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土地所有をめぐるアラスカの問題目ざめよ! 1970 | 2月8日
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土地所有をめぐるアラスカの問題
アラスカの「目ざめよ!」通信員
150万平方キロの土地に,わずか25万人しか住んでいません。そのような場所に,どうして土地所有の問題が起きるのですか。ところが実際には起きています。その問題を十分理解するためには,この土地の特徴と背景を知らねばなりません。
アラスカの面積は,北米大陸にあるアメリカの他の48州全部を合わせた広さの5分の1にあたります。一年中氷と雪に閉ざされた土地との印象を受けている人もいるようですが,山岳地方を例外として,アラスカ州全土は夏にはまず雪を見ません。摂氏20数度から30度台の気温は珍しいことではなく,内陸のフェアバンクス地方では特にそうです。37度以上の暑さを記録したことさえあります。
種々の調査結果から言えば,アラスカで最も将来性があるのは農業です。加えて,石炭,鉄,銅,金などの鉱物資源が掘り出されており,最近では,クック湾と北部丘陵地帯で石油と天然ガスの埋蔵が発見されました。これに豊富な森林と海洋の資源を考え合わせれば,だれでもアラスカの豊かさに気づくでしょう。
したがって,このように豊かな土地をだれが所有するかということが大問題になったとしても不思議ではありません。アラスカの土地は,アレウト人,エスキモー,インディアンなど,土着原住民のものですか。それとも,アラスカ州政府が全体の所有者となるべきですか。さらには,アメリカの連邦政府が国土管理局を通じて一部を所有すべきですか。
原住民の主張
現在の取り決めでは,原住諸族は自分が今いる土地に住み,そこから生活物資を得ることを認められていますが,法律的には,その土地の所有者ではありません。先祖が「遠い昔から使用し生活してきた」土地を所有し,管理し,開発することは我々の当然の権利である,というのがそれら原住民の主張です。こうして原住民が所有権を主張する土地は,アラスカ全土150万平方キロのうち116万平方キロに及んでいます。
アラスカの原住民はそうした土地に対する全面的な権利を主張するとともに,その土地がこれまで取り上げられてきたことに対する補償を要求しています。全面的な権利とは,普通の土地所有者が自分の土地に対して行使するのと同じ権利です。
こうした主張に伴って,アラスカにおける土地保有の起源という問題が調べられました。それは,帝政ロシアがアラスカを720万ドルでアメリカに移譲した譲渡条約(1867年)にまでさかのぼります。当時は“凍った荒れ地”のこの値段を法外なものと見る人が多くいました。ロシアの絶対君主であったツァー(皇帝)は,原住民の権利を含め人のいっさいの主張を抹殺する権力を有していました。それでロシア皇帝はさらに20万ドルを交換条件として条約に一文を加え,その土地に関する他からのいかなる主張に対してもアメリカ政府を守る保証としました。
しかし,この保証の意図は,当時存在したロシア,アメリカ毛皮会社のあらゆる主張からアメリカ政府を保護することであり,原住民の主張を無視するためのものではない,というのが原住民の考えです。
原住諸族はこうした主張の別の裏づけとして譲渡条約の第3条にある次の点を指摘します。「未開諸部族は,米国が自国の土着民の諸権利に関して随時採用する法律その他の規定に従うこととする」。
幾つかの法廷は,ここでいう「土着民の諸権利」の中に財産権も含まれるものと解釈してきました。その一例は,「米国政府対ベリガン事件」(1905年)の場合で,法廷は次のような判断を下しました。「アラスカの未開諸部族は政府の保護民であり,米国はその権利を有するとともに,インディアン保護民の財産権を守る務めを負う」。
その後の米国議会の立法措置は,土地の使用と居住に関するかぎり,原住民をある程度まで保護してきました。しかし議会はいつも土地所有権の問題を全く避けてきました。原住諸族はいま,土地所有権の確認,あるいは少なくとも補償を要求しています。
州政府の立場
アラスカ州政府は,南方48州の,インディアン諸部族に対する措置の中に先例を求めることができません。それら南方48州のインディアン諸部族は,幾たびもの戦闘ののち,条約によって自分の土地に対する権利を保証されました。したがって彼らの土地所有権は確立されており,その土地をいかに利用開発するかは全く彼らの自由です。しかしアラスカにおいては事情が異なる,と唱える人がいるのです。原住民との間に条約が結ばれたことはありません。それは,これまで原住民との間に敵対関係がほとんどなかったからであり,また米国議会が1871年にインディアン諸族との条約締決を廃止したからです。
それで多くの人はこれを,法律上の問題ではなく道義上の問題であると感じています。そして政府部内の人々の大部分は要求どおりにではないまでも,原住民にある程度の補償を払うべきだと考えています。適正な補償もなしに彼らの居住地を取り上げるのは,道義にそわないことと考えられるからです。
原住民に対する補償の方法としてはさまざまなものが提案されています。1867年当時の買い値から割り出して,1エーカー(約40アール)あたり2セント(7.2円)ずつ払ったらどうかと言う者がいます。他の者は,生計に必要なだけの土地について原住民に権利証書を発行せよと提唱しています。しかし,それだけでは片づかない問題がいろいろあります。
“土地の凍結”
アメリカ内務省は土地所有に関するアラスカ原住民の主張を過去25年にわたって受け付けてきました。しかし,そのほとんどは1965年以降,つまり重要な鉱物資源の発見された期間に提出されたものです。そうした土地所有の主張をまとめると,その範囲はアラスカ州全土の8割5分から9割にまで及びます。アメリカ本土48州の土地の9割までをインディアン諸部族が要求したと考えてください。
過去において,アラスカ州政府は,土地所有権問題の判断にあたり,原住民の主張をそれほど真剣には取り上げませんでした。しかし近年,原住民の権利主張者は法律面で前以上の弁護を受けています。その主張の妥当性の度合いに変わりはないものの,これまでのように簡単に片づけることができなくなっています。そしてこの問題はすでに広く知られているため,簡単に片づけるなら,大きな問題が連鎖的に持ち上がるでしょう。最近の州選挙においても,立候補者は土地の問題にほとんどふれませんでした。それが多くの議論を呼ぶことを知っていたからです。
原住民の権利主張の件数が少なかった間,国土管理局を管轄するアメリカ内務省はそれにほとんど注意を払いませんでした。問題のある土地の帰属を決めることはないまでも,石油や天然ガスを採掘するための土地使用は許してきたのです。しかし最近,内務長官は,原住民の権利主張には根拠のあいまいなものもあるが,その土地の使用およびその土地での鉱物採掘を安易に許可することはできないとの判断を示しました。その結果が多くの論議を呼んだ,“土地の凍結”です。
州の地位に関する米国連邦議会の法律(1959年)は,アラスカ州政府に対し,同州内に設ける連邦政府の土地42万平方キロを,25か年以内に選定することを許しています。普通,国土管理局は,州政府が選定した土地の権利状態を調べ,問題がなければ,州の取得地としての仮認可を与えます。そののち州政府は連邦用地譲渡の証書を受け,土地の取得を正式なものにしなければなりませんが,仮認可を受ければ,その土地を州のものと見るのが普通です。
しかし最近1年ほどの間,国土管理局は,原住民が所有権を主張している土地については,仮認可を与えない方針を取ってきました。一方アラスカ州政府にとっては,土地選定のための期限があと16年ほどしか残っていません。原住民の権利主張の問題が近い将来に解決されず,土地選定が妨げられるなら,州政府は石油や天然ガスの採掘を従来どおりに許可することができなくなります。これは州政府の主要な財源の一つが打撃を受けることになります。
そうした事態を避けるため,アラスカ州政府は米国内務長官に対し一つの訴えを提出しています。それはアラスカの成長と発展を阻害しないため,アラスカ州政府の土地選定に内務省が干渉しないことを求めたものです。
将来は不確か
原住民の権利主張者とアラスカ州政府の間に見解の相違はあるものの,両者は同じこと,つまりアラスカ資源の開発を願っています。両者はまた早期の解決が必要だという点でも一致しています。そして州政府は,連邦政府だけが原住民の主張を処理するための合法的また道義的な道を示し得るものと考えています。それで連邦政府の施策を待っているのです。
アラスカ開発計画連邦実地委員会は最近,問題解決の一案を提出しました。そのおもな点は次のとおりです。(1)米国国庫から1億ドルを出資して新しい会社を設立し,アラスカ原住民がこれを所有する。(2)その原住民の会社は土地の賃貸しや鉱物資源の販売による全所得の1割を10年間にわたって受け取り,それと引きかえに土地に対する権利を放棄する。(3)原住民は自らの使用のために1万6,000ないし2万8,000平方キロの土地を受ける。そして(4)原住民の狩猟漁業生活を保護する手段を設ける。
歩み寄りによる合意が得られたとしても,解決の必要な問題はまだまだ残るでしょう。たとえば,原住民の指導者は,補償や土地の配分を部族単位ではなく,個人単位で行なうことを提唱しています。しかし個人単位で行なうとすれば,一片の土地あるいは幾らかの資金をだれに帰属させるかという問題で何年もの裁判が必要になるでしょう。法廷はまた,原住民との混血児にどんな資格を与えるかという問題も解決しなければなりません。
アラスカ人は,土地所有をめぐるこの問題の解決を切望しています。
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大きくないが非常に長い雷目ざめよ! 1970 | 2月8日
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大きくないが非常に長い雷
● 雷の一撃はどれほど大きいものだろうか。中心部の周囲に直径25ないし50センチほどの「コロナ放電帯」があるが,中心部そのものは直径約1センチ強しかない。雷の「稲妻」が大きく感じられるのは,叉状電光が平均して50から60キロの長さに達するためであろう。
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