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ショック療法,薬剤または精神外科療法は問題を解決しますか目ざめよ! 1975 | 7月22日
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この手術は「眼球の後ろに氷割り用のきりを振り回わして大脳前葉の一部を破壊する」と形容されました。サイエンス・ニューズ誌はこう報じています。「前頭葉切開術は米国でおよそ5万回,英国で1万5,000回行なわれたあと,1950年代に至って,恐らく電撃療法と薬剤療法の進歩のためにその流行は下火となった」。
前頭葉切開術ははるかに重大な人格の不調を招くことが少なくありません。事実,アメリカにおける先駆者フリーマンでさえ,前頭葉切開術を施された人は「士気」を失い,また想像し,予見し,利他的である能力を失うと証言しています。患者は「洞察力,同情心,感性,自意識,判断力,情緒的な反応力を次第に失った」と,ワシントンの著名な一精神科医は語っています。
しかし近年において,大脳の一部を破壊する,さらに精巧な方法が使われるようになり,神経外科の問題は再び脚光をあびるようになりました。米国では毎年,400から600件に上る,このような手術が行なわれていると報告されています。しかも「神経外科の治療法が今後ますます広く用いられるようになるという点で,すべての神経外科医の意見は一致している」ということです。しかしこの手術がソ連邦の全域にわたって禁止されているという注目すべき事実は,この手術に好ましくない面のあることを示しています。
1973年の春,米国では,自発的な同意を条件に精神病の犯罪者に精神外科の手術をする案が多くの論議を引き起こしました。多くの人は,これが脳の手術によって人間を改造する道に通ずるようになることを恐れています。脳外科医のA・K・オマヤ博士も,これに強く反対する一人です。同博士の意見では,精神病患者はこれによって益を受けるどころか害を受けます。「脳のどの部分も他の部分の機能に必要な役目を果たしている」からです。―1973年4月2日付ニューヨーク・タイムズ。
精神病の治療における電撃療法,薬剤,精神外科のいずれも,まだ不満足な点が多く残されていることは明らかです。事実,これらの方法のあるものについては,その使用の是非さえ論議の的となっています。ではこれに代わるどんなものがありますか。
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ホルモン,ビタミンそしてミネラルはどのように助けとなりますか目ざめよ! 1975 | 7月22日
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ホルモン,ビタミンそしてミネラルはどのように助けとなりますか
精神および情緒面での病気と人の食餌との間には何らかの関係があるでしょうか。栄養やホルモンなどの要素によって精神病を治すことができるでしょうか。
“医学の父”と呼ばれるヒポクラテスは,すでに西暦前5世紀の昔から,栄養不良と精神病との間には何らかの関連性があり得ると考えていました。また,晩年になって次のように書き記したのは,“精神分析学の父”ジークムント・フロイトにほかなりません。「我々が理解しようと努めているこれら精神障害すべてが,ホルモンあるいはそれと似た物質によって治療されるようになる日が来ることをわたしは確信している」。
ホルモンの使用
近年,数多くの精神病患者は,ホルモン療法の恩恵に浴してきました。ゆえに,ニューヨーク医科大学の一精神科医は,合成の性ホルモンが「電気ショックの場合のように外傷性がなく,従来の薬剤よりも早く効き」,一層効果があることを発見しました。同医師は,ホルモンを使うことによって数人の男性のうつ病を治し,他の人々をも快方に向かわせました。―1974年5月9日付,ワシントン・スター・ニューズ紙。
米国のマサチューセッツ州ウースターの生化学者と精神科医の一チームは同様の性ホルモンを用いてより一層目覚ましい結果をさえ得ています。同チームは女性患者の8割を快方に向かわせました。しかも,「ショック療法,抗抑うつ剤,精神療法など“各種”の従来の治療法では治らなかった」女性の入院患者だけを選んだにもかかわらず,そのような結果が得られたのです。―1974年9月30日付,ボストン・グローブ紙。
栄養
精神病における栄養の果たす役割は,ペラグラの例に見られるとおり昔から認められていました。ペラグラはビタミンB3(ニコチン酸)の不足によって起こる病気で,精神異常はその病気の症状の一つです。
今は精神に作用する化学薬品の研究に全時間専念している元大学教授ジョージ・ワトソンは,栄養面から精神衛生に取り組む手法を強調している人の一人です。同氏は,自著「栄養とあなたの精神」の中で,人間の体の酸化速度は早いか遅いかのいずれかであるので,それに応じて食餌を調節しなければならない,と論じています。「食べ物は精神状態や,ある意味ではひととなりを決定するものとなる」というのが同氏の見解です。ワトソンはさらに次のような見解をも述べています。「風変わりな行動の大半は,脳の栄養不良,疲労した神経系統その他,新陳代謝の機能不全と直接関係のある身体上の障害などに起因する」。同氏は,必要とされている,つまり欠乏している栄養素を投与することによって,ひどい精神分裂症に悩まされていた患者を治したと述べています。
同様の仕方で精神病に取り組んでいるのは,低血糖症財団に属する500人の内科医および精神科医です。それらの医師たちは,血糖の量が少ない場合にうつ病,不安,健忘症,震え,悪夢,神経衰弱などが起こり得るとの見解を述べています。
栄養面から精神病に取り組むその手法は,精神病を治療するに際して微量元素の果たす重要な役割にも重点を置いています。例えば,リチウムの価値は広く認められています。米国テキサス州の一生化学者は,同州内で飲料水中のリチウム含有量の高い幾つかの都市では精神病の少ないことを発見しました。ゆえに,ハーバード大学医学部の精神医学教授リオン・アイゼンバーグ博士はこう述べています。「そううつ病患者の病気の症状が治まった後,リチウムと呼ばれる物質を予防薬として服用させるなら,患者の健康状態を保たせるのに役立つ」― ワールド・ヘルス誌,1974年10月号。a
リチウムに加えて,ある特定の食物に含まれている他の微量元素も,精神病と関連して大切な役割を果たしているかもしれません。そのような微量元素には,亜鉛,カルシウム,マンガン,マグネシウム,鉄,銅,コバルト,クロム,セレン,モリブデンなどがあります。事実,これら微量元素の重要性を認める精神科医はますます増えています。
“オーソモレキュラー精神医学”
“オーソモレキュラー精神医学”という用語は,「正しい場所に正しい物質を正しく集中することの重要性」を強調する治療法を指すために,ノーベル賞受賞者ライナス・ポーリング博士が作り出したことばです。この用語は二つの語を語源としており,まっすぐな,正しい,正確な物事を意味するオーソ(“オーソドックス”と言う語に見られる)と,“モレキュル(分子)”という語から派生したモレキュラーから成っています。
ポーリングはこう説明しています。「脳が正常に働くには,脳中に多くの異なった物質の分子が存在しなければならないことが知られている」。それらの物質は血液によって脳まで運ばれます。同博士は,ある種の精神病の場合,食物中に含まれているビタミン類や微量元素などを十分に利用
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