化されたシステムに合わせることを望んでいなかった点にあります。また,ものみの塔協会は167の言語で定期的に印刷を行なっており,現在商品化されているシステムの能力ではこなし切れないこともその理由となっています。先ほどのシステム・アナリストはこう言葉を続けています。「これらの言語の多くには商品化されている植字プログラムがありません。ごく少数の人だけが読む言語のためのソフトウェアを開発してもお金がもうからないのです」。
当然のことながら,ものみの塔協会の出版活動は利潤の追求を目的としたものではありません。現在の出来事の真の意味を明らかにする聖書からの重要な情報を世界中の人々に伝えることを目的としています。本誌が34の言語で,また姉妹誌の「ものみの塔」が106の言語で印刷されているのはそのためです。
最終的には,単一のシステムでこれだけの言語の植字・組版を行なうのですが,一体どうしたらそれができるでしょうか。プログラマーの一人はこう語っています。「大変な仕事です。新しい言語を扱うということは,単に新しい分綴法プログラムを作製する以上のことを意味する場合が少なくありません。文字そのものが変わることもあれば,アクセント符号用の特別のプログラムを作製しなければならないこともあります。時には,独自の端末装置やキーボードをあつらえなければならないこともあります」。大変な仕事というのも確かにうなずけます。
この大規模な計画を推し進めるために,データー処理の分野の経験を持つ大勢のエホバの証人がニューヨークのブルックリンにある同協会の本部に自発的にやって来ました。助力を申し出たこうした人たちの中には,個人的な犠牲を払った人が少なくありません。1年以上にわたって滞在した人もおり,そうした人々の働きは深く感謝されています。これまで3年以上にわたってこの仕事に携わってきた人もいます。3年の経験を持つある人はこう語っています。「最初の土台を据えるのに時間がかかりましたが,ここ1年ほどで驚くほどの進展が見られました。成し遂げられつつある事柄に非常な興奮を覚えます」。
これからの展望
コンピューターを使った写真組版は将来さらにどうなるのでしょうか。より優れた『先を読み取るプログラム』が開発されるものと思われます。既存のプログラムは,植字をする際にある程度『先を読む』ことができますが,この点でさらに進んだプログラムが必要とされています。この種のプログラムは一部既に開発されており,これを使って,脚注や「ものみの塔」誌の研究記事などの研究用の質問に当てるスペースを紙面の下の方にどれほど取ったらよいかをコンピューターに決めさせることができます。
出来上がった紙面をディスプレイ画面に映し出し,そのレイアウトを思いのままに変更する能力を備えたシステムが,この記事を書いている時点で開発されつつあります。ものみの塔協会の一プログラマーはこれについて次のように語っています。「そうしたシステムが幾つか商品化されていますが,それらではわたしたちが望むような自由な組み替えができません。わたしたちは,原稿の本文に複雑な紙面構成指令を与えることなく原稿を打鍵できるシステムに関心を持っています。そうするなら,執筆原稿や翻訳原稿をそのまま用いることができます」。
これには別の利点もあります。システム・アナリストは次のように語っています。「わたしたちのシステムでは,さし絵のために方形その他,どんな図形でも配置できるようになります。図形を入れると,記事の本文がその外郭線に合うように自動的に組み直されます」。このシステムが完成すると,編集者やアート担当者は考えられるレイアウトを幾つも簡単に作り,その中から一番良いものを選べるようになります。そしてボタンを押せば,写植機が働いて,画面に割り付けられたのと同じものが特別の紙に印画されて出て来ます。
ものみの塔協会が進めている電算写植組版にはかなりの労力と費用が求められてきましたが,これは確かに様々な良い結果をもたらします。今日のクリスチャンは,聖書に記されている希望の音信を緊急に必要とする人々の満ちた世界に住んでいます。「わたしたちの神の側の復しゅうの日」を宣明し,「すべて嘆き悲しむ者を慰める」というクリスチャンに課せられた使命をよりよく果たすのに役立つことが分かっているなら,どんなものでも協会がそれを進んで利用するのはふさわしいことです。―イザヤ 61:2,新。
「そして福音はまずあらゆる国民の間に広められ[英語,published: この語には『出版される』という意味もある]ねばならない」― マルコ 13:10,欽定訳。
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コンピューターによる日本語処理目ざめよ! 1981 | 6月8日
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コンピューターによる日本語処理
先の記事で示されたように印刷界のコンピューター化は世界的な傾向です。日本でも十数年前からその種の研究が行なわれており,現在では幾つかの新聞社や大手印刷会社で実用化されています。しかし,概して印刷界のコンピューター化は欧米諸国に比べて遅れていると言われています。それはなぜでしょうか。
一つには日本語の特異性が挙げられます。日本語で用いられる文字種は欧米諸国の言語で用いられるものよりはるかにたくさんあります。日本のある漢和辞典には約4万9,700もの文字種が挙げられています。ある調査によると,「全国の人名漢字は6万字種と推測されて」います。a
日本語の文字,特に漢字の複雑さについてはどうでしょうか。最近の電算写植機は文字を小さな点の集合で表現するため,複雑な漢字を正確に表わすのは容易なことではありません。文字専門家の間では文字の複雑さを示す基準として線率というものが用いられますが,漢字の中には,縦と横にそれぞれ10本近くもの線が交差しているものもあるのです。これら大量の,しかも複雑に入り組んだ文字を記憶させるにはかなり大容量のコンピューター記憶装置が必要ですし,初期入力つまり採字にも時間がかかります。さらに,ある種の句読点や引用符などが行頭行末に来ないようにする禁則処理やふりがななど日本語の組版に特有な問題もあります。このような問題があるにもかかわらず,様々な利点があるために印刷界のコンピューター化が現在見られています。
ものみの塔協会の日本支部は1972年以来,独自の印刷施設を持ち,日本語の「ものみの塔」誌や「目ざめよ!」誌の印刷を行なってきました。さらに,「クリスチャン・ギリシャ語聖書新世界訳」をはじめ種々の日本語の聖書文書の植字・組版も行なってきました。このために,モノタイプ,活字鋳造機,インテル鋳造機,校正刷り機をはじめ他の製版装置が使用されてきました。これら鉛を用いて印刷機用の版を作る方式を一般に「ホットタイプ」と呼んでいます。この「ホットタイプ」での日本語の植字・組版にはどんな仕事が関係しているでしょうか。
まず原稿に記されている文字をモノタイプを用いて鉛で鋳込み,並べてゆきます。より良い活字を作るためには絶えず機械を調整しなければなりません。出来上がると校正刷り機で試し刷りが行なわれますが,モノタイプで作られる活字はライノタイプのものとは違い一つ一つが分かれているため,くずれないようひもでしばり付け注意深く扱います。この後に校正がなされ種々の訂正をしますが,これもピンセットを用いて活字を1本1本扱う細かい仕事です。ふりがなを付けるのも大仕事です。しばらく前に日本語の聖書の組版をしたときには,わずか1ページの中にあるふりがなの活字を組み込むのに熟練した人でも1時間かかりました。これら訂正やふりがなを付ける仕事の後に,さし絵のスペースを作ったり質問文を組み入れたりする作業が行なわれますが,これにもかなりの時間が必要です。確かにこれは大きな仕事です。
これらの仕事を軽減するため,ものみの塔協会の日本支部でも本部からの指示に基づき3年程前から植字・組版のコンピューター化が検討され,1979年より独自の組版ソフトウェアの開発が行なわれてきました。このシステムに必要な種々の電子機器の用意も進められ,すでにIBMの新型コンピューターをはじめ,ペンタッチ式の漢字入力装置,漢字ディスプレイ装置,漢字プリンターなどが海老名市の工場に納入されています。さらに今年夏までにはヘル社の電算写植機が導入される予定です。
この新しい電算写植システムが完成すると今までの仕事は大きく変わります。まずモノタイプの代わりに記事の内容を電子的な形式でコンピューター記憶装置に入れる漢字入力装置が用いられます。モノタイプで「目ざめよ!」誌を作るのに約160キロの鉛が用いられますが,漢字入力装置ではわずか35グラムの重さのディスケットと呼ばれる20センチ四方の小さな媒体に雑誌のすべての内容が蓄えられ,その後に情報はコンピューター記憶装置に移されます。文章の訂正はピンセットの代わりに漢字ディスプレイ装置が用いられます。さし絵を入れるスペースもコンピューターに指令を与えると作られます。そのほか「ものみの塔」誌に見られる質問文と本文を同じ段に組み込むこと,一つの記事に定められたスペースに美観を損なうことなく組み入れること,行頭行末の禁則処理などもすべて自動的に行なわれます。
もちろん,このような組版ソフトウェアを作成することは膨大な仕事です。この仕事に協力しているソフトウェア専門家の一エホバの証人は次のように語っています。「この仕事は極めて複雑な仕事です。人間が何年もかかって徐々に体得してゆくことを全部具体的な文章にしました。それは何百ページもの仕様書になりました。しかし,人間のやり方とコンピューターでの処理とでは得意な点が全然違うので,同じ目的でもやり方を変えねばなりません。その仕様書をコンピューター向きのやり方に書き換え,それからその仕様書に適合するコンピュータープログラムを作り出すための検討をし,そしてプログラミングをしたのです。プログラムを書くための文字数は何百万字にもなりますが,たとえ1字でも,一つの点でも抜けたり間違ったりするとコンピューターは間違えます。ですから細心の注意が必要なのです。この仕事には何人もの専門家が必要ですが,同時にこれだけ細かな仕事をするために何十人ものプログラマーを必要としました」。
興味深いことに,これらの仕事はすべてエホバの証人たちによって行なわれています。そのうちの何人かは興味深い方法で真理を知りました。あるエホバの証人はこう述べています。「私はあるソフトウェア会社に勤めていましたが,同僚のひとりに証言する機会がありました。彼は真理を受け入れやがてエホバの証人となり,別の聖書研究を司会してさらに別のエホバの証人が生まれました。別の有能な同僚は,『なぜ花は自分で見るわけでもないのに美しいのだろう』と考えていて,真理に接したとき神を認めました。このエホバの証人は一緒に仕事をしていた若い女性に証言し,彼女もエホバの証人となりました。また私は,会社をやめたいと言った部下の話を聞きました。彼は教育者になりたかったのです。もっとすばらしい教育の機会があることを知って彼もエホバの証人となりました。これら6人はすべてソフトウェアの専門家ですが,今は皆ベテルで奉仕しています」。これらの専門家に加え他の多くのエホバの証人たちが協会独自の組版ソフトウェアの完成を目ざして働いています。
既に日本語の4月15日号「ものみの塔」や4月22日号「目ざめよ!」の一部の記事はテスト的に漢字入力装置や電算写植機を用いて作成されています。皆さんが今読んでおられるこの記事も電算写植で作成されたものです。近いうちに新しい組版ソフトウェアが完成し,鉛をまったく使わずに植字・組版を行なうことになるでしょう。このようにして出版される聖書文書は,王国の良いたよりを人々に宣べ伝えるために用いられます。
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