半島堤つまり突堤を作りました。幅が61㍍ほどある突堤の先端部には，塔が築かれ，兵器が据えられました。ティルス人は焼き打ち船を使ってこれらの塔を破壊し，突堤にも損害を与えました。アレクサンドロスは，これにひるまず，塔を再建し，突堤の幅も広げました。

攻囲の長びくのを嫌ったアレクサンドロスは，破城つちを載せた攻囲用のいかだの建造を命じました。アレクサンドロスの軍は，これを使ってティルスの二つの港に突破口を開き，同市の要塞によじ登ったのです。

7か月の攻囲の後，ティルスは陥落しました。同市が陥落した後も，ティルス人は必死の抵抗を続けたためアレクサンドロス配下の将兵は同市に火を放ちました。戦いで殺された8,000人のティルス人を別にしても，後日報復手段として2,000人が殺され，3万人が奴隷として売られました。

ティルスの栄華の果て

その後，幾度も再建が行なわれたとは言え，ティルスに対する聖書の預言は完全な成就を見ました。今日，ティルスのかつての栄華はもはやどこにも見られません。スールと呼ばれる小さな海港が遺跡とともにその場所に残っているにすぎません。大英百科事典（1971年版）によると，同市には「とりたてて重要な意義はなく，1961年の推定人口は1万6,483人」でした。（第22巻，452ページ，英文）このように，今日に至るティルスの歴史は，次の預言の言葉の真実性を証ししています。

『ティルスよ，わたし[エホバ]はあなたを攻め，海がその波を起こすように，わたしは多くの国民を，あなたに攻めこさせる。彼らはティルスの城壁をこわし，そのやぐらを倒す。わたしはその土を払い去って，裸の岩にする。ティルスは海の中にあって，網をはる場所になる』― エゼキエル 26:3-5，口。

ティルスのたどった悲惨な最後は，エホバ神が不信実な行為を軽く見ておられないことを明示しています。これは，神のご意志を知ることの重要性と神に忠節につき従う理由をわたしたちに銘記させずにはおきません。不信実な行為を放置なさらないのと同じように，神はご自分の忠節なしもべたちに必ず報いられます。―ヘブライ 6:10。

読者からの質問

● もし油そそがれたクリスチャンのある者が，生き残って新秩序に入るなら，彼らは年老いて死にますか。そうでないとすると，その地的な命はどのように終わるのですか。

率直に言って，聖書はその点について何も述べていません。それがどんな仕方で行なわれるにしても，これら聖霊によって油そそがれたクリスチャンは，天での命という報いを受けるためにその地的な命を終えなければなりません。―コリント第一 15:35-38。

小麦と雑草に関するイエスの例え話は，「事物の体制の終結」の時に，「王国の子たち」のある者が地上に生きていることを示しています。（マタイ 13:24-30，37-43）また，聖書中のひな型のあるものも，これら油そそがれた者たちの幾人かが破壊的な「大患難」を生き残るであろうことを示唆しています。（マタイ 24:21）では，これらのひな型の幾つかを考慮してみましょう。

エゼキエル書 9章には，秘書官の墨入れを持った「人」が，西暦前607年のエルサレムの滅びを生き残ることになっていた人々に，『印』を付ける様子が描かれています。これは現代において，油そそがれた「王国の子たち」の集合体が率先して行なっている，印を付ける業を表わすものと理解されています。エゼキエルの記述によると，印を付けることを終えたその「人」がエホバに報告を提出したのは，エルサレムにおける刑執行の業が終わった後のことでした。それは，油そそがれた者級のある者がこの世代に臨む刑執行の業を生き延びて，その後も地上に残ることを示唆しています。（エゼキエル 9:4，8，11）また預言者エゼキエル自身，古代エルサレムの滅びの後もバビロニアで生き続けたという事実は，この点に関して同じ事柄を示しています。

さらに，ノアの妻（より偉大なノアであるイエスの花嫁となる，油そそがれた者級を表わす）も洪水を生き残りました。（マタイ 24:37-42。エフェソス 5:25-30）今日，油そそがれた残りの者たちが，より偉大なエヒウであるイエス･キリストの滅びの業を生き残ることを望むとき，エヒウによる滅びの業を生き抜いたエリシャの例について考えてください。（「新しい天と新しい地」と題する本の97，98，318，319ページと「あなたのお名前が神聖なものとされますように」と題する本（英文）の351-365ページをご覧ください。）したがって，油そそがれたクリスチャンの残りの者は，この邪悪な事物の体制が終わった後も地上に生き残り，恐らく復活した人々をも含む地上の人間に宣べ伝え，教える業を完了することでしょう。―詩 71:18; 91:16。

この理解が正しいとすると，新秩序の下で地上にいる油そそがれたクリスチャンは，「天の王国」での地位に就くために，いつかその地的な命を終えねばなりません。―テモテ第二 4:18。

新秩序にいるそのような油そそがれた者たちが，今日の人間と同様に，引き続き年を取ってやがては死んでゆくといった考えは，多くのクリスチャンにとって信じ難いものです。彼らは，生き残った人類が肉体的な完全さに向かって向上しているときに，キリストの霊的兄弟の身にそうしたことが起こるのは理にかなっていないと考えます。そこで，神は死の苦しみを経験させないため，エノクに対して行なったと思われるように，油そそがれた者たちの地的な命を奇跡的に短くされるのだろうか，という疑問をそうした人々は抱いてきました。（創世 5:24。ヘブライ 11:5）神はもちろん，そのようにすることができます。しかし，こうした方法で物事が生じると明確に述べている聖句は一つもありません。聖書は，この疑問に対する別の答えを示唆してもいないのです。

したがって，わたしたちは神を信頼せねばなりません。細かい点まで考えたところで何の役にも立ちません。そうした情報が必要だと思われたなら，エホバはもちろんそれをみ言葉の中に含めることができました。しかし，そうされなかったのです。油そそがれた者たちは，いつ，またどのようにその地的な命を終えるにしても，不滅の霊の体をもって即座に復活させられるでしょう。それは，死に対する勝利となります。（コリント第一 15:51-57）こうして彼らはキリストの「花嫁」の他の者たちに加わり，千年に及ぶキリストの支配期間中，彼と共に統治することができます。―啓示 20:6。

すべての民族が平和に，幸福に生活するとき

そのようなときが本当に到来するでしょうか。必ず到来すると信じる確かな証拠がありますか。

確かにあります。「人間の益のために今や勝ち誇る，神の『とこしえの目的』」と題する本からその証拠を調べ，今日の人間の諸問題の根源について，またそうした問題がどのようにして除去されるかについて学んでください。この192ページの堅表紙の本は，現代語に訳された，542ページの「クリスチャン･ギリシャ語聖書 新世界訳」と共に，わずか450円のご寄付でお求めになれます。108 東京都港区三田5丁目5番8号 ものみの塔聖書冊子協会（振替 東京 5-138022番）にお申し込みください。