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    ものみの塔 1980 | 2月15日
    • ヤコブの苦難と神の新しい契約

      「わたしはイスラエルの家とユダの家に対して新しい契約を結ぶ」― エレミヤ 31:31,新。

      1,2 (イ)イスラエル国民に関し,ヤコブとラケルはどんな役割を演じましたか。(ロ)未曾有の患難はどのようにヤコブに予告されましたか。

      ヤコブとラケルは相思相愛の仲でした。イスラエルとして知られるようになったヤコブは,12部族から成るイスラエル国民の父祖となり,ヤコブに愛された妻ラケルは,ベニヤミン族の母となりました。ユダ族は,ヤコブにあまり愛されなかった妻レアの子孫です。ですからヤコブという名前はこの国民全体を象徴するもの,ラケルは同国民の誉れ高い母としての立場を象徴するものとなりました。そしてヤコブについては,未曾有の苦難が予告されており,ラケルはその苦難ゆえに,悲しい思いをすることになっていました。ベニヤミンの領地内のアナトテに住んでいたエレミヤは,自分の時代に生ずると考えられるその苦難を前にし,霊感を受けて次のように語りました。

      2 「ああ! それは大いなる日なので,そのような日は[歴史をさかのぼっても]ほかにないからである。それはヤコブにとって苦難の時である。しかし彼はその中からも救われるであろう」― エレミヤ 30:7,新。

      3 (イ)どのような状態についてラケルは泣き,慰められないと予告されましたか。(ロ)ヤコブはいつ「苦難の時」に見舞われましたか。

      3 「ヤコブにとって」先例のないこの「苦難の時」が象徴的なラケルにとってどんなものとなるかは,エレミヤ記 31章15節(新)のこのような言葉で予告されていました。「ラマ[ベニヤミンの領地内の一都市]で,声が聞こえる。悲嘆と悲痛な泣き声が。ラケルはその子らのことで泣いている。彼女はその子らのことで慰められるのを拒んだ。彼らはもういないからである」。それは,彼らが殺されたからではなく,彼らが捕らわれの身となり,故国から敵国へ流刑囚として連れ去られたからです。何ということでしょう! ユダとベニヤミンの領地の北側の境界線に位置していたエルサレムが,バビロニア人征服者によって18か月間攻囲され,悲惨な目にあったすえ破壊されたのです。その神殿は打ち壊され,王や君たちや祭司たちは捕らえられ,生き残った人々の大多数はバビロンに捕囚として連れ去られました。西暦前607年の第七の月(チスリ)の半ばには,ユダ王国の全土は,残っていた少数のユダヤ人たちからも見捨てられ,人や家畜の住まない荒れ地となりました。この地の,住むものもなく荒廃した状態は,70年間継続することが神によって定められていました。

      4 ヤコブはいつ予告されたこの苦難から「救われる」ことになっていましたか。

      4 それはヤコブにとって何という「苦難の時」になったのでしょう。ヤコブはこの時を免れることも避けることもできませんでした。エホバがつけ加えられた,「しかし彼はその中からも救われるであろう」という慰めの言葉が成就するのは,この地が完全に荒廃する70年間が過ぎた後のことでした。(エレミヤ 30:7,新)この救出はどのようにして行なわれるのでしょうか。

      5 エホバはラケルの慰めとなるどんなことを述べられましたか。エホバはご自分の約束をどのように果たされましたか。

      5 エホバは,ラケルが子供たちを奪われることを予告してから,このことについてさらに詳しく説明し,次のように言われました。「エホバの言われたことはこうである。『「あなたの泣き声を,またあなたの目の涙をとどめよ。あなたの行為に対し報いがあるからである」と,エホバは告げられる,「そして彼ら[あなたの子ら]は必ず敵の地から帰って来る」』」。(エレミヤ 31:16,新)この「敵の地」とはバビロンのことでした。(ミカ 7:8-10)したがってラケルの「子ら」に対するバビロンの支配は打ち砕かれることになっていました。子供たちを奪われるラケルへの再保証として,神は続けてこう言われました。「『また,あなたの将来には希望がある』― エホバのお告げ ―『その子らは必ず自分たちの領地に帰って来るであろう』」。(エレミヤ 31:17,新)敵意を持つ不信仰な国々が驚いたことに,ラケルの子らの,ラマを含む彼ら自身の領地への帰還は西暦前537年以降始まりました。(ネヘミヤ 7:30; 11:31-33)西暦前607年におけるあの悲惨な国家的「崩壊」から,エホバは実に奇跡的に彼らを立ち直らせたのです。

      6 「打ち傷」を癒すことと調和して,エホバはどのようにシオンつまりエルサレムの,だれも捜し求めない追い払われた女のような状態を変化させましたか。

      6 「このことについてエホバは言われました。「『わたしはあなたのために立ち直りを得させ,あなたの打ち傷から,わたしはあなたを癒すであろう』― エホバのお告げ ―『追い払われた女,と彼らはあなたを呼んだからである,「あれが,だれも捜し求めないシオンだ」と』。エホバは言われた。『見よ,わたしはヤコブの天幕の捕われ人を集め,その幕屋に哀れみを示すであろう。そして都市[シオン,つまりエルサレム]は実際,その塚の上に再建され,その正当な場所の上に居住の塔が座するであろう。また,彼らから感謝と笑う者たちの声が必ず出る』」― エレミヤ 30:17-19,新。

      7 その「打ち傷」を受ける時期にエホバが律法契約を破棄されるかどうかについて,エホバのお告げは何を示していますか。しかしユダヤ国民はこの契約をどのように扱いましたか。

      7 エホバは「幸福な神」であられ,ご自分と契約関係にある人々も幸福であることを望まれます。エホバご自身笑うことをされます。流刑の身のユダヤ民族が将来笑うことになるという約束は,エホバが,預言者モーセを仲介者として同国民と結ばれた律法契約を破棄しておられなかったことを証しするものでした。ところが,イスラエル人はその契約の条件に大いに違反していました。エホバは言われました。「その上彼らは[エルサレムの神殿の南方に位置する]ヒノムの子の谷にあるバアルの高き所を築いた。それは自分たちの息子や娘をモレクに[人身御供として]捧げて火の中を通らせるためであった。これは,わたしが彼らに命じもしなかったし,またユダ[ユダ王国]に罪を犯させるために,この忌むべきことを行なうことなど,わたしの心に上りもしなかった」― エレミヤ 32:35,新。

      8 それでイスラエルはエホバの民となる前に,当然の報いであるどんな経験をすることになっていましたか。

      8 そういう理由があったので,ユダ王国とその首都エルサレムの上に大あらしのような苦難が臨むことになったとしても,それはイスラエル人にとって当然の報いでした。しかしあわれみに富まれるエホバ神はこのことを予告されたあと,続けてこう言われました。「『[イスラエルが回復する]その時』― エホバのお告げ ―『わたしはイスラエルの全氏族に対して神となり,彼らは,わたしの民となるであろう』」― エレミヤ 30:23から31:1,新。

      9,10 再び集められたイスラエル人が神との幸福な関係を定めのない時に至るまで続けられるよう,エホバは彼らの心に何を入れられますか。それはどんな影響を及ぼしますか。

      9 イスラエル人の過去の歴史が芳しくないものであったにもかかわらず,神は彼らを,現在の状態に基づいて扱われました。神はイスラエル人の福祉を求め,定めのない時に至るまでご自分と幸福な関係を保ち続ける機会をその前に置かれました。この点に関し,エホバはこう述べておられます。

      10 「見よ,わたしは,わたしの怒りと激怒と大いなる憤りをもって彼らを追い散らしてしまうであろうすべての地から彼らを寄せ集める。わたしは彼らをこの場所に連れ戻し,彼らを安らかに住まわせる。そして彼らは必ずわたしの民となり,わたしが彼らの神となるであろう。そして,わたしは彼らに一つの心と一つの道を与えて,常にわたしを恐れさせる。彼らとその後のその子らの益のためである。そして,わたしは彼らと定めなく続く契約を結ぼう。それは,わたしが彼らの背後から引き返すことのないようにし,わたしが彼らに良くしてやるためである。わたしに対する恐れを彼らの心に入れ,わたしからそれないようにさせる。そして,わたしは彼らに歓喜して,彼らに良くしてやり,心を尽くし,魂を尽くして,まことをもって彼らをこの地に植えよう」― エレミヤ 32:37-43,新。31:27-30もご覧ください。

      勝った契約

      11,12 (イ)この新しい良いスタートを切ってからエルサレムは何年存続しましたか。そのとがをエホバに帰することができないのはなぜですか。(ロ)エルサレムの崩壊で律法契約は無効とされましたか。エホバは捕囚として連れ去られたご自分の民を故国に戻すことによって何を示されましたか。

      11 このように新しい良いスタートを切ったにもかかわらず,再建されたエルサレムが,606年間,つまり西暦70年の夏までしか存続しなかったのはなぜですか。確かに,前述の言葉から,ご自分の民を支援すべくエホバがどのように契約を結ばれたかを考えてみるなら,そのとがをエホバに帰することはできません。エホバの側に何らかの欠陥があるから新しい契約を結ぶ必要が生じるということは,あり得ませんでした。にもかかわらずエホバは,新しい勝った契約を結ぶことをエレミヤを通して発表されました。しかもその恩恵に最初にあずかることができたのは肉のイスラエルでした。

      12 西暦前1513年に,エホバはモーセを仲介者として,イスラエルと律法契約を結びました。それから906年後,エホバはバビロンの王ネブカデネザルを用いてエルサレムとその神殿を滅ぼしました。しかしこの事件によって,エホバがイスラエルと結ばれた律法契約が無効となり無価値なものとなったわけではありません。ですからエホバにとっては,ユダヤ人たちを敵の地であるバビロンから解放し,ご自分の与えた故国に帰還させてその傷ついた状態を癒すために,別の種類の契約を結ぶ必要はありませんでした。しかし神はユダヤ人たちをバビロンから解放することによって,ご自分が彼らの神であることを再度強調され,彼らが今でもご自分の民であり,シオン,つまりエルサレムはもはやだれも捜し求めることのない「追い払われた女」のようではないという再保証を与えられました。

      13,14 (イ)征服者の剣を生き残ったこれらイスラエル人たちは,どのように「荒野」に似た状況に置かれましたか。そして彼らはどこに安らぎ求めましたか。(ロ)エホバはどの程度の愛をもってイスラエルを愛されましたか。エホバはご自分のどんな特質をもって彼らを引き寄せられましたか。

      13 エホバはご自分の契約の民に,愛ある親切を惜しみなく示そうとされました。そのため,エホバは彼らが征服者の剣によって滅ぼし尽くされることがないようにされました。生存者はいることになっていました。それらの人々にとって,敵の地での捕囚の生活は,真のやすらぎの得られない,荒野での天幕生活のように感じられたことでしょう。そこは自分たちの故国でも,神から与えられた土地でもなかったからです。彼らはこの「荒野」に似た状況下で悔い改めて神に立ち返り,神の目に恵みを得ることができました。神が彼らとの契約を破棄しておられなかったからです。エホバはこの幸福な結末について次のように予告されました。

      14 「『剣を免れて生き残った者たちで成る民は,荒野で恵みを得た。イスラエルが[パレスチナの故国で]その休養を得ようとして歩いていた時に』。遠くから,エホバがわたしに現われて言われた,『そして,定めのない時にまで至る愛をもって,わたしはあなたを愛した。それゆえに,わたしは愛の親切をもってあなたを引き寄せたのだ。それでも,イスラエルの乙女よ,わたしはあなたを建て直し,あなたは実際に建て直されるであろう。あなたはなお自分のタンバリンで身を飾り,笑う者たちの踊りの中に実際に出て行くであろう。あなたはなおも[以前,イスラエルの北王国に占有された]サマリアの山々にぶどう畑を設けるであろう。設ける者たちは必ず設け,これを使い始めるであろう。[イスラエルの北王国の指導的部族であった]エフライムの山地の見張りの者たちが,「人々よ,立ち上がれ,シオン[エルサレム]に,わたしたちの神エホバのもとに上って行こう」と呼ばわる日があるからである』」― エレミヤ 31:2-9,新。

      15,16 (イ)ここに引用されている預言によると,イスラエルの12部族全体はどこでエホバの崇拝を再開することになっていましたか。(ロ)エホバはその後イスラエルの家に関して何をされますか。それはその民にどんな影響を及ぼしますか。

      15 そうです,イスラエルの南の部族と北の部族全体がもう一度集められ,エホバの崇拝をシオンでもう一度一致して始めるのです。それはとりもなおさず,ヤコブ(イスラエルの12部族すべて)が,定めのない時にまで至る神の愛によって,「苦難の時」から救出されるということです。その「苦難の時」は西暦前607年にエルサレムとユダが荒廃したときにその極に達しました。(エレミヤ 30:7)しかしエホバは,その「苦難」が生じる前にも,愛ある親切に動かされて,流刑にされたご自分の民を再び集めること以上の,もっとすばらしい事柄を次のように予告されました。

      16 「『見よ,日が来て』― エホバのお告げ ―,『わたしはイスラエルの家とユダの家に対して新しい契約を結ぶ。それは,わたしがその手を取ってエジプトから連れ出した日に,彼らの父祖と結んだ契約のようなものではない。「わたしのその契約を彼らは破った。それでも,わたしが彼らの夫としての所有権を持っていたのだが」』― エホバのお告げ ―『これこそ,わたしがこれらの日の後にイスラエルの家と結ぶ契約だからである』― エホバのお告げ ―『わたしは彼らの内にわたしの律法を置き,彼らの心の中にそれを書き記すであろう。そして,わたしは彼らの神となり,彼らがわたしの民となるであろう』。『こうして彼らはもはや各々その友を,各々その兄弟を教えて,「エホバを知れ!」とは言わないであろう。彼らは,最も小なる者から最も大いなる者に至るまで,皆わたしを知るからである』― エホバのお告げ ―『わたしは彼らの咎を許し,その罪をもはや思い出さないからである』」― エレミヤ 31:31-34,新。

      新しい仲介者が必要

      17 現代のわたしたちも新しい契約に関心を持つべきなのはなぜですか。律法契約がすでに古くなり,過ぎ去ろうとしていたのはどれ位昔のことですか。

      17 現在,わたしたちはこの新しい契約に関心を抱いているでしょうか。抱いていて然るべきです。この契約は今でも効力を有しているからです。ではそれは,今までどんな人たちに対して効力を有していましたか。世界各地に住む多くのユダヤ人は,それが自分たちに適用されることはない,と主張しています。彼らは今もって,自分たちは,シナイ山で父祖アブラハムと結ばれた契約のもとにいると信じているのです。その契約が結ばれたのは3,490年以上も昔の話です。エホバがエレミヤを通して新しい契約の約束をされたのは2,580年以上も前です。これらのユダヤ人が正しいとすれば,神は約束された新しい契約の施行をなぜこれほどまでに延ばしておられるのでしょうか。ユダヤ人の律法契約は1,900年あまり前にすでに古くなり,新しい契約に道を譲るため過ぎ去ろうとしていたと考えられます。本当にそうなったでしょうか。

      18 (イ)「新しい」契約に関する神の約束は,律法契約について何を示していましたか。そして律法契約をどんな時代だけに当てはめていますか。(ロ)この法典はどのようにしてイスラエル国民に伝えられましたか。

      18 この点に関し,エルサレムにいたパリサイ派の有名な教師であったガマリエルに師事した一人のユダヤ人は,次のように書き記しています。「『新しい契約』と言うことによって,神は以前のものを廃れたものとされました。そして,廃れたものとされて古くなってゆくものは,近く消えてゆくのです」。(ヘブライ 8:13。コリント第二 3:14)このユダヤ人の筆者がこれらの言葉を,エルサレムにいた,クリスチャンとなったヘブライ人のために書いたのは,西暦61年ごろのことでした。ローマ属州のガラテアにある会衆にあてて書いたその前の手紙の中で,この人はこう記しました。「では,律法はなぜ与えられたのですか。それは[人間の]違犯を明らかにするために[胤に関するアブラハム契約に]付け加えられたものであり,約束のなされた[アブラハムの]胤が到来する時にまで及ぶのです。そして,それはみ使いたちを通し,仲介者の手によって伝えられました」― ガラテア 3:19。

      19 律法契約の仲介者としてモーセが必要だったことからすると,やはり神と人間の間で結ばれる新しい契約についてどんなことが言えますか。

      19 名前は挙げられていませんが,この仲介者とはモーセのことです。古い律法契約を結ぶために,モーセが神と不完全で罪深い人間の仲介者として求められたのであれば,神と人間の間の新しい契約を結ぶに当たっても,エレミヤ記 31章31-34節に明記されていないとはいえ,一人の仲介者が必要とされるのは確かです。モーセはエレミヤの時代のはるか前に死亡しています。モーセが仲介者を務めたため,古い律法契約は「モーセの律法」と呼ばれました。―使徒 15:5。

      20,21 (イ)新しい契約のことを予告するに当たって,神はそれが以前の契約に勝っていることをどのように示されましたか。(ロ)神は,イスラエル人の当事者が契約を守った場合,イスラエル人から何を形成しようとされましたか。

      20 新しい契約は勝った契約なので,モーセよりも勝った仲介者がいて当然です。では,この新しい契約の天的な供給者が,以前の契約に勝る点をどのように示しておられるかに注目してみましょう。それは,「わたしがその手を取ってエジプトから連れ出した日に,彼らの父祖と結んだ契約のようなものではない。『わたしのその契約を彼らは破った。それでも,わたしが彼らの夫としての所有権を持っていたのだが』」とエホバは述べておられます。(エレミヤ 31:32,新)エホバは,イスラエルをエジプトから連れ出したあとに結ばれた契約を手段として用い,イスラエルから重要なあるものを形成しようとしておられたのです。ゆえにエホバは彼らに言われました。

      21 「あなたがたがわたしの声に堅く従い,わたしの契約を真に守るなら,[どうなりますか]あなたがたはすべてのほかの民のうちで必ずわたしの特別の所有物となる。全地はわたしのものだからである。そして,あなたがたは,わたしにとって祭司の王国,聖なる国民となる」― 出エジプト 19:5,6,新。

      22 (イ)この「祭司の王国」はどんな政府になり,どんな人々の必要にかなうものとなりますか。(ロ)この「聖なる国民」はだれにとって「特別の所有物」ですか。そして神とはどんな関係にありますか。

      22 もちろん,「祭司の王国」という言葉は,全人類の必要にこたえる理想的な政府のことを指しています。その祭司たちは,救い主なる神を代表し,その神に仕えます。「祭司の王国」それ自体が,「国民」,つまり神の器としてふさわしい,そして「聖」という表現が十分に当てはまる清い国民的集団なのです。エホバは地上のすべてのほかの民からその国民を取りわけられました。妻が夫の特別な所有物であると同じように,この国民は神の「特別の所有物」となりました。その証拠に,神は古代の贖われたイスラエル人を一国民から成る妻になぞらえ,わたしは「彼らの夫としての所有権を持っていた」と言われました。ところがイスラエル人は,神の神聖な契約を守って妻のような従順を示すことなく,この恵まれた関係に関連した特別な責務を軽んじました。(エレミヤ 3:1-3,20)イスラエルが離縁されるのは理の当然でした。

      23 モーセの律法契約は有効に働きましたか。神はご自分の意図された人類のための理想的な政府について何を行なわれましたか。

      23 エホバ神と契約を結んだ古代の民のその後の歴史から,彼らにとって物事は絶えず改善されていったわけではないことが分かります。ですからモーセを仲介者とする契約が有効に働かなかったという事実は,議論の余地のないところです。したがってこの願わしい「祭司の王国」のための取り決めをエホバが断念されなかったことは,わたしたちにとって本当にありがたいことです。神はその理想的な政府を念頭に置いて,古い契約を勝った契約に置き代えられたのです。

  • 『神と人間との間のひとりの仲介者』から益を得る
    ものみの塔 1980 | 2月15日
    • 『神と人間との間のひとりの仲介者』から益を得る

      1 (イ)今日のユダヤ人はなぜ新しい契約に関心がないのですか。(ロ)だれだけが,新しい契約を発案し,その仲介者を指名することができましたか。

      国際連合に加盟している152の国々の中で,今日,アブラハム,イサク,ヤコブの神であるエホバと契約を結ぶことに関心を持つ国は一つもありません。現在,世界各地に離散している1,500万人のユダヤ人でさえもそうです。エレミヤ記 31章31-34節の預言を無視し,自分たちはまだモーセを仲介者とする古い律法契約のもとにいると考えるほうがユダヤ人は好きなのです。「彼らは神の義を知らないで,[律法契約を守ることに躍起になり]自分たち自身の義を確立しようと努めたために」,新しい契約を通して得ることができる「神の義に服さなかった(の)です」。(ローマ 10:1-3)新しい契約の発案者は真の義の神であられるエホバでした。エホバだけが新しい契約を確立し,それにふさわしい仲介者を選ぶことができました。

      2 エホバは新しい契約をだれとの間に確立する,と言われましたか。彼らの咎と罪,及び神を知ることについて,エホバは新しい契約によって何をしようとしておられましたか。

      2 「『見よ,日が来て』― エホバのお告げ ―『わたしはイスラエルの家とユダの家に対して新しい契約を結ぶ。……これこそ,わたしがこれらの日の後にイスラエルの家と結ぶ契約だからである』― エホバのお告げ ―『わたしは彼らの内にわたしの律法を置き,彼らの心の中にそれを書き記すであろう。そして,わたしは彼らの神となり,彼らがわたしの民となるであろう。こうして,彼らはもはや各々その友を,各々その兄弟を教えて,「エホバを知れ!」とは言わないであろう。彼らは最も小なる者から最も大いなる者に至るまで,皆わたしを知るからである』― エホバのお告げ ―『わたしは彼らの咎を許し,その罪をもはや思い出さないからである』」― エレミヤ 31:31-34,新。

      3 新しい契約の最適な時期はだれの出現にかかっていましたか。その人とはモーセのことでしたか。

      3 エホバはいつ「イスラエルの家とユダの家に対して」新しい契約を結ばれたのでしょうか。その時期は,契約の仲介者としてエホバに選ばれた人物の出現にかかっていました。新しい契約を仲介するため,モーセが死人の中から復活させられるわけではありませんでした。モーセはイスラエルに助けとならないのと同じく,新しい契約に入る人々にも助けにはなりません。

      4 パリサイ派の教師ガマリエルの門弟であったあるヘブライ人の言葉によると,神がお用いになる新しい契約の仲介者はだれですか。

      4 必要とされたこの仲介者がだれであったかについて,わたしたちには一点の疑念もありません。ここでヘブライ人にあてて書いた霊感による手紙に目を向けてみましょう。筆者は,西暦一世紀の著名なパリサイ派の教師,つまりガマリエルの門弟であったヘブライ人です。この人はモーセと新しい仲介者の相違点を示しながら,このように述べています。「モーセが,天幕を作り上げるにあたって神命を与えられたとおりです。『[シナイ]山であなたに示されたひな型にならってすべての物を作るように』と述べておられるのです。しかし今,イエスはさらに優れた公の奉仕の務めを得たゆえに,それだけ勝った契約の仲介者でもあられるのです。その契約は勝った約束に基づいて法的に確立されたものです」。(ヘブライ 8:5,6)「新しい契約の仲介者なるイエス,そして,アベルの血よりさらに勝ったしかたで語る振りそそぎの血に近づいたのです」― ヘブライ 12:24。

      5 イエスは,古い律法契約が新しい契約に置き代えられる時が来たことを,死ぬ前に気付いておられたことについて述べてください。

      5 エホバによって古いモーセの律法契約が新しい契約に置きかえられる時が来ていたことを,イエスは認めておられました。そのため,イエスは死を前にした西暦33年ニサン14日の金曜日の過ぎ越しの晩に,ご自分の犠牲としての死を記念する式典を始められました。その式典のぶどう酒の杯を手にされてから,イエスは忠実な11人の弟子たちにこう言われました。「あなたがたはみなそれから飲みなさい。これはわたしの『契約の血』を表わしており,それは,罪のゆるしのため,多くの人のために注ぎ出されることになっているのです」。(マタイ 26:27,28)使徒パウロはイエスのこの言葉を次のように表現しています。「この杯はわたしの血による新しい契約を表わしています。それを飲むたびに,わたしの記念としてこれを行なってゆきなさい」。(コリント第一 11:25)足かけ三日間,イエスは死んで記念の墓の中におられましたから,新しい契約の仲介者として活動を始めることはできませんでした。

      6 咎を許し,もはや罪を思い出さないと述べる新しい契約の中の神の約束が遂行されるためには,何が不可欠ですか。

      6 エレミヤ記 31章31-34節には出ていませんが,新しい契約が発効するためには一つの犠牲が必要でした。なぜなら新しい契約を説明した箇所で,エホバは「わたしは彼らの咎を許し,その罪をもはや思い出さない」と述べておられるからです。(エレミヤ 31:34,新)古いモーセの律法契約を結んだ時には,犠牲の動物の血が用いられました。それには清める目的がありました。このことと調和して,仲介者モーセは,「天幕と公の奉仕のためのすべての器に同じように血を振りかけました。そうです,律法によれば,ほとんどすべてのものが血によって清められ,血が注ぎ出されないなら,ゆるしはなされないのです」。(ヘブライ 9:21,22)イエスの生き血の価値は,イエスが西暦33年ニサン16日の日曜日に死人の中からよみがえらされた時にはまだイエスの手中にありました。ヘブライ 13章20節が言わんとしているのはこのことです。「平和の神が,……永遠の契約の血をもって羊の偉大な牧者なるわたしたちの主イエスを死人の中から連れ出された」。―ヨハネ 10:11。

      7 キリストが新しい契約のための勝った犠牲を捧げたため,その血は良心に関し,そして神から「召された」者たちのためにどんな働きをしますか。

      7 新しい契約は勝った犠牲によって有効にされたため,クリスチャンになったヘブライ人に対して次のような問いかけがなされました。「永遠の霊により,きずのないすがたで自分を神にささげたキリストの血は,わたしたちの良心を死んだ業から清め,生ける神に神聖な奉仕をささげられるようにしてくださらないでしょうか」。キリストの血はわたしたちを責める罪からわたしたちを清める力を確かに持っています。ですから続けてこう記されています。「こうして彼は新しい契約の仲介者なのです。それは,以前の契約下での違犯から贖いによって釈放するための死が遂げられたことに基づいて,[神によって]召された者たちが永遠の相続財産の約束を受けることを目的としています」。(ヘブライ 9:14,15)では,モーセがシナイ山で仲介者を務めた律法契約,つまり「以前の契約」のもとにいたヘブライ人のクリスチャンの良心を,キリストの血が清めはじめたのはいつからですか。

      8 キリストの血が,以前の律法契約のもとにあったヘブライ人のクリスチャンたちの良心を清めはじめたのはいつからですか。

      8 それはキリストが死から復活した時ではなく,その日から数えて50日目のことでした。つまりイエスが昇天し,神のおられる「天そのものに」入られ,「今やわたしたちのために神ご自身の前に出てくださ(った)」後の,ペンテコステの日です。―ヘブライ 9:24。

      9 ペンテコステの日にペテロは,良心を刺されたユダヤ人たちに,もしイエス・キリストの名においてバプテスマを受けるなら罪の許しが得られると語りました。このことから契約に関して何が明らかにされましたか。

      9 そのペンテコステの日に使徒ペテロは,ユダヤ人および割礼を受けてユダヤ教に改宗していた人々に向かって話をします。彼らはそれを聞いて良心を刺され,「わたしたちはどうしたらよいのですか」と尋ねます。そこでペテロは答えます。「悔い改めなさい。そしてあなたがたひとりびとりは,罪のゆるしのためにイエス・キリストの名においてバプテスマを受けなさい。そうすれば,無償の賜物として聖霊を受けるでしょう」。(使徒 2:37,38)悔い改めた罪の許しが与えられるというこの約束によって,ある事実が明らかにされました。どんな事実ですか。それは,古いモーセの律法契約がイエス・キリストの死の杭にくぎづけにされたことにより,罪の許しを得させる備えを持つ神のこの新しい契約が,その日に発効していたという事実です。―エフェソス 2:15,16。コロサイ 2:14。ヘブライ 8:8-13。エレミヤ 31:34。

      10 何日かたって,ペテロがエルサレムの神殿で流血の罪を持つユダヤ人に話した時,ペテロは契約についてのこの事実をどのように強調しましたか。

      10 この事実が強調されたのはそれから何日かたった後のことでした。ペテロは神殿に集まっていた流血の罪を持つユダヤ人たちにこのように語りました。「ですから,あなたがたの罪を消していただくために,悔い改めて身を転じなさい。さわやかにする時期がエホバのみもとから到来し,あなたがたのために任命されたキリスト・イエスを遣わしていただけるようにです。実に,天はこのかたを,神が昔のご自分の聖なる預言者たちの口を通して語られたすべての事がらの回復の時まで,そのうちにとどめておかなければなりません」。話を終えるにあたり,ペテロは最後にこう言います。「神は,ご自分のしもべを起こされたのち,邪悪な行為からおのおのを転じさせてあなたがたを祝福するため,まずあなたがたのところに彼を遣わされたのです」― 使徒 3:19-21,26。

      どれほど多くの人のための「仲介者」か

      11 神が新しい契約を結ばれたのは,生来の肉のイスラエルの家やユダの家に対してであったかどうかについて,事実は何を示していますか。

      11 しかし,神は生来の肉の「イスラエルの家」や「ユダの家」に対して新しい契約を結ばれたのでしょうか。そのようなことは考えられません。これら二つの家の生来のユダヤ人は,その新しい契約の仲介者となるはずの人を荒々しくはねつけ,一国民として,ペンテコステの祭りを,定められた日にエルサレムの神殿で祝っていたからです。神は彼らと契約を結ぶことはできませんでした。神は新しく生まれたクリスチャンのイスラエル,つまり霊的イスラエルと新しい契約を結ぼうと考えておられました。霊的イスラエルは,イエス・キリストの,バプテスマを受けた約120人の弟子の上に『聖霊が下った』とき,まさにそのペンテコステの日に誕生しました。(使徒 11:15)彼らは神殿ではなく,エルサレムのある二階の部屋で待機していました。すでに水のバプテスマは受けていたそれらの弟子たちは,そこで神の霊によって生み出され,神の霊的な子,「神のイスラエル」となりました。そのような資格を持つ者として彼らは,モーセより偉大な預言者また天的な仲介者であられるイエス・キリストを通して新しい契約に導き入れられたのです。―使徒 2:1-36。ヨエル 2:28,29。ヨハネ 3:3,5。ガラテア 6:16。

      12 神が行なわれる物事の手順と調和して,仲介者としてのイエス・キリストの務めは,ペンテコステの年以降どのように拡大されましたか。

      12 したがって天におられるイエス・キリストは,神と,なお男や女としての肉体を持つ霊的イスラエルとの間の仲介者です。この小さな「聖なる国民」の成員数の限られた範囲内においてさえ,仲介者としてのイエス・キリストの働きは拡大されてゆきました。神は幾種類かの人々を新しい契約に入れるに際し,一定の順番を守られたからです。たとえば,西暦33年のペンテコステ後の約一年間は,イエスは,肉のイスラエル人ないしは割礼を受けユダヤ教に改宗した人々に限って仲介者を務められました。西暦33年のペンテコステの日にはこの中の約3,000人が霊的イスラエルに加えられました。(使徒 2:10,37-41)そして翌年(西暦34年)と思われますが,タルソスのサウロの迫害が契機となって,キリストに関する「良いたより」はサマリアに伝えられるようになり,そこのバプテスマを受けた信者に聖霊が『下りました』。(使徒 8:15-17)それ以来,イエスの仲介者としての働きは拡大され,サマリアの男女,つまりサマリア人であった霊的イスラエルにも益が及ぶようになりました。

      13 サマリア人に音信が伝えられてから2年後,イエスは霊的イスラエルの第三のグループに対し,どのように仲介者となられましたか。エルサレムのユダヤ人のクリスチャンたちはそのことをどのように認めましたか。

      13 それから2年が経過しました。ついに西暦36年の秋,つまりイエスの死と復活から3年半後にイエスは霊的イスラエルの第三のグループ,すなわちイタリア人の百人隊長コルネリオを筆頭に無割礼の異邦人から取り分けられた人々に対して仲介者としての働きを開始されました。エルサレムで,この驚嘆すべき状況の変化をペテロがクリスチャンとなったユダヤ人に伝えたとき,彼らは言いました。「それでは,神は命のための悔い改めを[無割礼の]諸国の人びとにもお授けになったのだ」― 使徒 8:1から11:18。

      14 パウロは神に対する悔い改めを宣べ伝えた自分の業について,エフェソスの年長者たちに何と語りましたか。またどんな契約のために奉仕者として働くようになったと語りましたか。

      14 それから20年以上たった後も,パウロはまだ諸国民への使徒として活動しており,その第三回宣教旅行は終わりに近づいていました。エルサレムに帰る途中にパウロはミレトスに立ち寄り,小アジアのエフェソス会衆の年長者たちに話をしました。自分がどのように労してきたかについて,パウロは次のように述べています。「(わたしは,)神に対する悔い改めとわたしたちの主イエスへの信仰について,ユダヤ人にもギリシャ人にも徹底的に証しをしたのです。そして今,ご覧なさい,霊に縛られてわたしはエルサレムに旅をしています」。(使徒 20:21,22)パウロはもはや,古いモーセの律法契約のために仕えるパリサイ人として奉仕してはいませんでした。むしろ,次のコリント第二 3章5,6節にパウロが書いている者として奉仕しました。「わたしたちにじゅうぶん資格があるのは神から出ているということです。実際神はわたしたちを新しい契約の奉仕者,つまり書かれた法典ではなく霊の奉仕者としてじゅうぶんに資格を得させてくださいました。書かれた法典は死罪に定めますが,霊は生かすのです」。

      15 「新しい契約の奉仕者」のことを語った際,パウロはだれを指して「わたしたち」という代名詞を使いましたか。その人々は神と人間との間の調停団の一員だったのでしょうか。

      15 パウロがこの中で用いている「わたしたち」という代名詞はだれのことを指しているのでしょうか。その手紙の前置きで,パウロは次のように述べ,「わたしたち」にだれが含まれるかを明らかにしています。「神のご意志によってキリスト・イエスの使徒となったパウロと,わたしたちの兄弟テモテから,コリントにある神の会衆……へ」。(コリント第二 1:1)それゆえ,パウロもテモテも「新しい契約の……霊の奉仕者」でした。パウロは,自分とテモテがイエスと一緒に仲介者の務めを行なう調停団であると言おうとして,このように述べたのではありません。この二人は神の仲介者としてのイエスの奉仕を受ける霊的イスラエル人に過ぎないからです。「新しい契約の仲介者」であられるのはイエスだけです。―ヘブライ 12:24。

      16,17 テモテ第一 1章20節から2章7節の中で,パウロはどんな考えに沿って,仲介者としてのイエスのことに話を進めてゆきますか。

      16 パウロはテモテに直接に書き送った手紙の中で次のように述べて,話をイエスの仲介者の務めの方へ徐々に持って行きます。「その中にヒメナオとアレクサンデルがいますが,冒とくすべきでないことを懲らしめによって学ぶよう,わたしは彼らをサタンに渡しました。そのようなわけで,わたしは勧めます。まず,[冒とく者のヒメナオとアレクサンデル以外の]あらゆる人について,また王たちや高い地位にあるすべての人びとについて,願いと,祈りと,取りなしと,感謝をささげることがなされるようにしてください。それはわたしたちが,敬神の専念を全うし,まじめさを保ちつつ,平穏で静かな生活をしてゆくためです。

      17 「これは,わたしたちの救い主なる神のみまえにあって誉れあること,受け入れられることであり,神のご意志は,あらゆる人が救われて,真理の正確な知識に至ることです。神はただひとりであり,また神と人間との間の仲介者もただひとり,人間キリスト・イエスであり,このかたは,すべての人のための[または,あらゆる種類の人びとのための,欄外]対応する贖いとしてご自身を与えてくださったのです ― このことはまさにその定めの時に証しされるのであり,わたしはその証しのために,宣べ伝える者,また使徒 ― わたしは真実を告げており,偽りを語ってはいません ― 信仰と真理に関して[無割礼の]諸国民を教える者として任命されました」― テモテ第一 1:20から2:7。

      18 (イ)パウロはこのような方法で,テモテに対し,神と公務に携わる役人の間の仲介者の役目を担うことを勧めていたのですか。(ロ)このような公務に携わる役人に関して神に訴えることから益を受けるのはだれですか。

      18 このようにパウロは,「王たちや高い地位にあるすべての人びとについて願いと,祈りと,取りなし」が行なわれるよう熱心に勧めました。しかし,神とこれら公務に携わる役人との間の仲介者の役目を担うよう,テモテに勧めてはいません。このような公務に携わる役人をキリスト教に改宗させたいという動機がこの「願いと,祈りと,取りなし」の背後にあったのではありません。では,神に向けられたこのような訴えの益にあずかれるのは一体だれでしたか。神に対するこうした訴えの背後にはどんな目的があったのでしょうか。それは,「わたしたち[パウロやテモテのようなクリスチャンたち]が,敬神の専念を全うし,まじめさを保ちつつ,平穏で静かな生活をしてゆく」ことでした。―テモテ第一 2:2。

      19 このように敬神の生活を送ることは,何を達成する助けになりますか。これはだれに対して「誉れあること,受け入れられること」でしたか。

      19 そのように,平穏で,敬神的な,まじめな生活を送ることは,政治支配者に関してこのような祈願をささげるクリスチャンたちの救いに役立ちました。害を及ぼすことのないこれらのクリスチャンたちを救うことは,「わたしたちの救い主なる神のみまえにあって誉れあること,受け入れられること」でした。なぜですか。「あらゆる人が救われて,真理の正確な知識に至ること」が神のご意志だからです。このことと一致して,ここで「わたしたちの救い主」と呼ばれているのはイエス・キリストではなく,「神」です。

      20 テモテ第一 2章5,6節によると,神の救いの計画の中でイエスはどんな役割を果たしますか。

      20 では救いの計画の中で,キリストはどんな役割を果たすのですか。パウロは言葉を続けます。「神はただひとりであり,また神と人間[すべての人間ではない]との間の仲介者もただひとり,人間キリスト・イエスであり,このかたは,すべての人のための対応する贖いとしてご自身を与えてくださったのです」― テモテ第一 2:5,6。

      21 (イ)パウロがテモテにあてた手紙は,どんな奉仕者が他のどんな奉仕者に手紙を書いた一つの例ですか。(ロ)この契約はいつまで継続しますか。これに関連して,「すべての人のための対応する贖い」はどんな働きをしますか。

      21 パウロは,新しい契約がすでに施行されていた一世紀のキリスト教の真理に基づいて書いていました。ユダヤ人,サマリア人,無割礼の異邦人など,あらゆる国籍の「人間」が,霊的イスラエルの一員となり,それから新しい契約に入れられました。キリスト・イエスがその新しい契約の仲介者でした。この点に関してパウロがテモテにあてた手紙は,「新しい契約の奉仕者」が,別の「新しい契約の奉仕者」に書き送った一つの例でした。「わたしたちの救い主なる神」と霊的イスラエルの間の新しい契約は,人間として肉体を持つ霊的イスラエル人が地上に存在する限り継続します。ですからこの契約は現在でも有効です。イエスの「すべての人のための対応する贖い」は,あらゆる種類の男女が霊的イスラエルとなり,キリスト・イエスが「仲介者」を務める新しい契約に入れられるための基盤となりました。

      22 (イ)新しい契約が確かにその終わりに近づいていると言えるのはなぜですか。キリストの仲介者の務めにはいつ終止符が打たれますか。(ロ)栄光を受けた霊的イスラエルが仲介者を必要としないのはなぜですか。そのとき,彼らはどんな資格で活動しますか。

      22 この新しい契約に入っている霊的イスラエルであることを自任する人々は,まだ9,000人以上います。それらの人々はパウロやテモテと同様「新しい契約の奉仕者」です。(コリント第二 3:6; 1:1)新しい契約が施行された目的は,人類のための理想的な政府である天の王国で,イエス・キリストと共に治めるにふさわしいと神から是認された14万4,000人の霊的イスラエルを生みだすことでしたが,その施行期間も明らかに終わりに近づきつつあります。これら是認された霊的イスラエル人が地上での死を遂げ,天の王国にあずかるために復活して「人間」ではなくなるとき,イエス・キリストの仲介者としての務めにも終止符が打たれます。神聖な神と自分たちの間の仲介者の働きが必要とされた,受け継いだ肉の罪深い状態は過去のものとなります。栄光を受けたこれら霊的なイスラエル人たちも,天の聖なるみ使いと同じように,エホバ神との間に仲介者を必要としなくなります。(啓示 22:3,4)彼らはイエス・キリストのもとに,人類世界のすべてに対する王,祭司,共同審判者となります。―啓示 7:4-8; 14:1-3; 20:4,6。ルカ 22:28-30。

      地上で益を受ける「大群衆」

      23,24 (イ)霊的イスラエルの残りの者に,今,惜しみなく協力しているのはだれですか。主の夕食について,彼らにどんな招待が差し伸べられましたか。(ロ)彼らは自分たちが何ではないと認めていますか。しかし新しい契約が施行されていることから,どのような益を得ていますか。

      23 信頼できる記録によれば,霊的イスラエルの少数の残りの者に惜しみない協力を示す,献身してバプテスマを受けた「大群衆」が今日存在します。1938年の春以来,彼らは,年一度のキリストの死を記念する式典に出席するよう招待されています。それはその記念式の象徴物である種入れぬパンと赤ぶどう酒にあずかるためではなく,深い敬意を抱いてその式典を見守るためです。a 彼らは,異邦人の時が1914年に終わって以来,キリストを天の王として認めています。彼らは熱意をこめ,来たるべき「大患難」で現在の事物の体制が終わる前に,「王国のこの良いたより」を「あらゆる国民に対する証し」のため人の住む全地に宣べ伝えるという点で,霊的イスラエルの残りの者と歩みを共にしています。(マタイ 24:14,21)彼らは自分たちが,イエス・キリストを仲介者とする新しい契約に入っている霊的イスラエル人でも,「選ばれた種族,王なる祭司,聖なる国民」でもないことを認めています。―ペテロ第一 2:9。

      24 とはいえ,彼らは新しい契約が施行されていることから確かに益を得ています。それは,ちょうど古代イスラエルの「寄留外人」が,律法契約を結んでいたイスラエル人の中に住むことから益を得たことに似ています。―出エジプト 20:10。レビ 19:10,33,34。啓示 7:9-15。

      25 エホバ神との関係を保つため,「大群衆」はだれと結びついていなければなりませんか。なぜですか。

      25 「わたしたちの救い主なる神」との関係を保つため,「大群衆」は霊的イスラエルの残りの者と結びついたままでいなければなりません。なぜでしょうか。なぜなら,これらの霊的イスラエル人はエレミヤ記 31章35,36節が言及している「聖なる国民」だからです。その聖句は次のようなもので,新しい契約に関する神の約束の次に出てきます。「エホバ,すなわち,昼の光のために太陽を,夜の光のために月と星の定めを与える方,[イスラエル人を追跡するエジプト人に対して]海をかき立てて波を荒れ狂わせる方,その名を万軍のエホバという方は言われた。『「もしこれらの掟がわたしの前から取り除かれることがあり得るなら」― エホバのお告げ ―「イスラエルの胤である者たちも同様に,常にわたしの前で一国民ではあり得なくなるであろう」』」。

      26 それで,霊的イスラエルは神の宇宙的組織の中で,何と同じように不変なものとなりますか。イエス・キリストは楽園の地に住む人々をどこで支配しますか。

      26 エホバは,わたしたちの住む地球に光を与えるさまざまな天体を無くされることがないと同じように,霊的イスラエルをご自分の宇宙的組織から抹殺させるようなこともされません。天において,霊的イスラエルは新しいエルサレムとなり,そこからイエス・キリストは生き残った「大群衆」と,楽園の地に復活した死者すべての上に王として支配されるのです。―啓示 21:2-24。

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