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    目ざめよ! 1983 | 7月22日
    • 世界経済

      どこへ向かっているのかそれはあなたにとって何を意味するか

      「家計簿の帳じりを合わせるのが大変です」とアンは語ります。中流階級のアンの家はなるほど立派ですが,住宅ローンのことを考えると心臓が止まりそうです。ご主人の給料は相当なものですが,インフレのお陰でその価値は削り取られてしまいます。「物価は毎週上がるのに,買い物に使えるお金の額はいつも同じ」とアンは言います。容赦なくのしかかってくる重圧にアンは押しつぶされそうになっています。そして,「パートの仕事をすることを話してみたのですが,主人は,そんなことはしてくれるなと言うのです」とため息をつきます。

      地球の反対側のアフリカでは,農業を営むアリオンという人が同様のざ折感に直面しています。政府の統制による公定価格が非常に低いため,田畑を耕して作物を植えるという彼の仕事は全く割に合わないのです。かつては,「だれもが隣りの農家よりも作付けを多くしようとしていたものです。ところが今では,だれもが同じ量だけ栽培して,満足しています」と,アリオンは語ります。作物をより多く栽培するために余分の努力を払うだけの価値がないのです。

      思い煩いと絶望は,経済の混乱したこの時代の落とし子です。読者も,世界のどこに住んでいようと,やはり影響を受けておられるに違いありません。さまざまな疑問符があって将来の見通しはつかないように思えます。『物価が上がる前に,今のうち買っておいたほうがよいのだろうか。今あるわずかばかりの貯蓄を投資に回したほうがよいのだろうか。銀行はお金を預けるのに本当に安全な場所と言えるのだろうか』といった具合です。

      そのような心配は単なる妄想ではありません。例えば,1982年に米国で閉鎖された銀行の数は1940年以来最も多かったのです。その倒産件数は1930年代の大恐慌中に記録された空前の最高数に不気味なほど近かったのです。法外な高金利によって,大小さまざまな企業が息の根を止められてしまいました。しかもこの問題は決して特定の国に限られてはいません。ですから中には落胆して,『では,世界経済は一体どこへ向かっているのか』と言う人があるかもしれません。

      率直に言って,明日になって,経済が持ち直したというニュースが飛び込んで来るか,さらに落ち込んだというニュースが入って来るかは,実際のところだれにも分かりません。経済は全く予想がつかなくなっているのです。しかし,長期的には,世界経済がどこへ向かっているか権威をもって予告することができます。しかし,そのためには,賃金が上がれば物価が上がるという悪循環や国際収支の赤字などの背後にあるものを見て,今日の諸問題の真の原因を探し出さなければなりません。ともあれ,まず経済の表面的な問題を幾つか簡単に見ておくのは有益なことでしょう。

  • 通貨 ― どのようにして造り出されるか
    目ざめよ! 1983 | 7月22日
    • 通貨 ― どのようにして造り出されるか

      昔,ある賢人は,「饗宴はあなたを幸福にし,ぶどう酒はあなたを元気づけるが,お金がなければそのどちらも得られない」と言いました。(伝道 10:19,「今日の英語聖書」)では,この不思議なもの,お金とは一体何なのでしょうか。それはどこから来るのですか。

      ずっと昔に人間は,物々交換をしたり,金属を持ち運んだりするのは,商取引に便利な方法ではないことに気づきました。それで創意工夫に富んだ中国人が紙幣を発明しました。やがて他の国々も,少なくとも理論的には貴金属 ― 普通は金 ― と交換可能な紙幣を印刷するという便利な手段を選びました。

      しかし,金本位制には本来欠陥がありました。これまでに掘られた金の総量は,(昔の1オンス35㌦という金の価格を使って換算すると)約850億㌦(約21兆2,500億円)にしかならないと言われています。この輝く金属は,人口や商取引の激増についてゆくに足るだけの量は存在しないのです。

      例えばこういう実例があります。第二次世界大戦後,米ドルが国際貿易の主要な通貨になりました。その結果,幾十億ドルもの米ドルが外国の諸政府の手中に収まりました。一著述家は,「既に1965年には,フォート・ノックス[米国連邦金塊貯蔵所]にある金の価値を上回るドルが外国の諸銀行の手中にあった」と述べています。(下線は本誌)諸国家が一斉にその金を請求してきたらどうなるでしょうか。そこで,米国は1971年に『自国の金の窓口を閉鎖した』のです。米国は依然として膨大な量の金準備高を維持してはいましたが,諸外国はそのドルを金に兌換することはできなくなりました。それであらゆる実際的な目的において,その通貨は米国政府の信義によってのみ裏づけられているということになりました。その結果,国際通貨体制は混乱に陥りました。

      ですから,通貨には,人々があると考えるだけの価値しかありません。政府が紙幣を印刷すればするほど,人々はその価値を低く見積もります。しかし,通貨を造り出しているのは印刷機だけではありません。

      何もないところから

      「あなたは,わたしの銀子を銀行家に預けておくべきだった」と,イエスのたとえ話の一つに登場する男の人は言いました。「そうすればわたしは,到着してすぐに,自分のものを利息と一緒に受け取っていただろうに」。(マタイ 25:27)聖書時代にも,銀行家は金を貸してかなりの額の利益を上げ,“利子”という形で預金者にその利得の幾らかを分かつという方法を知っていました。しかし,そうすることにより,銀行家は巧妙な仕方で通貨を造り出していました。

      論議を分かりやすくするために,自分が1,000万円を銀行に預けたとしましょう。次に,新しい商売を始めるために100万円を借りる顧客がいるとします。銀行の資産は,あなたが預け入れた額からこの貸し付けを引いた額の900万円しか増えないと思われるでしょう。ところが,銀行家の論理はそのようなものではありません。借り手に100万円を現金で渡す代わりに,そのお金は普通その人の銀行口座に入金され,徐々に引き出すようにされます。ですから,銀行の資産は減る代わりに,銀行の元帳には総計1,100万円の資産があることになります。100万円が何もないところから造り出されたのです。

      この数字の操作の話を聞くと,頭が痛くなるかもしれませんが,銀行家の顔には笑みが浮かびます。このようにして銀行は,自分たちが実際に持っている以上のお金を貸すことができるのです。『でも,それは危険ではないか』と考えられるでしょう。確かに危険なものになり得ます。特に,銀行が無責任に貸し付けをした場合には危険です。しかし,預金者と負債者が全員同じ時に自分たちの預金を引き出しに来るのはまれです。ですから,銀行は日常業務を処理するに足るだけの現金を手元に置いておくのです。

      政府も,必ずしも印刷機を動かすことなしに膨大な量の資金を造り出します。例えば,「通貨の風船」という本によると,米国の連邦準備銀行は,「不愉快なほど複雑な一連の帳簿の記入を行なっている。数字を動かし,政府発行の有価証券の売買をし,貸し付けをし,証券類を買ってそれをすぐに売ることを約束し,証券類を売ってそれをすぐ買い戻すことを約束する。……ところが,この活動すべてが分析されると,連邦準備制度は何もないところから通貨を造り出している」。

      読者も知らず知らずのうちに通貨を造り出しているかもしれません。クレジット・カードがあれば,それを使う度にお金を借りることができます。当座預金があると,しばしば実際に預金しているより以上の小切手を切ることがあります。こうして,通貨供給量が多くなり,インフレがあおられるのです。

      ですからこの通貨制度は,人々がこの制度に対する信頼を失ったら容易に壊れる泡のようなものなのです。しかし,通貨がそれほど簡単に造り出されるのなら,それはどこへ行くのでしょうか。

      [5ページの図版]

      世界の通貨はもはや金の裏書きがない

  • お金 ― 十分にあったためしがない!
    目ざめよ! 1983 | 7月22日
    • お金 ― 十分にあったためしがない!

      ソロモン王はこう言いました。「あなたのお金は瞬く間になくなってしまうことがある。それに翼が生えて,わしのように飛び去ったかのようである」。(箴言 23:5,「今日の英語聖書」)「2台のキャデラックと自分の妻のために2着目のミンクのコート」を購入した後に破産した,高給取りの陸軍の将官のように,自分のお金を浪費する人は少なくありません。

      同様に,一国の政府が歳入以上の予算を組むことがあります。例えば米国の内債の累積は1兆㌦(約250兆円)を超えているのです。他の国々も同様に,国外から得た多額の外債を含む天文学的な数字の累積債務を抱えています。外債を抱える国には,ソ連(約4兆円)やフィリピン(約2兆5,000億円)などがあります。

      『でも,国々はどうしてもっと倹約しなかったのだろうか』と思えるかもしれません。一つの点として,この時代の物資に対する空前の需要が挙げられます。経済学者のアービング・S・フリードマンはこう説明しています。「第二次世界大戦後は,物質面での福利の急激,普遍的かつ大幅な向上を約束しない限り,政府が生き延びることも,野党が政権を執ることもできなくなった」。ですから政府は,人々がやかましく要求した道路を作り,学校や病院や住宅を建てるために資金を ― それも多額の資金を ― 必要としました。その結果どうなりましたか。膨大な額の借り入れをして,結果として世界的に巨額の負債ができてしまいました。事態は1973年以降著しく悪化しました。

      同年,OPEC(石油輸出国機構)は,世界の他の地域に対する石油の供給量を著しく削減しました。この破壊的な動きは世界を揺るがせました。石油の価格はうなぎ登りに上がりました。しかし,一番ひどい痛手を被ったのは発展途上国でした。

      オイル・ダラーの行進

      OPECの戦略は当たり,その加盟諸国は突如として信じられないほど裕福になりました。(もっとも,最近では石油の供給過剰と価格の低落のためにそれらの国々は財政困難に陥っています。)しかし,当時新たに生み出されたその富の大半は,のどから手がでるほど現金を欲していた発展途上国へと流れ込みました。しかし,利得を求めるこの欲望は『多くの有害な事柄の根』であることが判明しました。―テモテ第一 6:10。

      この現金すべてがインフレをあおる一因となり,ある国々は金利を上げることによってそれを抑えようとしました。ところが,多額の負債を抱えた国々は身動きが取れなくなってしまいました。もっと資金を必要とするというのに,これまでの債務に対する利子の支払いさえできなくなったのです。のちほど取り上げますが,こうした債務が今や世界の経済体制全体の支払い能力を脅かしているのです。

      第三世界への融資

      第二次世界大戦後,貧しい国々への融資を目的として世界銀行と国際通貨基金(IMF)が設立されました。裕福な加盟国がこうした組織に資金を提供しました。最近,世界銀行のA・W・クローセン総裁は,「世界銀行の主要な,また中心的な目的は,貧困を緩和することにある」と言明しました。そしてこれらの諸制度は確かに大いに必要とされる資金を発展途上国へ注ぎ込んできました。とはいえ,箴言 22章7節にある次のちょっとした知恵の言葉を思い起こさせられます。「富んでいる者は資力の乏しい者たちを支配する者となり,借りる者は貸す人の僕となる」。ですから,発展途上国の中にはこうした組織からの援助を受け入れようとしない国もあります。なぜでしょうか。

      その投資が貸し倒れにならないようにするため,概してIMFは,借り入れ国に対し,予算の収支を合わせ,政府の出費を減らし,国の通貨の切り下げを行なうことによってその国の経済政策を思い切って変えるよう求めます。そうした事柄は健全な経済概念かもしれませんが,同時に貧しい国を混乱に陥れることもあるのです。ですから一人の経済学者は,こうした政策を発展途上国に押しつけるのは「おぼれている人にいかりを投げてやるようなものだ」と結論づけています。

      単に通貨の印刷量を増やすというのは無駄な術策です。そんなことをすれば,死をもたらす世界的インフレでさらに首を絞める結果になるだけです。それで,多額の負債を抱える国々は,国際的な融資組織の方針に屈するよりほかに道がないのです。

  • インフレ ― その背後にあるのは何か
    目ざめよ! 1983 | 7月22日
    • インフレ ― その背後にあるのは何か

      行きつけの喫茶店へ行って,既にインフレで高くなった価格のコーヒーを1杯注文します。ところが,レジに行ってみると,そのコーヒーを飲んでいる間に価格が2倍近くになったことを告げられます。そんなことは起こり得ないと言えるでしょうか。ドイツの人々は1920年代にまさにそのような経験をしたのです。インフレがどれほど加速し得るかを示す背筋の寒くなるような例です。

      読者がインフレを経験されたとしても,これほど激しいものではなかったかもしれません。それでも,アルゼンチンは500%のインフレ率を経験し,破壊的で急激なインフレに悩まされている数か国の一つに挙げられています。しかし,聖書を研究する人々はこうした事の成り行きに驚くことはありません。啓示 6章6節は,一日分の賃金で「小麦一リットル」しか買えなくなる時のことが予告されているからです。

      しかし,ほとんどの人と同様に,読者もインフレの責任がだれ(あるいは何)にあるのかよく分からないと考えておられるかもしれません。ですから,“専門家たち”に尋ねてみることにしましょう。経営者や政治家や経済学者たちの集まった法廷を想像してみてください。審理をつかさどる厳粛な特権はあなたに与えられます。

      そしてあなたは,裁判官の槌を振り下ろし,威厳をもってこう言います。「静粛に願います! 世界経済は死にひんしており,ここにいるいずれかの人物に責任があります。最初に自らを弁護したいと思う人がいますか」。

      経済学者はこう語ります。「法廷のお許しがあれば,起きた事柄について少し説明してみたいと思います。インフレは単に需要と供給の法則の結果にすぎません。銀行が多額の信用貸しをすれば,通貨供給量が増えます。さて,人々の持つお金の量が増えれば,物資の需要も高くなります。物資の需要が高まれば,価格も上がります。実際のところ,ごく簡単なことなのです」。

      「責任を我々銀行家に転嫁するのはやめていただきたい」と,ビジネス・スーツを着込んだ男の人が反論します。「我々が信用貸しをしなければ,経済全体が不況に落ち込んでしまいます。銀行の融資がなければ,人々は住宅を買うことも車を買うこともできず,家庭電気器具さえ買えません。企業や産業もひどい目に遭います。投資家がその資金を引き出すので,株式市況は下落します。確かに,我々の融資に幾らか行き過ぎのあったことは認めます。しかし,そもそもその資金を我々に回したのはOPECでした。そして,あの禁輸措置で物価を目が飛び出るほどつり上げたのはOPEC諸国でした。(そうだ,そうだとつぶやく声が聞こえる。)しかし,真の犯人は政治家たちです」。怒った政治家が口を開く前に,銀行家は政治家を遮ってこう言います。「そうです,あなたたちこそお得意の政府計画にあれだけの資金すべてをつぎ込んでいる張本人です。あなた方が資金を使い過ぎるから,需要が大きくなるのです。だから,物価は当然上がるのです!」

      「人を非難するのもいい加減にしたまえ」と政治家は言います。「そもそも,この世界を何回も爆破しつくすだけの爆弾が既にあるというのに,自分たちのあのような“おもちゃ”のための予算を絶えず要求する軍部がいけないのだ。そして言っておきますが,インフレを抑えるために金利が上がれば,泣きを見るのは君たち銀行家ですぞ」。

      経済学者はこう言います。「しかし,そのすべてが成し遂げたことといえば,世界を不況に陥れただけです。その上,物価は一度上がると,決して下がることがありません。原材料の価格の下がったことが幾度かありましたが,企業経営者の中にはどんなことをした人がいると思いますか。差益を消費者に還元する代わりに,自分たちの商品の消費を増やそうとしてその差益を広告費につぎ込んだのです!」

      企業経営者は顔を紅潮させてこう言います。「ちょっと待ってください。労働者が絶えず賃上げを要求しているのに,どうして価格を下げることができるでしょうか。時には労働組合がインフレを予想して,つまりインフレがまだ起きる前にそれを計算に入れて賃上げを要求したことがありました。価格を上げる以外に何ができるというのですか。それだけではなく,我々のお陰で人々は失業せずにすんでいるのです。我々の成長がインフレを引き起こすからどうだというのですか」。

      この言葉で法廷は混乱状態に陥り,あなたが裁判官の槌をたたいて初めて収まります。そしてあなたはこう言います。「もう言い訳は十分です。私は経済学者ではありませんが,この問題を引き起こした原因の一端はあなた方すべてにあることは明らかです。それゆえあなた方に判決を言い渡します……」。

      ところが,あることにふと気づいて,振り上げた槌を振り下ろせなくなってしまいます。自分のポケットにある,ありとあらゆるクレジット・カードのこと,そして自分がそれをどれほど使い過ぎてきたかについて考えたのです。そして,必要からではなく,過度の欲望から,また価格が上がるのではないかという恐れから購入してしまった品々について考えます。裁判官としての自分に対する確信が揺らぎ,あなたは頭を低く垂れて,罪ありとされた人々の列に加わります。

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