ものみの塔 オンライン・ライブラリー
ものみの塔
オンライン・ライブラリー
日本語
  • 聖書
  • 出版物
  • 集会
  • 英国の王制 ― 1980年代を生き延びるか
    目ざめよ! 1982 | 11月22日
    • 英国の王制 ― 1980年代を生き延びるか

      英国の「目ざめよ!」通信員

      重大な年となった1914年以来,30ほどの王制がこの世界から消えてゆきました。それらの王制は,地上の至る所で生じつつあった政治形態の急速で激しい変化に順応できなかったか,または順応しようとしなかったかのいずれかです。王室の中でまだ残っているものに,英国のウインザー家があります。この危機的な時期に,同王室は国家の名目上の君主という,威厳はありながらも限定された役割を受け入れてきたので,民主的な事の進展を何ら妨げることがなかったのです。

      それでも,この王室の将来については幾つかの疑問が起こります。その存続は国民にとって重要なことでしょうか。失業率が高く,金詰まりの昨今,王室を維持してゆくための費用を容認できますか。それはどんな益をもたらすでしょうか。一般の人々はその存続を願っているでしょうか。王制を賛美する人も,それに反対する人も一様にこうした疑問を抱いています。読者もこのような事柄について考えられたことがあるでしょう。

      昔ながらの華麗な行事

      英国の王制はこれまですでに千年以上続いています。その間に英国は,それ以前のどんな国よりも強大な世界強国になりました。その後,議会が力を得て統治権をしっかりと掌握するに及び,初期の数世紀間に見られた専制的な権力は衰えてゆきました。さらにこの20世紀に入ってここ数十年間に,英国は植民地を手放し,それらの植民地を独立した国家から成る英連邦に加盟させ,自国の海岸線にまで退きました。昔日の華麗さはほとんど残っていません。残っているとすれば,それは王制にのみ見られます。

      過ぎし日のこうした華麗さの名残は,毎年議会が開かれる際の荘厳な行事に見られます。女王は王室の他の成員を従え,きらびやかな制服に身を固めた近衛騎兵隊に護衛され,飾り立てられた馬車に乗ってウエストミンスターの国会議事堂に乗り付けます。こまかな事に至るまで仰々しい儀式をもって,下院議員が上院に呼び出されます。そこで女王は玉座から,時の政府が草稿を書き,その会期の計画を概略した演説を朗読します。古くからの伝統が注意深く守られます。

      時にはそれよりもさらに華麗な行事が行なわれる場合があります。1981年7月29日に行なわれた英国皇太子の結婚式をテレビでご覧になった方もおられるでしょう。それは堂々たるスペクタクルでした。64人の騎兵から成る儀仗隊に護衛された11台の馬車が,王家の新郎新婦とその親族をバッキンガム宮殿からモール街とストランド街を経てセントポール寺院まで運びました。海外からやって来た幾千幾万もの人を含め,約100万人が沿道に並びました。世界人口の6分の1に当たる約7億のテレビ視聴者が,この世代にはめったにお目に掛かれないこの華麗な行事に見入りました。国民はこの儀式を大いに楽しみました。

      そしてその結果,王室は新しい成員,皇太子妃を迎えました。その皇太子妃はほどなくして女王に次いで,王室の中で一番の人気者になりました。そして国民は6月に彼女に生まれた最初の王子,ウイリアムの誕生を大きな関心を抱いて待ちました。ウイリアムは現在の王位継承者であるチャールズ皇太子に次ぐ王位継承権を持つ者となりました。

      君主の役割

      立憲君主としての女王の役割には必然的にどんな事柄が伴うでしょうか。ペアーズ百科事典は次のように説明しています。「法律上女王は行政府の長であり,立法府の重要な成員,司法府の長,三軍の最高司令官,英国国教会の俗人の首長である。事実上は女王の役割は純粋に形式的なもので,君臨すれども統治はしない。重要な事柄すべてにおいて,女王は閣僚の助言に基づいてのみ行動する。しかし,女王は国家元首また英連邦の首長として今でも象徴的に重要な役割を果たしている」。

      女王はどんなことをして一日を忙しく過ごすのでしょうか。女王の行動および王室の他の成員の行動は,幾つかの新聞の王室関係ニュース欄に毎日載せられているので,一般国民の前に公開されています。ロンドン・タイムズ紙の一読者は,1981年中にこれらの記事に載せられていた行事を要約し,同紙に寄せた手紙の中で,エリザベス女王が1981年中に400を優に上回る会合の約束を果たしたことに注意を向けました。それは内外における公式訪問から,謁見や叙任式,大使との接見,首相の週ごとの訪問などに及びます。女王はその日の予定の要領書を読み,公報や古参閣僚の閣議の議事録などを読み,数多くの文書に署名します。忙しいスケジュールであることは一目で分かります。女王は極めて良心的にその役割を果たしていると一般の人はみています。他国を訪問する場合に,エリザベス女王が英国随一の大使となることに疑問の余地はありません。マープランの行なった世論調査によると,調査の対象になった774人の人が女王の仕事ぶりを評価して,10点満点中,平均9.1点を付けています。

      王室の他の成員について言えば,エリザベス女王の夫君であるフィリップ殿下および王位継承者であるチャールズ皇太子はいずれも忙しい日程をこなしています。女王の母親で,ジョージ6世の未亡人である皇太后は既に80代に入っていますが,やはり数々の公的な式典に出席します。

      こうした行事すべてに王室の成員の出席が必要かどうかは疑問視されることがあります。市長のような地方の高官が“臨席”すればそれで十分ではないでしょうか。そのような行事を組織する人はそう考えません。王族が臨席すると,一般の人の出席がはるかに多くなるのです。これは他の人では集めることのできない関心を,王族が集めていることを示しています。また,そのような行事に女王や王族の他の成員が臨席することによって,政府の閣僚は多くの時間を取られる式典に出席せずにすみます。

      ですから英国の大衆は一般に王制を家宝のようなものと見ていると言えます。それを大切にし,見せびらかしたりはしますが,日常生活には大きな影響を及ぼしません。しかし,この風格のある家宝を維持してゆくための費用に二の足を踏む人がいるのです。

      では,どれほどの費用が掛かるのか

      王室の維持は議会で毎年のように問題になり,盛んに報じられます。その口火を切るのは“王室費”に関する討議です。それはもう1年王制が機能してゆけるようにするために政府が上程する予算です。それは二つの部分から成っています。一つは女王のためのもので,もう一つは他の王族の必要を賄うためのものです。

      1982/83年度の女王のための王室費は8%増額されて354万1,000ポンド(約16億円)になり,その4分の3は個人秘書から宮殿の掃除人に至るまで王室に抱えられている人々のための給料の支払いにあてられます。1982/83年の王室費はまた,他の7人の王族の生活を維持するために76万7,000ポンド(約3億4,500万円)を供しています。これらの王室費のほかに,政府の各省庁は宮殿や王室ヨット,6機からなる女王の編隊,お召し列車などを維持するために約1,500万ポンド(約67億5,000万円)が費やされています。

      しかし,王制を維持するためにこうした多額の出費をすることに対して,国民の側にはそれほど異存はないようです。前述のマープラン世論調査によると,調査の対象になった人の76%は,王制を保つことに伴う利点はそれを維持する費用を補って余りあると述べています。

      しかし,すべての人がそのように考えている訳ではありません。ザ・タイムズ紙の伝えるところによると,一国会議員は,提出された王室費の予算は「彼らがどんな人間であるかをあらわにしている。貪欲で,欲の深いやからで,国が悩まされている様々な問題の解決に少しも役に立たない。人民が立ち上がって革命を起こす時は急速に近付いている」と語りました。しかし,そのようなことを意図しているにしても,これまでのところ人々にはその方向に向かう傾向はほとんど見られません。

      英国国教会における役割

      女王は英国国教会の俗人の首長ですが,これはその象徴的な名目上の長であるという意味にすぎません。女王には聖職者としての役割は全くありません。霊的な指導者また執行部の指導者はカンタベリー大主教であることが認められています。新しい大主教や主教を選んだり,ある主教をより格式の高い管区に移したりするためには,16人から成る王室任命委員会が二人の人の名を首相に提出し,首相はその内の一人を女王に推薦して任命がなされます。例えば,最近ロンドンの主教管区が空席になりました。委員会は二人の氏名を挙げましたが,首相はそのいずれをも退け,別の人を女王に対して推薦しました。「憲法上の原則に基づいて教会の首長はそれに服した」のです。ですから,少なくともこの点において,現在の女王は教会の問題に忙しく立ち回ったかつての国王ヘンリー8世のような人物の再来であると自ら考えていないことは明らかです。

      英国人はどう考えているのか

      今日王室に人気がある理由は,エリザベス女王とフィリップ殿下および今では成人しているその4人の子供たちの家族生活によるところが少なくありません。多くの人はその中に何かしら温かいもの,健全なものを見,それにあやかりたいと思うのです。自分たちの国家元首の家族が非常に献身的で一致した家族である証拠が見られると,安心感が得られるのです。

      しかし,大勢の若い王族やそのいとこ達が今や成人に達しつつあることから,これらの若い王族すべてが成人して王室費の財政負担が増大しないように,「王室の役割,範囲,および規模について考えるのはよいことであろう」と一著述家は述べています。そこには将来へのむずかしい課題が横たわっていると言えるでしょう。

      英国人が自国の王制にかなり満足している主な理由は,長い間機能を果たしてきた制度に対する,英国人の持ち前の保守的な敬意にあると言えるでしょう。英国人はそうした制度に慣れ切っており,それを変えるとなると慎重になるのです。非常に変わりやすい世にあって,王制は安定感と持続感を与えると感じているのです。自分たちの国家元首を,自国の政治家たちのような選挙運動の酔狂の対象にしたいとは思わないのです。憲法上,女王にはあまり権限が与えられていないので,君主の権力について神経質になってはいません。むしろ,選挙民の願いによって入れ替わる政治家たちに対して,女王は安定感を与える影響力となっていると見ています。300万人の失業者を抱えているにもかかわらず,国民は国の経済状態の責任を少しも王室に着せてはいません。それは政治家の扱う問題です。とはいえ,今日のひどい失業を前に,多額の費用を費やして多くの王族を支えることは,少なからぬ批判を呼んでいます。

      将来について,エコノミスト誌は次のような考えを明らかにしています。「君主を頂く民主主義は英国にとって最も民主的な政府であり続けるであろう。昨年[1980年]の世論調査によると,英国人の86%がそれを望んでいる。政治家に導かれたそれに代わるいかなる単一の政体も今世紀に国民の86%の支持を得ることはないからである」。ですから,英国の人々が自分たちの選んだ人を支配者として持つ一方,国家元首としては王制による君主を頂くことに満足しているのは明らかなようです。

  • より優れた王制
    目ざめよ! 1982 | 11月22日
    • より優れた王制

      英国王室での結婚式が行なわれる直前に,英国のジャーナリスト,マルコム・マガリッジは次のように書きました。「騒然とした,移り変わりの激しいこの時代に,チャールズ皇太子とレディー・ダイアナがいつの日か実際に英国の国王および王妃として王座に上ることがあるかどうかをあえて予示する者がいるとすれば,それは占い師とマルクス主義者とエホバの証人だけであろう」。

      もちろんマガリッジ氏の言ったことは正しくありません。エホバの証人がその種の予言をすることはないからです。しかしエホバの証人は,チャールズ皇太子が王座に上ることがあったにしても,その統治は短いものになると十分考えられるとは言います。

      どうしてそうなのでしょうか。それは皇太子の側に何か落ち度があるからではありません。あるいは,英国で共和主義者の革命が起こる可能性が現実に幾らかでもあるからではありません。その理由ははるかに深遠なものです。

      聖書預言の示すところによると,英国の王制は他のすべてと共に,はるかに勝った王制に間もなく取って代わられます。その王制は大いに必要とされている計画の数々を実行する能力を備えており,チャールズ皇太子自身必ずやそうした計画をよしとするでしょう。確かに,皇太子の言葉は,同皇太子の願いとイエス・キリストの下における来たるべき世界的な王制の目指すところとが驚くほど一致していることを示しています。ここにその例を三つ挙げましょう。

      I. 義の裁き

      最近,精神病院を視察した際に,チャールズ皇太子は,「外見で裁かれている人が余りにも多い。外見はしばしば内面とは異なるのだと絶えず自分自身に言い聞かせねばなりません」と述べました。見掛けだけで裁いたり判断したりすることを避けようという皇太子の願いは確かに称賛に値しますが,本当にその願い通りの裁きをするだけの識別力を備えた人がいるでしょうか。神がご自分の預言者サムエルにいみじくも,「人は目に見えるものを見るが,エホバは心がどうかを見る」と指摘された通りです。(サムエル第一 16:7)エホバはこの能力をご自分のみ子にお与えになりました。ですからイエスは次のように言うことができました。「あなた方は肉にしたがって裁きます。わたしはだれをも裁きません。ですが,もしわたしが裁くとすれば,わたしの裁きは真実です。わたしは独りではなく,わたしを遣わした父が共におられるからです」― ヨハネ 8:15,16。

      1世紀にイエスは裁き人として地上に遣わされたのではありませんでしたが,来たるべき神の王国の下ではイエスがエホバの裁き人として仕えることに疑問の余地はありません。その時に関して,預言者イザヤは次のように予告しています。「彼は目で見る単なる外見によって裁くのでも,ただ耳で聞くことにしたがって戒めるのでもない。そして立場の低い者たちを必ず義をもって裁き,地の柔和な者たちのために必ず廉直さをもって戒めを与える」。(イザヤ 11:3,4)実に心温まる見込みではありませんか!

      II. 黄金律

      ある工場を訪れた際に,チャールズ皇太子はこう語りました。「私が座右の銘としているのは,『人にしてもらいたいと思うように他の人にもしなさい』という言葉だけです。私は自分を他の人の立場に置くように心掛けています。そうすれば,道理にかなった範囲で正しい事柄を行なえるのではないかと思っています」。

      確かに,チャールズ皇太子は優れた言葉を座右の銘としています。皇太子が山上の垂訓の中からその言葉を引用していたことに読者はお気付きになったでしょう。イエスはその中で次のように言われました。「それゆえ,自分にして欲しいと思うことはみな,同じように人にもしなければなりません。事実,これが律法と預言者たちの意味するところです」― マタイ 7:12。

      では,イエス以上にこの“座右の銘”を優れた仕方で適用できる人がいるでしょうか。イエスの全生涯は人々に善を行なうために費やされたのではなかったでしょうか。聖書がイエスのことを,最終的に「羊のために自分の魂をなげう(つ)」「りっぱな羊飼い」と呼んでいるのももっともなことです。(ヨハネ 10:11)確かにイエスは,人類のために善を行なうことに対する関心を身をもって幾度となく示されました。

      III. 憎しみの終わる時が来ようとしている

      「余りにも多くの偏狭な信念が行き渡っており,ぞっとするほどです。恐れ……無知……。その背後にある理由は何であれ,それは実に大きな悲劇です。結局は皆仲良くして行かなければならないからです。さもなければ,将来はどうなってしまうことでしょう?」 皇太子はここで英国の社会に見られる重大な問題について語っていましたが,この言葉は今日の世界のほとんどどの場所にも同じように当てはまります。チャールズ皇太子が人種間の憎しみを嫌い,どんな人種の人々にも自ら善意を示すその模範は称賛に値しますが,チャールズ皇太子にせよ,人間の支配者にせよ,何をすれば根深い偏見を変えることができるでしょうか。大抵の人が悟っているように,そのためにできることはほとんどありません。

      しかし,神の王国となると話は別です。聖書は,神の王国が全人類の兄弟関係という人間の積年の夢を実現することを保証しています。人間の政府とは異なり,神の王国は使徒ペテロが認識を示した原則に基づいて運営されます。ペテロはこう述べました。「わたしは,神が不公平な方ではなく,どの国民でも,神を恐れ,義を行なう人は神に受け入れられるのだということがはっきり分かります」― 使徒 10:34,35。

      使徒ヨハネが,「すべての国民と部族と民と国語の中から来た,だれも数えつくすことのできない大群衆が,白くて長い衣を着て,み座の前と子羊の前に立(ち)……『救いは,み座に座っておられるわたしたちの神と,子羊とによります』[と言う]」有様を幻の中で見たのも不思議ではありません。(啓示 7:9,10)確かにヨハネは神の王国の下で生活する人々を見ていましたが,それらの人々の間には,国家的あるいは人種的な分け隔てがありません。その人々は,エホバの証人が今すでに世界の至る所で行なっているように,和合して共に神を崇拝しています。

      あなたの決定

      チャールズ皇太子のような地上の王制の代表者たちが優れた特質を持っていると,多くの人々は彼らに親愛の情を抱きます。しかし,そうした人々の優れた特質も,「見えない神[エホバ]の像」であるイエス・キリストの特質の前には光彩を失います。(コロサイ 1:15)実際のところ,この地球にとってキリストよりも優れた支配者になれる人がいるでしょうか。そのような人は一人もいません!

      では,神の王国がこの地球を本当に支配し,それが多くの人々の信じているように単なる漠然とした思いの状態などではないことがどうして分かるでしょうか。一番大切なこととして,そのような王国の支配がごく間近に,それも地上の君主たちの大半が生きているうちに始まるということを示すどんな証拠がありますか。次の記事はこうした重要な質問に答えています。

  • 神による王制の到来
    目ざめよ! 1982 | 11月22日
    • 神による王制の到来

      歴史家によれば,王制はすでに幾世紀かにわたってすたれつつあります。今日ほとんどの国は,少なくとも理論的には,人民の代表によって支配されています。英国のように君主が依然として存在している国でも,君主にはほとんど実権がありません。

      では,神が王制によって全地を治めることを目的とされるのはなぜでしょうか。そのような考えは共和制の盛んな今の時代に逆行するものであることにお気付きにならないのでしょうか。もちろん気付いておられますが,エホバ神は人間の間で何がもてはやされているかを気には掛けられません。神は,人々の望む政体が何であるかにかかわらず,地球に必要とされる種類の支配をもたらされるのです。

      人々が,神の王国,その王制を受け入れるかどうかを見るために世界的な国民投票を行なうことを神は意図しておられません。むしろ,その王国の設立について聖書は次のように描写しています。それは古代のある君主が見た夢の中に描写されており,金,銀,銅,鉄および粘土でなる大きな像によって示される世界政治の将来にかかわる夢でした。

      古代のネブカドネザル王がその複合的な像を見ていると,「ひとつの石が人手によらずに切り出され,それが像の鉄と成形した粘土とでできた足のところを打って,これを砕きました。その時,鉄も成形した粘土も銅も銀も金も皆ともに砕けて,夏の脱穀場から出たもみがらのようになり,風がそれを運び去って,その跡形も見えなくなりました。そして,像を打ったその石は,大きな山となって全地に満ちました」。―ダニエル 2:34,35。

      その象徴的な意味は明らかです。世界の諸政府は滅びなければならないのです! しかし,だれの手によって滅びるのでしょうか。その彫像を打ち壊す大きな石に対して責任を持つのはだれですか。世界の諸政府が滅ぼされた後に,全地に満ちる大きな山とは何のことでしょうか。

      憶測をする必要はありません。聖書はこの王が見た預言的な夢を説明して,こう述べているからです。「そして,それらの王たちの日に,天の神は決して滅びることのないひとつの王国を立てられます。そして,その王国はほかのどんな民にも渡されることはありません。それはこれらのすべての王国を打ち砕いて終わらせ,それ自体は定めのない時に至るまで続きます。あなたは,山からひとつの石が人手によらないで切り出され,それが鉄,銅,成形した粘土,銀,金を打ち砕いたのをご覧になったのです。これから後に起きる事柄を,大いなる神ご自身が王にお知らせになりました。そして,この夢は確かであり,その解き明かしは信頼できます」― ダニエル 2:44,45。

      いずれかの人間が神の王国を権力の座に就かせるのではありません! それは神の抗し難い力によって立てられ,それが大きな山のように全地を支配するため来る時に存在している世界の諸政府すべてを滅ぼします。神の言葉,聖書がこの幻は信頼の置けるものであると保証しているので,神がご自分の言われた通りに行なわれることを疑う理由はありません。この重要な事実に人々の注意を喚起しなかった宗教諸組織は言い逃れるすべがありません。それらの組織は,神の王国は単なる抽象的な概念,つまり思いの状態であると人々に教えるのでその事実に人々の注意を喚起できないのです。

      問題は,神が世界的な規模の王国を立てようとしておられるかどうかではなく,いつそれを行なわれるかということです。エホバの証人は聖書を研究した結果,その時が非常に近いことを確信しています。なぜでしょうか。

      その理由は二つあります ―

      第一に,この幻が記されている,ダニエルの記したその同じ預言的な章には,わたしたちの住むこの世紀をはっきりと指し示す,年代にかかわる預言が含まれています。例えば,ダニエル書 4章には神の王国が石や山としてではなく,1本の木になぞらえられている預言が記されています。エホバの証人は,その預言が成就するまでに経過する「七つの時」が正にこの20世紀にまで及ぶことを詳細にわたって証明してきました。a (ダニエル 4:25)ダニエルの幻の年代についての正確さには疑問の余地がありません。その幻の一つはメシアの到来する時を正確に予示していました。(ダニエル 9:24-27)将来の出来事について論じられた時,イエス・キリストがご自分の弟子たちの注意をダニエル書に向けたのももっともなことです。―マタイ 24:15。

      第二の理由はイエス・キリストご自身の言葉に見いだされます。マタイ 24章,ルカ 21章,あるいはマルコ 13章を読めば,神の王国の王としてキリストが戻られる時をしるし付ける世界情勢が論じられているのに気付かれるでしょう。識別力のある読者であれば,イエスの予告された戦争・ききん・地震・不法と,ニュースで毎日のように伝えられる戦争・ききん・地震・不法との間に見られる類似点に感動せずにはいられないでしょう。

      ですから,聖書の年代表と聖書預言とが相まって,チャールズ皇太子をも含むわたしたちすべてが神の王国によるこの地の支配の始まりを見る世代の人々の中に住んでいることを証明しています。その神の王国は,人間の造った相争う,今の王国や共和国をちょうど脱穀場のもみがらのように一掃して,この地を支配し始めます。その日が到来する時,あなたは用意ができているでしょうか。

      神およびそのみ子なる義の支配者キリスト・イエスとあなたの関係は,ほうっておいてよいようなものではありません。それはエホバの世界的な王制が設立される時あなたの身にどんなことが起こるかを左右することになるのです。神の王国に抵抗する者として打ち砕かれることも,神の「山」の下での楽しい生活を待ち望むこともできます。神の「山」は,地球を常にあるべき姿の楽園に変えるからです。その選択はあなたにかかっています。

      どのようにしてそのような選択をするのですか。エホバのクリスチャン証人は,あなたが正しい決定を下すための基礎になる聖書の情報を得られるよう喜んでご援助いたします。エホバの証人に話し掛けてみてはいかがですか。あなたもこの世界がこれまで知らなかった唯一の完全な王制の下で幸福に暮らすことができるのです。

      [脚注]

      a 「聖書理解の助け」(英文)の「諸国民の定められた時」の項,94-96ページをご覧ください。(ニューヨーク法人ものみの塔聖書冊子協会出版。)

      [10ページの図版/図]

      (正式に組んだものについては出版物を参照)

      神の王国

      バビロニア

      メディア-ペルシャ

      ギリシャ

      ローマ

      英国と米国

      急進的な人民運動

  • 「忘れることがないように……」
    目ざめよ! 1982 | 11月22日
    • 「忘れることがないように……」

      マンチェスター・ガーディアン・ウイークリー誌の1982年3月14日号の2ページに,幾つかの投書の中に混じって,「良心的兵役忌避者に対する残虐な行為」と題する次の投書が載りました。

      「『……歳月も断罪はしない』というハリー・フィーウェルの記事を非常に興味深く読みました(2月21日号)。その中で,ヨークシャー州リッチモンド・キャッスルの監房を第一次世界大戦の良心的兵役忌避者を長く記念するための記念館にする計画について述べられていました。

      「フィーウェルの描く,恐れを知らない人々に対する仕打ちを読んで,1974年ロンドンのミル・ヒルで死去した,私の友人であるフランク・プラットの受けた仕打ちを思い起こしました。プラットは,フランスへ送られ,仲間の人間と仲間のクリスチャンに対して武器を取らせようとする実に恐ろしい拷問に遭った人々の一人です。

      「プラットは,30ポンド(約13.6㌔)の物を腕をまっすぐ伸ばして運ぶよう求められる“砲丸演習”をさせられ,その重さの物を幾度も降ろしたり挙げたりさせられ,とうとう疲れ切って地面に倒れてしまいました。パンと水だけの食事を3か月続けさせられてから,こうしたことをさせられたのです。倒れてしまったために,さらに18日間の砲丸演習の刑を言い渡されました。

      「それが終わると,幾度か顔を殴られ,次いで小さな物置きのはりに肩と手と足の所を縛りつけられ,午前8時から午後8時まで,1時間の休憩時間に冷や飯と水を与えられるだけで,来る日も来る日もつながれていました。そこから“ルアーブルの獄舎”へ移されましたが,そこに収容されていた人の中には殴り殺された人もいました。幸いフランクはそうした目に遭いながらも生き延び,忠誠を保ちました。

      「1950年に私が同じ問題に直面した時,事態はすっかり変わっていました。私は6か月の懲役刑を言い渡されました。しかし,貴誌の記者が正確に述べているように,他の多くの国々はこの良心の問題に対し理解を示す点で依然としてはるかに遅れています。それは平和と愛の種をまく人々の国際的な現象です。また,10年以上も強制収容所で過ごした,幾千人ものドイツ人の良心的兵役忌避者がいたことをも忘れないようにしたいものです。その多くはフランク・プラット同様,エホバの証人でした。その人たちの中には,それら悪名高い場所で息絶えた人も少なくありません。しかし,彼らは勝利を収めました。

      「11201 ニューヨーク市ブルックリン区コロンビア・ハイツ25番地,エリック・ベバリッジ」。

日本語出版物(1954-2026)
ログアウト
ログイン
  • 日本語
  • シェアする
  • 設定
  • Copyright © 2025 Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania
  • 利用規約
  • プライバシーに関する方針
  • プライバシー設定
  • JW.ORG
  • ログイン
シェアする