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アレルギー ― どうすればよいか目ざめよ! 1985 | 6月22日
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アレルギー ― どうすればよいか
毎年8月になるとジョイスのくしゃみが止まらなくなります。ジョイスの夫はカニを食べてショック症状を起こし,死にそうになったことがありました。二人の間に生まれた息子の一人は激しい運動をすると呼吸障害を起こし,娘はこの前ペニシリンを投与された時,じんましんを起こしました。
幸い,ジョイスの家族はどこにでもある家庭の典型というわけではありません。しかし,米国1か国だけでもアレルギーの問題がどれほどの規模に達しているかを考えてみるとよいでしょう。同国では全人口の17%に当たる人々が著しいアレルギー反応を経験すると言われており,慢性病患者の中では最も大きな部分を占めています。その上,環境がさらに複雑になり,汚染されてゆくにつれて,アレルギーと診断される疾患の数は増加してゆくに違いありません。
身の回りにある物に対して過敏な反応を示す人が多いというのは比較的最近発見された事実です。しかし,キリストの誕生する4世紀前に,ヒポクラテスは,今日のわたしたちがぜん息と呼ぶ病気について述べています。致命的な結果をもたらしたアレルギー反応の最初の記録と思われるものは古代エジプトの王,メネスの墓で発見されました。この王はスズメバチに刺されて死んだのです。
自分がいつも決まって夏“風邪”を引くことに注目し,“枯草熱”という表現を最初に使ったのは,1800年代初頭の人である,英国のジョン・ボストック博士だったと考えられています。1906年に,オーストリアの一小児科医が,“正常とは異なった反応”と大ざっぱに訳せる二つのギリシャ語の言葉に由来する“アレルギー”という語を提唱しました。
アレルゲンと抗体
アレルギー体質の人を悩ませているのは,この正常とは異なった反応です。わたしたちは生まれた時から,自分の体にとっては異物とされる数多くのものを吸い込んだり,飲み込んだりそうしたものに触れたりします。大半の人にとって,そうした行為は無害であるように思われます。ところがアレルギーのある人は,自分が異常に過敏な反応を示す物質を,ごく少量であっても吸い込んだり,飲み込んだり,それに触れたりすると,特異性の症状を示します。アレルギー反応を引き起こす物質は,アレルゲンとして知られています。
一般によく見られるアレルゲンには次のような物があります。
● 吸入因子 ― 花粉,ほこり,カビ,そしてイヌやネコのフケ。
● 摂取因子 ― 卵,チョコレート,ナッツ,貝,牛乳,抗生物質,それにアスピリン。
● 接触因子 ― ツタウルシ,染料,金属,羊毛,そして化粧品。
● 注射因子 ― ミツバチやスズメバチによる虫さされ,およびペニシリン。
これは数あるアレルゲンのうち,ほんの幾つかにすぎません。事実,その数には限りがないように思われます。
では,どんなことが起きて,アレルギー反応を生じさせるのでしょうか。通常,人間は,細菌のような侵入して来る異物と闘うために抗体と呼ばれる物質を体内で作り出します。アレルギー体質の人の場合,こうした防御機構が過度に反応するのです。抗体が,上に挙げたアレルゲンのような異物を攻撃するのです。免疫グロブリンE(IgE)という特異な型の抗体が体内で過剰に生産され,それを刺激するアレルゲンに出会うと激しい結果が生じるのです。この反応により,ヒスタミンのような化学物質が放出されます。ヒスタミンのせいで,鼻水が出,目がかゆくなるのです。
なぜ,なぜ,なぜ?
アレルギーに悩まされる人はだれでも,「なぜ私に?」という大きな疑問を抱きます。答えがすべて分かっているわけではありません。遺伝が重要な要素になっていることは分かっています。一調査の示すところによると,枯草熱の患者の80%には,家族の中にこのアレルギーの既往症を持つ人がいました。この傾向は遺伝しますが,ある特定のアレルギーが必ずしも遺伝するわけではありません。親はぜん息に悩まされていても,子供は枯草熱に悩まされるかもしれません。
また,緊張,働き過ぎ,疲労,恐怖感,過度の怒りなど感情的なストレスがアレルギーを誘発することがあるという点でも,概して意見の一致が見られます。しかし,心身相関の要素だけが実際にアレルギーを生じさせるかどうかという問題については,一層の研究が必要とされています。
そして言うまでもなく,数多くの汚染物質をはらんだ,いよいよ複雑になる環境という要素もあります。これがどの程度アレルギーの増加を助長しているかは分かりませんが,汚染された空気がぜん息患者に悪影響を及ぼすことに疑問の余地はありません。
グロリアは公害にあえぐ大都市に住む中年のぜん息患者です。彼女は過去14年間ぜん息に悩まされてきました。苦しげな息遣いをしながら,こう述べています。「発作が始まると,息ができなくなり,恐怖感にとらわれます。昨日はだれかから電話がありましたが,話ができないので電話に出られませんでした。それで,電話が鳴るにまかせておきました」。
健康な人は,アレルギーが人に容易ならぬ影響を及ぼし得るということなど信じられないかもしれません。アレルギーに苦しむ人々が,ぜん息であれ他のアレルギーであれ,自分の抱えるアレルギー反応の問題について話すと,大抵の場合に疑わしげな目で見られたり,他の同様の反応を示されたりします。カナダのあるアレルギー患者は,「この問題をほかの人に理解していただくのは非常に難しいことです。わたしたちは,疑いや不親切な言葉ではなくて,親切な思いやりをも必要としているのです」と語っています。
自宅でよく客をもてなすことがあるのなら,アレルギーに悩む人々に親切な配慮を示し,そうした人々に不快な思いをさせる原因を除くようにしたいと思うかもしれません。
どうすればよいか
“アレルギー”という語は,幾つかの異なった病気に当てはまります。ですから,それらの病状を簡単に調べてみて,どんな解決策があるか考えてみましょう。
ぜん息はアレルギー性疾患すべての中でも最も重い病気です。患者の多くは普通の生活を送れるとはいえ,ぜん息は依然として命取りになりかねない病気です。肺から空気を出すことや肺に空気を入れることが自由に行なえなくなるため,発作時に独特のゼイゼイという喘鳴がします。アレルゲンとして知られているものを家の中や仕事場の環境から除き去り,呼吸運動をするといった予防策を講じることにより,この問題を抑えることができます。さらに,治療法について言えば,内服用の錠剤の点でも,吸入器の面でも,最近幾らかの進歩が見られました。ぜん息患者に対しては,無理なことは避けつつも,できるだけ活動的な生活を送るよう勧めなければなりません。親族や友人たちは,ぜん息にかかっている人を過保護にする誘惑に抵抗しなければなりません。
枯草熱は最も広く見られるアレルギー反応です。枯草熱は概して危険なものではありませんが,症状が重くなると患者はたいへん苦しみます。“枯草熱”という名は誤った印象を与えやすい名称です。この症状の原因は枯草ではないからです。一般には花粉が,時にはカビが原因になります。また,患者が実際に熱を出すことはめったにありません。枯草熱は草や雑草や木が花を咲かせる春か秋に起きるのが普通です。症状がひどくなりすぎるなら,抗ヒスタミン剤や吸入薬でその症状を抑えることができるかもしれません。
通年性アレルギー性鼻炎は,一年中鼻が刺激されている状態のことで,鼻水や鼻づまりといった普通の,不快な症状が含まれる場合があります。子供たちはよくこれにかかり,親のほうは,子供が幾度も繰り返して風邪を引いていると誤って考える結果になります。最も一般的な原因はほこり<ハウスダスト>,動物のフケ,そしてカビなどです。この点で皮膚テストは役に立つかもしれませんが,その結果は紛らわしいことがあります。ですから,こうしたテスト法は,アレルゲンである可能性の強い物質を見分ける助けぐらいに見ておくとよいでしょう。この病気に対する最善の治療法は,できる限りアレルゲンを避けることです。これは家族で飼っているペットを処分することを意味するかもしれません。あるいは,マットレスやじゅうたん,縫いぐるみのおもちゃ,および類似の物に容易にたかるほこりを減らすために,家の中で特別な予防措置を講ずる必要があるかもしれません。
皮膚炎は赤く腫れたり,水ぶくれができたり,じくじくしたり,かさぶたになったりする,皮膚の炎症です。今日,“湿疹”という言葉が慢性皮膚炎の同義語になっています。家庭や職場で,皮膚はありとあらゆる刺激物にさらされますが,普通はその有害な影響に抵抗できます。しかし,そうした刺激物の中には,ある人にアレルギー反応を起こさせる物があり,そのような物質の数は新製品や新しい化合物が開発されるにつれて増えています。接触による皮膚炎を治療するには,まず刺激の原因になっているアレルゲンを取り除くことです。
じんましんは,かゆみを伴う,盛り上がったミミズばれのようなもので,皮膚に突然現われ,普通は数時間たつと,現われた時と同じほどなぞめいた仕方で消えてゆきます。場合によっては,消えてなくなるまで,何か月ものあいだ断続的に現われます。じんましんは,広範に及ぶさまざまなアレルゲンによってだけでなく,寒気,熱および不安など数々の事柄によっても引き起こされることがあります。じんましんはアレルギー専門医の悩みの種です。実際の原因を見分けるのが難しいからです。じんましんが消えるまで,“かゆみ止め”の薬を使うことができるかもしれません。
虫さされが原因で,アレルギー体質の人はじんましんを起こしたり,失神したり,呼吸困難に陥ったり,ひどいときは死亡したりすることがあります。虫さされを避けるのに役立つ方法としては,屋外にいるときははだしで歩かない,スズメバチを引き付けるような種類のヘアスプレーや香水,ローションを避ける,暗い色の衣服よりも明るい色の衣服を身に着ける,などがあります。刺されてしまった場合には,毒の吸収を遅らせるために患部に氷をあてがい,細心の注意を払って針を取り除きます。虫さされに対して非常に強いアレルギー反応を示す人々のためには,特殊な減感作療法が受けられるようになっています。
食物アレルギーは議論の的になるアレルギー疾患で,その原因を正確に見定めて治療するのは極めて困難です。食物が大勢の人々に異なった仕方で不快感を与えることがあり,また実際に与えているのは言うまでもないことですが,その原因が食物アレルギーにある場合とそうでない場合があります。専門家の中には,本当の意味での食物アレルギーはまれであると考える人がいますが,ほとんどどんな食物でも,いずれかの人にとってアレルゲンとなり得るのです。残念ながら,食物アレルギーの診断を下す上で皮膚テストに価値があるかどうかは一般に疑わしいとされています。最も効果のある治療法は,体に合わない食物を見つけだし,それを食べないようにすることです。
薬剤アレルギーは近年悪化の一途をたどっています。薬に対するアレルギー反応は人を困惑させます。反応は多岐にわたり,死を来たすほど由々しい事態になることもあります。薬剤アレルギーがあると感じたなら,掛かり付けの医師に相談するようにします。
アレルギーについてすでに知られている事は数多くあり,過去10年間に科学者たちはかなりの進歩を見せてきましたが,今後の発見に待つべき事柄はまだまだあります。こうした発見の少なからぬ部分は神の新秩序まで待たなければならないと考えてまず間違いないでしょう。そのとき人類は完全な状態に戻り,この複雑な病気の原因が何であれ,それらは永遠に除き去られるでしょう。―イザヤ 33:24。
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アレルギーについて人々が尋ねる質問目ざめよ! 1985 | 6月22日
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アレルギーについて人々が尋ねる質問
家をこれほど清潔にしているのに,どうしてわたしはほこり<ハウスダスト>に対してアレルギー反応を起こすのでしょうか
ほこり<ハウスダスト>はどんなに清潔な家からも出ます。都市部では,6部屋ある平均的な家やアパートから年に18ないし23㌔のほこりが出ます。家をどんなによく掃除してもこの問題を完全に解決することはできませんが,有効な“ほこり対策”は数多くあります。例えば,アレルギー患者の避難所にするため,家の中の一部屋を,できるだけほこりのない所にしておきます。通常,寝室をそのような部屋にあてられるでしょう。ついでながら,羽毛まくらはほこりを集めます。
空気中のほこりを除くための様々な装置(静電気エアークリーナーなど)が市場に出回っていますが,その効果は疑問視されています。それよりも大切なのは,暖房器具や空調設備のフィルターを幾度も取り替えることでしょう。屋内の汚れた空気を排出するため,冬でも毎日家の中の換気を図るようにします。
うちの子はペットにアレルギー反応を示すのですが,ペットを手放さなければならないでしょうか
ペット志向の社会にあって,これはアレルギー専門医の抱える共通の問題です。家の中で動物を飼う人々は多く,その人たちは動物に深い愛着を抱いています。
残念ながら,イヌやネコのフケや毛に対するアレルギーはアレルギー体質の子供にとって特に重大な問題です。動物が屋外で飼われている場合には概して問題はありません。しかし,ペットが屋内で飼われていると,ほどなくしてフケが家じゅうに広がります。ですから,ペットを抱いているときのほうが,家の中の他の場所にいるときより子供の症状がひどくなるとは言えないかもしれません。ペットが“至るところ”にいる,あるいは少なくともペットのフケは至るところにあるというだけのことです。事実,フケが完全に消え去るまでには,ペットを屋外に出してから普通6か月ほどかかります。
最後の点として,このアレルギーに伴う症状は他のアレルギーに伴う症状よりも重く,このアレルギーの減感作療法に用いる注射は比較的危険の大きい注射です。アレルギー疾患対策センターの中に,ペットに対してアレルギー反応を示す子供の親が家からペットを出そうとしないなら,その親を児童虐待対策の関係当局に通報することを診療所の方針としているところがあるのももっともなことです。
うちの10歳になる子供はどれ位の期間ぜん息の注射を打たなければならないのでしょうか。大きくなれば,打たなくてもよくなりますか
アレルギーに対する減感作療法に使う注射は今世紀の初めから使われ,その結果は一定せず,注射をやめる時を知るための確かな方法はありません。大抵の専門医はアレルギー用の注射を数年打ってやめ,まだ注射が必要かどうか様子を見ます。
アレルギーの大半は幼い時に始まりますが,年齢に関係なくアレルギーになることがあります。同様に,人が年を取るにしたがって消えてゆくアレルギーは少なくありません。子供のころの食品アレルギーやぜん息は,大抵の場合,子供が成長するにつれて消えてゆくものです。人が中年に近づくと,枯草熱の症状が軽くなるかもしれません。
どうしてわたしはカビに対してアレルギー反応を示すようになってしまったのでしょうか
その答えはまだ分かっていませんが,カビ・アレルギーについては,最近になって多くのことが明らかになってきています。カビは菌類に属しており,至るところにあります。そのうち,アレルギーを生じさせる種類はごくわずかです。ある種のアレルギーを引き起こす夏のカビは,人が草を刈る際に跳ね上げられ,草そのものよりもアレルギー症状を引き起こす原因になります。別の種類のカビは一年中,家の中,それも地下室や浴室のような湿気の多いところにはえます。屋内の植物の茎や葉にはカビが生えていることが珍しくありません。
うちの子が学校で行儀が悪いのは,加工食品に含まれている食品添加物のせいでしょうか
これは今日,アレルギーに関して最も論議を呼ぶ問題といえるかもしれません。活動過多の問題がしばしば提起されます。1970年代の初頭に,幾人かの研究者たちは,食品に含まれる合成着色料やその他の化学物質がその原因となり得ることを示す証拠を提出しました。例えば,米国カリフォルニア州に住む小児科のアレルギー専門医,ベンジャミン・フェインゴールド博士は,サリチル酸塩や人工着色料,それに人工香料が活動過多を引き起こすという説を展開しました。同博士は,制限の非常に多い食餌療法を広めましたが,それに従うとすれば,ビタミンを十分に摂取できるようにするため,注意深い計画が必要とされます。
活動過多の子供たちの中には化学的な食品添加物を制限した食餌療法の効果があったと見られる子もいますが,全米科学・保健評議会は1982年に,そうした添加物は,「子供の活動過多の重要な原因ではない」と,述べました。
アレルギーを治すのに,薬の代わりにどんなビタミン剤を使ったらよいでしょうか
アレルギーの治療法はまだ知られていません。減感作療法の注射でさえ,体がアレルギーの諸症状と闘えるようになるまで,そうした症状を和らげるにすぎません。アレルギー専門医のなかには,アレルギーの治療法としてビタミンを,それもしばしば大量に用いる人がいますが,こうした病気を除き去るのにこの治療法が役立つかどうかを疑問視する研究者は少なくありません。a
皮膚テストの結果,ほとんどすべての食品に対してアレルギーのあることが分かりました。このような場合,どうしたらよいのでしょうか
最近では,ほとんどすべてのアレルギー患者が皮膚テストについて聞き及んでいます。皮膚テストの際には,アレルゲンの疑いのある食品が皮膚に注射され,それに対する反応が測定されます。自分が食べても何の問題もないような食品について皮膚に激しい反応が起きるかもしれません。それとは逆に,例えば貝に対して激しいアレルギー反応を示すことが知られている人であっても,皮膚テストではそれがはっきり現われなかったこともあります。ですから,皮膚テストではある種の食品に反応のあることが分かっていても,これまでにそれを食べて別に何の不快感も味わったことがないようなら,今後食べ続けても大丈夫でしょう。
偏頭痛があるのですが,これはアレルギーのせいでしょうか
頭の中の血管が拡張すると,偏頭痛が起こります。最近の分析調査により,ある種の食品にはそうした頭痛を引き起こす化学物質の含まれていることが明らかになっています。チョコレートやバナナ,ナッツ,ワイン,チーズ,ホットドッグ,調味料のグルタミン酸ナトリウムなどに疑いの目が向けられています。偏頭痛の原因になる事柄はほかにも数多くありますが,ほかの原因を除いてもまだ頭痛が取れないようなら,偏頭痛に悩む人はこうした食品を自分が食べる物の中から除くことを考えても良いでしょう。専門家の間では,偏頭痛の問題はアレルギーとしてではなく,化学的な問題として扱われているようです。
妊娠している時には,アレルギー疾患がよくなったように思えるのはなぜですか
中には症状の悪化する人もいますが,大抵の女性のアレルギー疾患は妊娠中には軽くなります。その原因はホルモンの成分にあるようです。詳しい理由は分かっておらず,これはアレルギーという問題について学ぶべき事柄がまだどれほどあるかを示す別の事例になっています。
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