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    生命 ― どのようにして存在するようになったか 進化か,それとも創造か
    • 第11章

      生き物に見られる驚くべき設計

      1,2 (イ)科学者たちが設計者の存在を認めるどんな例がありますか。(ロ)しかし,どのような面で彼らはその見方をすっかり変えていますか。

      人類学者たちは,地中を掘って,三角形になった鋭い火打ち石の断片を見つけると,それは,矢じりとするためにだれかがそのように設計したものに違いない,と判断します。そのように,何かの目的のために設計されたものは偶然の所産であるはずはないと,科学者たちは一致して考えるのです。

      2 しかし,生物に関する事になると,その同じ論理がしばしば放棄されてしまいます。設計者は必要ではない,とみなされるのです。しかし,最も単純な単細胞の生物,あるいはそれが持つ遺伝の暗号であるDNAでさえ,形を整えられた火打ち石の断片よりはるかに複雑な作りなのです。それでも,進化論者たちは,それらの生物体に設計者などはおらず,一連の偶然の出来事によってそのように形造られた,と主張します。

      3 ダーウィンはどんなことの必要を認めていましたか。彼はその必要をどのように満たそうとしましたか。

      3 しかし,ダーウィンは,設計のための何らかの力の必要を認め,それを自然選択の働きに帰しました。彼はこう述べました。「自然選択は,毎日,毎時,全世界で,どんなにわずかな変異をも綿密に吟味している。良くないものを退け,良いものすべてを保存し,かつ蓄積しているのである」。1 しかし,現在この見方は受け入れられなくなっています。

      4 自然選択に関する見方はどのように変化していますか。

      4 ステフェン・グールドの伝えるところによると,現代の多くの進化論者は,本質的な変化は,「自然選択によるのではなく,むしろ無作為の過程で個体群に広がってゆくのかもしれない」と述べています。2 ゴードン・テイラーもそれと同じ見方をこう述べています。「自然選択は実際に起きている事柄のわずかな部分の説明にはなる。大部分は説明されないままである」。3 地質学者デイビッド・ロープはこう述べています。「今日,自然選択に代わる重要なものは,純然たる偶然性の効果と関連している」。4 しかし,「純然たる偶然性」が設計を行なうのでしょうか。それは,生物の基本的な成り立ちに見られる,そのきわめて複雑な仕組みを造り出すことができるのでしょうか。

      5 設計性と,その源とについて,一進化論者はどんなことを認めていますか。

      5 進化論者リチャード・レウォンティンは,それぞれの生物体が「注意深く,しかも巧みに設計されているように思え」,そのためにある科学者たちがそれを,「至上の設計者が存在する主要な証拠」とみなしていることを認めました。5 そのような証拠の幾つかについて考えてみるのは有益でしょう。

      小さなもの

      6 単細胞生物の作りは本当に単純であると言えますか。

      6 一番小さな生き物,すなわち,単細胞の生物から始めましょう。一生物学者は,単細胞の動物も「食物を捕らえ,それを消化し,老廃物を排せつし,動き回り,家を建て,性行為を営んで」おり,「組織も,器官も,心臓も,脳髄もないのに,我々の持つすべてのものをまさに得ている」と述べています。6

      7 珪藻はどのように,またどんな目的でガラスを造りますか。それは海洋の生物にとってどれほど重要なものですか。

      7 単細胞の生物である,珪藻<ケイソウ>類は,海水からけい素と酸素を取ってガラス状のものを造り,それを使って,自分たちの葉緑素を入れる小さな“丸薬容器”をこしらえます。それは,重要さの面でも,美しさの面でも,科学者が次のように嘆賞するところとなっています。「宝石箱に収められたこれらの緑の葉は,海洋に生息するすべてのものが取り入れる食物の10分の9を占める牧草となっている」。その食物としての価値の大きな部分は,珪藻類が造り出す油分にあり,それはまた,珪藻が水面近くを浮遊するのを助け,それによって珪藻の葉緑素は太陽の光を浴びられるようになっています。

      8 珪藻は自分をどんな複雑な形で覆いますか。

      8 この同じ科学者によると,珪藻の,美しいガラス状の覆いは「円,四角,盾形,三角,楕円,長方形など,戸惑うほど様々な形をしており,それらはすべて,幾何学模様のエッチングで絶妙の装飾を施されて」います。その科学者はさらにこう述べています。「それらは,純粋ガラスに非常に優れた技法で線条細工を施したようになっており,その模様の間にはめ込むとすれば,人間の髪の毛でさえ縦に400枚に薄く切らねばならないだろう」。7

      9 放散虫が建てる家にはどんな複雑な作りのものがありますか。

      9 海洋に住む動物の一種で,放散虫と呼ばれるものもガラスを造り,それを用いて,「中心の水晶状の球体から,細長くて透明の突起が放射状に出た,日輪型のガラス玉」を造り上げます。あるいは,「ガラスで六角形の支柱を造り,それを使って簡単なジオデシック・ドームを構成している」場合もあります。この顕微鏡的な建築家のあるものについてはこう述べられています。「この優秀な建築士にとってジオデシック・ドームは一つだけでは足りない。レースのような格子状のドームを順次三つ重ねることが必要なのである」。8 ここに見られる設計のすばらしさは言葉では言い尽くせません。絵で描くことしかできないのです。

      10,11 (イ)海綿はどんな生き物ですか。海綿を完全に砕いても,個々の細胞はどのようになりますか。(ロ)海綿の骨格に関するどんな疑問に進化論者たちは答えることができませんか。しかし,わたしたちにはどんなことが分かりますか。

      10 海綿は数百万の細胞から成り立っていますが,その細胞の種類はほんの数種類にすぎません。大学の一教科書はこう説明しています。「それらの細胞は組織や器官を構成してはいないが,細胞相互の間にはある種の認識があって,互いを連結し,組織化している」。9 海綿をすりつぶし,布目に通して,その数百万の細胞をばらばらにしたとしても,それらの細胞は再び結合して,海綿の体を再生します。海綿は非常に美しいガラスの骨格を造り上げます。中でもとりわけ見事なものは,“ビーナスの花かご”(カイロウドウケツ)と呼ばれています。

      11 これについて,一科学者はこう述べています。「針状珪石でできていて,[ビーナスの花かご]として知られるものなど,複雑な海綿の骨格を見ると,想像を超越したものがそこにあることを感じさせられる。どうして疑似独立性の顕微鏡的な細胞群が共同して,百万ものガラス状の突起を分泌し,これほど入り組み,しかも美しい格子模様を造り上げるのだろうか。我々には分からない」。10 しかし,わたしたちは一つのことをはっきり知っています。すなわち,偶然はその設計者ではないということです。

      共同の関係

      12 共生とはどういうことですか。どんな例がありますか。

      12 二種類の生物が一緒に生活するように設計されていると思われる例が数多く存在します。そのような共同の関係は,共生(一緒に生活すること)として知られています。ある種のイチジクとコバチは繁殖のために互いを必要としています。シロアリは木を食べますが,それを消化するため,自分の体内に原虫類を必要としています。同じように,牛,ヤギ,ラクダなども,自分の体内で生きているバクテリアや原虫類の助けがなければ,草の中の繊維質を消化できません。ある報告書はこう述べています。「乳牛の胃で,そのような消化がなされる部分はおよそ100クォート(約95㍑)の容積があるが,そこには一滴あたり100億もの微生物がいる」。11 藻類と菌類も組になって地衣類の植物を構成しています。そのようなチームを組むことによって初めて,それらはむき出しの岩はだでも生育し,岩を土に変えてゆくのです。

      13 ハリアリとアカシアの木との共同関係はどんな疑問を抱かせますか。

      13 ハリアリはアカシアの木の,中空になったとげの中に住んでいます。これらのアリは,葉っぱを食べる昆虫を木に寄せつけず,その木にはい上ってくるつる植物を断ち切ります。代わって,アカシアの木は,アリが好む糖液を分泌し,また,小さな偽果をつけ,それがアリの食物となります。アリが最初にその木を保護し,そののち木がアリに果実のお礼をするようになったのでしょうか。それとも,木がアリのために果実を作り,そののち,アリが感謝して保護の役を引き受けるようになったのでしょうか。あるいは,そのすべては,たまたま同時にそのようになったのですか。

      14 花は昆虫を引き寄せて受粉を行なうためにどんな特別の備えや仕組みを用いていますか。

      14 そのような協力の関係は,昆虫と花との間にも数多く見られます。昆虫は花の受粉を助け,一方花は昆虫に花粉と花蜜を供給します。ある種の花は二種類の花粉を造ります。一方は受精のためであり,もう一方は生殖不能ですが,訪問してくる昆虫のえさになります。昆虫を花蜜に案内する,特別の模様や香りを持つ花も数多くあります。その道筋をたどる間に昆虫は花に受粉をさせるのです。引き金の仕組みを持つ花もあります。昆虫がその引き金に触れると,花粉を入れた袋である葯が昆虫の体にぶつかります。

      15 ウマノスズクサはどのような方法で他花受粉を確実に行なえるようにしていますか。これはどんな疑問を起こさせますか。

      15 例を挙げれば,ウマノスズクサ属の植物は自分で受粉することができず,昆虫に別の花から花粉を持って来てもらうことが必要です。この植物には管状の葉があって花を包んでおり,その葉にはろうのようなものが塗ってあります。花のにおいに引き寄せられた昆虫は,その葉の上に着地しますが,すべすべしたすべり台をすべって,下部の部屋の中に落ちます。その場所で,成熟しためしべの柱頭は,昆虫が運んで来た花粉を受け,こうして受粉が行なわれます。しかし,そののち三日の間,昆虫は,毛と,ろうを塗ったすべり台とのためにそこから動けません。その後,その花自身の花粉が熟成して,昆虫の体に振りかけられます。こうして後に,毛はしおれ,ろうを塗った葉はそり返って平らになります。昆虫は歩いて外に出,新たに集めた花粉を携え,別のウマノスズクサのところに飛んで行って,それを受粉させます。昆虫はそこを三日間も訪問していることを苦にしません。昆虫たちのためそこに蓄えられた花蜜を十分楽しむことができるからです。このすべては偶然に生じたのでしょうか。それとも,それは理知ある設計の結果でしょうか。

      16 ある種のオフリス蘭やつるべ蘭はどのような方法で自分の受粉を行なっていますか。

      16 ある種のオフリス蘭は,その花びらに,目や,触覚や,羽までそろった,雌のジガバチの絵を持っています。それは,交尾中の雌のにおいさえ出すのです。雄は交尾のためにそこにやって来ますが,花の受粉を助けるだけで出て行きます。別の蘭で,“つるべ蘭”と呼ばれるものは,発酵した花蜜を備えていて,それでハチをちどり足にさせます。ハチは液体の入ったつるべの中にすべり落ち,そこから出る唯一の方法は,そのハチに花粉を振りかける仕組みになったさおの下でもがくことなのです。

      自然界の“工場”

      17 葉と根は植物を生長させるためにどのように共同して働いていますか。

      17 植物の緑の葉は,直接にも間接にも,世界の食物源です。しかし,葉っぱは細い根の助けがなければ機能できません。幾百万本もの細根 ― 一本一本の根の先端には保護の帽子がかぶせてあり,その帽子一つ一つには潤滑剤が塗ってある ― は土の中を押し進んで行きます。油を塗った帽子の手前側に生じる根毛は水とミネラル類を吸収し,それらは辺材部の細い水路を通って葉まで上って行きます。葉の中では糖分とアミノ酸が造られ,それらの栄養素は樹木全体に,また根の中に送られます。

      18 (イ)水はどのようにして根から葉に達しますか。このシステムがただ必要をまかなう以上のものであることを何が示していますか。(ロ)蒸散とは何ですか。それは水の循環にどのように寄与していますか。

      18 木その他の植物に見られる循環システムの幾つかの特色は非常に驚くべきものであり,多くの科学者はそれをほとんど奇跡的なものとみなしています。まず,どのような仕組みで水が地上数十メートルの高さにまで汲み上げられるのでしょうか。根圧がまず水を押し上げますが,樹幹では別の仕組みがそれに代わります。水の分子が凝集によってつながり合うのです。水が葉から蒸発するにつれ,水の細い柱は,この凝集作用により,ちょうどロープを引っぱるようにして上へ引っぱられます。これは根から葉まで達するロープであり,1時間に60㍍も進みます。このシステムは木の中を伝って3㌔もの高さにまで水を持ち上げることができる,と言われています。余分の水が葉から蒸発(蒸散と呼ばれる)してゆくにつれ,幾十億トンもの水が空気中に戻り,それが再び雨となって地上に降ります。見事に設計されたシステムではありませんか。

      19 ある種の根とバクテリアとの共同関係によってどんな重要な仕事がなされていますか。

      19 それだけではありません。葉は,大切なアミノ酸を造るために,硝酸塩や亜硝酸塩を地中から取り入れることが必要です。ある程度の量は稲妻や,ある種の自由生活型のバクテリアの働きで土壌中に造られます。窒素の化合物は,エンドウ,クローバー,大豆,ムラサキウマゴヤシなど,マメ科の植物によっても豊富に形成されます。ある種のバクテリアはマメ科植物の根に入り,その根はバクテリアに炭水化物を供給し,バクテリアは,土壌中の窒素を変えて,もしくは固定させて,利用しやすい硝酸塩や亜硝酸塩にします。その産出量は,毎年,1㌶当たり220㌔ほどになります。

      20 (イ)光合成によって何がなされていますか。それはどこで起きますか。その過程について理解しているのはだれですか。(ロ)一生物学者はそれをどのようにみなしていますか。(ハ)緑の植物をどのように呼ぶことができますか。それはどのような点で優れていますか。どんなことを尋ねるのは適切ですか。

      20 さらに別の点もあります。緑の葉は,太陽のエネルギーと,空気中の炭酸ガス,また根からの水を利用して糖分を造り,酸素を放出します。この過程は光合成と呼ばれ,葉緑体と呼ばれる,細胞内の小さな粒の中で起きます。それは非常に小さな粒で,この文の終わりにある丸の中に40万粒も入るほどです。科学者たちはこの過程について十分には理解していません。「光合成には,およそ70もの別個の化学反応が関係しており,それはまさしく奇跡的な事柄である」と,一生物学者は述べています。12 緑の植物は,自然界の“工場”と呼ばれてきました。美しく,静かで,汚染源とならず,酸素を生産し,水を循環させ,世界に食物を供給する工場なのです。これはただ偶然に生じたことなのでしょうか。そのようなことを本当に信じられますか。

      21,22 (イ)二人の著名な科学者は,自然界に働いている理知についてどのように証言していますか。(ロ)聖書はこの点についてどのように筋道の通った考え方を提出していますか。

      21 そのようなことは信じがたいと考えるようになった人々の中には,世界の最も著名な科学者たちもいます。それらの人々は,自然界に理知の働きを認めるのです。ノーベル賞を受けた物理学者,ロバート・A・ミリカンは,進化論を信じてはいますが,アメリカ物理学会のある会合ではっきり次のように述べました。「我々の限界を定める神格者が存在する。……純然たる唯物論的哲学はわたしにとって無知の極みである。どの時代でも,知恵ある人々は,少なくとも敬虔な気持ちを抱くべきことだけは学んだのである」。その話の中で彼はアルバート・アインシュタインの有名な言葉を引用しましたが,アインシュタインは,「自然界に表明されている英知のごく微少の部分を理解しようと謙遜に努める」と述べていました。13

      22 限りない変化や,驚くほどのち密さなど,設計の証拠はわたしたちの周囲いたるところにあり,至上の理知の働きを物語っています。この結論は聖書の中でも示されており,聖書はその設計を創造者に帰しつつ,『その見えない特質,すなわち,そのとこしえの力と神性とは,造られた物を通して認められ,世界の創造以来明らかに見えるのであり,それゆえに彼らは言い訳ができない』と述べています。―ローマ 1:20。

      23 詩編作者は道理にかなったどんな結論を言い表わしていますか。

      23 わたしたちの周囲の生物に豊富に見られる設計の証拠について考えるとき,その背後にあるものは,他からの方向付けのない偶然の働きである,というような見方は,全く「言い訳」ができないもののように思えます。そして,詩編作者が次のように述べて,理知ある創造者に誉れを帰しているのは,いかにも道理にかなったことなのです。「エホバよ,あなたのみ業は何と多いのでしょう。あなたはそのすべてを知恵をもって造られました。地はあなたの産物で満ちています。これほど大きく,広いこの海,そこには無数の動くものがいます。生き物が,小さいのも大きいのも」― 詩編 104:24,25。

  • だれがそれを最初に行なったか
    生命 ― どのようにして存在するようになったか 進化か,それとも創造か
    • 第12章

      だれがそれを最初に行なったか

      1 一生物学者は人間の発明家たちについて何と述べましたか。

      「我々は自分たちが思っているような,いろいろな物事の創始者ではないのではないかと,わたしは考えている。我々はただ,既にあった物事を繰り返して行なっているにすぎない」と,一生物学者は述べました。1 多くの場合,人間の発明家は,植物や動物がこれまで幾千年も行なってきた事柄をただ繰り返しているにすぎません。こうして生物を模倣することは非常に広く行なわれており,それには,生物工学<バイオニクス>という名前さえ与えられています。

      2 人間の工学技術と自然の技術とについて別の科学者はどんな比較をしましたか。

      2 別の科学者は,人間の工学技術のほとんどすべての基礎的な分野は「生物によって既に開発され,有効に利用されていた。……それは人間の知能が,それらの機能を理解し,修得するようになる以前のことであった」と述べています。興味深いことに,その科学者はさらにこうも述べています。「多くの分野で,人間の工学技術はいまだに自然界よりずっと遅れをとっている」。2

      3 バイオニクスの例について考える際,どんな問いを念頭に置くべきですか。

      3 発明家たちが模倣しようと努めてきた,生物の持つこれらの複雑な能力について考えてみるとき,それらがすべて偶然によって生じたとするのは,道理にかなったことと言えるでしょうか。しかも,ただ一度ではなく,相互の関連のない生き物のあいだで何度も生じているのです。そのように入り組んだ設計は優秀な設計者だけがなしうるものであることを,わたしたちは経験によって学んでいるのではないでしょうか。才能のある人々が後になってようやく模倣できるようになった物事を,ただの偶然が造り出せたということを,あなたは本当に信じることができますか。このような問いを念頭に置いて,以下の例について考えてみてください。

      4 (イ)シロアリはどのようにして自分の住まいに冷房を施していますか。(ロ)科学者はどんな問いに答えることができませんか。

      4 空調設備。現代の工学技術によって多くの家には冷房設備が施されています。しかし,それよりずっと前から,シロアリの仲間は自分の住まいに冷房を施しており,今でもそれを行なっています。彼らの巣は大きな土塁の中央部にあります。温まった空気はそこから上にのぼっていって,網の目状になった,表層近くの気道に入ります。古くなった空気はそこから通気性のある外壁を通って拡散し,同時に新鮮な冷たい空気がしみ込んできて,土塁の下部にある気室に入ります。冷たい空気はそこから巣の中に循環してゆきます。土塁によっては,底の部分に幾つか穴があいていて,そこから新鮮な空気が入るものもあり,また暑い季節には,地下から引き込まれた水が蒸発して空気を冷やす仕組みにもなっています。どのようにして幾百万匹もの盲目の働き手がその努力を統一して,このように工夫に富み,立派に設計されたものを建設するのでしょうか。生物学者ルイス・トーマスはこう答えています。「彼らが集団的な知恵のようなものを発揮するというまぎれもない事実,これは神秘である」。3

      5-8 飛行機の設計者たちは鳥の翼からどんな事を学んできましたか。

      5 飛行機。飛行機の翼の設計は,多年にわたり,鳥の翼を研究することによって多くの益を得てきました。鳥の翼の湾曲のぐあいは,重力による下への引っぱりに打ち勝つために必要な浮力を作り出しています。しかし,翼があまり上向きになると,失速の危険があります。失速を防ぐため,鳥の翼には,その最前部である前縁のところに,翼の傾きが増すにつれて飛び出てくる数列の羽毛,すなわち下げ翼のようなものがあります(1,2)。これらの下げ翼は,空気の主な流れが翼面から離れないようにすることによって浮力を維持します。

      6 乱気流に対応し,“失速墜落”を防ぐためのもう一つの特色は,小翼(3),すなわち,鳥が自分の親指のように持ち上げることができる小さな羽毛の束です。

      7 鳥の場合にも飛行機の場合にも,翼の先端部では小さな渦ができて,それが飛行に対する抵抗力となります。鳥は二つの方法でこの抵抗を減らしています。アマツバメ,アホウドリなどの鳥は,先端のとがった,細くて長い翼を持っており,そのような設計になっていると,渦はほとんど起きません。他の鳥,例えばオオタカ,ハゲワシなどは,大きな渦を作る,幅の広い翼を持っていますが,それらの鳥は,翼の先端,すなわち翼端部を,手の指のように広げることによって,これを防いでいます。それによって,そのずんぐりした翼端は幾つかの細くてとがった部分に分かれ,渦と抗力は減少するのです(4)。

      8 飛行機の設計者はこれらの特色の多くを取り入れてきました。翼の湾曲のぐあいによって浮力を生み出せます。種々の下げ翼や突起を設けて,空気の流れを制御させ,またブレーキの働きをさせることができます。小型の飛行機の中には,平らな板を翼の表面に適当な角度で取り付けることによって,翼端の抗力を減少させているものもあります。しかし,飛行機の翼はいまだに,鳥の翼に見られる工学上の優秀さにはかないません。

      9 凍結防止剤を用いる点でどんな動物や植物は人間に先んじていましたか。それはどれほど効果的なものですか。

      9 凍結防止。人間は自動車のラジエーターに入れる凍結防止剤としてグリコールを用いています。しかし,ある種の微小な植物は,化学的な性質のよく似たグリセロールを用いて,南極の湖沼の中でも凍結を防いでいます。それは,零下20度の寒さでも生き延びる,ある種の昆虫にも見いだされます。自分自身で凍結防止剤をこしらえて,南極の極寒の水域で生きている魚もいます。ある種の樹木は零下40度の寒さにも耐えますが,それは,「氷の結晶がその周りにできやすい塵やほこりの粒のない,非常に純粋な水」を蓄えているためです。4

      10 ある種のゲンゴロウは水中で呼吸するための仕掛けをどのように造り,また利用していますか。

      10 水面下での呼吸。人はボンベを背中にくくりつけて,水面下に1時間ほどはもぐっていられます。ゲンゴロウ類の中には,もっと簡単な方法で,ずっと長く水の中にもぐっているものもあります。彼らは気泡をかかえて潜水するのです。その気泡は肺の役もします。それはその虫から炭酸ガスを取り去って水の中に散らし,水に溶けている酸素を集めて,虫はそれを用いるのです。

      11 生物時計は自然界にどれほど広く見られますか。その例としてどんなものがありますか。

      11 時計。人間が日時計などを用いるよりずっと前から,生物体内の時計は時を正確に刻んでいました。干潮になると,顕微鏡的な植物である珪藻は,ぬれた砂浜の表面に出て来ます。潮が満ちてくると,珪藻は再び砂の中にもぐってゆきます。しかし,潮の満ち干などのない実験室の砂の中でも,珪藻が持つ時計は,潮の干満の時刻に合わせて,珪藻を上がってこさせたり沈ませたりします。カニの一種であるシオマネキは,引き潮になると黒ずんだ色になって出て来ますが,満潮の間は明るい色になって自分の穴に引きこもっています。海から離れた実験室の中でも,シオマネキはなおも潮の変化に時を合わせ,潮が満ちたり引いたりする時刻に応じて色を明るくしたり暗くしたりします。鳥は,時の経過とともに位置を変えてゆく太陽や星を見ながら長い渡りをすることができます。鳥は,そうした変化に応じて補正される体内時計を持っているに違いありません。(エレミヤ 8:7)顕微鏡的な植物から人間にいたるまで,無数の体内時計が正確に時を刻んでいます。

      12 人間がそぼくな羅針儀を用い始めたのはいつごろですか。それはずっと以前からどのように用いられていましたか。

      12 羅針儀。西暦13世紀ごろ,人間は,鉢に入れた水の中に磁針を浮かせた,そぼくな羅針儀を用いるようになりました。しかし,それは決して新しい発明ではありませんでした。バクテリアは,羅針儀として用いるのにちょうど良い大きさの,線状になった磁鉄鉱の粒子を体内に持っています。これらが彼らをその好みの環境に導きます。磁鉄鉱は,鳥,ミツバチ,チョウ,イルカ,軟体動物など,他の多くの生物の体の中にも見いだされています。実験によると,伝書バトは,地球の磁場を知覚して元の場所に戻ることができます。渡りをする鳥が自分の方向を定める方法の一つはその頭の中にある磁気コンパスによることが,今では広く認められています。

      13 (イ)マングローブは塩水の中でどのようにして生きることができますか。(ロ)海水を飲むことができるのはどんな動物ですか。どうしてそれを行なえるのですか。

      13 塩分の除去。人間は,大規模な工場を建設して,海水から塩分を取り除いています。マングローブの木は,海水を吸い取っても,膜構造によって塩分をこし取ることのできる根を持っています。マングローブの一種,アビセンニアは,その葉の下側にある腺を用いて余分の塩分を除いています。カモメ,ペリカン,ウミウ,アホウドリ,ウミツバメなどの海鳥は,海水を飲みますが,その頭部にある腺で,自分の血液に入る余分の塩分を取り除いています。また,ペンギン,ウミガメ,ウミイグアナなども,海水を飲んで,余分の塩分を除くすべを知っています。

      14 電気を起こす生き物としてどんなものがいますか。

      14 電気。バッテリーで電気を起こすことのできる魚は500種類ほどいます。アフリカナマズは350ボルトの電気を起こし,また,北大西洋のオオシビレエイは,60ボルト,50アンペアの瞬間波動を出します。南アメリカのデンキウナギが出す衝撃は886ボルトもあることが測定されています。「魚類で,発電器官を持つ種を含んでいることが知られているものは,11の科に及ぶ」と,一化学者は述べています。5

      15 動物はどんな様々な農牧作業を営んでいますか。

      15 農場経営。人間は長年にわたって地面を耕し,家畜を飼ってきました。しかし,それよりずっと前から,ハキリアリは野菜の栽培をしていました。彼らは,葉っぱと自分たちの糞でこしらえた堆肥の中でキノコを育てて食物にするのです。アリの中には,アリマキを家畜にし,乳を絞るようにして,アリマキの出す甘い蜜を吸い,アリマキをかくまうための小屋を建てるものさえいます。収穫アリは地下の穀物倉にいろいろな種子を蓄えます。(箴言 6:6-8)ある種の甲虫はアカシアの木の枝おろしをします。ナキウサギとマーモットは干し草を刈り,保存処置をして,それを貯蔵します。

      16 (イ)ウミガメ,アリゲーター,またある種の鳥は自分たちの卵をどのようにしてふ化させますか。(ロ)雄のツカツクリの仕事はどうして非常に難しいものと言えますか。どのようにしてそれを行なっていますか。

      16 ふ卵器。人間は卵をふ化させるためにふ卵器を造りますが,この点で人間は先んじてはいませんでした。ウミガメとある種の鳥は自分たちの卵を温かい砂の中に産んでふ化させます。温かい火山灰の中に卵を産みつけて,そこでふ化させる鳥もいます。ワニの一種であるアリゲーターは時おり,自分の卵を腐りかけた草木で覆い,それで熱を発生させます。しかし,この点でエキスパートは,“ユーカリ鳥”(ツカツクリ)の雄です。その雄鳥は大きな穴を掘り,その中に植物質のものを詰め,その上に砂をかけます。草木の葉が発酵してその塚を温め,雌鳥は6か月間,毎週一つずつその中に卵を産みます。その間ずっと,雄は自分のくちばしを塚の中に突き入れて,その温度を調べます。砂を加えたり取りのけたりして,雄は,氷点下の気候から非常に暑い時季まで,自分のふ卵器を摂氏33度に保つのです。

      17 タコとイカはジェット推進をどのように応用していますか。関連のない他のどんな動物もそれを行なっていますか。

      17 ジェット推進。今日飛行機で空を飛ぶ場合,その飛行機はたいていジェット推進装置で飛行することでしょう。同じようにジェット装置で動き,幾千年もそのようにしてきた動物がたくさんいます。タコもイカもこの点で優れています。彼らは特別の袋の中に水を吸いこみ,その後,強力な筋肉でそれを排出し,その勢いで自分を前に進ませます。同じようにジェット推進を利用しているものとしては,オウムガイ,ホタテガイ,クラゲ,トンボの幼虫,さらには大洋のある種のプランクトンなどがいます。

      18 照明装置を持つ多くの植物や動物の例としてどんなものがありますか。どんな点でそれらの照明は人間の造ったものより効率的ですか。

      18 照明。電球の発明はトーマス・エジソンの功績とされています。しかし,それは熱のかたちで多くのエネルギーを失っているため,それほど効率的なものではありません。光を点滅させるホタルはこの点でもっと良い仕事をしています。エネルギーのむだのない,熱の出ない光を発生させているからです。海綿,菌類,バクテリア,種々の虫の仲間にも,明るく発光するものがいろいろいます。かぶと虫の幼虫で,“鉄道虫<レールロード・ワーム>”と呼ばれるものは,赤い“ヘッドライト”と,左右11対の,白または薄緑の“窓”を付けた模型列車が進んでゆくかのようです。魚類の中にも光を発するものが多くいます。その二,三の例を挙げれば,マツカサウオ,チョウチンアンコウ,ハダカイワシ,ホウライエソなどがおり,またホタルイカも知られています。波の砕ける海原では,幾百万もの微生物が光り,きらめきます。

      19 人間よりずっと前に紙を造っていたのはだれですか。そのように紙を造る動物の一つは自分の住まいにどのように断熱処置を施していますか。

      19 紙。エジプト人は数千年前にそれを造りました。それでもエジプト人は,アシナガバチ,スズメバチなどのハチの仲間よりずっと遅れていました。これら羽を持つ働き人たちは,古くなった木をよくかんで灰色の紙を造り,それで自分たちの巣をこしらえます。スズメバチは大きな丸い巣を木にかけます。その外側の覆いはじょうぶな紙を何枚も重ねたものですが,その紙の間は幾層もの断熱空気層になっています。これは,その巣に対して,厚さ40㌢のレンガ壁と同じほど,暑さ寒さの断熱効果を持つのです。

      20 ある種のバクテリアはどのような方法で動き回りますか。一科学者はそれについてどのように述べましたか。

      20 回転式エンジン。回転式エンジンの製作という点では,顕微鏡的な生物であるバクテリアのほうが,人間より幾千年も先んじていました。バクテリアには毛のような延長線が幾本もあり,それが絡み合って,コルク抜きのような固いらせんになっています。バクテリアはこのコルク抜きを船のスクリューのように回転させて前進します。そのエンジンは,逆回転させることもできるのです。しかし,それがどのような仕組みになっているかは,十分には理解されていません。一報告書は,バクテリアが時速48㌔相当ものスピードを出せることを伝え,「自然は事実上,車を発明していた」と述べています。6 一研究者はこう結論しています。「生物学における最も空想的なアイデアの一つが真実になった。すなわち,自然は回転式のエンジンをまさに生み出していたのである。それには,軸継ぎ手,回転軸,軸受け,回転力伝動装置などがことごとく備わっているのである」。7

      21 全く関連のない数種のどんな動物が音波探知装置を用いていますか。

      21 音波探知器。コウモリやイルカの音波探知の能力は,人間がそれをまねて造ったものより勝っています。細い針金を張りめぐらした暗い部屋の中でも,コウモリはその中を飛び回って,決して針金に触れません。彼らの発する超音波の信号がそれらの物体に当たってはね返り,コウモリは音響定位<エコーロケーション>によってそれらを避けるのです。イルカやクジラも水の中でこれと同じことを行なっています。アブラヨタカも,自分たちが巣にしている暗い洞くつを出入りする際にエコーロケーションを応用し,自分たちの導きとなる鋭いカチカチという音を出します。

      22 潜水艇の応用している重量調節の原理が関連のない数種の動物にどのように作用していますか。

      22 潜水艇。人間が発明するよりも前から多くの潜水艇が存在していました。顕微鏡的な生物である放散虫は自分の原形質の中に油の小滴を持っており,それを用いて自分の重量を調節し,海の中で上昇したり下降したりしています。魚類は浮き袋の中の気体を出し入れして,自分の浮力を変えています。オウムガイは,自分の殻の中に幾つもの部屋もしくは浮きタンクを持っています。オウムガイはそれらのタンクの中の水と気体の比率を変えることによって自分のいる深さを調節しています。コウイカの甲(炭酸カルシウムでできた体内の殻)にはたくさんの空洞があります。浮力を調節するために,この軟体動物は自分のその骨格から水を出し,からになった空洞に気体を満たします。こうしてコウイカの甲にある空洞は潜水艇の海水タンクと同じ役をしています。

      23 熱知覚の器官を用いている動物としてどんなものがいますか。それらはどれほど正確ですか。

      23 温度計。17世紀以来,人間は温度計を開発してきましたが,自然界に見られる幾つかのものと比べると,それらはそれほど洗練されたものではありません。カの触角は摂氏500分の1度の温度変化を知覚できます。ガラガラヘビにはその頭の両側に穴があり,それによって摂氏1,000分の1度の温度変化を感知できます。ボアはごく微小な温度差に対して35㍉秒で反応します。ツカツクリ,とりわけヤブツカツクリのくちばしは,摂氏0.5度の温度の違いを識別できます。

      24 これらの例はどんな言葉を思い出させますか。

      24 こうして人間が動物から多くの事を学んでいる事実は,次の聖書の諭しの言葉を思い出させます。「獣に尋ねてみよ。そうすれば,彼らはあなたに教えるであろう。野の鳥に尋ねてみよ。彼らはあなたに告げるであろう。はう生き物はあなたに諭し,海の魚はあなたに知らせるであろう」― ヨブ 12:7,8,モファット訳。

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