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女性の更年期目ざめよ! 1983 | 7月8日
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女性の更年期
この記事は特に閉経期を迎えた,あるいは閉経期にはどんなことが起こるのだろうと考えている女性に関係のある記事です。しかしその人たちの夫や子供,親族や友人にとっても有益な内容です。
半ば開かれたカーテンの間から柔らかい太陽の光が差し込んでいました。外では小鳥が楽しそうにさえずっています。よく晴れたとてもさわやかな朝でした。
それなのに,まだベッドに寝ていた婦人には,どういうわけかその朝は様子が違うように思えました。彼女は寝たまま悲しそうな目つきで天井を見つめていました。わけもなく泣きたい気持ちでした。
夫が口笛を吹きながら廊下をこちらへやって来る足音が聞こえましたが,それさえも神経にさわるように思えました。
「起きる時間だよ」と夫は明るい声で言います。妻が返事をしないでいると,夫はベッドのそばに来て,笑いながら毛布を少し引っぱります。「さあ,起きた起きた」。
すると妻は急に起き上がってベッドの上に座り,怒ったように叫びます。「ほっといてよ! ほっといてちょうだいったら!」
何事が起きたのかと夫がびっくりしているうちに,妻はまた身を投げ出し,枕に顔をうずめて,身も世もないようにむせび泣きます。
閉経期
その日は,閉経期にあったその婦人にとって調子の悪い日だったのです。一般にはこれほど激しいものではありませんが,実際にひどくなると家族全員に影響が及びます。夫はどうしていいか分からず,子供たちは動揺するかもしれません。しかし,つらい思いをするのは当の母親です。
何が起きているかをよく理解していれば,関係者すべてに役立ちます。閉経期については有ること無いことが色々と言い伝えられています。閉経期を通過したばかりのある婦人は,「人々の言うことを聞いて心配する場合のほうが多く,閉経期自体はそれほど心配したものではありません」と言いました。正しい情報を得ていれば,だれも不必要な心配に悩まされなくてすみます。
英語では閉経期は多くの場合“change of life(人生の変わり目)”と呼ばれます。しかしこの言葉を嫌う人もいます。なぜなら,この言葉はこの時期に人生がどうかして完全に変わってしまうことを暗示しているからです。そうなる必要は少しもありません。なるほど,もう子供が産めなくなったということで喪失感を味わう女性もいます。しかし,仕事や結婚生活,娯楽その他生活の多くの面は,閉経後もほとんど変化がなく,かえって良くなる面さえあります。
それにこの時期をわざわざ“人生の変わり目”と呼ぶと,これだけが唯一の変化のような印象を与えます。それは事実ではありません。女性の生涯には劇的な変化がたくさんあります。思春期の始まり,結婚,出産などがそれです。閉経期は一連の変化の一つなのです。ですからドイツ語にはディー・ベクセルヤーレという,もっと親切な言葉があります。これは“更年期”を意味します。女性の更年期についてわたしたちだれもが知っているべき事柄としてはどんなことがあるでしょうか。
● 更年期とは?
更年期とは女性の月経周期が閉止に近づき,それに伴って子供を産む能力がなくなる時期を言います。このことは“メノポーズ(閉経期)”という語によく表われています。メノポーズは,“月”および“閉止”という意味の二つのギリシャ語に由来する言葉です。
● 更年期とはどんなものではないか
更年期は老化の始まる時期ではありません。老化は徐々に進むものです。筋肉の正常な状態は25歳にして早くも衰え始めます。30になると筋肉や骨組織を失い始め,白髪が増え始めます。この過程は閉経期を通して続き,閉経期によって速度が速められることはあっても,その原因は閉経期にあるわけではありません。閉経期にある40歳や50歳の女性にとって老年はまだ何年も先のことです。
さらに閉経は,その症状が病気のように感じられることがあっても,病気ではありません。
● 原因は何か
体が新しい状況に適応しつつあるのです。思春期に入ると少女の体はホルモンを作り始めます。そしてそのホルモンが卵巣を刺激し,定期的に排卵が起こります。
更年期にはその逆のことが生じます。体はホルモンを作るのをやめ,成熟した卵の供給は次第に減少してゆきます。これに関係しているホルモンの一つはエストロゲンです。もしエストロゲンの供給が徐々に停止するなら閉経期は楽なものになるでしょう。もし急速に減少するなら,閉経期は前者の場合よりも困難になるのが普通です。
● いつ始まるか
ほとんどの女性の場合,45歳から55歳までの間に始まるでしょう。40歳にならないうちに更年期を迎える人も幾らかいます。平均よりも遅く,例えば60代になって更年期を迎える人の数はさらに少なくなります。手術を受けたり,一般に健康が優れない人の場合には閉経期が早く来ることがあります。
閉経が近づいたしるしとしては,生理が不規則になるのが普通です。人によっては,月経が完全に閉止する時まで生理はますます不規則になってゆくこともあります。かと思うと,月経が突然閉止し,そのあと何もないという恵まれた人たちもたまにあります。あるいは,回数が普通よりも多くなる人,月経が完全に閉止するまで出血量が交互に,少なくなったり多くなったりする人もいます。
● 更年期は女性にどんな影響を及ぼすか
婦人科医のヨハンナ・パールムッター博士は,「ほとんどの女性は症状があるとしても比較的に軽い状態で閉経期を通過するということを知っていると安心できる」と述べています。(「閉経期の本」)これは明るいニュースですが,もし自分が『比較的に軽い症状』ではすまない人の一人であるとしたらどうでしょうか。「より重い更年期障害を経験する人でもほとんどの場合医師の助けを得ることができる」とパールムッター博士は言います。ではその「より重い更年期障害」にはどんなものがあるのでしょうか。
よくあるのは熱感です。熱感とは上半身が急にほてってくる状態と説明されています。顔が紅潮し,時にはその後で汗がたくさん出ることもあります。熱感は度々起こることがあり,日に何十回も生じることがあります。ほんの一,二秒の時もあれば,何分か続く時もあります。夜などは汗びっしょりになって目を覚ますことがあります。
熱感の生じる物理的な原因については確かなことは知られていません。それは精神的な痛手となるものでしょうか。ほとんどの場合そうではありません。女性たちはこれを説明するのに「不愉快」,「やっかい」あるいは「いらいらさせられる」といった言葉を使います。
だれもが経験するわけではありませんが,他の症状として不眠とか突然の疲労感などがあります。しびれ,めまい,吐き気,心悸高進,腰痛,胸部の痛み,緊張による頭痛,膣の乾燥,いらいらなども挙げられています。このように症状を列挙されると恐ろしくなるでしょうか。でもご安心ください。ほとんどの女性は,更年期障害を仮に経験するとしてもこのうちのほんのわずかしか経験しないのです。それに,症状が重い場合でもそれを和らげる方法はあるものです。
● 抑うつ状態はどうか
更年期の間に軽い抑うつ状態になる女性も確かにいます。でも大抵,自分や身近な家族以外にはそれと気が付かないほど軽いものです。これにかかる人は,わけもなく泣くようになるかもしれません。あるいは,きのうまで深く愛していた夫や子供たちが急にうるさい,いらいらさせられる存在に思えてくるかもしれません。また,普段きちんと事を行なう女性が,一時的に物忘れがひどくなったり,混乱したりすることもあるでしょう。あるいは突然にわけの分からない恐怖を感じたりするかもしれません。
もしこのような経験をするなら,それは精神だけの問題ではないということを忘れないようにしましょう。それには普通生物学上の理由があります。ですから,自分を制することができなくなっているのではないかと考えないことです。自分に時間を与えることです。そうした症状があると,ざ折感を感じたり,意気阻喪したりするかもしれませんが,大抵一時的なものです。気持ちを楽にしていればそのような気分はやがてなくなります。a
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更年期に対処する目ざめよ! 1983 | 7月8日
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更年期に対処する
子宮切除術を受けた後に重度の更年期障害を経験した作家のマデリン・グレーは,「わたしたちの体は神から与えられた機械です。人間製の機械にできないことができます。つまり自分で自分を修理するのです。しかしその修理には時間がかかります」と述べています。(「更年期」)更年期に女性が経験する症状は,体が新しい状況に適応するために生ずるものです。そうした症状は不快なものかもしれませんが,危険ではありません。ではそれらをどう扱えばよいのでしょうか。
医師の助けを得る
症状が現われ始めたなら,念のため医師のところへ行って健康診断を受けるのが賢明です。更年期に入ったばかりの女性は,どこかがひどく悪いのではないかと考えることがよくあります。「病気ではありません。更年期が始まっただけのことです,と言われたとき,女性の顔に安堵の色が浮かぶのをよく見てきました。そう言われると本当に心が軽くなるのです」とある医師は言いました。その安堵した気持ちを味わい,どこも別に悪くないということを知るだけでも,医師に診てもらう価値があります。
ほとんどの専門家は,更年期がすっかり終わるまで1年に1回,徹底的な健康診断を受けることを勧めます。これは閉経期が正常に進んでいるかどうか,また閉経期の名に隠れて他の問題がひそかに入り込んではいないかを確かめるのに役立ちます。
自分自身に気をつける
この期間に体重の増える女性もいますが,太らなくてもすむようです。まず,動物脂肪を含む食物を控えるようにすれば,体重の増加を防ぐことができるうえ,血液中のコレステロールの濃度を低く保てるといった健康上の益もあります。マデリン・グレーはこう力説します。「女性は閉経期にただ自然に太るのではありません。もし太るなら,それに対して何か打つ手があります」。同女史は続けてこう言います。「神経が過敏になって,あるいは退屈で,または自分が失ったほかのものを埋め合わせるために,以前よりもたくさん食べるようになっている……かもしれません」。ですから食習慣をよく制御し,体重を不必要に増やすことのないように気をつけなければなりません。
更年期に女性の骨はカルシウムを失う傾向があります。カルシウムの豊富な食物を食べ,それと同時に定期的に運動を行なえば,これに対処するのに役立ちます。場合によってはカルシウムを補給するのが賢明でしょう。
いつも忙しくしているのがいいと言う人たちも大勢います。ある婦人は,「1日のうち少なくとも少しの時間は家の外に出ることです。外に出て何かに挑戦することです」と勧めています。少し散歩すること,庭仕事をすること,あるいは運動になる何らかの他の活動をすることを勧める人もいます。しかし,やり過ぎて疲れないようにしなければなりません。夜は十分に睡眠を取るようにし,もし必要なら,少しの間昼寝をするようにします。
もし症状が一時的に不快なものになるなら,ある人たちが勧める,その症状を和らげるための方法に関心があるかもしれません。同種療法,薬草,はり,カイロプラクティックなどが効いたという人たちもいます。
ビタミンEなど,ビタミン類の補給を試みた人たちもいます。メリー・キャサリン・タイソンによると,ビタミンB複合体を1日に1錠飲むと,熱感を完全になくするわけにはゆきませんが,ある程度抑えることができます。
しかし,どうしても我慢できないほどの症状のある場合は,医師のところへ行けば楽になる方法が幾つかあるいうことを覚えておきましょう。医師は,気分のいらいらする外陰部のあのかゆみに効く無害な軟こうをくれます。頭痛や神経的な症状に対しては,精神安定剤や弱い鎮静剤を断続的に服用することを勧めるかもしれません。あるいは熱感を和らげることのできるホルモン剤や他の薬を勧めるかもしれません。
精神安定剤やホルモン剤の使用については神経をとがらせる人が少なくありません。強い薬がすべてそうであるように,そうしたものによる治療には副作用があるかもしれないということが頭にあるからです。もしそれらの薬剤を使用するとすれば,生じ得る危険をすべて承知しておくのは賢明なことです。しかし,非常に不快な症状のある場合,そうした薬剤はその症状を和らげます。定期的に診察を受け,医師の指示に注意深く従ってそれらの薬剤を服用するなら,危険は最小限にとどめられると確信してよいでしょう。
ほかの人は助けになるか
ある女性の体験からすると,ほかの人たちも助けになります。その人はこう話しています。「私が閉経期にあった時,私の家には二人の青年が下宿していました。二人とも立派な青年だったのですが,神経にさわる習慣がありました。一人のほうはよく口笛を吹きました。私は二人のことで大変いらいらさせられ,そのために自分自身がいやになることもありました。そこで,閉経期に女性に起こる事柄を説明した本をその二人に渡し,それを読むように頼みました。そして後ほど,『それが今私に起こっているのです』と説明しました。それからは二人は大変親切で思いやりのある態度を執るようになり,私を楽にするために自分たちにできることがあれば教えて欲しいと言いました」。
ですからその女性はこう勧めます。「家族のみんなに考えてもらうようにするのです。病気に仕立てるのはいけませんが,何が起きているのか夫や子供たちに知ってもらうのです。そうすれば様々な誤解を除くことができます。こちらが少し緊張しているように思える日には,家族は,『きょうはお母さんの気分の悪い日だ』と考え,それを乗り切るよう助けてくれるでしょう」。これこそ家族の他の成員がパウロの次の助言に従う特に良い時です。「優しい同情心,親切,へりくだった思い,温和,そして辛抱強さを身に着けなさい。……引き続き互いに忍び,互いに惜しみなく許し合いなさい」― コロサイ 3:12,13。
夫は家事を手伝うことによっても,妻が体力を維持し,しかも気持ちよくしていられるように助けることができます。たまには外で食事をすることを提案したり,別の方法で気持ちのよい気分転換を図るのもよいでしょう。またこの時期は,個人的な事柄について妻をからかう時ではないということを覚えておきましょう。むしろ「知識にしたがって」妻を扱い,「これに誉れを配」すべき時です。―ペテロ第一 3:7。
自分でできること
しかし,最も重要な事柄は当人自身の精神態度です。マデリン・グレーは,「どんな事が起きようと,時と自然はあなたの味方です。数か月,あるいは長くて数年もすれば自然によくなってゆきます」と述べています。ですから忍耐してください。自制心を培えば忍耐する助けになります。様々な感情や気持ちに屈してしまわないことです。大した理由もないのに心の中でしたくないと思っている事柄があれば,それを無理にでもすることです。急にいら立たしい気分になった時には,怒りを爆発させるのではなく,静かに部屋から出ることです。
聖書を既に生活の導きとしてきている女性は,この時期に非常に有利な立場に立ちます。自制が神の霊の実であることを知っているからです。「霊の実は,愛,喜び,平和,辛抱強さ,親切,善良,信仰,温和,自制です」。(ガラテア 5:22)この特質を生涯培ってきているなら,それは閉経期にものを言います。
助けの最高の源
クリスチャンの女性は助けの最高の源に近づくことができます。祈りによってエホバ神に請願をし,この更年期の間に必要な力を与えてくださるようお願いすることができます。「神は義なる者がよろめかされることを決してお許しにならない」と聖書は約束しています。(詩編 55:22)ですから『自分の思い煩いをすべて神にゆだねてください。神はあなたを顧みてくださるからです』。―ペテロ第一 5:7。
イエス・キリストはかつて,「受けるより与えるほうが幸福である」と言われたことがあります。(使徒 20:35)他の人々を助ける ― 特に聖書を研究して聖書を知るように助ける ― ことを既に自分の生活の一部としているクリスチャンの婦人は,その良い行ないによって大いに祝福されるでしょう。これによって自分自身の問題を忘れ,真に価値のある事柄を成し遂げるよう助けられます。自分自身の個人的聖書研究や仲間のクリスチャンたちとの交わりとあいまって,それは現在必要としている霊的力を得るのに大いに役立ちます。
ですから,閉経年齢に近づきつつあってもむやみに心配する必要はありません。大多数の女性はこの時期を大した苦労もなく通過するということを覚えていましょう。
更年期障害をいま経験している人は,問題にぶつかる都度それに対処し,恐れることなくそれに正面から取り組みましょう。時間はあなたの味方だということを忘れてはなりません。閉経期が過ぎてしまえば,生活は前よりも良くなるくらいです。更年期を通過したばかりのある婦人は次のような感想を述べています。「これまでになく良い気分です。月々の生理痛や感情的な混乱もなくなりました。閉経期後は色々な面で落ち着いた時が持てるのを楽しみにすることができます」。
しかし,それが続いている間は,自分をみがくのに良い事柄を忙しく行なうようにしましょう。事が正常に進んでいるかどうかを確かめるために,定期的に診察を受けましょう。さらに重要なこととして,神ご自身から来る知恵を調べましょう。思いと体の創造者は確かに,更年期にある人が霊的にまた感情的に何を必要としているかをご存じだからです。
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