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年輪計算と結びつけられている放射性炭素に基づく年代目ざめよ! 1972 | 7月8日
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そういうわけで,炭素14による年代決定が,時おり年輪に問題のある標本を合わせるのに指標となっていることは明らかです。では,この手段がとりいれられていることは,年輪年代学もそれほど確実なものではなく,その支持者たちは,放射性炭素による年代決定の支えを求めているのではないか,という疑念を持つ理由になりますか。この疑念はあながち事実無根とは言えません。というのは,デイモン教授は,年輪年代への私的な確信を述べたあと,「それでも,なんらかの客観的な比較が,たとえば別の年代測定法との客観的比較ができれば気強い。歴史的に年代の決まっている標本を炭素14によって測定することが実はそれなのである」8 とつけ加えているからです。
もし年輪に基づく年代が,歴史に基づく年代によって支えられている範囲,つまりわずか4,000年前まででも放射性炭素に基づく年代との比較によって支持される必要があるとすれば,それより4,000年も5,000年も昔にさかのぼる場合はいったいどうすればよいのでしょうか。
木質の年代を決定するさいの問題
二つの年代を相互に支持するものを強化する努力は,専門家のあいだでかなりの論議を呼んだ別の問題ではばまれています。現在,放射性炭素に基づくすべての年代の基礎となっているブリスルコーンパインの標本の放射性炭素による年代分析においてさえ,標本に変化が生じた可能性を考慮しなければならないのです。貝殻の石灰岩や骨の中の炭酸塩などのような無機物が,溶解した古い炭酸塩または若い炭酸塩のいずれかと交換しやすいことは知られています。そのために,それらは,年代測定にはほとんど役にたちません。セルローズのような有機物はおそらく交換しないものと考えられています。生の樹液は枯木から洗い流されます。しかしもしいく百年もいく千年も木の中を循環してきたものならば,その樹液が崩壊しつつある炭素14を一部とりかえなかったと断言できるでしょうか。
樹液とちがって樹脂は除去が困難です。ファーグソンは,ブリスルコーンパインの木材の「樹脂の多い性質」に言及しています。12 樹脂が若い木質部から古い木質部にはいり込み,それが誤差のもとになりうるということは,専門家たちも一様に認めています。「樹脂が内部に向かって広がるのはたしかに当然の結果である」。13 「この樹脂の問題は重要である。樹脂が木の内部に深く入りこむにつれて訂正がふえる場合はとくにそうである」。13 一つの実験では,抽出された樹脂は木質部よりも明らかに400年ほど若いものでした。
しかしながら,このような化学的処理の効果については,専門家の意見はまちまちでした。ある専門家は,木材を酸で,次にアルカリで煮ると「樹脂は全部なくなる」14 と言いました。別の専門家は,「ブリスルコーンパインの樹脂を,無機化学物質による処理で完全に除去することはできないと思う」14 と言いました。けれども,有機化学溶剤を使えば,その溶剤があとで完全に除去されたかどうかを心配しなければなりません。なぜなら,その溶剤のほんのわずかな新しい炭素でも,古い木材の標本の年代を若返らせるおそれがあるからです。もちろん,その種の誤差を全部排除するよう良心的努力が払われてはいますが,完全に成功しているでしょうか。わたしたちはどれほどの確信がもてますか。
氷縞を数える
会議では,過去にさかのぼって年を教えるもう一つのよく似た方法が論議されました。それは氷河の氷縞にもとづく方法です。氷縞というのは,砂と沈泥が交互に重なった層で,毎年,氷河が溶けるときに形成されると考えられています。そしてこれは継続した記録を提供すると言われており,スウェーデンのある氷縞は1万2,000年の昔にさかのぼります。これもまた,放射性炭素に基づく年代と結びつけて考えうる絶対年代表として推薦されました。しかしその土台は実際にどれほど確実なものでしょうか。
スカンジナビアの氷縞年代表は,スウェーデン全土の方々で観測された部分を継ぎ合わせたものです。その記録は,いくつかの理由で,年輪にもとづく年代表よりもずっと有効性にとぼしいようです。
一つには,その年代表には,樹木の年輪に相当するような,現代につながるものがありません。最後の氷縞が形成された時にかんする推定年代の相違にも大きな開きがあります。また,年ごとの堆積層を見分けるさいの問題も事を不確実にする要素です。ある地質学者は,スカーネにある一連の氷縞の生じ始めた年代を西暦前1万2950年とし,別の地質学者は西暦前わずか1万550年としています。「スウェーデン地質調査局」のE・フロム博士は次のように述べています。「これらの例は,いろいろ考えられる年代を地質学上の状況から演繹的に制限できることを示すものではなかった。また,いわゆる『テレコネクション』から得られる結果が,とても信頼できるものでないことが明瞭だった。さらに,スカーネのこれらの場所の場合,氷河の溶けた水でできた小さな湖沼底に沈殿作用で形成されたしま状の堆積物すべてが,実際に年ごとにできた氷縞であるかどうかに疑問がある」。15
ここで,氷縞は必ずしも年ごとの堆積物を示すとは限らないということが認められている点に注目してください。現実には氷縞は,速い流れとゆっくりした流れが交互に起こる状態を示すもので,その流れは気候の状態によっては1年に数回起こるかもしれません。「スウェーデン地質調査局」のホーンステン博士の指摘するところによると,各氷縞の調査には,1年分を2年分に数えないように非常な注意が必要であった。1年のあいだに堆積した一つの氷縞が,溶けた氷の流量の変化のために,一つか二つの疑似冬期層を持つかもしれないからである(樹木の二重年輪と比較せよ)」。16 エール大学の著名な地質学者R・F・フリント教授は,一つの氷縞を定める規準をはっきり述べてもらいたいと頼みましたが,シンポジウムの記録の示すかぎりでは,それは示されなかったようです。17
以上が,ノーベル・シンポジウムで提出された「絶対年代表」です。人気のある科学雑誌の記事を読むと,放射性炭素による年代決定はこれまでになく確立されたという印象を受けやすいかもしれません。しかし,ウプサラ会議で行なわれた舞台裏の討論に注意深く目を通すと,不確実な点がいっそう多くなったことがわかります。放射性炭素説はもはや,それに基づく年代を受け入れてよい確実な根拠を提供するものではありません。20年にわたる研究結果は,放射性炭素説の根底にある仮定の大半を大いに薄弱なものにしました。
そこで今頼りとされているのは,新しい方法 ― 年輪による年代決定 ― を研究する,ただ一つの研究グループの活躍です。この技術も,方々の研究所で20年にわたって熱心に研究されたなら,さらにどんな弱点が発見されるでしょうか。近い将来重大な決定をしなければならないときに,あなたは聖書よりも,むしろこういう現状にある年輪年代学に頼られますか。
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最も塩分の濃い湖水目ざめよ! 1972 | 7月8日
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最も塩分の濃い湖水
● イスラエルとヨルダンの間を流れるヨルダン川の南端に位置する死海は,地上で最も塩分の濃い二つの湖水の1つである。その塩分は海水のそれのおよそ6倍もあり,おもに塩分から成る無機物を約24%含んでいる。塩分の含有量の点でこれと比肩できるもう一つの湖水はアメリカ,ユタ州のグレートソルト湖である。
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