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  • バランスを保っておくのが問題
    目ざめよ! 1975 | 7月22日
    • バランスを保っておくのが問題

      ニューヨークの下町の住人たちは,1974年8月7日,水曜日の早朝,頭上はるか上の光景に度肝を抜かれました。地上約410㍍の世界貿易センターの対をなすビルの屋上の間に張られたロープの上で綱渡りの曲芸が行なわれていたのです。このような曲芸には何が必要ですか。体のバランスです。

      今日,別の種類のバランスは,それを保つことがますます難しくなっています。先の曲芸師の場合,一陣の突風でバランスを失わなかったとも限りません。それと同じく人の生活に起こるさまざまの出来事によって,ますます多くの人は精神的,情緒的にバランスを失う結果になっています。

      それを引き起こす要因

      英国チチェスターの精神病学教授ピーター・セインスベリーは,しばしば精神病を引き起こす基になるものを次のように指摘しています。「社会生活における緊張が堪え難いほどに強くなると」,その結果は精神病です。

      セインスベリーの説明によると,失業,強制的な別居など,緊張に満ちた変化は,多くの場合,抑うつ状態や精神分裂症などが発病する引き金となります。別の報告が挙げているものに,家族の病気から受ける情緒的な打撃があります。その報告は,子供が白血病で死ぬと,それに直面した家族は,大半の場合に精神病医の治療を必要とすることを明らかにしています。

      世間の注目の的となって生活するために受ける緊張も,精神病を引き起こす一因となることがあります。例えば,初めて月の上を歩いた宇宙飛行士の一人は,その後まもなく“神経衰弱”にかかりました。回復して彼は米国精神衛生協会の会長におさまりましたが,ここでもまた緊張がきつ過ぎました。1974年5月,抑うつ状態の再発のために講演を中止しなければならなかったことは,それを示しています。

      もっと最近には,ある首相夫人の同じような例が報道されました。夫人は自分が精神病医の治療を必要とした理由について,首相夫人という目だつ地位につきまとう,華やかさと世間の注目に身を処してゆくのが難しかったと述べています。「一日も早く首相夫人の座から解放されたい」と,夫人はその心のうちを語りました。

      戦争の苦難も精神病を生み出す傾向があります。1975年1月22日付ニューヨーク・タイムズ紙の見出しは,「心理的大損害: ベトナム長期戦の半ば隠れた,しかし打撃的な結果」を報じています。ベトナム人の母親の間にはうつ病が,そして10代のその息子たちの間には精神分裂症が著しく増加しています。この精神的な病気を反映しているのは,うなぎ上りの自殺と暴力犯罪の非常な増加です。この種の犯罪はベトナム人には珍しいとされています。ベトナム人は対人関係において攻撃的な衝動を抑えるように幼時からしつけられているからです。

      問題の大きさ

      何らかの形の精神的な病気にかかる人の数は,驚くほど多いのです。アメリカ精神衛生協会によれば,10人のアメリカ人のうち少なくとも一人は精神的または情緒的な障害に脳まされています。精神病院には50万人近くの患者が収容されています。加えて約1,000万人が精神病にかかっており,毎年25万人の新しい患者が精神病院に入院しています。

      精神病の費用がこれまた莫大なもので,アメリカでは毎年200億ドル(約6兆円)もかかっています。もっと悲劇的なのは自殺に関する統計です。毎年2万人を超える自殺者が出ており,その多くは精神病が原因です。またその10倍に上る自殺未遂者についても同じことが言えます。

      英国においても,全国精神衛生協会の報告によると,長期にわたって仕事を休む理由のうち,単独で最大のものは精神障害であると言われており,そのために毎年およそ3,200万労働日が失われています。同協会の苦情によれば,病院のベッドの半数は精神病患者によって占められているのに,彼らのために使われる費用は身体的な病気の患者の場合と比べて五分の一に過ぎません。

      あなたご自身またご家族は過度のストレスに悩んだことがおありですか。あるいは“神経衰弱”や精神の病気との戦いを経験したことがありますか。もしそうであれば,それは最悪ともいえる苦痛を与え,また自分の家族にも大きな負担をかけるものであることをご存じです。

      精神病はどんな形を取って現われますか。

  • 精神病のいろいろな顔
    目ざめよ! 1975 | 7月22日
    • 精神病のいろいろな顔

      精神病という悲劇は多くの形を取ります。それは自分の扮する人物に応じて異なった衣装を着ける俳優に例えられるでしょう。

      この病気には不確かな事柄が非常に多く,有名な精神病医の中には精神“病”などというものは存在しないとさえ言う人がいます。そのような見方によれば,これは“変わった行動”というに過ぎません。しかし精神分裂症の人の血を正常な人に注射すると,一時的に精神異常を引き起こすことが証明されています。するとこの考え方は間違いのように思われます。また精神病が多くの場合,遺伝的であるという事実を考えても,同様なことが言えるでしょう。

      また精神病を描写するのに“精神分裂症”また“そううつ病”といったことばを使うことに強く反対する専門家もいます。多くの人にとって恐ろしく不吉な意味に取れるこれらの病名は,事態を悪化させるに過ぎないと,彼らは言います。

      しかし患者とその家族は診断を下され,病名を付けられたからといって狼狽したり,希望を失ったりすべきではありません。実を言えば,精神病は症状と原因に関する限り,一定の型にはまらないのが普通だからです。そのため診断と治療も一定せず,専門家の間にもかなりの意見の相違があり得ます。事実,どの症状にどの病名を付けるかについてさえ,意見の相違があります。

      「器質的な病気」

      すべての精神病を「器質的」と「機能的」の二種類に分けることが一般に行なわれています。器質的なものの多くは,脳性麻ひ,蒙古症,クレチン病その他の知能障害などのように誕生の時またはそのすぐ後に表われます。

      他の器質的な病気は,多くの場合,子供っぽさを特色とする精神変調をいろいろ伴う老もうなどのように老年期に表われます。このような精神状態は「大人になるのは一度,子供になるのは二度」というシェークスピアの言葉を思い起こさせます。

      神経症

      器質的精神病と対照的なのが機能的精神病であり,その軽いものである神経症はごく普通に見られます。この病気にかかっている人は「ノイローゼ」であると言われますが,このことばはこの病気がたいした病気ではないという間違った印象を一般に与えています。

      神経症の人は現実の世界から遊離するようなことはありませんが,ただ自信の喪失,不信と緊張のいずれか,あるいは両方のためにハンディキャップを負っています。神経症の人は自分の仕事,家族のこと,健康を過度に心配したりします。またエレベーターを使うのが怖いといったような,場所や人についての異常な恐れを抱いていることがあります。無理をしないと食べられなかったり,いつも刺激に敏感であったり,ちょっとしたことに腹を立てたりすることも症状のうちに挙げられています。普通神経症の人は自分の病気を意識していますが,その原因には気付いておらず,また自分ではどうすることもできないようです。

      神経症は容易に見わけがつくと思われるかもしれませんが,必ずしもそうではありません。この病気は姿を変えることがあるからです。どのようにですか。神経症が原因で体の病気になることもよくあります。これは精神が身体に影響を及ぼすという法則が働いているからです。それで本当の原因に気付かないで,身体の病気に注意を奪われていることがあります。神経症は,消化不良,心臓の不調,呼吸困難,皮膚の発疹などの症状を示して身体面に表われてくるかもしれません。

      神経症の人とは違って精神病の,つまり本当に狂気の人は,もっと重大な問題を抱えています。つまり実際に現実の世界から遊離してしまい,はなはだしく常軌を逸した反応や応答をします。「神経症の人は空想の城を築き,精神病の人はその中に住み,精神病医は家賃を取る」と,俗に言われるゆえんです。

      抑うつ状態の顔

      ある程度の抑うつ状態は神経症の人でも経験しますが,精神病の抑うつ状態は普通もっとひどいもので,いっそう重い病気のあることを示す症状です。程度はいろいろあっても,抑うつ症状はアメリカで「最も多い精神病」とされており,国連世界保健機構も世界の一番大きな健康上の問題としてこの病気を挙げました。この病気が広まっていることから,現代は「憂うつな時代」と呼ばれています。

      抑うつ状態と関連して孤独感,とくに無力感,絶望感といった症状がみられます。この病気の人の間では一般人の36倍に上る多くの自殺があるのも,うなずけるでしょう。うつ病にかかった人に多く見られるのは,微小妄想あるいは罪業妄想です。また食物,衣服,異性などにほとんど関心を示さなくなります。このような徴候は,俗に“神経衰弱”と呼ばれる病気にもみられます。a うつ病は男性よりも女性に多い病気です。

      この症状の進んだものは「うつ病」と呼ばれています。この病気は興奮と活動の時期と抑うつ状態の時期を交互に繰り返すことも多く,この『陽気になったり憂うつになったりする』状態は「そううつ」状態と名付けられています。どちらかというと攻撃的で破壊的なのはこれらの人々ですが,「躁病の状態」の時にはこの同じ人々が時として非常な創造性を発揮します。

      精神分裂病

      最も重大な,そして多くみられる精神病の中に精神分裂病があります。この病気もいろいろな顔を持ち,その理由で精神病医はよくこの病気の名前の複数形を用います。少なくともアメリカでは精神分裂病が入院の主な理由になっています。心臓病は最も多くの死をもたらし,精神分裂病は最も大きな心痛をもたらすとは,よく言い得たことばです。

      100人のうちおよそ3人は生涯のうちいつか,おもに16歳から30歳までの間になんらかの程度の精神分裂病にかかると言われています。これが「人類の悩みの中で最も破壊的で,人を,最も無能力にする」ものであり,「人間の経験の中で最も恐ろしいものの一つ」とされているのも当然です。

      どんな種類のものであっても精神分裂病にかかると,人は多くの場合,社会生活から遊離して内的な空想の世界に隔絶し,幻覚と妄想のいずれか,または両方を経験するようにさえなります。感覚機能,感情,行動が著しく変化します。人や物が奇妙な形に見えたり,食べ物の味が変に感じられたり,においが不快に感じられたり,音が耐え難いほど大きく聞こえたり,あるいは小さくてほとんど聞こえなかったりします。内部的には抑うつ状態,緊張,疲労があるかもしれません。この病気の進んだものに,誇大妄想,敵意,被害妄想などの偏執症,また話すことと手足を動かすことのいずれかあるいは両方ができなくなる知覚まひ,すなわち緊張病の症状が表われます。

      一般に何らかの形の精神分裂病にかかっている人は,他人に対するよりは自分自身に対して危険なことが多いのです。それで,ある精神病医が述べているように,精神分裂病の人だけが住んでいる所があれば,普通の人の住んでいる所に比べて暴力沙汰はずっと少ないでしょう。しかし自殺の率は20倍です。患者の三分の一は自然に治り,三分の一はよくも悪くもならず,三分の一は病状が悪くなるものと推定されています。

      しかし普通の場合,精神分裂病の人でも,生涯の大部分は正常な精神で過ごしているのです。そのことを知っておかねばなりません。それで精神分裂病でも偉大な業績を残すことができ,事実,そのような人がいます。

      運動機能亢進症と自閉症の子供

      精神的また情緒的な障害は幼児や子供にもみられます。最近,子供に増えているのは運動機能亢進症です。このような子供は絶えず動き回ることを望み,落ち着きがなく,手に負えず,集中力に乏しく,移り気です。アメリカでは5%つまり150万人以上の子供がこのような問題を持っています。その大部分は男の子です。

      これと正反対なのが自閉症の子供です。自閉とは「外界の現実に興味を失って白昼夢や空想にふける精神状態」と定義されています。これも同じく少女よりは少年にずっと多く,4倍もの率を示しています。30年前には,この症状も病名もあまり知られていませんでした。しかし今日,自閉症と診断されるケースはごく普通にみられます。アメリカ,イギリス,ドイツそして日本(注目すべきことに,いずれもストレスや圧迫の多い先進工業国)には,自閉症の子供のための組織まであります。

      今まで述べたのは,割合によく見られる種類の精神病に過ぎません。全くのところ精神病には多くの顔があり,またそれぞれに病気の程度もごく軽いものから非常に重いものまでさまざまです。一応病名が付けられたとしても,その一つとして他のものと全く同じものはありません。

      それにしても,精神病にかかる人とかからない人とがあるのはなぜですか。精神病の根本にある原因はなんですか。

      [脚注]

      a この問題については1974年12月8日号の「目ざめよ!」誌に掲載されている記事をご覧ください。

  • 問題の根源は何か
    目ざめよ! 1975 | 7月22日
    • 問題の根源は何か

      あなたは精神面で至極健康ですか。そうであれば,あなたは幸せな人です。それにしてもこの貴重な持ちものを失う元になる根本的な要素について幾らか知っておくのは賢明なことでしょう。不意の悲劇的な出来事,重い病気,失業その他類似の出来事は精神病の“きっかけ”となりますが,このような事について知っているだけでは不十分です。これらの出来事が精神病を引き起こすのは,バランスを失わせる条件がまず根底に存在しているからです。

      これら根本的な原因は基本的に言って三つの部類に分けられるでしょう。すなわち(1)社会組織つまり他の人々との関係,経済状態その他を含む“環境”;(2)遺伝,新陳代謝などを含む生理的な要因; および(3)性格的な欠陥です。

      “環境上の”要因

      現代生活のストレスや圧迫を考えても,環境は精神病を引き起こす上で主要な役割を果たしていると言えるでしょう。これは一般に認められていることであって,ラングナーとミッチェルはこの問題だけを扱った大著「生活のストレスと精神衛生」を書いているほどです。ノルウェーのカール・エバング博士も同様なことを述べています。「最も恐れられている種類のものであっても,身体的な病気に対して抵抗力のある人は多いが,精神病の場合は,緊張と圧迫が過度になり,社会的な環境が程度を超えて不利なものになるとき,だれでもかかるようにみえる」。

      「精神分裂病 ― あなたのものと私のもの」の中に次のような見出しがあるのも,環境の要因を認めているからにほかなりません。「精神分裂病患者はストレスを減少させるためにどうしたらよいか」。その答えは「人の住まない島に行くか,世捨て人になること」ですが,これには次のことばが付け加えられています。「これらの逃れ道は……見いだすのがますます難しくなっている」。

      現代の日常生活の圧力から逃れる時に精神的な健康が得られることは,世界最悪の天候といわれるニューハンプシャー州ワシントン山の頂上で気象観測をしている人々の例を見ても確かです。なぜ好んでそこに住むかを,そのうちの一人はこう説明しています。「いろいろな圧迫がなく,交通機関もなく,上役にがみがみ言われることもない。我々はみな高給の仕事を捨てて,ここで働くようになった。人は我々を狂気と思うが,そんなことはない……我々は周囲の世界と調和を保っている」。

      精神病の根底に横たわる原因のうち,環境上の基本的要因としては,ほかに敵意,家庭の破壊,貧困,人種差別があります。またこの部類にはいるものに,親の側の利己的な野心,貪欲があり,これはいずれも子供にとって恐らく害となります。

      年を取ると共に訪れる別の種類の“環境”は,これまた精神病の根源となり得ます。エバング博士は,老人に特有の“環境”で,きわめて有害なものをこう述べています。「意義ある活動の停止,忘れられているという気持ち,施設にはいって社会から孤立していること,収入の急激な減少」。事実,アメリカの有名な一精神科医によると,“老衰”は体の実際の衰えよりもこのような環境のほうがいっそう大きな原因となっています。

      生理的な要因 ― 遺伝

      そうは言っても不利な環境の中で生活している人は大勢います。しかしそのために精神病になる人は比較的に少数です。これら少数の人が環境に影響され,他の人はなんともないのはどうしてですか。

      恐らくそれは遺伝のためです。ある人々は精神病にかかりやすい素質を持っています。そのような人は,生まれた時からこれらのストレスに対処する準備がそれほどよくできていません。それは裕福な家に生まれた人に比べて経済的に貧しく生まれた人のようなものです。貧しく生まれた人は裕福に生まれた人に比べて借金をしたり,生活保護を受けるようになったりする可能性が大きいのは当然です。同様にある人は遺伝のために情緒の面で“貧しく”生まれており,したがって心理の面で“借金”をするようになり,なんらかの形の精神病になることが多いのです。

      デービッド・ローゼンタール博士のことばも,この例えと結論を裏付けています。「たいていの場合,遺伝の要因が存在しなければ精神分裂病になることはない。しかしそうした病気にかかりやすい素質を持つ人にこの病気が現われるのは,ストレスの厳しい環境におかれた場合が多い」。

      精神分裂病の人と血縁の近い人ほど同じ病気になりやすいことが,研究により明らかにされています。それで親の一方がこの病気の場合,6人に1人の割合で子供も同じ病気になります。両親ともそうであれば,この可能性は6人に4人の割合となります。

      精神科医の一団は,刑務所の受刑者の中から志願した二人の正常な人に精神分裂病患者の血液を注射しました。その結果は,精神分裂病にこのような身体的な原因があり得ることを示しています。注射後間もなくして一人は知覚まひに似た状態に陥り,幻覚を経験しました。他方の人は偏執病になり,すべての人が自分のことをうわさしているという妄想に取り付かれました。そしておよそ2時間後には二人とも正常に戻りました。

      抑うつ状態の根本的な原因についても,精神病の研究者たちは同様な結論に達しています。それで次のことが言われています。「ますます多くの証拠が示すところによると,精神的な抑うつ状態のあるものは遺伝的であり……家族に抑うつ症状のみられる場合,人が『一時的』抑うつ状態[突発性の]に陥る可能性は10倍である」。ある精神病医によると,これは体の中の何かの化学的な欠陥あるいは脳の中の化学的な異常のためです。

      別の生理的な要因 ― 新陳代謝

      精神病の一因として今日,関心が高まっているのは,食生活の欠陥です。それは新陳代謝に影響することがあるためです。例えば,昨年,ワシントンのウォルター・リード陸軍病院でJ・F・グレデン博士の行なった精神病学上の研究があります。それによると,コーヒー,お茶,頭痛薬,その他コーラ飲料など広く用いられている製品中のカフェインは,大量にとると何らかの精神病の原因になることが示されています。米国精神病学会の年次総会で同博士は次のことを述べました。

      「ある未知数(の人々)にとっては,一つの薬 ― カフェイン ― を減ずることは,もう一つを加えるよりも有益な場合がある」。同博士はある病症を“カフェイン症”として描写し,さらに落ち着きのなさ,怒りやすいこと,不眠,頭痛,幻覚,筋肉のけいれん,嘔吐,下痢がカフェインによって生ずる場合のあることを述べました。しかし1日に15杯か,それ以上のコーヒーを飲んでなんともない人がいるかと思えば,たった2杯で影響を受ける人のいることも認めています。

      英国の精神科医リチャード・マッカーネスの発見も,同様な意味あいのものです。それによると,多くの場合,精神病には精神身体医学の原則が逆に作用しています。つまり精神が原因で体の病気になるのではなくて,体が原因で精神の病気になるというのです。どのようにですか。それはアレルギーのためです。病院や精神病の医療施設に入ったり,そこから出たりして何年間も入退院を繰り返してきた人々で,自分がアレルギーになっていた特定の食べ物を食事の中から取り除いたところ,病気が治ったという例が挙げられています。問題の食べ物というのは,人によって同じではありません。

      性格構造の欠陥

      環境また生理的な要因に加えて,性格構造の欠陥という要因があります。これは多くの場合,親が愛と確固とした態度をもって子供を育てなかったのが主な原因です。

      L・E・マーチンがその著「精神衛生/精神病」の中で述べていることは,欠陥のある性格の形成に親が一役買っている場合のあることを裏付けています。それによると,多くの親は,警察に補導されるような事件の起こるまで,子供の性格がどんな発達をしているかに無関心です。また親自身が根本的な価値よりも外見を気にしている場合,また性格の特性という面で親が悪い手本を示している時,親は子供の性格に悪い影響を及ぼすことがこの本に説明されています。

      ニューヨーク,ヒルサイド病院の精神科医ロビンズ博士も同じことを確信しています。同博士によれば,幼少期における正しい育て方は精神の健康に肝要です。これを怠ると,後年,精神科医の治療を必要とするような問題を起こすことになります。同博士は次のように語っています。「ヒルサイド病院に移送されてくる子供の患者は欲求不満に陥りやすく,欲求がすぐに満たされることを望んでいる。彼らは入院しても,医師の言うことを聞かないで自分の要求を通そうとする」。明らかにこれは,甘やかされて手に負えなくなった子供を描写していることばにほかなりません。

      それで大人にとって有害とみえるストレスも,性格に欠陥があるためにそうなるのかもしれません。精神的な抑うつ状態は,仕事自体が有意義で満足をもたらすものではなくなった現代文明においてよくみられる徴候です。今日の労働条件が必ずしもストレスを生みやすいというわけではありません。むしろ多くの場合,労働者の期待の大きすぎることが問題なのです。人々は自分の仕事によって生活し,家族を養うだけでなく,我欲を満足させることを求めています。

      精神病はこのように複雑な問題であるため,さまざまの精神病の治療に際して何が最善かという点で意見が大きく分かれることは容易に想像されます。今どんな治療法が使われ,またどんな成功を収めていますか。

      [9ページの図版]

      精神病

      環境

      遺伝

      新陳代謝

      性格的な欠陥

  • ショック療法,薬剤または精神外科療法は問題を解決しますか
    目ざめよ! 1975 | 7月22日
    • ショック療法,薬剤または精神外科療法は問題を解決しますか

      精神を病む人々の治療は,ほとんどの国において長足の進歩を遂げました。過去において,精神病の人が受けたのはどんな扱いでしたか。ある権威者によれば,「飢えさせ,こごえさせ,締め付け,脅かすことは常套手段であった。殴るだけ,つまり棒やむち,針金,鎖,こぶしで打つのは,まだましなほうであった」ということです。

      とくに悪名高いのはベドラムとして知られるようになったロンドンのベツレヘム・ロイヤル病院でした。そこでは特定の日になると,1ペニーの料金をとって見物人の前で精神病患者を虐げました。今に至るまで「ベドラム」は「気違いじみた騒々しい騒ぎの場所または光景」を意味することばとして使われています。王室の者でさえ精神病になると容赦されず,英国王ジョージ三世もこのような不幸な犠牲者の一人でした。

      精神病の人に対する残酷な仕打ちは,害虫のいる,不潔きわまりない牢の中に放置するという扱い方に変わりました。しかし19世紀の初めに一部の人道主義者たちによって始められたのは,悪霊に付かれた人としてではなく病人として精神病の人を扱い,教育,レクリエーション,人間的な親切心によって精神病を治療する方法でした。19世紀末以来,精神病の治療に関する新しい理論また治療法が数多く発表されています。

      一方には,フロイト,ユングなどの人にちなんで名付けられた精神療法があり,他方には薬剤とショック療法を主とする“身体的”すなわち“器質的”な方法があります。かつて広く用いられ,その後,悪評が高くなった精神外科療法は,昔とは非常に違った形で復活しつつあります。特定の患者の治療には,これらさまざまの治療法を幾つか組み合わせて用いるのが普通です。

      ショック療法

      精神病患者のショック療法は三段階を経て今日に至ったと見ることができます。その最初のものは,マンフレッド・ザーケルによって始められたインシュリン・ショック療法でした。しかしこれには欠点もありました。インシュリンの注射によるショックは,最大の効果をあげるには30時間から50時間,持続しなければならず,またショックを与えられた患者が時に蘇生しないことがありました。また看護婦や付き添いの十分な看護を必要とするために多額の費用が必要でした。それでおよそ10年後の1940年代になってそれはほとんど用いられなくなり,他のショック療法に取って代わられたのです。

      メトラゾールという薬を使う2番目の方法は精神病医メドゥナによって始められました。メトラゾールによって,てんかんに似たけいれんの起こることが発見され,これが精神病を治すと考えられました。しかしこの方法にも多くの短所があり,なかでも,けいれんによって時に骨折するという難点がありました。

      これらのショック療法はおおかた電撃療法によって取って代わられ,今日ではこれが一般に用いられています。これは脳に電流を流して体をけいれんさせるものです。普通は薬が与えられるので,患者は苦痛を感じません。これをおよそ50秒間続けると,思考の混乱状態が起きて,その状態は1時間ぐらい続きます。あるいは何週間も記憶を失った状態が続くこともあります。この療法が良い結果をもたらすことを認めている精神科医や患者は少なくありません。

      しかしECTとして知られている電撃療法に対しても,批判がないわけではありません。それは今ほどひんぱんに用いられてよいでしょうか。アメリカ精神病学会の会長ペリー・C・トーキントン博士(1972年)によれば,そうではありません。「電撃療法は,他の療法 ― 化学療法(薬剤),精神療法あるいはこれら二つの併用 ― が効果を収めない時,深い抑うつ状態を治療するために用いるべきである」と同博士は語っています。

      電撃療法を初めて使った,ほかならぬチェルレッティ教授も,それを評して「およそ美的でない ― 醜い……いやなもの」と述べており,代わりになるものを見つけることに努めていると語りました。F・G・アレキサンダー,S・T・セレスニック両博士共著「精神病治療法の歴史」にも次のように出ています。「ショック療法は症状を軽くする効果があるに過ぎない。それは病気の根底にある心理的不安に対処するものではない。病気の根源に達するのは精神療法であって,これなしに電撃療法を受けても病気の再発を招きやすい」。

      広く読まれている一精神科医の伝記には,電撃療法が好まれる理由として,保険の効くことが挙げられています。精神科医は(1972年当時)“ボタンを押すたびに”35ドル(約1万円)になるということです。

      薬剤の使用

      20世紀の初め,奇跡的とも言えるほどによく効く,強い薬が試みられました。しかしその効果はほんの数分あるいは数時間しか続かないのです。次いでブロマイドが広く使われるようになりました。しかしこれも思ったほどの効果は得られずに終わっています。この面での努力全般について次のことが言われています。「薬の夢は何度となく破られたにもかかわらず,人間の内面の悩みがいつかは化学的な方法で軽くされることを,医師たちはなお望んでいる」。

      とくに1950年代以降,西欧諸国では精神神経安定剤が用いられています。そのあるものは精神分裂病の治療に非常な効果があるとされており,そのほか抑うつ状態を無くすのに効く薬や,不安を和らげるための薬があります。

      これらの薬を使うことによって患者の取扱いは容易になり,また患者の苦痛も和らげられました。しかしこれらの薬は濫用される気味があり,とくに精神薄弱者の施設においてその傾向があります。1975年1月11日付ナショナル・オブザーバー紙に引用された多くの精神科医のことばは,「患者をこん棒で打って半ば無意識にさせるのと変わらないような方法で」自分の仕事を楽にする看護人を非難しています。

      ブランディスのディブワド教授は述べています。「我々のしたことは,機械的な拘束[拘束服,個室監禁]を化学的な拘束に変えたに過ぎない。これは見えないだけにいっそう残酷である」。別の権威者の次のことばも引用されています。「人々を施設に隔離し,薬を与えておとなしくさせることは認められた常套手段となっているが,我々はこれを打破しなければならない」。

      薬は多くの場合,支えに過ぎません。薬は回復を早めるどころか,病気を長引かせることがあり,神経組織に害となることさえあります。暴れる患者を押さえるために使われる薬について,一精神科医の調べたところでは,このような患者の20から30%は筋肉の働きに異常を来していることが分かりました。

      精神病の治療に薬を使うことについて,1970年の一教科書はその現状を次のように要約しています。「かなりの進歩にもかかわらず……なお相当の努力が必要である。我々の治療する病気のほとんどについて言えば,その原因は情けないほど分かっていない。薬が病状の改善にどうして役だつのか,またなぜ効かないことがあるのかは,今なおほとんど理解されていない。快方に向かう患者も大勢いるが,全快する患者はなお非常に少ない」。

      神経外科?

      神経外科すなわち脳の手術によって精神病をいやす試みは,とりわけ1936年にさかのぼります。大脳前葉の一部を切除することによって不安を軽くできることが,ポルトガルの研究者イーガス・モーニスによって観察されたのはその年でした,しかし彼がこの種の前頭葉切開術を20回行なったのち,ポルトガル政府は法律によってこれを禁止しました。にもかかわらず,この手術は米国で盛んに行なわれるようになり,主唱者であるウォルター・フリーマンは4,000回に及ぶ前頭葉切開術を行なっています。

      この手術は「眼球の後ろに氷割り用のきりを振り回わして大脳前葉の一部を破壊する」と形容されました。サイエンス・ニューズ誌はこう報じています。「前頭葉切開術は米国でおよそ5万回,英国で1万5,000回行なわれたあと,1950年代に至って,恐らく電撃療法と薬剤療法の進歩のためにその流行は下火となった」。

      前頭葉切開術ははるかに重大な人格の不調を招くことが少なくありません。事実,アメリカにおける先駆者フリーマンでさえ,前頭葉切開術を施された人は「士気」を失い,また想像し,予見し,利他的である能力を失うと証言しています。患者は「洞察力,同情心,感性,自意識,判断力,情緒的な反応力を次第に失った」と,ワシントンの著名な一精神科医は語っています。

      しかし近年において,大脳の一部を破壊する,さらに精巧な方法が使われるようになり,神経外科の問題は再び脚光をあびるようになりました。米国では毎年,400から600件に上る,このような手術が行なわれていると報告されています。しかも「神経外科の治療法が今後ますます広く用いられるようになるという点で,すべての神経外科医の意見は一致している」ということです。しかしこの手術がソ連邦の全域にわたって禁止されているという注目すべき事実は,この手術に好ましくない面のあることを示しています。

      1973年の春,米国では,自発的な同意を条件に精神病の犯罪者に精神外科の手術をする案が多くの論議を引き起こしました。多くの人は,これが脳の手術によって人間を改造する道に通ずるようになることを恐れています。脳外科医のA・K・オマヤ博士も,これに強く反対する一人です。同博士の意見では,精神病患者はこれによって益を受けるどころか害を受けます。「脳のどの部分も他の部分の機能に必要な役目を果たしている」からです。―1973年4月2日付ニューヨーク・タイムズ。

      精神病の治療における電撃療法,薬剤,精神外科のいずれも,まだ不満足な点が多く残されていることは明らかです。事実,これらの方法のあるものについては,その使用の是非さえ論議の的となっています。ではこれに代わるどんなものがありますか。

  • ホルモン,ビタミンそしてミネラルはどのように助けとなりますか
    目ざめよ! 1975 | 7月22日
    • ホルモン,ビタミンそしてミネラルはどのように助けとなりますか

      精神および情緒面での病気と人の食餌との間には何らかの関係があるでしょうか。栄養やホルモンなどの要素によって精神病を治すことができるでしょうか。

      “医学の父”と呼ばれるヒポクラテスは,すでに西暦前5世紀の昔から,栄養不良と精神病との間には何らかの関連性があり得ると考えていました。また,晩年になって次のように書き記したのは,“精神分析学の父”ジークムント・フロイトにほかなりません。「我々が理解しようと努めているこれら精神障害すべてが,ホルモンあるいはそれと似た物質によって治療されるようになる日が来ることをわたしは確信している」。

      ホルモンの使用

      近年,数多くの精神病患者は,ホルモン療法の恩恵に浴してきました。ゆえに,ニューヨーク医科大学の一精神科医は,合成の性ホルモンが「電気ショックの場合のように外傷性がなく,従来の薬剤よりも早く効き」,一層効果があることを発見しました。同医師は,ホルモンを使うことによって数人の男性のうつ病を治し,他の人々をも快方に向かわせました。―1974年5月9日付,ワシントン・スター・ニューズ紙。

      米国のマサチューセッツ州ウースターの生化学者と精神科医の一チームは同様の性ホルモンを用いてより一層目覚ましい結果をさえ得ています。同チームは女性患者の8割を快方に向かわせました。しかも,「ショック療法,抗抑うつ剤,精神療法など“各種”の従来の治療法では治らなかった」女性の入院患者だけを選んだにもかかわらず,そのような結果が得られたのです。―1974年9月30日付,ボストン・グローブ紙。

      栄養

      精神病における栄養の果たす役割は,ペラグラの例に見られるとおり昔から認められていました。ペラグラはビタミンB3(ニコチン酸)の不足によって起こる病気で,精神異常はその病気の症状の一つです。

      今は精神に作用する化学薬品の研究に全時間専念している元大学教授ジョージ・ワトソンは,栄養面から精神衛生に取り組む手法を強調している人の一人です。同氏は,自著「栄養とあなたの精神」の中で,人間の体の酸化速度は早いか遅いかのいずれかであるので,それに応じて食餌を調節しなければならない,と論じています。「食べ物は精神状態や,ある意味ではひととなりを決定するものとなる」というのが同氏の見解です。ワトソンはさらに次のような見解をも述べています。「風変わりな行動の大半は,脳の栄養不良,疲労した神経系統その他,新陳代謝の機能不全と直接関係のある身体上の障害などに起因する」。同氏は,必要とされている,つまり欠乏している栄養素を投与することによって,ひどい精神分裂症に悩まされていた患者を治したと述べています。

      同様の仕方で精神病に取り組んでいるのは,低血糖症財団に属する500人の内科医および精神科医です。それらの医師たちは,血糖の量が少ない場合にうつ病,不安,健忘症,震え,悪夢,神経衰弱などが起こり得るとの見解を述べています。

      栄養面から精神病に取り組むその手法は,精神病を治療するに際して微量元素の果たす重要な役割にも重点を置いています。例えば,リチウムの価値は広く認められています。米国テキサス州の一生化学者は,同州内で飲料水中のリチウム含有量の高い幾つかの都市では精神病の少ないことを発見しました。ゆえに,ハーバード大学医学部の精神医学教授リオン・アイゼンバーグ博士はこう述べています。「そううつ病患者の病気の症状が治まった後,リチウムと呼ばれる物質を予防薬として服用させるなら,患者の健康状態を保たせるのに役立つ」― ワールド・ヘルス誌,1974年10月号。a

      リチウムに加えて,ある特定の食物に含まれている他の微量元素も,精神病と関連して大切な役割を果たしているかもしれません。そのような微量元素には,亜鉛,カルシウム,マンガン,マグネシウム,鉄,銅,コバルト,クロム,セレン,モリブデンなどがあります。事実,これら微量元素の重要性を認める精神科医はますます増えています。

      “オーソモレキュラー精神医学”

      “オーソモレキュラー精神医学”という用語は,「正しい場所に正しい物質を正しく集中することの重要性」を強調する治療法を指すために,ノーベル賞受賞者ライナス・ポーリング博士が作り出したことばです。この用語は二つの語を語源としており,まっすぐな,正しい,正確な物事を意味するオーソ(“オーソドックス”と言う語に見られる)と,“モレキュル(分子)”という語から派生したモレキュラーから成っています。

      ポーリングはこう説明しています。「脳が正常に働くには,脳中に多くの異なった物質の分子が存在しなければならないことが知られている」。それらの物質は血液によって脳まで運ばれます。同博士は,ある種の精神病の場合,食物中に含まれているビタミン類や微量元素などを十分に利用するだけの機能が体に欠けていると考えています。この遺伝上の欠陥を補うため,同博士は患者に大量のビタミンを投与したり,患者の食餌を別の方法で調整したりするよう勧めています。特に強調されているのは,ビタミンB1,B3,B6,B12,CそしてHなどの使用です。

      しかしながら,“オーソモレキュラー精神医学”のもたらす相対的な益に関しては,意見の非常に大きな食い違いがみられます。例えば,エクアドルのカルロス・A・リオン博士は,「[オーソモレキュラー精神医学の]効き目に関して決定的な証拠はまだ提出されていない」と述べています。同様の意見として,アメリカ精神医学会には次のような記録が残されています。「ビタミン大量投与療法の提唱者たちは,その療法の効能に関して際立った主張をしているが,その主張にはたいてい根拠がない」。また,ハーバード大学医学部の精神医学教授S・ケティ博士は,その取り組み方を「不完全な知識の未熟な適用」と呼んでいます。

      他方,米国ニューヨーク州マンハセットのデービッド・ホーキンズ博士は精神分裂症患者5,000人を対象にしてビタミン大量投与療法を用いて治療した結果,4,000人余が快方に向かったと述べています。事実,同博士は普通の精神療法や化学療法にビタミン療法を加えることによって,回復率を2倍近くにし,入院患者数を半減させ,精神分裂症患者の間で発生率の高い自殺を全く無くすことができるのに気づきました。

      カナダおよびアメリカの両精神分裂症財団の理事長であるアブラム・ホッファー博士はこう述べています。「精神的な問題を持ってやって来るのに,規定食を処方して家に帰すので,わたしの病院の患者はわたしのことを少しおかしい精神科医だと考えている。しかし,規定食が大切なことをやがて患者自身が確信するようになる」。

      目下,この“オーソモレキュラー”法を自分の治療法に取り入れている精神科医はアメリカに300人余おり,その数は増加しています。そのような医師たちは,3万人余の患者がその療法から益を受けたと主張しています。また,この種の治療法が患者とその家族にかける金銭的負担は,他の種の治療法と比べればごくわずかであるという点も見過ごしてはなりません。

      何をすべきか

      もしかして,ご自分やご自分の愛する人が精神病に悩まされてきたというような場合もあるかもしれません。もしそうであれば,お分かりのように,回復を促すために行なえる事柄があります。

      過度のストレスは多くの場合精神病の要因となるので,問題の原因となっているかもしれないストレスの根源となるものを取り除くか減らすかするために,できるだけのことをしてください。結婚生活に影響を及ぼす事態や対人関係それに雇用問題や生活上の類似の諸問題に関連して何らかの決定を下すことで思い煩っているのかもしれません。では,決定を下すか,さもなければその問題を考えないようにしてください。

      極度の精神変調がある場合には,事態を抑制するために薬剤や電気ショックをさえ用いることもできます。とはいえ,そうした治療法は専門医の監督の下でのみ,しかもたいてい最後の手段として勧められる治療法です。近年,ビタミンやホルモンを使うことによって優れた成果が得られたという例が幾つか報告されています。それらの治療法の見込みを調べてみるのが有益なことにお気づきになるかもしれません。

      しかし,基本的に言って,精神病患者は自分の思考を制御する面で助けを必要としています。その助けを得るために多くの人は,最もよく知られている治療法,つまり精神療法に頼ります。精神療法とは何ですか。その治療法は精神の平衡を取り戻すよう人を助けることができますか。

      [脚注]

      a 1975年1月3日付,ザ・メディカル・レター誌(英文)によると,有害な副作用が起こり得るので,リチウムの服用は注意深い監督の下で行なわれねばなりません。

  • 解決は精神科医の治療にかかっているか
    目ざめよ! 1975 | 7月22日
    • 解決は精神科医の治療にかかっているか

      精神療法とは,精神面や情緒面で乱れた状態にある人からその問題点を聞き出し,それに対処する方法を自覚するよう助ける治療法のことです。アメリカでは,この種の治療を施す人々,つまり精神科医の数は過去25年間で7倍に増えました。

      たいていの精神科医が用いているのは,ジークムント・フロイトの始めた“寝いす”を利用して行なう精神分析論による療法です。といってもこれは,主にアメリカを中心に行なわれている療法です。例えば,1,100万の人口を擁する東京には精神分析医はわずか3名しかいませんが,人口900万のニューヨーク市にはなんと1,000名を数える精神分析医がいます。

      精神医学療法の価値は,決してすべての人から認められているわけではありません。事実,全米精神療法学会の理事でさえ,最近,「精神療法の分野を今日特色付けている論争や絶えまない幻滅感」について語りました。また精神科医カール・メニンガーも,「いわゆる精神分裂症患者の9割までが医療機関の助けを受けずに回復する」と語っています。

      ロンドン大学付属精神医学研究所のH・J・アイセンク教授は,1973年4月4日号のメディカル・トリビューン誌上で厳しい語調でこう書きました。「精神療法および精神分析の種々の方法がもたらしたとされる[成果]は,自然回復の場合とほとんど変わらない」。言い換えるなら,アイセンク教授によると,精神医学の助けを借りた人々の回復率は,精神医学療法を全く受けなかった人の場合とほとんど同じだったのです!

      与えられた助け

      しかしながら,精神科医によって本当に助けられた人のいることも否定できません。アメリカ,カリフォルニア州に住むある男の人は,「親切なその人から受けた援助は非常に有益で,病状は急速に快方に向かいました」と書いています。そして,「あの精神科医はわたしのために何を行なったのだろうか」と自問し,こう答えました。「彼はわたしの話に耳を傾けてくれました。本当に話を聞いてくれました。……自制心を培う能力がわたし自身のうちにあることを悟るよう助けてくれました」。

      神経症の徴候が現われていたこの男の人は,深刻な性的異常を示す行動上の問題を持っていました。しかし精神科医は,親切に励ましを与えることにより,その弱さを正すよう患者を助けることができました。こうした精神科医の治療のおかげで快方に向かった人の中には,非常に重い精神病患者さえいました。カール・メニンガーを中心とする一医師団が著わした,「極めて重要な情緒の安定」と題する本に挙げられているある病歴は,この点を説明する証拠となっています。

      そこに挙げられているのは,63歳の時に州立病院に収容された“メアリー・スミス”の例です。どうしたことか彼女は,親切で優しい典型的な農業経営者である自分の夫が酒の密売に関係するようになり,繰り返し自分に毒を盛ろうとしていると考えるようになりました。そのため,寝ている夫を金づちで襲ったのです。

      彼女は,「神経症の徴候があり,落ち着きがなく,錯乱状態にある」と診断されました。そして入院後6年目には,回復の見込みのない精神異常者と断定されました。それから7年の歳月がたったころ,ある新しい医師が着任し,その患者に関心を持ちました。医師は甲高い声で話す彼女の不平に辛抱強く耳を傾け,同情を示し,できるときはいつも話にうなずきました。また一緒に散歩しては,妄想を取り除くよう巧みに助けました。彼女の眼鏡の度を直し,看護婦を付けて読み物を与え,一緒に雑談させました。

      その婦人の声の調子は徐々に変化し,ベッドを整える手助けができるようになり,やがて院内の敷地を独りで歩くことが許されました。ほどなくして,数日外泊することも許されました。そしてついに76歳という高齢で,老婦人を世話する付き添い看護婦の職に就いたのです。何年か後のこと,その婦人の娘から次のような知らせが寄せられました。「母は協力的で非常によく働き,みんなの役に立っています。……年齢を問わずわたしの知っている女性の中で,最も計画的に仕事をする人の一人だと思います」。

      精神障害者を助ける点で成功を収めたこうした例は,それらの患者がどんなタイプの治療を特に必要としているかを示唆しています。何年か前のこと,精神衛生研究財団の会長ジェフリ・ビッカース卿はこう説明しました。「精神科学における最も意義のある発見は,精神を守り,かつ健全な状態に戻す愛の力である」。

      そうです,今では,精神病患者を効果的に治療する上で,愛,親切,辛抱,そして理解が肝要なものとして一般に認められるようになりました。しかし先に触れたように,多くの場合,精神科医は患者の回復になんら助けとなっていません。それには,何か根本的な理由があるのでしょうか。

      治療にあたる姿勢に見られる基本的な誤り

      周知のとおり,悲惨な事態に面して耐える力を得るためには,人は自分が存在する理由,つまり人生にはどんな目的があるかを知ることが必要です。しかし精神科医は,こうした知識を与える上で最も優れた立場にあると言えますか。「自分はなぜここにいるのだろう」。「生命とは一体何だろう」。「前途にはどんな運命が待ち受けているのだろうか」。こうした基本的な疑問に人々が答えを見いだすよう,精神科医は助けを与えることができるでしょうか。

      実際のところ,人間にはだれもこうした疑問に満足のゆく確かな答えを与えることはできません。それができるのは人類の創造者である全能の神だけです。そして神は,わたしたちが希望と慰めを得られるように,みことば聖書の中にそうした答えを備えてくださいました。しかし,精神科医は一般に神についてどう考えていますか。

      1970年に行なわれたある調査は,その点を明らかにしています。インタビューを受けた精神科医のうちその55%の人が,神に対する信仰は“幼稚”で,“現実にそぐわない”と考えている,と語りました。

      なんという理性に欠けた非論理的な結論なのでしょう。考えてみてください。至高の神の存在を認めないとすれば,生命の起源をどのように説明できますか。また,愛についてはどうですか。健全な精神を保つ上で極めて肝要なこの驚くべき特質はどこから生じましたか。この点について論理的で道理にかなった説明を与えているのは聖書だけです。そして聖書の説明によれば,愛に富む至高の創造者がまさにそれらの根源であられるのです。(詩 36:9。ヨハネ第一 4:8-11)どうみても“幼稚”とは思えない,科学の分野で傑出した人々の中にも,そのような神に対する信仰を表明した人がいます。

      サイエンス・ダイジェスト誌はそうした人々の一人についてこう報じています。「かつては,科学史家のほとんどが,アイザック・ニュートンこそ世界の生み出した最も偉大な科学者であると断言したものである」。そして,そのニュートンは主著「プリンキピア」の中でこう述べました。「その方の真の支配領域からすれば,真の神はまさしく生きておられ,知性に富み,力あふれる実在者であられることがわかる。また,他の卓越した面を考慮すると,神は至高者,つまり最も完全な方であられる。神は永遠無窮,全知全能であられる」。

      世の精神科医が犯している基本的な誤りは,精神または情緒の乱れている人を治療するに際し,一般にこの真の神に知恵や導きを求めていないという点にあります。あらゆる専門医の間で精神科医の自殺率が最も高いことは,確かに精神科医の取るこうした態度の必然の結果と言えます。精神科医の一人は,その点に触れて,『精神科医の[自殺]率が他と比べて最も低くなるまで,その教えのすべてには疑問が残る』と語っています。―アメリカ医学学会誌。

      基本的な誤りがさらにもたらす影響

      神のみことば聖書の健全な教えの価値を無視する精神科医が,平衡の取れた仕方で愛を示すのはまれなことです。例として,麻薬を断ち切らせるために,10代の息子を精神科医のもとにあずけたある父親の場合を挙げることができます。どんな結果になったでしょうか。父親は2,000㌦(約60万円)を支払いましたが,息子は少しも快方に向かいませんでした。

      父親は息子を助けたいと思いました。しかしその父親も,また精神科医も,愛を表わす上で肝要な事がらは親切のうちにもき然とした態度で懲らしめを施すことであるという神のことばの教えの真価を認めてはいませんでした。(ヘブライ 12:6-9。箴 23:13,14)ついに健全な助言に耳を傾けたその父親は,麻薬中毒者更生施設に進んで入りたいと思うようになるまでは家に戻ってはならない,と息子に命じました。後日,息子は父親にこう言いました。「わたしはお父さんとお母さんに家を追い出されて初めて,お二人がわたしを本当に助けたいと願っておられることが分かりました」。その息子は今では麻薬中毒から立ち直っています。

      神を認めず,道徳に関する神の教えを無視する精神科医の一般的傾向は,非常に有害な結果をもたらしてきました。例えば,「同性愛グループ,青少年に対するわいせつ行為で告訴さる」という見出しが,ロングアイランド・プレス紙の第一面に掲げられたことがあります。同誌はこう報じました。「国際的にも知られている幼児精神科医を含む4人の男が……昨日,青少年に対する男色,強制わいせつ行為および不法共謀のかどで起訴された」。

      こうした事件は例外かもしれませんが,男性の精神科医が女性の患者と性関係を持つといった事件はそう珍しくありません。例えば,結婚生活がうまくゆかず欲求不満に陥っていたクリスチャンのある婦人は助けを求めて精神科医のもとに行きました。ところがその精神科医は,精神科医に見てもらうよう夫に勧めるか,離婚するか,あるいは“ボーイフレンド”と情事を行なうか,三つのうちのどれかを選ぶように,そして必要なら自分が喜んで“ボーイフレンド”になって上げる,と言いました。

      また,ニューヨーク・デーリー・ニューズ紙に報じられた次のような理由で訴えられた精神科医もいます。同紙によると,「[その精神科医は,]治療と称して自分と性関係を持たせ,その上“治療費”を請求」しました。別の精神科医は,精神病の治療と偽って患者に自分と性関係を持つよう強要したため,125万㌦(約3億7,500万円)の賠償金を支払うようニューヨーク州最高裁判所に訴えられました。事実ある精神科医は,自分の著わした本の中で,「『強要』してはならないが,患者の性的必要を満たすために自分を役立てる」よう,精神科医に勧めています。著者は,その本に“愛の治療”という表題を付けました。

      アメリカ有数のセックスクリニックを開業している二人の臨床医は,自分たちが治療した800名の患者のうち相当数の人が同診療所内の精神科医やカウンセラーと性関係を持つことに同意した,と語りました。こうした報告の中には,単なる空想や願望的思考や誇張した自慢話などもあることでしょう。しかしながら,医師の一人はこう述べました。「こうした特殊な報告のわずか25%が正しいものであるとしても,この分野における専門家にとって,これはやはり深刻な問題である」。

      世の精神科医に対しては,明らかに十分注意を払う必要があります。というのは,助けの得られることがある反面,神の義の原則に反することを行なうよう促される場合も実際にあるからです。しかしたとえそこまではいかないにしても,一般に精神科医は精神病の特効薬ともいうべき神から与えられた愛の特質の正しい適用の仕方を知らないのですから,そのような治療にあまり期待することはできないでしょう。

      ということは,精神に関係した問題を徹底的に究明し,解決するための助けの得られる信頼の置ける精神療法はどこに行っても受けられないという意味でしょうか。幸いなことに,そのような助けを得ることができます。この混乱した世界の中にいても,そうした助けにより健全な精神を取り戻した人は少なくありません。

  • 精神の健康を回復させる最善の方法
    目ざめよ! 1975 | 7月22日
    • 精神の健康を回復させる最善の方法

      精神病にかかるなら,それは関係者にとって大きな悲しみをもたらすものとなります。しかし,そのようなことが起きたとしても,家族が恥ずかしく思う必要は少しもありません。精神病にかかるのは,ちょうど流感や心臓病などの身体的病気にかかるのと同じ様な場合が少なくないのです。また,身体的な原因が主要な要素ではない場合でも,なお希望を持って積極的な態度を取るべき理由があります。それでなし得る最善の策は何かという疑問が生じてきます。

      多くの場合,幾つかの治療法を併用するのが一番良いとされています。しかし,最も肝要なのは,精神病で苦しんでいる人が,真の希望や励ましを与えることのできる理解ある家族の者や友人からの助けを受けることです。助けを与える側の人々は,精神病も他の病気の場合と同様,時がたつにつれて体そのものが順応して治癒するので,たいてい自然に治ってゆくということを考えれば,慰めを得ることができます。また,自然に治らないとしても,苦しんでいる人を助けるためにできることは少なくありません。

      精神病を患っている人々が最も必要としているのは愛されることです。その重要性は今や医学関係の文献の中で幾度となく強調されています。このことは,精神病を患っている人が風変わりで無責任な行動を取ったり,道理にかなっていなかったり,さもなければ気むずかしかったりする場合でも,家族や友人たちはその人に対して忍耐を示し,辛抱強く接すべきであることを意味しています。

      精神病を患っている人のために,この必要な助けを与え得る最善の場所はどこでしょうか。どこかの精神病院や施設ですか。まずそうではないようです。事実,4人の医師が著わしたある書物はこう述べています。「主要なねらいは,できるかぎり患者を入院させないことである。ある場合には,それだけでも勝利と言える。というのは,現在の精神病院の中には,自宅にいたほうが患者にとってまだましであると言えそうな病院が少なくないからである」。

      患者にとって自宅は住みなれた環境です。患者は,本当に関心を持ってくれる人々に見守られていますし,回復あるいは快方へ向かわせることを目的とした世話をも受けられます。では,そうした助けを与えるには,精神医学を教える世俗の学校で教育を受けることが必要でしょうか。

      精神医学の教育は必要か

      興味深いことに,精神病医自身が精神医学教育の欠点を認めています。例えばデービッド・S・ビスコットは次のように述べています。精神医学会が与える認可は,「優れた治療専門家になるために最も重要な特質の幾つかを見過ごしにしてきた。つまり,その人の関心,正直さ,好奇心,寛大さ,人間味,進んで助ける態度などの特質である。[これらの特質の]大半は学校で教えられなかった」。

      「説得力と治療」の著者で,「集団精神療法」の共著者でもあるJ・D・フランク博士は,精神的に病んでいる人を助けるために精神医学教育は必要ではないとさえ述べています。「今日の心理学」誌の1973年4月号はこう説明しています。「フランクは,全く訓練を受けていない人でも,臨床医として精神病医と同じほどの成功を収められると考えている。彼は,『成功を収めるのに必要なのはある特殊な治療法に関する訓練よりも,治療専門家個人の特質かもしれない』と述べている」。

      ある精神病医たちは,精神病を患っている人を治療する際,神のことば聖書の中に収められている知恵や理解のほうが世俗の教育よりも一層価値があることを認めています。精神病医であった故ジェームス・T・フイッシャー博士は,その長くて輝かしい生涯の終わりに際して,そのことを自著「知恵遅れの人々 ― 精神病医の病例集」の中で次のように述べています。

      「最高の資格を持つ心理学者と精神病医がこれまでに書いた,精神衛生に関する権威ある論文すべてを集め,それを組み合わせて洗練し,無用な語句を削り取り……そのまざりけのない,純粋に科学的な知識を当代随一の詩人に正確に表現させたとしても,そのようにして得られるのは山上の垂訓のせいぜい不器用で不完全な要約でしかないであろう」。イエス・キリストの語ったその垂訓は,聖書の中のマタイ 5章から7章に収められています。

      精神的に平衡の取れていない人々が,資格のある聖書の教え手から神のことばに基づく適切な導きや教訓を受けることによって健康を取り戻した例は一再ならずあります。その例を幾つか考慮してみましょう。

      著しい回復 ― どのようにして?

      その患者は精神病医に偏執性精神分裂症患者であると診断されました。10年後に,その人は不治の病人であると宣告され,精神病院から退院できたものの毎日33錠の薬を服用しなければなりませんでした。その人は自分の身なりにも生活全般にもなんら関心を払いませんでした。そんな時,戸別訪問をするエホバの証人の一人がなんとかその人と聖書研究を始めるところまでこぎつけ,聖書の正義の要求や神の王国の下で人類にもたらされる,約束された祝福などを忍耐強く教え込みました。8か月もすると,その人は薬を必要としなくなり,それから4か月後には全快したと告げられました。

      さらに,米国ミシガン州に住む婦人で,幾年もの間定期的に精神療法やショック療法を受け,薬剤による治療法に5,000ドル(約150万円)を費やした人がいます。そうした種々の治療を受けたにもかかわらず,その婦人は再三にわたり自殺すると言って周囲の人を心配させました。ところが,エホバの証人と聖書を研究し始めると,その婦人は薬剤の服用を続けなくてもよくなった上,喫煙をもやめることができました。彼女はかかりつけの精神病医に電話をかけ,これまでになく気分が良いこと,そしてそうなった理由について話したところ,その精神病医は,自分の患者すべてにもそのような治療法を見つけてほしいものだ,と答えました。

      これらの人を変化させたのは何でしょうか。聖書の教えはどのように彼らを助けたのでしょうか。

      聖書を研究した結果,これらの人は,人格神また真の助け手としての創造者,エホバ神に対する強い信仰を持つようになりました。(イザヤ 50:7。ダニエル 6:27)そして,悪がはびこり,人類が苦しむのを神が今日まで許してこられた理由や,近い将来に神の政府がどのように世の諸問題の原因を除き去るかを理解するようになりました。間もなく地上で享受できる義の状態に関する神の約束に対する確信を得ることによって,人生に対するそれらの人の見方すべては変わりました。希望を持てるようになったのです!―ダニエル 2:44。ヨハネ第一 2:17。啓示 21:3,4。

      しかし,それだけではありません。彼らは聖書の原則に従って生活することをも学びました。その原則には,愛,喜び,平和そして自制などを生活に当てはめる方法も含まれています。(ガラテア 5:22,23)聖書の原則に従って生活するよう彼らを助ける点で特に役立ってきた人々がいます。

      資格を備えた助け手

      多年にわたる神のことばの研究や個人的な問題を扱う上での実際の経験のゆえに,エホバのクリスチャン証人の長老たちの多くは精神および感情面で病んでいる人々を助けるための十分の資格を備えています。聖書の次の命令は,いみじくもそうした長老たちに向けられていると言えるかもしれません。「憂いに沈んだ魂になぐさめのことばをかけ,弱い者を支え,すべての人に対して辛抱強くありなさい」― テサロニケ第一 5:14。

      神からのそうした助言を導きとするクリスチャンの長老は,助けを求めて自分のところに来る人々に対して思いやりのある,しかも励みを与えるような態度で接することができます。こうして長老たちは,問題を持つ人の話を辛抱強く最後まで聞き,純粋の関心を示します。長老たちは,精神病を患っている人をすぐにとがめたりせず,精神的に不安定なことを認め,できる時はいつでも相手に同意することの大切さを悟っています。ゆえに,長老たちは慰めを与え,その人が回復するのを助けるよう努めることができます。こうして,親切で理解のある長老たちは,混乱したこの世界にあって多くの人々が精神的平衡を得,それを保つよう助けてきました。

      必要な助けを与える

      精神的に不安定な人を助ける際,クリスチャンの長老は,平衡を失わせた原因が何かを見定めるようにします。それは根深い罪悪感でしょうか。もしそうであれば,聖書が次のように説明している神の憐れみを強調できるでしょう。「もしだれかが罪を犯すことがあっても,わたしたちには父のもとに助け手,すなわち義なるかたイエス・キリストがおられます」。(ヨハネ第一 2:1,2)そして,長老は聖書に定められている歩むべき道を示すことができます。それは次のようなものです。『認らわして[自分の罪]を離るる者は憐憫をうけん』― 箴 28:13。詩 32:1-5。

      あるいは,不安がその人の持つ問題であることが分かるかもしれません。その場合には,エホバに信仰を持つべき理由とその重要性を強調する必要があります。神は,『ご自分にその荷をゆだねる』ようわたしたちを招いておられます。エホバに荷をゆだねるための一つの方法は心からの祈りですが,長老は問題を持つ人のために祈って,実際にそれを示すことができます。―詩 55:22。

      もちろん,聖書の神の知恵を生活に適用するよう人々を助けるだけで,あらゆる精神病が治るわけではありません。別の方法を指摘することができるかもしれませんが,徹底的な健康診断は早目に注意を払うべき肝要な事柄の一つです。例えば,ちょっとした埋伏歯がそれ自体本人に少しも痛みを感じさせなかったのに,脳に影響を与え,精神の変調をきたしていたことが分かった例もありました。歯を抜いてその原因を取り去ると,精神的に不安定な状態は無くなりました。

      その他の重症の場合,精神的錯乱を和らげるのを助けるために,医学的に処方されたある種の薬剤が必要とされるかもしれません。また,精神の健康を取り戻すのに栄養が果たし得る役割を見過ごしてはなりません。

      とはいえ,経験の示すところに基づいて,精神および感情面で障害を持つ人が神のことばからの助言や導きによって特に助けを得られるということをわたしたちは確信できます。この苦悩に満ちた人類の世界にあって,慰めやいやしを与える神のことばの恩恵に,できるだけ多くの人が浴すことはエホバの証人の願いです。そうした援助を望まれるなら,また,援助を望んでいる人をご存じなら,どうぞエホバの証人と連絡を取ってください。エホバの証人は喜んで訪問し,実生活の面で励みを与える健全な聖書の原則から益を受けるよう人々を助けます。

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