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最初にそれを行なったのは神目ざめよ! 1981 | 12月22日
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最初にそれを行なったのは神
人間は模倣者
人は神の発明を認めようとはせず,特許を自分のものにする
温度計
人間は非常に感度の良い温度計や,熱を測定する他の計器を作りましたが,幾千年にもわたってある種のヘビが示してきた生来の能力と比べるとそれは粗雑なものです。例えば,ガラガラヘビは摂氏1,000分の1度の温度の変化をも感知する能力を持っています。オウジャは35㍉秒で,ある温度に反応しますが,人間の作った感度の良い器具は同じ温度を測定するのに1分かかります。そのようなヘビはこうした温度を感知する能力を用いて,体の温かい獲物を暗がりで探し出し,捕らえるのです。この温度感知器は,その熱の源の存在する方向をも教えてくれます。
低体温法
外科医はある種の手術を行なう際に今では体温を下げ,鼓動や呼吸を緩慢にさせるようにしていますが,これよりもずっと昔から,冬眠をする動物は低体温法を実践してきました。例えば,体の小さいアメリカ・スジ・ハタリスの鼓動や呼吸数は夏の活動期間中毎分数百回に上ります。ところが,冬眠期間中には,心臓の動きが遅くなって毎分一,二回になり5分に1度ゆっくりと息をします。体温は冬の寒い外気と数度しか違わないところまで低下します。それでも,血液は体内をくまなく循環し,血圧は正常に保たれ,酸素は供給され,筋肉の調子は維持されています。
電気
動物電気に関するルイジ・ガルバーニの論文に刺激されて,イタリアの物理化学者ボルタは定常電流を得る最初の人工的な電池を作りました。しかし,幾千年も前に,500種ほどの電気魚にはすでに電池が備わっていました。アフリカのナマズは350ボルトの電気を起こし,北大西洋の巨大なシビレエイは50アンペアのパルスを60ボルトで出し,南米の電気ウナギのショックは886ボルトにまで達することが測定されています。この電流は幾つも接続して並べられた電函 ― 実際にはボルタ電池 ― によって起こされます。電函各々は1ボルトの何分の1かの電気しか起こさない電気化学的な電池です。しかし,神の創造物の体内でそれが幾千幾万,時には幾百万も様々な形で直列や並列に連結されると,結果として自然の電池が得られるのです。
化学戦
神経ガス弾には二つの容器があって,各々に比較的毒性の弱い化学物質が入っています。そして,それが発射されると化学物質が混合し,爆発時に致死的な神経ガスが放出されるのです。これが発明されるよりもずっと前に,しかも専ら防御だけを目的として,ホソクビゴミムシは化学的な駆虫剤を用いてきました。腺が2種類の異なった化学物質を生産し,それを筋肉のバルブで閉じられた別個の仕切りに蓄えます。攻撃を受けると,バルブが開いて2種類の化学物質が3番目の厚い壁で覆われた仕切りに流れ込みます。そこでは,酵素の働きで爆発反応が起こり,ポンという音と共に有毒な霧を放ちます。ゴミムシはどんな方向へでもそれを放つことができます。ホソクビゴミムシは繰り返しそれを放つことができ,1分間に何十回もその霧を放ち,こうしてアリ,クモ,カマキリ,鳥やヘビが息を詰まらせて退散するのです。
コンピューター
コンピューターはけた外れの演算をやってのけますが,それでも人間の脳とは比べものになりません。1,300㌘の神秘といわれる人間の脳は,重さこそ体全体の2%を占めるに過ぎませんが,血液の20%を用い,供給される酸素の25%を消費します。そのノイロンの数は推定100億から1,000億に上り,ノイロンの接合部(シナプス)は100兆から500兆に上ります。毎秒1億ビットもの情報が流れ込み,脳は自らを10分の1秒ごとに調べますが,それが20㍗の電力で作動しているのです。脳は情報を受け取り,処理し,評価し,決定を下し,目標を定め,行動を起こし,音楽や芸術を生み出します。人間の脳以外には,言語のためのプログラムが組み込まれたシステムは存在しません。また,人間の脳以外には,より高位の力を信じ,それを崇拝する生来の必要も存在しません。
一人の科学者の述べたように,「コンピューターを“電子頭脳”と呼ぶ人は脳というものを一度も見たことがない」のです。リチャード・レスタク博士が,人間の脳は「既知の宇宙の中に存在するいかなるものより,はるかに複雑である」と語っているのも少しも不思議ではありません。また,人類学者のヘンリー・フェアフィールド・オズボーンはかつてこう言明しました。「私の考えでは,人間の脳は全宇宙で最もすばらしく,神秘的な物体である」。
神の方が先に行なわれた事柄は数限りない
コウモリやイルカは音波探知器を用い,タコはジェット推進を用い,カは皮下注射用の注射針を用い,スズメバチは紙を作り,ビーバーはダムを築き,アリは橋を架け,ハチやシロアリは空調設備を利用します。魚や蠕虫や昆虫の中には,冷光を発するものもいます。鳥の中には,機織りをし,結び目を作り,ふ卵器を作り,石細工をし,アパートを建て,海水を脱塩化し,羅針盤と体内時計を持っていて空の旅をするものもいます。アクアラングを使う甲虫もいます。クモの中には潜水鐘を用い,ドアを作り,気球に乗って旅をするものもいます。二重焦点の目を持つ魚や甲虫もいます。カミツキガメやタイコウチはシュノーケルを用います。動物の目は人間の作った太陽電池のように光を電気に転換します。アリは園芸や牧畜を行ない,ある種の甲虫は木を剪定します。人間の発明家たちが模倣している創造物の様々な仕組みを挙げていけばきりがありません。人間の業績はその非凡な才能の結果であるといわれますが,神の業績は盲目的な偶然の結果として片付けられてしまいます。少なくとも,進化論者はそう言っています。全く不思議なことです。
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意図的な造りには設計者が必要目ざめよ! 1981 | 12月22日
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意図的な造りには設計者が必要
答えが一貫しない進化論者
「家はすべてだれかによって造られるのであり,すべてのものを造られたのは神です」― ヘブライ 3:4
無生物である家が自力で建ったなどと主張する進化論者はいないでしょう。ところがその進化論者が,無生物である宇宙は自力で存在するようになったと独断的に語ります。宇宙には,各々無数の星から成る無数の星雲があり,そのすべてが畏怖の念を起こさせる壮大さをもって寸分の狂いもないタイミングで動いているのです。
それだけではありません。進化論者の説によれば,地球上では無数の生きた有機体すべてがその祖先から自らを造り出し,それをずっとさかのぼってゆけば万物の最初の根源となる親にたどり着き,それは無生物である化学物質から自発的に自らを造り上げたことになります。これらすべての生物にみられる驚くべき複雑さや目的のある込み入った造りなども,進化論者のこのような方向を妨げるものとはなりません。
わたしたちは設計の専門家の精巧な発明に感嘆の声を上げますが,その中で最も偉大な業績でさえ,最も単純な生物と比べると取るに足りないものです。その20世紀の科学技術すべてをもってしても,人間は小さな単細胞のアメーバの製作にさえ着手することができないのです。ところが,人々は盲目的な偶然 ― 自然選択の疑わしい助けを得た無作為の突然変異 ― に,地球上の生物すべてを造り上げる力をたやすく付与してしまうのです。
ここに,見逃すことのできない矛盾がみられます。進化論者はむとんちゃくにも,偶然の力によって複雑な生物すべてが設計されたとしながら,同時に,極めて単純な物体が存在するには知的な設計者が必要であったと主張するのです。
例えば,ある科学者は古代の塚を発掘し,中央部に輪の形をした溝のある長円形の石を発見し,それは原始人が棒に結び付けてハンマーか武器として用いたものだ,と確信を持って発表します。理知ある生物が一つの目的を持ってそれを設計したと言うのです。ところが,鳥の羽毛はそうではないと言うのです。風切り羽にはその羽軸から幾千本もの羽枝が出ており,その羽枝からは幾十万本もの小羽枝が出ています。飛行中このすべての部分を一つにまとめておくための小鉤,つまり小さな突起が幾百万もあります。羽枝が離れ離れになると,鳥はそれを口ばしでチャックを閉めるようにつなぎ合わせることができるのです。人間がチャックなるものを“発明”するずっと前からチャックを用いていたのです。
理知ある設計者の生み出したものではありませんか。進化論者にとってはそうではありません。進化論者はこう語ります。「この驚異的な構造はどのように進化したのだろうか。大して想像力を働かせなくとも,羽毛は,基本的には爬虫類のうろこと変わらないうろこが変化したものとみなせる。それほど密着してはいなかった長めのうろこの外側の先端がすり切れ,広がってゆき,今日のようなきわめて複雑な構造へと進化していったのである」― ライフ自然双書,「鳥」,34ページ。
進化論者が独断的であることを示す別の例があります。進化論者は先のとがった平らな石を見付けると,それは理知のある“石器時代”の人がナイフかスクレーパーとして使うよう設計したものだと確信します。ところが,“ミモザ・カミキリムシ”という小さな甲虫には設計者は必要ない,と言うのです。この甲虫の雌はミモザの木に登り,大枝の端の所まではい上がって行き,樹皮に穴をあけて,そこに卵を産みます。それから,大枝の中間の所まではって戻り,そして枝の周囲を形成層に達するまでかみ切ります。すると,枝の先の方は枯れて,下に落ちます。その甲虫の卵は散乱して,ふ化し,同じ循環が再び始まります。ミモザの木の方も恩恵を受けます。木が剪定されるので,剪定されなかった場合の2倍も長く,つまり40ないし50年生き続けます。事実,ミモザの木はミモザ・カミキリムシを引き寄せるにおいを放ちます。そして,この小さな甲虫が繁殖できる木はほかにないのです。先のとがった平らな石には設計者が必要とされ,ミモザ・カミキリムシは偶然に生じたのです。いや,そのように言われているのです。
別の比較をしてみましょう。矢じりのような形をした火打ち石のかけらを見ると,進化論者はそれは矢あるいはやりの先に付けて使うために人が設計したものだと確信します。そのような目的を持って設計されたものは偶然によって生じることはない,と進化論者は結論します。しかし,クモは別問題だ,と言うのです。真正クモ目のクモについて考えてみましょう。クモには各々約100個の紡績管を持つ紡績器が六つあり,紡績管は各々1本の管でクモの体内の別個の腺に結び付けられています。それは別個の糸を造ることもできれば,それらを一つにして絹糸状の幅のある帯をも造れます。クモは7種類の糸を分泌します。7種類すべてを分泌する種は存在しませんが,どの種類も少なくとも3種類の糸を分泌し,真正クモ目は5種類の糸を分泌します。600の管すべてが糸を造るわけではありません。中にはある網に粘り気を与えるにかわ状の物質を出す管もあります。しかし,真正クモ目は自分の足に油を付けているので,決して網にひっかかることはありません。これらの紡績突起の起源は何ですか。足が紡績突起になったのだ,と進化論者は言います。
考えてみてください。クモには糸を造る化学工場と糸を紡ぐ体の機構,網を張る本能的な知識が備わっているのです。このいずれを取っても,他の二つのものがなければ何の役にも立ちません。そのすべては偶然に,しかも同時に,1匹のクモの体内で進化しなければなりません。進化論者はそのようなことが起きたと信じています。あなたはどうですか。火打ち石の鋭いかけらとクモ,そのどちらが容易に偶然に生じ得たでしょうか。
宇宙時代に目を向け,コーネル大学のカール・サガン博士の言葉に耳を傾けてみましょう。「理知ある生物から発していることが明白に認められる星間の電波通信を作ることは容易である」と同博士は語ります。「はるかに有望な方法は絵を送ることである」と信じているのです。送ることを提案された一つの絵は,男・女・子供・太陽系・数個の原子を表わすもので,一続きの点と線の記号を送ることにより,すべてが成し遂げられます。点と線の記号のそれぞれは1“ビット”の情報と呼ばれ,全部で1,271ビットが必要でした。
この点について筋道をたてて考えてみてください。一定の順序に並んだ1,271ビットの情報が秩序と設計を示し,「理知ある生物から」出ていることを「明白に」証明するものであるなら,すべての生きた細胞の染色体の中に組み込まれている約百億ビットの情報についてはどうですか。進化論者は,1,271ビットの情報は『理知ある設計者の存在を明白に証明する』と述べながら,百億ビットの情報には設計者が必要なく,単に偶然に生じたのだと言って退けてしまうのです。
そのような論議は筋が通ってはおらず,独断的で,偏見に満ちているとさえ思えるのではありませんか。単純な造りのものに設計者が必要なのであれば,極めて複雑なものにはそれよりも偉大な設計者が必要とされるもっと強力な理由があるのではないでしょうか。英国の理論家エドワード・ミルンは,宇宙の起源を考慮した際,賢明にも,「神の存在なくしては我々の描写は完成しない」と結論しています。
[15ページの図版]
矢じりには設計者が必要だが,DNAには必要ではない?
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本能 ― 生まれる前に組み込まれた知恵目ざめよ! 1981 | 12月22日
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本能 ― 生まれる前に組み込まれた知恵
小さな脳の並みはずれた離れ業
「それらは本能的に賢い」― 箴言 30:24,新
信じられないような旅
ズグロアメリカムシクイという小鳥が進化の体制の“挑戦を受けて立つ”とはとても思えませんが,実際に受けて立っているのです。この北米の鳴き鳥の体重はわずか20㌘に過ぎず,体長は13㌢しかありません。ところが,並みはずれた渡りの離れ業をやってのけます。
秋が近付くと,この鳥はアラスカにある夏の間の住みかから北米大陸を南東へ向かって飛び,大西洋岸にまで達します。ムシクイの旅はまだ始まったばかりなので,この間の食欲はおう盛です。
米国のニューイングランド地方の海岸沿いで,ズグロアメリカムシクイは天候を見計らって待っています。どういう方法でかは分かりませんが,この鳥はどんな天候が望ましいかをはっきりと知っています。それは,南東へ向かって海岸線を越え,大西洋に張り出す勢力の強い寒冷前線です。
この寒冷前線の到来と共に,小さなムシクイは旅立ち,南東の海の方へ追い風を受けて飛んで行きます。寒冷前線に乗るので,途中やっかいな熱帯性の嵐にも遭遇せず,賢明な天候の選択です。
南東に飛ぶこの小鳥は次にアフリカに向かいます。距離的にもとてもたどり着けませんし,その目的地でもありません。しかし,ズグロアメリカムシクイは方向を変えません。ノンストップでバミューダ島を越え,アンティグア島に近付くと高度6,300㍍まで上昇します。その高度では温度は低く,酸素は希薄になります。どうして小さなムシクイはこのような高度まで上昇するのでしょうか。その高度に達すると,この鳥の本来の目的地である南米まで西へ向かって運んでくれる卓越風が吹いているからです。3昼夜余り3,800㌔以上の距離をノンストップで飛んで,ムシクイはお目当ての別の大陸に到着するのです。
科学者たちはこの小鳥が毎年やってのける離れ業に目をみはります。どんな天候状況がおあつらえむきかどうして知るのでしょうか。南米まで運んでくれる風に乗るためにいつ行動を変えたらよいかを一体どのようにして知るのでしょうか。海洋上のほど良い場所でその風と交差する,寸分たがわず正確な進行方向をどのようにして選ぶのでしょうか。科学者たちには説明できません。当然,進化説でも説明できません。
ところが,このアメリカムシクイのまれに見るようなルートの背後にはそれなりの理由があるのです。南米へのその海上ルートは,“島づたい”の旅よりもずっと短く,捕食動物に食べられる心配も少なくてすみます。その特別に設計された新陳代謝作用のお陰で,ズグロアメリカムシクイは1,600㍍を2分で走る競馬ウマのペースで,80時間ノンストップで飛行することができます。ある科学者は,「体に蓄積された脂肪の代わりにズグロアメリカムシクイがガソリンを燃焼させているとしたなら,リッター当たり30万㌔の燃費を誇れるであろう」と述べています。
シロアリ ― 空調技師
シロアリに悩まされているなら,その体のもろさに同情することなどはないでしょう。その体は柔らかくてもろく,温度と湿度が注意深く調節されなければ生きてゆけません。こうした昆虫は熱帯の厳しい気候の中ではとても生きてゆけないと思えます。ところが,熱帯でも大いに繁殖しているのです。どのようにしてですか。
その答えはシロアリの建築及び工学上の技術によります。熱帯のシロアリの巣は土で堅く固めた塚であり,おのでたたくと火花が飛び散るほどです。オーストラリアのシロアリの中には必ず南北を指す長くて細い,くさび形の塚を築くものもいます。これはどうやら暑い真昼の太陽をしのぐ工夫のようです。遠くから見ると人間の作った小屋のように見える塚を築く種もあります。
シロアリの塚の外側が熱くて触れられないほどでも,その内部は摂氏30度ほどで快適です。どのようにして温度が調節されるのでしょうか。厚い壁も一役買っていますが,それだけではありません。ある種のシロアリは巣の下の地面に40㍍のトンネルを幾つも掘って水を得,乾燥した砂漠の熱気の中でも,その水を利用して,蒸発作用により巣を涼しく保ち,ほど良い湿度を保っているのです。“地下室”や“屋根裏”の付いた巣を築くシロアリもいます。換気のために,塚の外側には温度を調節し巣の中に新鮮な空気が十分入るようにするための中空の管が通っています。この管の中でシロアリが絶えず働いているのが観察されています。この管を開けたり閉じたりして,その空調は完璧と言えるまでに調節されるのです。
建築と工学のこうした技術をシロアリに誰が教えたのでしょうか。盲目的な進化ですか。それとも識別力のある腕の良い設計者でしょうか。
ダンスをするハチの投票
ミツバチの本能的な離れ業のことはご存じでしょうが,この小さな生き物は短い一生の間になすべき数多くの仕事を持っているのが普通です。まずは女王バチや幼虫の保母虫として一生を始め,徐々にハチの巣の作り手や巣の番人や営繕係になってゆきます。しかし,みつやその他の必要物を求めて食糧を探しに行く責任の重い割当てを受けるのは比較的年のいったハチです。そして,最も驚嘆に値するのはこのハチの本能なのです。
食糧を探すハチがみつのある所を新たに見いだすと,巣へ戻ってその良い知らせを伝えます。これはダンスで伝えられます。ダンスの速さ,その形(円を描くか,8の字型を描くか),そしてダンスをしているハチがどれほど腹部を振るかで,他のハチはみつのある所までの距離を知ります。太陽との関連で見たみつの場所の方角もダンスで示されます。「昆虫」という本は,「ハチの言語は信じ難いように思えるが,無数の実験によって確証されている」ことを認めています。
ハチの巣が込み合ってくると,そのうちの幾匹かは古い女王に連れられて新居に移ります。では,その群れはどのようにして行くべき所を知るのでしょうか。この新しい群れから斥候が四方八方へ飛んで行きます。しかし,今回は花を探すのではありません。新居になるような木のうろや壁の裂け目を探すのです。帰って来ると,斥候はその新居の位置を示すため,花の位置を示すダンスとほとんど同じようなダンスをします。良い場所を見いだした斥候は非常に熱心にダンスをし,他のハチの多くがその精力的なダンスを見て刺激を受け,そこを見に行こうという気になるまで何時間も踊っていることがあります。たいして望ましい場所を見つけたのではない斥候はそれほど長くあるいはそれほど熱心に踊らないので,見に行こうという気になるハチは余り多くありません。
やがて,そのハチの群れは候補地を数か所に定め,続いて斥候に出たハチの熱心なダンスに引かれて最善の場所への支持が増えてゆき,最後に一つだけが残ります。事実上,この群れは幾つかの候補地を見て,自分たちの最も好む場所に票を投じているのです。このすべての過程を踏むのに五日間かかることもありますが,それが済むと群れは全員一致で新しい住みかへと飛んで行きます。
偶発的な突然変異と無作為の出来事がこのようなすばらしい意思伝達の離れ業と社会的な調和を生むでしょうか。偶然の出来事と混乱で調和が生まれるような社会がどこかにあるでしょうか。
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