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子供たちが姿を消す理由目ざめよ! 1984 | 7月22日
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家出をした子供の9割までが2週間以内に家に戻ります。そうした子供たちはどうして家出をするのでしょうか。大抵は,精神的に深い傷跡を残す状況や不幸な状況が家庭や学校にあるためです。青年期には,どんなにささいな性質のものであっても,渦中にある若者にとっては非常に重大で感情的にならせる状況が満ちています。親と意見が合わないこと,同年輩の仲間の嘲笑に対する恐れ,かんばしくない学校の成績,また学校で起こる問題などは,家出という反応を容易に引き起こす場合があります。
ほかの理由としては,親の別居や離婚や再婚,および法に触れるちょっとした事件の結果に対する恐れなどが挙げられます。もっと深刻な問題 ― 親のアルコール中毒,身体的あるいは性的な虐待 ― も家出事件の原因になっています。こうした状況は概して,家庭の経済状態が苦しくなった時期に増えるものです。
“捨てられた”子供たち
米国では毎年,幾十万もの子供たちが,“厳密な法解釈に基づくと,身寄りのない子供”の部類に入れられています。その大半は,“追い出された子供たち”あるいは“捨てられた子供たち”です。そうした子供たちは親に遺棄されたり家から追い出されたりするか,虐待されて,自分は望まれない子供だと強く感じるようになり,家を出るしかないと考えたのです。こうした事例の公的な記録は存在しません。自分の子供を遺棄する,つまり捨てるような親は,捜索願いを出すことなどめったにないからです。
大抵の場合,当局者がそうした子供のことで電話をかけると,親は,『そちらで預かってください。家に戻したくありません』と言います。その理由としては,養育の責任を逃れたいという気持ちや利己主義,子供がしようのない麻薬中毒者になって親の手に負えないなどさまざまです。こうした若者たちはどうなるのでしょうか。ニューヨーク・タイムズ紙によると,「身寄りのない十代の若者の多くは路上の住人となり,生きてゆくために売春婦になるか,麻薬の密売をするようになる」のです。同紙はさらに,「こうした身寄りのない若者たちにとって,家と街路との差はそれほど大きなものではない」と付け加えています。
さらに貧しい国々になると,子供の遺棄はそれにも増して一般的です。そうした国では,親がどうしても子供を扶養することができないのです。時には,子供も家族も生きてゆけるように,子供たちを売ろうとする親もいます。インドでは,困り果てた親が子供を鉄道の駅に捨ててゆくのは珍しいことではありません。またコロンビアのボゴタ市では,5,000人の宿なし子が街路をさまよい,人を食い物にしたり,人に食い物にされたりしながら,自分たちの才覚で生きているということです。
誘拐 ― 親が自分の子供を!
ほかにも幾千人もの子供たちが,自分の親に誘拐されて,“行方不明”になります。こうした誘拐は普通,別居や離婚の訴訟と関連しており,法廷から保護監督権を与えられなかったほうの親が子供を連れ去るのです。こういう子供たちの場合は,保護監督権を持つほうの親がその子供の居所を知らないという意味で“行方不明”なのです。こうした子供たちは国外へ連れ出されることもあります。そして大抵の場合,もう一方の親は死んだとか,もはやその子と暮らしたくないのだと告げられます。そうした子供の中には,身体的に虐待されるようになる子供が少なくありません。中には殺されてしまう子供もいます。
さらには,説明のつかない失踪があります。また見知らぬ人に誘拐,つまりかどわかされる子供たちがいます。これらの場合は,しばしば新聞で大きく取り上げられます。ある国々では,売春や盗みをするよう訓練して利用するために,あるいは故意に体を傷つけて哀れを誘うこじきに仕立てるために,子供たちがさらわれます。実例として引用されるのは,13歳の時に「母国のネパールからさらわれて,ボンベイの人のごった返す人身売買の市場に売られた」ツラサの例です。インディア・トゥデー誌の伝えるところによると,わずか8か月のあいだに彼女は次々に三つの売春宿に“売られ”,「2,000人もの男の倒錯した要求」を満たすことを強制されました。病気がひどくなり,「自分の年と同じほどの数の病名のリストと共に」普通の病院に入れられた時に初めて,自分を捕らえていた者の手から逃れ,自分の身に起きた出来事を洗いざらい話すことができました。その結果,“人身売買”に携わっていた28人の者が逮捕されました。
理由が何であれ,子供が行方不明になれば,子供を大切にし愛している親は極めて悲痛な思いをさせられます。これを未然に防ぐために,親にできることが何かありますか。
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親にはどんなことができるか目ざめよ! 1984 | 7月22日
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親にはどんなことができるか
米国フロリダ州に住む退職した一人の男性はこんなことを話しています。「誘かいされた子供たちに関するあるテレビのドキュメンタリー番組を見終わるとすぐに,見知らぬ人に誘い出されそうになった時にどうしたらよいか,子供たちは本当に知っているかどうか案じるようになりました。そこで,自分の知っている8歳の子供たち何人かに,知らないおじさんが優しそうに飴などをくれ,それから少しして,いい物を見せてあげるから一緒に行こうと言ったらどうするか,と質問してみました」。この人はこう言葉を続けています。「子供たちは何と言ったと思いますか。例外なく,『分からない』と答えたのです」。
「しかし,これは『田舎の子供たち』でした。丁度その週末に近くの都市へ行かねばならず,かなりの数の家族に会うことになっていたので,もっと“町のことに通じた”子供たちがどんなことを言うか調べてみることにしました」とこの人は語っています。この人は子供たちの答えに仰天しました。6歳以下の子供たちは一人残らず,「その人と一緒に行きますか」という質問に対して,はっきりと「はい,行きます」と答えたのです。7歳以上の子供たちは大抵,一緒に行かない,と答えました。しかし,この人は,「その子たちも,なぜ一緒に行ってはいけないのか,またどうすべきなのかについては,はっきりした考えを実際には持っていなかった」ことに注目しています。
こういうことについて無知なのは子供たちだけではありません。親の中にも,子供を守るために,あるいは子供の行方が分からなくなったとき子供を捜すために何をしてよいか分からない人が少なくありません。
ときどき迷子になる子供は別として,子供たちがいなくなる原因は基本的に言って二つあります。
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