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地球を覆う恐れ ― 何を証明しているか目ざめよ! 1983 | 4月8日
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れているからです。偶発的に核戦争が起きる非常に現実的な脅威があると思いますし,そうなれば私は殺されます。ソ連人であろうとアメリカ人であろうと,人間が殺されるのを見るのはいやですから」。
ニューヨーク市の大病院の核医学の責任者がここにいます。この人はなぜデモに参加しているのでしょうか。この医師はそれに対し,「怖いからだ!」と一言で答えています。そして,戦争ではなく医学のために,原子力が平和利用されることを願っています。
米国ケンタッキー州のある大学の牧師は,核凍結デモが「平和を実現せざるを得ない状況に政府の指導者たちを追い込むことになる」と考えたためにデモ行進に参加しています。
驚いたことに,知的専門職の人々の組織されたグループや労働組合員と並んで一般市民がデモ行進をしています。どこを見ても僧職者が人目につきました。長いデモ参加者の列のあちらこちらに宗教団体の姿が見られました。一目見ると,一つにまとまっているように見えますが,よく見ると実際には支持がばらばらであるのが分かります。旗に書かれたスローガンを比べ,それらの人々のイデオロギーに耳を傾けると,核凍結が最終的にどんな形を取るべきかに関して意見の相違が目につきます。核凍結の問題を通して,自分の個人的な不平や政治的な持論を広く知らせようとするデモ参加者もかなりの数に上ります。
モーターを動力にした大きくて白い清掃機械がデモ行進の終わるのを待っています。大集会参加者たちが帰途に就くと,その後を追うようにしてこれらマンモスのような機械の一群がやって来て,散らかされたビラなどをのみ込み,街路をきれいに掃いて行きます。核凍結運動が竜頭蛇尾に終わり,政治家の脳裏からぬぐい去られるか,それともこうしたデモが何らかの効力を持ち,例えば平和宣言を出させるための諸政府への圧力が増し加わるかどうかは,今後の成り行きを見なければ分かりません。
しかし,核凍結のような人間の運動に確信を抱いて頼れないなら,永続的な平和と安全の希望をどこに求めることができるでしょうか。
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真の平和と安全 ― それをもたらすのは核凍結か,それとも神の王国か目ざめよ! 1983 | 4月8日
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真の平和と安全 ― それをもたらすのは核凍結か,それとも神の王国か
核保有量を現状で凍結するのでは,熱にうなされている患者の体温を40度で止めておくようなものです。それでは不十分です! 兵器も熱ももっと根深い病の症状でしかないのです。問題の根源を取り除いてはじめて治療したことになるのです。例えば,今日の世界の核兵器保有量について言えば,TNT火薬に換算して地球上の男女子供一人当たり3㌧以上,総計130億㌧に相当する爆発力があります! こうした脅威と同居していながら安全な暮らしをしていると思えますか。
核兵器の凍結が十分でないのであれば,核兵器の全廃はどうでしょうか。世界的な核兵器廃絶は決して新しい概念ではありません。有名な物理学者アルバート・アインシュタインはこのことを提唱しました。そして1945年以来,全地球的な核廃絶を求める他の大勢の著名人の上げる声が聞かれてきました。それにもかかわらず,過去10年間に米ソ両国の核弾頭の合計数は2倍になっているのです。37年前よりも今のほうが核廃絶に幾らかでも近づいたなどと,本当に信じる気になれますか。
地球から核兵器を除いたところで,戦争は終わりません。30年前に原子爆弾が最後に用いられて以来,130以上の戦争が行なわれてきました。では,すべての兵器が消えうせたとしたら,真実の平和と安全が訪れるでしょうか。
戦争の道具すべてを除き去るのは平和と安全へ向けての大きな一歩ではありますが,それでも十分とは言えません。人々の心を動かし,教育し,変化させなければなりません。人間によるどんな運動にもこうしたことを成し遂げる力はありません。しかし,神にはそれが可能です。全能の神エホバは心を読み,心をいやすことがおできになります。(エレミヤ 17:10。詩編 51:10)しかし,神はそれ以上のことをされます。神の王国,つまり長い間人々が祈り求めてきた天の政府が地球上に平和と安全をもたらすのです。(マタイ 6:10)この解決策は現実的だと思われますか。
「地球の運命」という反核の本は,世界的な規模の政府だけが核による大破壊を阻止する確かな手段であると見ており,さらにこう提案しています。「つまりなすべきことは政治を完全に造り直すこと,世界を完全に造り直すことにほかならない」。そして,それこそまさにエホバが目的としておられることなのです。正直のところ,諸国家が自らの主権を自発的に引き渡すと思いますか。
義の支配に反対する人々に対し,神はご自分の王国の権力を制御された仕方で行使し,ご自分の平和運動に反対する諸国民すべてを滅ぼされます。(ダニエル 2:44)それに加えて,神の王国の教育制度によって,誠実な平和愛好者すべては軍備撤廃の真の方法を教えられ,『剣はすきの刃になる』でしょう。―イザヤ 2:4。詩編 46:8,9。
ですから,人間の運動が救いをもたらし得るなどと思い違いをさせられてはなりません。聖書はこう警告しているからです。「人々が,『平和だ,安全だ』と言っているその時,突然の滅びが,ちょうど妊娠している女に苦しみの劇痛が臨むように,彼らに突如として臨みます。彼らは決して逃れられません」。(テサロニケ第一 5:3)しかし,正直な心を持つ人々には確かな希望があります。そうした人々は,永続する真の平和と安全を神が間もなくもたらしてくださることを確信しています。そして,あなたもそうした確信を抱くことができるのです。―詩編 72:7,8。イザヤ 9:6,7。
[12ページのグラフ/図版]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
世界の核弾頭保有量は1980年代に増加すると予告されている
1990年には7万5,000発の弾頭
1972年に5万発の弾頭
[12ページの図版]
我々は剣[ミサイル]をすきの刃に打ち変える
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軍縮か幻想か目ざめよ! 1983 | 4月8日
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軍縮か幻想か
「世界大戦 ― 核戦争 ― の脅威を除き去ることは,現代における最も深刻な焦眉の急務である。人類は一つの選択に直面している。我々は軍拡競争をやめて軍縮へと進むか,さもなくば絶滅と向かい合うかのいずれかである」― 1978年第1回軍縮特別総会最終文書。
『核戦争の脅威を除き去る』点で進歩が見られたでしょうか。その質問に答え,全地球的な軍縮へ向けて一歩を踏み出すために,1982年6月7日から7月9日にかけて第2回国連軍縮特別総会が開かれました。その第2回特別総会の席上,各国の首脳や世界の指導者たちの語った事柄に注目してみましょう。
● 日本の首相鈴木善幸氏はこう語りました。「過去4年間に軍拡競争は平和に対する脅威をさらに深刻なものにし,人々の不安を高め,各国の経済的および社会的な発展を犠牲にして,各国により一層の負担を課してきた」。
● 法王庁の国務長官であるアゴスティヌ・カサロリ枢機卿の手で届けられた法王のメッセージは次のようなものでした。「改善はほとんど見られないようである。事実,少なくとも,その期間に生まれた希望が今や単なる幻想に過ぎないとみなされ得るという点では退歩が見られたと考える向きもある」。
● フィンランド共和国の首相,カレビ・ソルサ氏はこう語りました。「献身的で誠実な政治家諸氏がこの進展をとどめようと自分たちの最善を尽くしてきた。この議場に集まっている方々の中にもそうした政治家は少なくない。ところが,軍拡競争はとどまるところを知らない。あたかも軍拡競争が理知ある人間の手に負えなくなってしまったかのようである」。
● ウガンダ共和国の首相,M・オテマ・アリマディ氏はこう語りました。「事態は確かに厳しいものである。……過去4年間に,一度は掲げられた希望が……絶望寸前のところまで損なわれてきてしまった」。
● 米国の大統領,ロナルド・レーガン氏はこう語りました。「国際連合は世界平和のために献げられており,国連憲章は国際間の武力の行使をはっきりと禁じている。にもかかわらず,闘争的な態度の波は依然として高まったままである。第1回軍縮特別総会後の4年間にさえ,この憲章の影響力は弱まってきている」。
● カナダの首相,ピエール・エリオット・トリュードー氏は次のように述べました。「今日の世界においては,完全な安全保障はどの国にとっても達成不可能な目標となっているという事実を我々は受け入れなければならないと思う」。
● 英国の首相,マーガレット・サッチャー夫人はこう語りました。「我々は戦争を阻止するために核抑止よりも優れたシステムを探し求めなければならない。しかし,東西両陣営の間にそのようなシステムが現時点で手の届く範囲にあるとするのは,危険な虚構であろう」。
第2回特別総会は第1回よりも何らかの点で成功したと言えるでしょうか。国連総会の議長キタニ氏はこう答えています。「我々の準備と努力すべてにもかかわらず,この総会は成功しなかった。我々の希望と抱負は無数の人々の希望と抱負共々,全く実現されないままに終わった」。
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