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地の最も遠い所にまで達する証人たちものみの塔 1981 | 6月1日
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地の最も遠い所にまで達する証人たち
1 人類史上最も劇的な瞬間の一つに何がありますか。
それは人類史上最も劇的な瞬間の一つだったに違いありません。これほど感動的な別れはかつてありませんでした。神のみ子は地上のご自分の追随者たちに別れを告げようとしておられました。肉体を着け,見える様で二度と彼らの前に姿を現わすことはないのです。もう一つだけ質問をし,もう一つだけ答えていただく時間はありました。どんな問題に関するものですか。この最後の会話は,現在の事物の体制の終わりに至るまでずっと,キリストの追随者たちに影響を与えることになります。
2 地を永遠に去ろうとする前のイエスに,どんな最後の質問がなされましたか。イエスの答えがわたしたちの大きな関心事となるのはなぜですか。
2 イエスの弟子たちがイエスに尋ねた最後の質問は,「主よ,あなたは今この時に,イスラエルに王国を回復されるのですか」という質問でした。この質問をどんな動機で弟子たちが尋ねたのか,明確なことについては憶測の域を出ません。弟子たちがどんなことを期待していたにせよ,一つのことは確かです。つまり彼らは王国に関する神の目的がいつ成就するかを知りたいと願っていたのです。弟子たちを責めることができるでしょうか。最終的な救出を待ちきれないという態度を示したのは弟子たちが最初でも最後でもありませんでした。ですからイエスの注解,つまり地を永遠に去ろうとする前の一番最後の言葉は,現代のわたしたちにとって大きな関心事です。
別れ際にキリストがお与えになった命令
3,4 (イ)イエスはどのようにお答えになりましたか。(ロ)イエスはどんな二重の教訓を弟子たちにお与えになりましたか。
3 イエスは次のようにお答えになりました。「父がご自分の権限内に置いておられる時また時期について知ることは,あなたがたのあずかるところではありません。しかし,聖霊があなたがたの上に到来するときにあなたがたは力を受け,エルサレムでも,ユダヤとサマリアの全土でも,また地の最も遠い所にまで,わたしの証人となるでしょう」。さらに,「そして,これらのことを言われたあと,彼らが見守る中で,イエスは挙げられ,雲に取り上げられて彼らから見えなくなった」と記録は続いています。―使徒 1:6-9。
4 イエスの別れの言葉には二重の意味があります。イエスは巧みに,しかし確固とした態度で,エホバの目的が遂行される時については,彼らの知るべき事ではないと弟子たちに告げられました。こうしてイエスは,事物の体制の終結に関する預言の中ですでに述べておられた事柄を確証されました。(マタイ 24:36。マルコ 13:32-37)次いでイエスは,それ以後何が弟子たちの関心事となるかを示されました。彼らはまず,しばらくとどまるようにとの指示を受けていたエルサレムで(使徒 1:4),次にユダヤとサマリア全土で,そして最後には「地の最も遠い所にまで」クリスチャンの証人にならねばなりませんでした。その目的で,彼らは聖霊による「力」を受けるのです。
5 イエスの弟子たちの上に「力」が到来したのはいつですか。それは何をするように彼らを動かしましたか。
5 その「力」は1週間半後のペンテコステの日に弟子たちの上に到来しました。使徒たちや他の弟子たちは従順にエルサレムにとどまり,その祭りの日に「彼らはみないっしょに同じ場所にいた」のです。突然,「彼らはみな聖霊に満たされ,霊が語らせるままに異なった国語で話し始め(ました)」。彼らが話したのはわけの分からない無意味な言葉などではなく,「神の壮大な事がらについて」でした。―使徒 2:1,4,11。
「エルサレムで」
6 これら油そそがれたクリスチャンたちは,彼らの使命をどのように果たし始めましたか。しかしどんな反対がありましたか。
6 これら油をそそがれたばかりのクリスチャンたちはすぐさま,復活させられたキリストから受けた命令を実践し始めました。彼らは最初に「エルサレムで」宣べ伝えました。しかし反対がなかったわけではありません。ユダヤ人の宗教的な,また一般市民の指導者たちが彼らに対する陰謀を企て,次のように言いました。
「この人たちをどうしたらよいのか。実際の話,人目をひくしるしが彼らを通してなされ [足なえの人がいやされたこと],それはエルサレムの住民すべてに明らかなものなのだ。わたしたちとしてもそれを否定するわけにはゆかない。しかしそうではあるが,民の間にこれ以上広まることがないよう,もうこの名 [イエス] によってだれにもいっさい語らぬよう,脅しを加えて命じておこう」― 使徒 4:16,17。
7 (イ)キリストの弟子たちはそうしたことに対しどのように反応しましたか。(ロ)初期のクリスチャンが自分たちの使命を忠実に遂行したという証拠を,宗教上の反対者たちはどのように示しましたか。
7 「あなたがたは……わたしの証人となるでしょう」とキリストは述べておられました。ユダヤ人のサンヘドリンは初期のクリスチャンたちに,「この名によってだれにもいっさい語らぬよう」にという脅しを加えました。弟子たちはだれに従いましたか。彼らは迫害者たちに対し敬意を失うことなくこう述べました。「わたしたちとしては,自分の見聞きした事がらについて話すのをやめるわけにはいきません」。(使徒 4:18-20)彼らはずっと証しを続けました。使徒たちは獄に入れられましたが,夜の間に奇跡的に救出され,そのあと「彼らは夜明けに神殿の中に入って教えはじめ」ました。(使徒 5:17-21)何という熱心さでしょう。ところが彼らは再び捕らわれの身となりました。
「こうして彼らを連れて来て,サンヘドリン広間に立たせた。そして,大祭司が彼らに質問して言った,『この名によってもう教えてはならないときっぱり命じておいたのに,見よ,あなたがたはエルサレムをあなたがたの教えで満たしてしま(った)』」。(使徒 5:27,28)
この高位僧職者は,それとは知らず,これら初期のクリスチャンたちがキリストから与えられた命令の最初の段階を忠実に実践していることを証ししました。彼らは「エルサレムで」イエスについての熱心な証人でした。
8 これらのクリスチャンたちは,どのように『自らの教えでエルサレムを満たし』ましたか。彼らはどんな結果を得ましたか。
8 むち打たれ,「イエスの名によって語るのをやめるように」と命じられてから,これらのクリスチャンは「彼の名のために辱しめられるに足る者とされたことを喜びつつ,サンヘドリンの前から出て行(きまし)た」。落胆するどころか,「彼らは毎日神殿で,また家から家へとたゆみなく教え,キリスト,イエスについての良いたよりを宣明しつづけ(まし)た」。(使徒 5:40-42)彼らが「家から家へと」証しを「つづけた」ことに注意しましょう。(新世界訳。新国際訳)そのようにして彼らは,人数は比較的少なかったとはいえ,首尾よく『自らの教えでエルサレムを満たす』ことができました。この方法はすばらしい結果をもたらしました。「その結果,神のことばは盛んになり,弟子の数はエルサレムにおいて大いに殖えつづけた」― 使徒 6:7。
サマリアとユダヤで
9 どんな状況の下で,証しの業はユダヤとサマリアに達するようになりましたか。
9 しかし初期のクリスチャンたちはそこでやめてしまうことはできませんでした。彼らは「ユダヤとサマリア全土で」もキリストの証人となることになっていました。実際のところ,自分たちの使命に関する第1段階を実践する面で非常に熱心だったからこそ,彼らはクリスチャンの業の第2段階を達成するようになったのです。エルサレムでの彼らの証しに対する反対は,ステファノが宗教上の理由で殺害されるに及んで頂点に達し,このことによってエルサレムのクリスチャン証人の会衆に対する迫害の波が押し寄せ始めました。この激しい反対の目的は,これらキリストの証人たちを沈黙させることでした。ところがこれが契機となって証しの業は強力になり,キリストが望んでおられた通りの所に広まって行ったのです。「使徒たちのほかはみなユダヤ,サマリア地方全域に散らされた」と記されています。これら散らされたクリスチャンたちはそれらの地域で何を行ないましたか。彼らは「みことばの良いたよりを宣明しながら全土をまわ(りまし)た」。―使徒 7章; 8:1,4。
10 使徒たちは,「サマリアが神のことばを受け入れた」ことを聞いて何をしましたか。どんな「かぎ」をペテロは用いましたか。
10 程なくして,「サマリアが神のことばを受け入れた」という知らせが「エルサレムにいる使徒たち」に届きました。この状況に対応するため,使徒たちは仲間の二人,つまりペテロとヨハネを派遣し,福音宣明者フィリポを含む散らされたクリスチャンたちが行なっている良い業を強化することにしました。ペテロはキリストから与えられた特権を用いることにより,サマリア人が,霊によって生み出され,「天の王国」でキリストと共になるよう召された油そそがれたクリスチャンになるための道を開きました。(マタイ 16:18,19。使徒 8:14-17)「使徒たちの活動」の記録は次のように続いています。「徹底的に証しをしてエホバのことばを語ってから,彼らは……サマリア人の多くの村に良いたよりを宣明していった」。(使徒 8:25)サマリアについてはこのぐらいにしましょう。
11 「ユダヤ全土」がりっぱな証言を受けたことを示すどんな証拠がありますか。
11 ユダヤに関して言えば,ペンテコステの日にエルサレムに集まっていた大ぜいのユダヤの住民は,油をそそがれたばかりのクリスチャンたち,とりわけペテロが行なったりっぱな証言を聞いたに違いありません。(使徒 2:9,14-36)また,エルサレムにいたクリスチャンたちに対する迫害の波が押し寄せて来る前に次のようなことがあったのをわたしたちは知っています。「エルサレム周辺の都市の大ぜいの人が,病気の人や汚れた霊に悩まされる者たちを携えて次々にやって来た。そして,彼らはひとり残らず治されるのであった」。(使徒 5:16)これらユダヤの住民すべてはイエスに関する証しを聞きました。パウロの改宗の後の期間についてルカは次のように書いています。「会衆は実に,ユダヤ,ガリラヤ,サマリアの全域にわたって平和な時期に入り,しだいに築き上げられていった」。(使徒 9:31)それから約15年後,パウロはテサロニケにいるクリスチャンたちに,「兄弟たち,あなたがたは,ユダヤにある,キリスト・イエスと結ばれた神の諸会衆に見倣う者となったのです」と書くことができました。(テサロニケ第一 2:14)確かに初期のクリスチャンたちは,「エルサレムでも,ユダヤとサマリアの全土でも」イエスの証人になるというキリストから与えられた命令を熱心に遂行しました。
遠く地の果てにまで
12 将来の拡大のための種はペンテコステの日に,どのようにまかれましたか。
12 しかし,別れ際にイエスがお与えになった命令はさらに続いています。それは次のようになっています。「あなたは,エルサレムで,そしてユダヤとサマリアの全域で,さらに遠く地の果てにまでわたしの証人となるでしょう」。(使徒 1:8,新英訳聖書)キリストの名に関する証しが早い時期に,西暦36年よりも前に,離散したユダヤ人たちaに行なわれたという証拠があります。西暦36年といえば,ペテロがキリストから与えられた特権を再度用い,今度は無割礼の異邦人に王国への道を開いた年です。(マタイ 16:18,19。使徒 10章)一つの点として,西暦33年のペンテコステの日にバプテスマを受けてクリスチャンとなった3,000人のユダヤ人および改宗者たちは,エルサレムおよびユダヤだけに住んでいたのではありませんでした。彼らの多くはパルチア,メディア,エラムとメソポタミア(現在のイランおよびイラク),小アジア(現在のトルコ),北アフリカ,イタリアといった広範囲にわたる場所から来ていました。(使徒 2:8-11)これらの新しく改宗したクリスチャンたちは,アジア・アフリカ・ヨーロッパの三つの大陸の故国へ帰ってから,それぞれの国で少なくとも他のユダヤ人や改宗者たちにキリストの名について証言したに違いありません。こうして将来の拡大のための種が,確かにペンテコステの日にまかれたのです。
13 キリストに関する証しが早い時期にユダヤおよびサマリアのかなたでも行なわれていたことを何が示していますか。
13 さらに,使徒 11章19節には次のように書かれています。「ステファノのことで起こった患難[ペンテコステ後で西暦34年ないし35年のパウロの改宗より前のいつか]のために散らされた者たちは,フェニキア,キプロス,[シリアの]アンティオキアにまで進んで行ったが,ユダヤ人のほかにはだれにもみことばを話さなかった」。このことは,宣べ伝える業が非ユダヤ人に達する前でさえ,キリストに関する証しがユダヤとサマリアのはるかかなたにまで及んでいた明確な証拠となります。
14 無割礼の人たちに対する組織的な証しはどこで行なわれるようになったと思われますか。説明してください。
14 西暦36年にペテロが「天の王国のかぎ」をもう一つ用い,無割礼の人々にも王国へ入る機会を開いた時,すべての人々に,そうです「遠く地の果てにまで」(新英訳聖書)キリストに関する証しを行なう道が開けました。無割礼の異邦人に対する組織的な証しが行なわれたのは,シリアのアンティオキアからであったようです。当時シリアのアンティオキアは,ローマ,アレキサンドリアに次ぐ世界第3の都市でした。こうしたことが生じた事の次第はこうでした。西暦36年以後でしかも西暦44年以前のある時,「キプロスや[北アフリカの]キレネの者でアンティオキアに来た人たち[クリスチャン]が幾人かおり,ギリシャ語を話す人びとにも語りはじめて,主イエスの良いたよりを宣明した。さらにまた,エホバのみ手が彼らとともにあり,信者となった大ぜいの人が主に転じた」のです。―使徒 11:20,21。
15 (イ)この新しい事態に関してエルサレム会衆は何をしましたか。彼らの選択が賢明だったのはなぜですか。(ロ)その時までの数年間,パウロは何をしていましたか。(ハ)アンティオキアの初期の会衆の場合が特に関心事となるのはなぜですか。
15 これらキプロスやキレネのクリスチャンたちが非ユダヤ人の中で行なった熱心な宣べ伝える活動はエホバに祝福されました。「エルサレムにある会衆」は,この新しい事態に対処するため特別な代表者を一人北方のシリアまで派遣します。選ばれたのは自分もギリシャ語を話すキプロスのユダヤ人であるバルナバでした。バルナバはキリストのこれら新しい弟子たちを励ました後,パウロを連れて来るためタルソスに赴きました。パウロ自身は,現在のトルコの南東部に当たるシリアおよびキリキアで,すでに数年にわたって「信仰についての良いたよりを宣明」していました。(使徒 9:26-30をガラテア 1:18-23と比較してください。)「こうして,彼ら[バルナバとパウロ]はまる一年[おそらく西暦45年ごろ]のあいだ人びととともに[ユダヤ人と異邦人によって構成されるようになった]会衆に集まり,相当数の人びとを教えることになった。そして,弟子たちが神慮によってクリスチャンと呼ばれたのは,アンティオキアが最初であった」― 使徒 11:22-26。
16,17 (イ)証しの業はシリアのアンティオキアからどのように広がってゆきましたか。(ロ)パウロとバルナバは自分たちの活動の正しさを示すためにどんな預言を引用しましたか。この預言は第一義的にはだれに適用されましたか。(ハ)このことは,使徒 1章8節にどのように光を投げかけますか。
16 約10年間,シリアのアンティオキアは,聖霊の導きの下に,熱心な宣教活動が行なわれるための中心地となりました。(使徒 13:1-4; 14:26; 15:35,36; 18:22,23)パウロは様々な仲間の宣教者と連れ立って,広範囲に及ぶ証しのための旅行を3度行ない,キリスト教を小アジアとギリシャの全域に広めました。彼らはユダヤ人にも異邦人にもキリストを宣べ伝えました。あるとき,パウロとバルナバは怒り立ったユダヤ人のグループに,こうした活動の仕方が正しいことを示して次のように述べました。
「神のことばはまずあなたがたに対して語られることが必要でした。あなたがたがそれを押しのけて,自らを永遠の命に値しないものと裁くのですから,さあ,わたしたちは諸国民のほうに行きます。事実,エホバは次のようなことばでわたしたちに命令を課しておられます。『わたしはあなたを任命して諸国民の光とした。地の果てにまであなたが救いとなるためである』」。
ルカは次のことを付け加えています。「諸国の人たちはこれを聞いて喜び,エホバのことばに栄光を帰するようになった。そして,永遠の命のために正しく整えられた者はみな信者となった」― 使徒 13:46-48。
17 パウロとバルナバは,メシアなる僕に関する預言を引用し(イザヤ 42:6; 49:6),その預言を自らの活動に適用することによって,自分たちと仲間のクリスチャンが実際には「地の果て」にまで「光」と「救い」をもたらす使命をエホバから受けた「キリストの代理をしている」ことを示しました。次いでキリストは,「地の最も遠い所にまで」証人となるという命令をご自分の追随者たちに与えられました。―コリント第二 5:20。使徒 1:8。イザヤ 49:5-9をルカ 2:25-32と比較してください。
長期間にわたる使命
18 「地の最も遠い所にまで」証人となるという初期クリスチャンの努力について,わたしたちはどんなことを知っていますか。
18 これまで見てきたように,「使徒たちの活動」は,使徒たちと初期のクリスチャンたちが,エルサレム,ユダヤ,サマリアで,またできる限り遠方の「地の果て」にまで証しを行なうというキリストから与えられた使命を熱心に遂行する努力を払ったことを示しています。例えば使徒ペテロが忠実なキリストの証人としてはるか東方のバビロンにまで赴いたこと,そしてパウロがはるか西方のイタリアで証しを行ない,スペインという遠方でもそうしたと思われることをわたしたちは知っています。―ペテロ第一 5:13。使徒 28章。ローマ 15:23-28。
19 キリストが別れ際にクリスチャンたちにお与えになった命令が現在にまで及んでいることを,何が示していますか。どんな質問が生じますか。
19 しかし,「地の最も遠い所にまで」証人となるようにという,別れ際にキリストから与えられた命令がより広範囲に及ぶものであることは疑うべくもありません。イエスご自身の預言によれば,それは使徒たちの生きていた期間を越え,「事物の体制の終結」の時にまで続くものです。(マタイ 24:3,14)それでも,初期クリスチャンたちの残したりっぱな模範を振り返るとき,わたしたちは大いに強められ,信仰は鼓舞されます。ここで次のような質問が生じます。それは,今日使徒たちが始めた良い業を行なっているのはだれか,そしてどんな方法で彼らはキリストとその天の父に対する証しを文字通り「地の最も遠い所にまで」行なっているか,という質問です。その点については次の記事で調べてみましょう。
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行って,弟子を作りなさい!ものみの塔 1981 | 6月1日
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行って,弟子を作りなさい!
1,2 (イ)「地の最も遠い所」という表現は,時の経過とともにどんな新しい意味を帯びるようになりましたか。(ロ)証しを行なうというクリスチャンの使命が西暦1世紀のクリスチャンたちをもって終わるわけではないことをイエスはどのように示されましたか。
使徒 1章8節に記録されている,地の果てにまで証人となるようにというイエスの別れ際のご命令は,時間的にも地理的にも初期クリスチャンをもって終わることはありませんでした。初期のクリスチャンたちは足を延ばせる限り「世界中で」,つまりその当時の「天下の全創造物の中で」「良いたより」を告げ知らせ,立派な仕事を行ないました。(コロサイ 1:5,6,23)しかし時の経過とともにこれらの表現は新しい意味を帯びるようになりました。人々が非常な勢いで六つの大陸と無数の島々に,文字通り「地の最も遠い所にまで」広がって行ったからです。
2 イエスはこの点を十分わきまえておられました。ご自分の弟子たちすべての益のために,つまり西暦1世紀のクリスチャンだけではなく,その後のあらゆる時代のクリスチャンたち,とりわけ,「事物の体制の終結」の時期に地上に住んでいるクリスチャンの益のために,復活したキリストは次のように述べられました。
「わたしは天と地におけるすべての権威を与えられています。それゆえ,行って,すべての国の人びとを弟子とし,父と子と聖霊との名において彼らにバプテスマを施し,わたしがあなたがたに命令した事柄すべてを守り行なうように教えなさい。そして,見よ,わたしは事物の体制の終結の時までいつの日もあなたがたとともにいるのです」― マタイ 28:18-20。
3 一人の学者の意見によると,油そそがれたクリスチャンたちはどんな業を成し遂げなければなりませんでしたか。
3 キリストがご自分の昇天される日に弟子たちにお与えになった命令は西暦1世紀に完全に遂行されたわけではありません。その証拠を必要とする人にとって,前述の言葉はその証拠となります。その命令は,「事物の体制の終結」の時までずっと遂行されることになるのです。だれによってですか。興味深いことに,ライランドのF・F・ブルース教授は使徒 1章8節に関して次のように書いています。「イエス自身がそのバプテスマに際して聖霊と力によって油そそがれたように,その追随者たちも同じく油そそがれ,イエスの業を行なうことができるようになった。この業は証しを行なう業であり,そのことが使徒行伝を通じて使徒たちによる伝道の業の顕著な主題となっている。(2:32; 3:15; 5:32; 10:39; 13:31; 22:15,などの部分を参照。)旧約聖書中の一預言者はイスラエルを世界における神の証人に召していた。(イザヤ 43:10; 44:8)一国民としてのイスラエルが達成できなかった仕事は主の完全な僕であられるイエスによって取り上げられ,イエスからその弟子たちに引き継がれた」。
4 残りの者はいつからこの命令を遂行してきましたか。このことに非常に大きな信仰が必要だったのはなぜですか。
4 そうです,地の果てにまで証人となってこの「事物の体制の終結」の時期にあらゆる国の人々を弟子とするようにという命令は,霊的イスラエルの油そそがれた残りの者に引き継がれてきました。その人々は集合的に「エホバの僕」そしてエホバの「証人」となっています。(イザヤ 43:10-12,新)彼らはこの命令を,特に1919年以来忠実に遂行してきました。しかし霊によって生み出されたこれら数千人のクリスチャンたちは,「地の最も遠い所にまで」散っている幾十億の人間にどのように達することができるのでしょうか。このような仕事を引き受けることを考えるだけでも,非常に大きな信仰が必要でした。
5 現代のクリスチャンが地の果てにまで証しを広める面でどんな手段が助けとなってきましたか。
5 エホバの証人の現代の歴史aを読み返してください。王国の音信を遠く広く普及させるための主要な手段の一つが,雑誌,つまり「ものみの塔」誌とその姉妹誌である「目ざめよ!」誌(以前の「黄金時代」,その後の「慰め」)の配布であったことが分かるでしょう。聖書に基づくこれらの定期刊行物は,地の四隅にまで100以上の言語で文字通り幾十億冊bも配布されてきました。
「騎兵隊」
6,7 (イ)油そそがれた残りの者は啓示 9章の中で何によって象徴されていますか。彼らは何を自由に駆使することができますか。(ロ)これは何を表わすものですか。(ハ)この預言に関し『その時,神の秘義は終了する』と題する本はどんな注解をしていますか。
6 啓示 9章で,油そそがれた残りの者は,『大川ユーフラテスのところにある』大いなるバビロンの捕らわれから解放された「四人の使い」つまり使者によって象徴されています。(14,15節)自由にされたこれらの使者たちは,象徴的に人類の大部分を『殺す』ために用いられる「万の二万倍」つまり2億を数える「騎兵隊」を自由に駆使することができます。(16-19節)この幻の中の「馬」は,「大いなるバビロン」(偽りの宗教の世界帝国)の最も非難すべき部分であるキリスト教世界を特に対象としたエホバの裁きの音信を公にするため,油そそがれた残りの者が用いる手段を表わしています。
7 『その時,神の秘義は終了する』と題する本はこの魅力的な幻について説明し,こう述べています。「これら象徴的な『馬』の襲撃は,ものみの塔の雑誌が街頭や家から家,また店から店へ配布され始めることにより,一段と勢いを増しました」。(271ページ)ですから,これらの象徴的な「馬」の中には書籍,小冊子,冊子なども含まれますが,王国の証しを「地の最も遠い所にまで」広める面で雑誌がこれまで,重要な役割を果たしてきたことに,また今なお重要な役割を果たしていることに疑問の余地はありません。c
8 油そそがれた残りの者は,『行って弟子を作りなさい』というキリストの命令にもどのように従ってきましたか。
8 油そそがれた残りの者は,こうした象徴的な騎兵を偽りの宗教の要塞を攻撃するため熱心にまた勇敢に用いただけではなく,『行ってすべての国の人びとを弟子とし,バプテスマを施しなさい』というキリストの命令にも留意してきました。1935年以来,ますます多くの人々は偽りの宗教の世界帝国に対して発表された裁きの音信を読み,「『大いなるバビロン』から出なさい」という神の命令に従ってきました。(啓示 18:1-4)それらの人々はエホバ神に献身し,「父と子と聖霊との名において」バプテスマを受けました。自らも「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌によって助けられた彼らは,油そそがれた残りの者に加わって,これらの優れた雑誌を遠く広く,そうです「地の果てに」広めてきました。―イザヤ 49:6,新。
あなたは「良いたより」の熱心な宣明者ですか
9 クリスチャン各人の義務とは何ですか。
9 「地の最も遠い所にまで」証人となり,行って,「すべての国の人びとを弟子としなさい」という命令は,クリスチャンを自任する人すべてに当てはまります。したがって献身したエホバの証人たちはすべて,この神聖な命令の遂行にあずかりたいという心からの決意を抱かなければなりません。
10 (イ)「大群衆」の一員である人はどんなことを忘れてはなりませんか。(ロ)しかし一部の人はどんな態度をとっていますか。
10 もし今あなたが啓示 7章9-17節に描写されている「大群衆」の一員であるなら,次のことを忘れてはなりません。つまり「大患難から出て来る」ためには,「救いは,み座にすわっておられるわたしたちの神と,子羊とによります」と「叫びつづけ」なければならず,「その神殿で昼も夜も神[エホバ]に神聖な奉仕をささげ」ることをやめてはならないのです。しかし最近一部の人は,年に一度のキリストの死の記念式に出席し,ものみの塔協会の出版物を読んで最新の聖書の知識についてゆき,集会には時々出席し,クリスチャンとしての光を輝かせるために善良な生活を送り,機会が開けたならば,あるいはそういう時だけ証しを行なえばそれで十分だ,という態度をとっています。
11 クリスチャンの使命は単に善良な生活を送るだけで遂行できますか。それともほかにどんなことをしなければなりませんか。
11 しかしこれだけで十分でしょうか。もし初期のクリスチャンや現代の油そそがれた残りの者が,善良な生活を送るだけで現状に満足し切っていたなら,どうして「地の最も遠い所にまで」クリスチャンとしての証しが行なえたでしょうか。『すべての国の人びとを弟子とする』ためには,まず『行く』ことが必要です。そうです,出掛けて行って,「家から家へ」そして「人びとの家で」証しをしなければならないのです。(使徒 5:42,新世界訳; 今日の英語聖書)この公の証しは,わたしたちの「神聖な奉仕」の欠くことのできない部分です。
12 一部の人はどんなことを忘れてしまったかもしれませんか。そのような人々は今どうするように勧められていますか。
12 あなたはどんな立場に立っていますか。あなたはこれまで,象徴的な「馬」,とりわけ協会の雑誌を用いて「良いたより」とエホバの裁きを知らせることに心からの喜びを得ている王国伝道者でしたか。手をゆるめたり全くやめてしまったりするのは,こうした活動の霊的な意味,つまり『エホバの側の善意の年と,わたしたちの神の側の復しゅうの日をふれ告げる』という使命を遂行する油そそがれた残りの者を助けることの重要性を見失ってしまったからでしょうか。(イザヤ 61:1,2,5,新)そうであれば,エホバへの奉仕にもう一度忙しく携わって喜びを見いだす絶好の時は今です。
自分の考えを述べることに困難を覚えていますか
13,14 (イ)ある人が,家から家の証言をしりごみする場合があるのはなぜですか。(ロ)そうした内気な性質を克服するよう助けるために,どんな実際的な提案がなされていますか。
13 自分の考えをすらすらと述べることができないので,家から家に証しを行なうのは難しいと考えている方がおられるかもしれません。あるいはあなたは,協会の雑誌を読むことや王国会館でエホバの証人と集まることの価値を認めながらも,何を話したらよいのか分からず,それが心配で家から家の証言に参加しようとしない幾百万もの人々の一人かもしれません。証しは「地の最も遠い所にまで」行なわれなければならないこと,また「すべての国の人びと」から弟子を作らなければならないことは重々承知していながら,戸口に立つ人々と接することは自分にはできそうもないと考えるのです。自分がそれをしなければいけないことや聖書的な資格に自分がかなっていることは分かっていても,どうしてもできないと感じているのです。心は神のみ言葉の真理に対する感謝で満たされているのですが,自分の口は必要な言葉を見いだせないという不安から,足が最初の戸口へ向かうことをかたくなに拒んでいるのです。こんな場合にはどうしたらよいでしょうか。
14 手始めに,聖書を取り出してローマ 10章8節から15節をもう一度読んでみるとよいでしょう。このようにすれば,出掛けて行って「良い事がらについての良いたよりを宣明」したくなり,足がむずむずするに違いありません。次にエホバに,そうです「力を与えてくださるかた」に強さを祈り求めてください。(フィリピ 4:13。使徒 1:8と比較してください。)それから,今度王国会館か最寄りの書籍研究へ出掛けたときに,家から家に「良いたより」を告げ知らせる面である程度の経験を積んだ証人と連絡を取れるようクリスチャンの長老の一人に頼んでみてください。この王国伝道者は,あなたが初めから家の人と聖書に基づいた会話を行なうことは期待しないでしょう。その伝道者は,戸口から戸口を一緒に回って「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌という優れた雑誌を一般の人々に提供する前に,少しの時間を費やしてそれらの雑誌の最近号を共に考慮するよう提案するに違いありません。
15 家から家の証言に関する経験を積む面で,また家庭聖書研究を始める面でなぜ雑誌活動は理想的と言えますか。
15 雑誌を用いて証言することは,宣べ伝えて弟子を作る業を始めたりその業にもう一度忙しく携わり始めたりするための理想的な方法です。確かにこれは,人々の中に出掛けて行き,家から家の証言に関する経験を積む面で,最も容易な最も優れた方法です。どの号にも話題にできる新しい点が含まれています。それに加えて,雑誌を受け取った人すべてを再訪問するなら,最近号の雑誌を携えて定期的に訪問できる訪問先の一覧表がすぐにできることでしょう。徐々にこれらの人々を知ることができるようになります。「考えてみたことがありますか……」(「目ざめよ!」誌)のような一連の記事を用いれば,会話の糸口を見つけ,さらには聖書研究を始めることさえできるでしょう。まず家の人に最初の節を読んであげ,印刷されている最初の質問(副見出し)を尋ねます。答えてもらってから次の節と参照聖句を読みます。それから次の質問(副見出し)に移り,家の人の時間が許す限り同じように行なうのです。この方法を試みてはいかがですか。定期的にこのような「神聖な奉仕」をエホバにささげることから得られる喜びと敬神の満足に,きっと驚かれることでしょう。―啓示 7:15。
若いクリスチャンたち,これらの「馬」を前進させなさい!
16 若いクリスチャンたちも関係していることをどんな聖句が示していますか。
16 「地の最も遠い所にまで……証人」となるという責任は,老若を問わずすべてのクリスチャンに課せられています。預言的な詩である詩篇 110篇はキリストに関して次のように述べています。
「あなたの力強い棒を,エホバはシオンから送り出して,こう言われます。『あなたの敵のただ中で従わせなさい』。あなたの民はあなたの軍勢の日に,進んで自らをささげます。神聖さの光輝のうちに,あけぼのの胎より,あなたは若者の隊を露玉のように得ておられます」。(詩 110:2,3,新)
メシアに関するもう一つの詩は,キリストの花嫁の「友」となる「処女」について述べています。(詩 45:13,14,新)これらの句はともに油そそがれた残りの者と文字通り皆さんのような「若者」や「処女」を含む「大群衆」に適用されます。ですから皆さんも「進んで自らをささげ」,まだ地上に残っている油そそがれた花嫁級の人々に対する忠節な「友」とならなければなりません。この花嫁級は,サタンの世界的な宗教帝国を向こうに回す「騎兵隊」を指揮する「四人の使い」によって象徴されています。―啓示 9:15-19; 21:2,9。
17 多くの立派な若い男女はどのように「神聖な奉仕」を行なっていますか。
17 エホバの証人のブルックリン本部や世界中にある97の支部で「神聖な奉仕」を行なっているそのような若い男女は数多くいます。そうした場所で彼らは,象徴的な「馬」,つまり「わたしたちの神の側の復しゅうの日」に関連した裁きの音信を載せ,また「エホバの側の善意の年」に関する慰めとなる真理を説明する出版物の準備や発送に直接関係した様々な仕事を進んで行なっています。(イザヤ 61:1,2,新)進んで行なうこれらの人々は野外で用いるための「馬」を準備することにあずかるだけではなく,実際の野外奉仕にも参加し,こうした「馬」,特に雑誌を広範囲に用いています。
18 (イ)他の若いクリスチャンたちは,自分たちが残りの者たちの熱心な友であることをどのように証明していますか。(ロ)王とその「兄弟たち」は,彼らの熱心さをどうみなしていますか。
18 他の若いクリスチャンたちは「進んで自らをささげ」,“開拓者”として奉仕することにより,つまり公の証言活動に年間少なくとも1,000時間をささげることによって油そそがれた残りの者の熱心な友であることを証明しています。こうした若いクリスチャンたちすべての熱心さは,王であるイエス・キリストと地上にいるその油そそがれた「兄弟たち」から高く評価されています。―マタイ 25:34-40と比較してください。
19 他のすべての若いクリスチャンたちにどんな励ましが与えられていますか。
19 しかしエホバの民の会衆内にも他の「若者」や「処女」が大勢います。あなたは『キリストの軍勢の日に進んで自らをささげ』ていますか。それとも,象徴的な「馬」が部屋の中にたまるままに,証言かばんの中で眠るままにしていますか。これらの「馬」を前進させてください! 放課後,週の中休み(そうした取決めがあれば),週末,一年を通じて与えられる様々な休みの期間に野外に出るようにしましょう。補助開拓奉仕は,「神聖な奉仕」に「進んで自らをささげる」ためのすばらしい機会となります。そして雑誌を用いる業は,クリスチャンとしての証言の中でもとりわけ若い人たちに打って付けの方法です。それはあなたの手の届く所にあって,すばらしい結果をもたらし得るのです。
終わりに至るまで続く熱心な証し
20,21 (イ)キリストは1世紀のクリスチャンと「終わりの日」に住む人々にどんな命令を与えられましたか。(ロ)歴史学の一教授の証言は何を示していますか。(ハ)この目的のためにエホバの証人は雑誌をどのように用いてきましたか。
20 イエスは初期クリスチャンたちに,「あなたがたは……地の最も遠い所にまで,わたしの証人となるでしょう」と述べられました。(使徒 1:8)「終わりの日」ないしは「終わりの時」に住むクリスチャンたちに対してイエスは預言的にこう述べられました。「王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです」― マタイ 24:14。ダニエル 12:4。テモテ第二 3:1。
21 初期クリスチャンの大敵であったユダヤ人の大祭司は,残念そうに,『見よ,あなたがたはエルサレムをあなたがたの教えで満たしてしまった』と言わざるを得ませんでした。(使徒 5:28)歴史学の教授であるチャールズ・ブレイドンは自著「これらの人々も信じている」と題する本の中で次のように書いています。「エホバの証人は文字通り自分たちの証しで全地を覆い尽くした。……王国の良いたよりを広めようとする試みにおいてエホバの証人ほどの熱心さと不屈の精神を示した宗教団体は世界中で一つもなかったと断言できよう」。1919年にはわずか数千人を数えるにすぎませんでしたが,油そそがれた残りの者はこの挑戦を受け入れました。聖霊の「力」により,また彼らの友である「大群衆」がいよいよ増加し,彼らからの助けも増したので,残りの者は確かに「文字通り自分たちの証しで地を覆い尽くした」のです。1919年から1980年にかけて,これらのクリスチャンは,「ものみの塔」誌とその姉妹誌(「黄金時代」,「慰め」,そして現在の「目ざめよ!」誌)を合計47億5,000万冊以上配布しました。
22 事実は何を示していますか。それゆえにわたしたちすべてはどうすることが勧められていますか。
22 これらの立派な,キリスト教の二種類の雑誌は,地の果てにまで証しを行ない,「すべての国の人びとを弟子と」する上で重要な手段となってきました。そのことはこれからも変わりません。(マタイ 28:19,20)証拠が示すとおり,行なわなければならない証しの業はまだ多く残されています。それで忠実なクリスチャン証人である皆さん,「馬」に乗ってください。その「馬」を求め,“野外”で絶えずそれらを前進させてください。これからも,「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌を徹底的に用いる業をエホバが引き続き祝福してくださいますように。
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