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  • うつ病 ―「この病気の破壊力」
    目ざめよ! 1981 | 12月8日
    • うつ病 ―「この病気の破壊力」

      うつ病に悩む男性が助けを求めて医師のところにやって来ました。さて,医師はよくよく検査をしてから,「娯楽が必要です。喜劇役者のグリマルディを聞きにおいでなさい。あれを聞けば大笑いできますよ。それが何よりの薬です」と言いました。するとその人は,ますますふさぎ込んだ感じになり,「グリマルディはわたしです」と答えました。

      確かに,うつ病に対して免疫になっている人はいません。うつ病に悩まされたことのある人なら,それが笑い事ではないのをご存じでしょう。悲嘆・失望・疲労などのために,気分のすぐれない時期を経験することはだれにでもあります。しかし,普通はほどなくして立ち直るものです。ところが,抑うつ状態がいつまでも続くことがあり,それは有害な結果さえもたらしかねません。

      例えばイレーヌは,「他のどんな病気よりもひどい苦しみ」を引き起こすと言われるこの疾患と3年間闘ってきました。そして絶望のどん底に陥ったとき,自分の子供たちを殺し,次いで自殺を遂げました。かつては献身的だったこの母親の身に何が起きたかを説明しようとして,その葬儀の際に,一人のラビは「故人を苦しめ,その命を奪ったのはこの病気です」と語りました。それから,「だれがこの病気の破壊力を悟り知ることができるでしょうか」という,身も凍るような問いを投げかけました。

      この女性は重症うつ病,つまり身体症状を伴う,容赦なく人を破滅へと追いやる気分にむしばまれていたのです。レナード・キャマー博士はこう伝えています。

      「主婦・タクシー運転手・会社員・教師・賭博師・女優・れんが工・女性セールスマン……などどんな人でもうつ病にかかる。円熟してしっかりした人にも,子供やノイローゼ気味の人にも現われる。さらに,経済的,社会的,知的レベルの高低に関係なく生じ,どんな性格の人をも冒す」―「うつ病からの脱出」。

      この病気があなたや身内の方を冒すことがあり得ますか。毎年,推定10人に一人は臨床的に見て抑うつ状態に陥ります。世界保健機関の調査によると,今日の「対処しにくい危機の時代」に,世界中で2億人がこの「病気」に悩まされています。―テモテ第二 3:1。

      ほとんどの人はこの病気に冒されてもイレーヌほどにはなりませんが,かつてこの病気に冒されていた人の次の言葉に同意する人は少なくありません。この人は自分がその状態から抜け出す前の気持ちをこう説明しています。「何をしても楽しくありませんでした。恐ろしい悪夢に捕らわれて,何の変化も望めないように思えました。毎日,一刻一刻,尊い命にしがみついているような気持ちでした。死にたくはありませんでしたが,そうした状態で生きていたいとも思いませんでした」。

      こうした苦しみの原因はどこにあるのでしょうか。頭の中だけの問題なのでしょうか。

  • 問題はすべて頭の中にあるのですか
    目ざめよ! 1981 | 12月8日
    • 問題はすべて頭の中にあるのですか

      医師は,抑うつ状態に陥った女性が自分の症状について行なう説明を一心に聞いていました。絶え間ない頭痛,怒りっぽくなること,便秘,食欲不振,不眠症,慢性的な疲労感などがその症状です。どっと泣き出すことがあり,時には死にたいと思います。医師はそれに対して,「問題はすべて頭の中にあります。まずはご自分の状態がはっきり分かるようになってくださらなければ,わたしには手の施しようがありません。是非,精神科のお医者さんに診てもらってください」と言いました。

      悪気はないのですが,この医師の意見は一般の見方を表わしていました。しかし,重症うつ病に悩まされていたこの女性のように,その苦悶は全面的にあなたの考え方に起因していると言われると,打ちひしがれてしまう人は少なくありません。確かに,人の考えは善くも悪しくもその人の体に影響を及ぼします。それでも,体の病気が人の思考過程に影響を及ぼし得ることを示す証拠も多くなってきています。

      しかし,その証拠を検討する前に,“抑うつ状態(うつ病)”a という語がかなり広範な感情の状態を包含することを理解しなければなりません(わくの中をご覧ください)。

      どのようにして分かるか

      ニューヨーク州精神衛生局ロックランド研究所の所長,ネーサン・S・クライン博士は,最近,「目ざめよ!」誌の編集部員のインタビューに応じ,次のように語りました。「例えば,家族の死などによって引き起こされる類のうつ病なら,それを幾らか軽減する方法はあります。おいしい食事と美しい月か何かがあれば,幾らか軽減されます。重症うつ病の場合,それを軽減する方法はありません。大金をせしめても,大統領に選ばれても,特別な喜びを何らもたらしません。将来は絶望的なものに思えます」。

      躁うつ病の症状はどのようなものですか。コロンビア大学医学部の臨床精神病学の教授,ロナルド・フィーブ博士は「目ざめよ!」誌に次のように語りました。「憂うつな状態から意気盛んになるという病歴が必ずあります。その人は異常なほど楽観的な状態に陥り,過度に活動し,多弁になり,睡眠時間が短くなり,かつてなかったほど活力にあふれるようになります。この突然の変化は2週間から普通の場合で一,二か月続きます。それから極度の抑うつ状態へと移るのです」。

      ある種の極度のうつ病には脳の中の特定な化学変化が付き物であり,それがうつ病を引き起こしているのではないか,と考える科学者は今や少なくありません。(上の図はそれを説明しています。)その過程は複雑で,この点で科学者たちの意見はまちまちです。しかし,何がそのような化学的な乱れを引き起こすのでしょうか。様々な要素があります。

      病気とうつ病の関係

      医学の分野の著述家,ローレンス・ゴールトンはこう記しています。「うつ病は紛れもない器質性の疾患から,もっと正確に言えば,明確に器質性の疾患と定義できるものから生じることもある。肝炎・単核症・インフルエンザなどの感染,甲状腺・副甲状腺・副腎などのホルモン(腺の)異常,悪性腫瘍,栄養分の欠乏状態,貧血および他の血液の障害などがそれに含まれる」―「精神科医は必要でない」(1979年発行)。

      例えば,一人の婦人は15年間にわたって,極度の,それも時には自殺を図るほどのうつ病の治療を受けていました。抗抑うつ剤を与えられ,電気ショック療法さえ受けましたが,病気を永続的に除去するものは何一つありませんでした。結局,副甲状腺の病気が問題の原因であることが明らかにされました。その病気の治療が成功して,この婦人は快方に向かいました。根本的な問題は身体的なものだったのです。

      ストレス

      ストレスの引き起こす神経の消耗も,同様にうつ病の原因になることがあります。そのようなストレスを生む状況として,専門家は次のようなものを挙げています。それは『不幸な結婚,救いの手が差し伸べられないスラム生活,思いやりのない上司,長期に及ぶ戦い』,および「自分の精神的,情緒的,身体的な能力を超えることがはっきりしている」日課を果たそうとすることなどです。愛の欠けた環境にいて,孤独を感じ,落胆し,希望を失っている場合も,やはりうつ病になることがあります。自分がそのような状況に置かれていると感じる人は少なくありません。

      死や離婚などストレスを生む特定の出来事は重症うつ病を引き起こしかねません。ところが,最近の一研究によると,臨床的にうつ病と診断された人185人中,うつ病に先立って,ストレスが高じたとはっきり分かる出来事を経験した人は4分の1にすぎませんでした。精神科医のフィーブ博士は,ストレスが高じるような生活上の出来事は「氷山の一角にすぎない」と考えています。

      クライン博士は,急な坂道を登る途中で故障を起こす車にうつ病患者をなぞらえ,自分の意見を次のように語っています。「その場合,ある意味では坂を登ったという事実がいけなかったのですが,また一方ではエンジンの調子がよかったら故障も起きなかったとも言えるでしょう。ですから,環境から生じるストレスが急に病気を引き起こすかもしれませんが,元々生物学的な欠陥,つまりエンジンに悪い所があるはずです」。

      しかし,これまで体のどこも悪くなかったのに,思いそのものがこの化学的な不均衡を生み出すということがあり得るのでしょうか。

      思いの果たす役割

      熟達したカウンセラーによって考え方を調整されたおかげで,重症うつ病からさえ解放された人が大勢いることを示す確かな証拠があります。このことは,ある種の重症うつ病に関しては,どこか体の悪い部分ではなく,当人の考え,あるいは当人が思いの中に入れる事柄が重大な役割を担っていることを示しています。

      最近の研究によると,わたしたちの物の考え方は脳の化学的な働きに影響を及ぼすことがあります。例えば,1979年に行なわれた調査では,親知らずを抜いたばかりの人に気休め薬の食塩水の注射をして,それで痛みが和らぐと告げました。この注射には痛み止めの効力はないはずなのに,3人に一人は「間もなく痛みが驚くほど和らぐのを感じた」と報告されています。自然に発生する脳の“痛み止め”の化学物質(エンドルフィン)がその人の考えによって働きだしたものと判断されました。脳の自然の“痛み止め”の効果を妨げる別の薬が投与されて,このことが確証されました。痛みが戻ったのです。

      思いが愛に反応する力は数多くの事例において観察されてきました。逆に,怒り・憎しみ・ねたみなどの消極的な感情も体に生化学的な変化を引き起こすことが分かっています。

      聖書は人間の内なる感情や態度の果たす重要な役割を認め,こう述べています。「人の霊[内なる感情や考え]は病苦[病気]に耐えることができるが,打ちひしがれた霊となると,だれがこれを忍ぶことができようか」。(箴 18:14,新)もし「人の霊」が誤った考え(8-10ページで論じられている)で「打ちひしがれ」るなら,もしもねたみや恨みや良心の苛責のために圧迫されているなら,その悪い状況は耐えられないものになります。その後に,重症うつ病になることもあります。

      また,テレビや映画やポルノ文学などにより,人が抑うつ状態を引き起こすような考えで自分の思いを養うなら,そのために気分がゆがめられ,うつ病を育むことになります。特に,テレビの前で定期的に多くの時間を費やすなら,それは当人の見方に悪影響を及ぼしかねません。しかし,ほかの人にとっては,問題の根になっている事柄が別にあるかもしれません。

      そのほかに考えられる原因

      「脳は,[血]漿中のある種の栄養素の濃度に対して他の器官よりもはるかに敏感である」と,マサチューセッツ工科大学の二人の研究者は述べています。これらの医師たち,二人のワートマンが「栄養と脳」(1979年第3巻)の中で公にした資料は,食べ物が人の気分に及ぼす影響,およびある栄養素の欠乏が脳の化学的なバランスを変えて,うつ病を引き起こす経緯を示しています。

      バランスの取れた食事をきちんと取り,“栄養価の少ないスナック食品”を最小限に抑えていても,うつ病につながるような,栄養素の欠乏に見舞われることがあります。ある種の薬物療法,経口避妊薬,妊娠や汚染や極度のストレスが体にもたらす緊張などは,いずれも栄養素の欠乏を引き起こす原因になり得ます。

      ある種の食べ物や化学物質のガスなどに対するアレルギー,そして女性の場合のホルモンの変化もうつ病をもたらしてきました。また,血糖減少症(低血糖症)の治療を受けた1,100人の患者を対象にした調査から,それらの患者の77%がうつ病の症状を訴えていたことが明らかになりました。

      ですから,単に間違った態度を抱いているということ以外にも,うつ病の原因は数多くあるのです。ひどいうつ病にかかっている人は,様々な要素が組み合わさってそうなっているのかもしれません。個々の人の遺伝的特質や幼少時の経験も一因となります。これら様々な影響力すべてが,ストレスを高じさせる出来事や環境に対する反応の仕方に影響を及ぼすことがあるのです。

      うつ病の原因と思われるものを理解しようとすることも助けになりますが,うつ病に悩まされている人にとってもっと切実な問題は,それを克服するために何が行なえるかということです。

      [脚注]

      a 下のわくの中で用いられている名称の一部は,「精神病の診察および統計便覧」(第3版,1980年)に基づいています。

      [4ページの囲み記事/図版]

      うつ病の種々の様相

      意気阻喪および悲痛感情

      死や離婚,失業,健康上の問題およびその他のストレスを高じさせる状況など,動揺を引き起こす何らかの出来事のゆえに生ずる沈んだ気分。

      軽度慢性うつ病(抑うつ神経症)

      “憂うつな状態”が続く。全般的に消極的な気持ちと不満がある。疲労を感じ,家族や友人に対する関心を失う。大抵の場合,自分には価値がないという気持ちや不安感,怒りなどがある。

      重症うつ病

      「地中の穴の中にいるような気がする」と一人の患者は語っている。軽くする道はない。睡眠の習慣が変わり,食欲が減退する。罪悪感で胸が一杯になり,死んでいたほうがよいと思う。恐れの気持ちや不安感に圧倒され,集中力が欠ける。この症状が一定期間の正常な行動と交互に表われることもある。

      躁うつ病

      病的な高揚状態 ― 金に糸目をつけずに使ってしまう,四六時中働く,じっとしていないで動き回る ― の期間に続いて,極度のうつ病が起きる。

      [5ページの囲み記事/図]

      わたしたちの思考は,電気化学的なインパルス(衝撃)の形を取って一つの神経細胞から別の神経細胞へと流れて行く。正常な気分でいられるかどうかは,それがゆがめられずに流れるかどうかにかかっている。神経の末端はつながっていない。神経インパルスが,その間隙の橋渡しをするニューロトランスミッターという化学物質の生産を促す。その結果,思考はゆがめられることなく伝わる。シナプス(接合部)と呼ばれるこの領域の化学的なバランスは肝要である。

      [図]

      (正式に組んだものについては出版物を参照)

      神経インパルス

      神経細胞

      神経細胞

      シナプス(接合部)

      神経インパルス

      ニューロトランスミッター(刺激を伝達する化学物質)

      接受器官

      神経インパルスはゆがめられることなく伝わる

      [5ページの囲み記事/図]

      異常の生じる原因とされるもの

      ある種のニューロトランスミッターが多すぎると神経インパルスをゆがめ,刺激を大きくしすぎることになり,躁状態を引き起こすのではないかと考えられる。

      [図]

      (正式に組んだものについては出版物を参照)

      神経インパルス

      ニューロトランスミッター(刺激を伝達する化学物質)

      神経インパルスはゆがめられている

      ある種のニューロトランスミッターの水準が低すぎると神経インパルスをゆがめ,うつ状態を引き起こすのではないかと考えられている。

      [図]

      (正式に組んだものについては出版物を参照)

      神経インパルス

      ニューロトランスミッター(刺激を伝達する化学物質)

      神経インパルスはゆがめられている

  • うつ病と闘う方法
    目ざめよ! 1981 | 12月8日
    • うつ病と闘う方法

      「うつ病の人すべてに運動をさせることさえできれば,そのうちの4分の3は気分が高揚することに気づくであろう」と,ディメリ精神療法センターのアルマンド・ディメリは語っています。重症うつ病ではなく,人が“憂うつな気分”になっている場合については,この意見に同意する人もいます。a 十分の休息や睡眠も肝要です。

      軽度のうつ病患者の中には,自分が特に楽しめる活動に幾らかの時間を取っておくことでよくなる人もいます。洋裁の大好きな一婦人は,「何かを作っていると,とてもうつ病にはなっていられません」と話しています。必要なのは一晩レストランで食事をするとか短い休暇を取るなどの気分転換だけということもあります。

      心の中にあるものを信頼の置ける友人に吐露することは大きな助けになります。しかし,個人的に付き合うにしろ,テレビや映画の画面を介して付き合うにしろ,交わる仲間には注意しなければなりません。気をめいらせるような不平家や人の道徳感覚を損なったり良心を汚したりするような番組や映画は,疫病のように避けることです。―箴 17:17。コリント第一 15:33。

      では,憂うつな気分が長く続く場合はどうですか。

      食べ物が原因ではありませんか

      ご自分の食習慣を注意深く調べてみてください。米国オハイオ州カイヤホーガ・フォールズで主任保護観察官を務めるバーバラ・リード女史は,自分の事務所に送られて来る犯罪者の多くはうつ病の症状を訴える,と「目ざめよ!」誌の編集部員に説明しました。同女史はその人たちの食習慣を調べてみました。その多くは“栄養価の少ないスナック食品”を食べて生きており,朝食を抜いていました。緑色野菜を食べずに幾週間も過ごす人さえいました。より良い食習慣 ― バランスの取れたきちんとした食事 ― と運動のおかげで,気分が良くなった人は少なくありません。「器物破損の罪で逮捕され,うつ病にかかって自分に全く価値を見いだせなくなっていた20歳になる人は,“栄養価の少ないスナック食品”を食べて生きていました」と,リード女史は伝えています。しかし,食習慣が改善され,適切な助言が与えられたところ,憂うつな気分は晴れ,振舞いも改善されました。

      食習慣がうつ病の原因になるかどうかについて,権威者たちの意見はまちまちです。最も優れた食物を取っていても,やはりうつ病になる人はいます。食習慣を改善させても,病状のよくならない人もいます。人は各々異なり,他の人よりも砂糖やカフェインなどの物質に敏感な人はいるでしょう。しかし,バランスの取れた食事を取り,パイや菓子パン,チョコレート,キャンディー,清涼飲料水などを食べたり飲んだりする際に節度を保つなら,うつ病に悩まされている人には大抵良い結果が様々な形でもたらされるでしょう。

      極度のうつ病は身体的な異常の一症状とも考えられるので,精密検査を受けるのも大切です。

      正しい考え方をしていますか

      うつ病の症例すべてが誤った物の見方から発しているわけではありませんが,最近,10年がかりで行なわれた一研究は,うつ病患者がしばしば状況を誤って解釈することを示しています。「うつ病に悩む人が悲しい気持ちになり,孤独感を味わうのは,自分は無力でだれからも見放されている,と誤って考えているからである」と,研究者で精神科医のA・T・ベックは説明しています。聖書も,心でどう感じているかが外部の事柄に対する人の考えに影響を及ぼすことを示して,こう述べています。『艱難者の日はことごとく悪しく 心の喜べる[快活な気質を持つ]者は常に酒宴にあり』。人の毎日が『ことごとく悪しく』なるか,『毎日が酒宴のようになる』かは,かなりの程度,当人の心構えにかかっています。―箴 15:15。

      ですから,うつ病に悩む人は自分の考えを矯正するよう一生懸命に努力し,何を思い巡らすかに注意を払わねばなりません。そうすることは口で言うよりはるかに難しい場合があります。うつ病患者の多くがよく抱く有害な考えの幾つかがわくの中に挙げられています。そのいずれも正しくありません。こうした考えが脳裏に浮かんだら,すぐにそれを消し去るようにします。そうした事柄を思い巡らしているなら,自尊心が損なわれ,うつ病がひどくなるでしょう。

      うつ病には普通,過度の罪悪感が伴うものです。しかし,どんな人でも過ちを犯すことを認めるようにしましょう。詩篇作者は,「ヤハよ,もし,とががあなたの見つめるところであるならば,エホバよ,いったいだれが立ち得るでしょうか」と述べました。だれも立ち得ません。しかし,わたしたちは不注意な間違いや罪に対する真のゆるしをエホバ神から得ることができます。―詩 130:3,4,新。

      物事を成し遂げることの価値

      夫に先立たれて悲嘆に暮れ,その上,自分の家を修繕してくれるという人の約束が果たされないために失望していた一未亡人は,ひどいうつ病になってしまいました。しかしそれから,『修理はそれほど難しくないはずだわ』と考え,一生懸命に働き,間もなく台所の床のタイルを張り替えてしまいました。完ぺきな仕事とは言えませんでしたが,この人は満足感を味わいました。自尊心が高まり,うつ病は跡形もなくなりました。

      だれにでもこのようにできるわけではありません。しかし,ある研究論文によると,極度のうつ病患者の中で,ある種の仕事は成し遂げられないと思い込んでいた人が,実際にはうつ病でない人と同じほど立派に仕事を成し遂げています。

      うつ病に悩む人が成し遂げることのできる事柄は家事だけに限られていません。人を訪問するか電話を掛けるかして人を励ましたり,家族を喜ばせるために何かしたりするのもよいでしょう。

      うつ病に悩むクリスチャンのある婦人は若い女性の所を訪れました。その女性は少し前にひどく殴られ,暴行を受け,刺されていたのです。そのクリスチャンはうつ病でしたが,毎週その女性の所を訪れて,慰めようと懸命に努力しました。その結果,「徐々にでしたが,憂うつな気分を味わわなくなりました。彼女を励まそうとしているうちに,自分の問題を忘れていたのです」とそのクリスチャンは語っています。こうしてこの婦人は,「受けるより与えるほうが幸福である」という,イエスの言葉が真実であることを知ったのです。―使徒 20:35。

      「間違ったことを行なわずに怒りなさい」

      心理学者のディメリは,うつ病の別の要素は怒りに対処することだと述べ,こう続けています。「しばしば起きるのは,理屈に合わないと思えるような理由で,他の人に怒りを抱くことです。それでも当人は,『怒りは悪いことだ』と教えられているので,怒りはよくない,と思っています。そこで,怒りを抱いたことで自分を責め,自分に対して怒りを抱くようになるのです。これが,助けになってくれる人がいないという気持ちと結び付いて,うつ病を生じさせるのです」。

      しかし,怒りをぶちまけるのは危険なだけでなく,研究の示すとおり,うつ病を解消することにもなりません。聖書はこう注意しています。「間違ったことを行なわずに怒りなさい。あなたがたの憤りの上に[あるいは,「あなたがたが怒り立ったまま」]日が沈むことのないようにしなさい」。(エフェソス 4:26,基礎英語聖書。新世界訳と比較してください。)進んで,恐れずに自分の気持ちを言い表わし,率直に,ただし親切に話せば,うつ病に悩む人は平和を促進するような仕方で自分の気持ちを伝達できます。配偶者間ではそうした包み隠しのない意思の伝達が特に肝要です。

      しかし,こうした提案すべてより優れたものがあります。うつ病患者の自殺率は一般の人の自殺率の25倍にもなっているので,これは生死を分けることにもなります。それはどんな提案ですか。

      神との関係と祈り

      重症うつ病に悩む一人の母親はこう告白しました。「引き金を引いてすべてを終わらせることを思い留まらせた唯一のものは,神との関係でした。銃を手にしていましたが,その時エホバ神はそれを離すよう本当に助けてくださいました」。この婦人は自分が医療に反応する状態になるまで,「普通を越えた」力を得て耐え忍んだのです。聖書研究をし,真の友を見いだせるクリスチャンの集会に出席して真の信仰を培い,その信仰が命を救ったのです。―コリント第二 4:7,8。フィリピ 4:13。

      神が助けてくださる一つの方法は,そのみ言葉,聖書の備えです。それは,家族生活をより良いものにする方法,他の人とうまくやってゆく方法,不安や罪悪感を生む行為を避ける方法,そして人生において有意義な仕事や目標を選ぶ方法などを示しています。こうした情報に従って行動すれば,うつ病の原因となるストレスの高じる数々の状況を除くのに役立つでしょう。―コロサイ 3:5-14,18-21。テモテ第一 6:9,10,17-19。

      強い信仰があっても,うつ病患者は神に見捨てられたと感じて,疑いを抱くことがあるかもしれません。しかし,決して祈りをやめてはなりません。ベッドから起き上がるのがやっとという状態が何か月も続くほどの抑うつ状態に陥っていた一人の母親はこう語りました。「毎日,5回も6回も熱烈に祈り,助けを何度も請い求めました。どこが悪いのかを知っていて助けになってくれる医師を見付ける上で適切な導きを与えてくださるようエホバ神に懇願しました。生き続け,これ以上家族に迷惑をかけないように物事をきちんとできるだけの力を祈り求めました」。その粘り強さは報われ,適切な医療を受けて重症うつ病から解放されるところまで忍耐できました。

      「予防が第一」

      「最も大切な助言は,『予防が第一』ということです」と,一人の患者は語りました。でも,どのようにして予防するのですか。簡単な答えも確実な答えもありませんが,一部の権威者たちは次のように提案しています。

      1. 愛,金銭,社会的な地位,権力,薬物などの上に自分の価値感を築いてはならない。さもないと,それを失った場合,破滅的な影響を被ることになる。

      2. 現実的な期待を抱く。最善を尽くすことを目標にはするが,完全主義者にはならない。

      3. 初期の徴候(不安,恐慌状態,集中力の欠如)を識別する。自分の毎日のスケジュールが道理にかなったものかどうか調べる。道理にかなっていなければ調整する。必要な場合には断わることを学ぶ。

      しかし,数多くの個人的な圧力に遭いながら,幾百万もの人々は,「優しいあわれみの父またすべての慰めの神」のご意志とお目的とに関する正確な知識を得ることがうつ病を予防する最大の助けの一つであることを知りました。―コリント第二 1:3。

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