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あなたは犯罪が一掃されることを望みますかものみの塔 1977 | 4月15日
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あなたは犯罪が一掃されることを望みますか
常識的な人であればだれでも,この質問に対して,はい,と答えるでしょう。そうした人々は,本当に犯罪がなくなることを望んでいます。
米国のある大都市に住む老夫婦もそうでした。隠居生活を送っていた70歳台後半のこの夫婦は,物質的には何不自由なく生活していました。ところが,この夫婦は自殺を遂げたのです。
なぜでしょうか。後に残された書き置きには,「もうこれ以上,恐怖におびえながら生きて行きたくない」と記されていました。この夫婦は数週間前に強盗に襲われていました。二人はその前にも,犯罪の犠牲になったことがありました。引っ越しをするには年を取りすぎていると考え,しかも恐怖におびえながら生きて行きたくないと思ったこの老夫婦は,自らの命を絶ったのです。
確かにこれは,犯罪への恐怖に対する極端な反応の仕方です。しかしこの事件は,近年起きてきた出来事を如実に物語っています。犯罪や暴力は,世界中のほとんどあらゆる土地で著しく増大しています。例えば米国では,主な犯罪だけでも,毎年1,100万件も発生しています。さらに,幾百万件もの犯罪は届け出がされないままになっています。
どんな対策がありますか。より良い立法措置が役に立つと考える人もいます。しかし,どの国でもすでに立派な法律が制定されており,その上毎年新しい法律も制定されています。それでもなお,犯罪や暴力は増える一方なのです。
警察官や判事や刑務所の数を増やせばよいと考える人もいます。しかし,法の執行機関の規模が大きくなる一方,犯罪も増大しています。確かに犯罪は,こうした機関の内部にまで浸透しています。それらの機関の内部にいる腐敗した役人たちは,正直な法執行官の仕事をしばしば妨害しようとします。
犯罪を探知する新しい方法がその解決策になりますか。残念ながら,新しい方法が導入されると,犯罪者の頭脳は,その各々を出し抜くような方法を考え出します。
では,貧困をなくすれば犯罪は一掃されるでしょうか。貧困が犯罪の主な原因であるのなら,最も裕福な国々で,犯罪の発生率が最も高くなっているのはなぜですか。大抵の場合,犯罪発生件数は比較的貧しい都市部よりも,比較的裕福な人々の住む郊外で急速に増加しています。貧しい人々だけでなく,社会のあらゆる階層の人々が犯罪を犯すようになっています。
次の点を考慮してみてください。人間の諸機関に犯罪を一掃する能力があるとすれば,今までに犯罪が一掃されていてもよいのではありませんか。解決策を人間に求めるのは現実的なことですか。
神の霊感によるみ言葉,聖書は,賢明にもこう諭しています。「もろもろの君に信頼してはならない。人の子に信頼してはならない。彼らには助けがない」。(詩 146:3,口)では,だれに信頼したらよいのですか。その同じ神のみ言葉は,「心を尽くしてエホバにより頼みなさい。自分の理解に頼ってはならない」と答えています。―箴 3:5,新。
しかし,神により頼むことと,犯罪を一掃することとの間に一体どんな関係があるというのでしょうか。一つの点として,神のみ言葉は,今の時代に犯罪や暴力がこのように激増する理由をはっきりと理解するのに役立ちます。聖書は,「しかし,このことを知っておきなさい。すなわち終わりの日には,対処しにくい危機の時代が来ます」と述べています。そうです,聖書預言の成就に見られる証拠すべては,私たちが一時代の終わりに住んでいることを示しています。私たちは,ますます大勢の人が法を破る者,自制心を欠く者,粗暴な者,片意地な者,金を愛する者,不敬虔な者となる時と予告されていた時代に住んでいます。その時には,子供たちが親に不従順になり,預言の言葉が述べるとおり,「邪悪な者とかたりを働く者とはいよいよ悪に進み」ます。―テモテ第二 3:1-13。
この時代に起きている様々な出来事は,この世が,予告されていた,道徳の崩壊の段階にあることの明白な証拠です。それは,世の終わりを間近に控えた段階です。世界情勢は,この現在の事物の体制の終わりが近づいていることを雄弁に物語っています。
しかし聖書は,今日見られる犯罪の増大の原因が,人間だけにあるのではないことをも示しています。もし原因が人間だけにあるのであれば,人間は犯罪を抑制する点でもっと成功してもよいはずです。ところが神のみ言葉は,超人間的な力が働いていることを示しています。それはだれですか。サタン悪魔とその配下の悪霊たちです。
悪魔や悪霊ですって? 確かに,こうした力が目に見えないため,多くの人たちはその存在を信じようとしません。しかしそのような人々も,風,電気,引力,熱,寒さ,愛,そして憎しみなど,目に見えない力があることを信じています。私たちは,そうした力の引き起こす結果を見ることができるので,その存在が分かるのです。
同様に私たちは,邪悪な霊の勢力の活動が引き起こす結果を見て,その存在を識別できるのです。あらゆる所に見られる,犯罪や暴力の著しい増加は,人間家族に対するその悪影響の直接の結果であると言えます。その影響が非常に広範に及ぶため,聖書はサタンを,「この事物の体制の神」と呼んでいるのです。―コリント第二 4:4。
また,そのような目に見えない勢力の存在について私たちに教える点で,最もふさわしい立場にいるのはだれですか。サタンの活動についてより多くの事柄を知っているのは人間ですか,それとも宇宙を造った全能の創造者ですか。
しかし,悪霊の影響が今の時代にこれほど増大したのはなぜですか。それは,神が悪を許しておかれる時が終わろうとしているからです。サタンと悪霊たちは,自分たちが自らの「終わりの日」に直面していることを知っています。それゆえ,聖書は,今の世代についてこう述べているのです。「地と海には災いが来る。悪魔が,自分の時の短いことを知り,大きな怒りをいだいてあなたがたのところに下ったからである」― 啓示 12:12。
しかし聖書は,犯罪がまん延する理由をわたしたちに教えるだけではありません。聖書は,犯罪がどのようにして一掃されるかをも知らせているのです。神が悪を許しておかれる期間は間もなく終わり,神は全地から犯罪を一掃することによって,ご自分の力と義に対するご自分の愛を実証されます。「悪しき者は地から断ち滅ぼされ,不信実な者は地から抜き捨てられる」,と書かれています。また,犯罪を助長している主要な者であるサタン悪魔も除き去られることが,次のように予告されています。「平和を与えてくださる神は,まもなくサタンをあなたがたの足の下に砕かれるでしょう」。―箴 2:22,口。ローマ 16:20。
犯罪を引き起こしていた者すべてが取り除かれると,全き平和と安全のゆきわたる新秩序が招来されます。そして,それが実現するとき,生活はどのようなものになりますか。神の約束は,「彼らは皆そのぶどうの木の下に座し,そのいちじくの木の下にいる。彼らを恐れさせる者はない」と述べています。―ミカ 4:4,口。
では,あなたは犯罪が一掃されることを望みますか。それは,神の方法で,しかも間もなく実現されます。あなたはその益にあずかりたいと思われますか。それでは,犯罪のない,来たるべき新秩序での命を得る人々に神が何を求めておられるかを調べてみなければなりません。
[228ページの拡大文]
「わたしの民は必ず平和な住まいに,信頼できるすみかに,かき乱されない憩い場に住む」― イザヤ 32:18,新。
[227ページの図版]
1976年7月16日付 トロント・スター紙
1976年7月28日付 ジャパン・タイムズ紙
1976年8月20日付 オレゴニアン紙
1976年8月8日付 ニューヨーク・タイムズ紙
1976年8月25日付 ニューヨーク・ポスト紙
1976年6月23日付 デーリー・メール紙
これらは英文刊行物の記事を訳したものです
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『歓ぶなかれ,ペリシテよ』ものみの塔 1977 | 4月15日
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『歓ぶなかれ,ペリシテよ』
古代の書物の中でも,聖書は預言の書として際立っています。幾百もの出来事が予告され,その成就は史実によって確証されます。
こうした預言の一つは,ユダの王アハズの死んだ年に,ペリシテに対して語られたものです。預言者イザヤは次のように語るよう,神からの霊感を受けました。「歓ぶな,ペリシテよ,あなたのだれであろうとも。あなたを打つ杖が砕かれたからというだけで。蛇の根から毒へびが出,その実は飛びかける火のようなへびとなる」― イザヤ 14:28,29,新。
アハズ王の治世中,ユダの勢力はかなり衰えていました。わずか一日のうちに,敵対するイスラエルの十部族は,ユダ王国で12万人の戦士を殺しました。南東からはエドム人が侵入し,捕虜を連れ去って行きました。ペリシテ人は,ユダの西部にある諸都市や町々を襲いました。(歴代下 28:5,6,17,18)ついにアハズは,イスラエルとシリアの脅威から自らを守るために,アッシリアに助けを求めました。やがてそれは救出どころか,アッシリアの重いくびきの下での『悩み』をもたらしました。(歴代下 28:16,20,口)ペリシテ人に関する限り,ユダ王国は彼らにとってこれまでのような危険な存在ではなくなりました。彼らを打つ「杖」は砕かれたのです。
アハズの祖父ウジヤが王として支配していた時代には,事態は全く異なっていました。聖書はこう伝えています。「彼は出てペリシテ人と戦い,ガテの城壁,ヤブネの城壁およびアシドドの城壁をくずし,アシドドの地とペリシテびとのなかに町を建てた。神は彼を助けてペリシテびとと,グルバアルに往むアラビアびとおよびメウニびとを攻め撃たせられた。アンモンびとはウジヤにみつぎを納めた。ウジヤは非常に強くなったので,その名はエジプトの入口までも広まった」― 歴代下 26:6-8,口。
一方アハズは,神の命令をはなはだしく無視したため,それとは正反対の経験をしました。しかし,アハズが死に,新しい未経験な王が王位に就いたとはいえ,ペリシテ人はユダ王国をさらに侵略できると考えて歓ぶべきではありませんでした。変化が起ころうとしていたのです。ペリシテ人を幾度も打ち破ったウジヤ王は,あたかも蛇のようでした。しかしペリシテ人は,ウジヤの「根」から起こる,より致命的な敵と相対さなければなりません。この者は,「毒へび」,または「飛びかける火のようなへび」になります。「飛びかける火のようなへび」は素早く突進し,電光石火のように襲い掛かり,犠牲者を毒牙に掛けることによって燃えるような効果を生じさせます。イザヤの預言の成就において,この「飛びかける火のようなへび」は,ウジヤの曾孫ヒゼキヤであることが明らかになります。聖書はこう述べています。「彼はペリシテびとを撃ち敗って,ガザとその領域にまで達し(た)」― 列王下 18:8,口。
アッシリア王セナケリブの年代記は,ペリシテ人がヒゼキヤに屈服したことを明らかにしています。ペリシテ人の町エクロンの王パディに起きた事柄に関して,それらの年代記は,『エクロンの役人,貴族,そして人民は,自分たちの王パディに足かせをはめ』,「ユダヤ人ヒゼキヤの手に渡し」,ヒゼキヤは「彼を投獄した」と述べています。
ヒゼキヤの治世中に起きたそのような出来事からすれば,ペリシテ人に与えられた,歓んではならないという預言的な命令は,非常に適切であったと言えるでしょう。ヒゼキヤの手に掛かったために彼らが経験した事柄は,まさに「飛びかける火のようなへび」が犠牲者に与える傷のようでした。イザヤ書 14章29節の預言は間違いなく成就しました。
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