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海外で苦悩するドル目ざめよ! 1971 | 11月22日
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海外で苦悩するドル
「資本主義諸国が経済的破たんに近い状態にある事実に対する認識は増したようである」。
これはイタリアで会議を開いた西欧の著名な経済学者の一団がひき出した結論である。ニューヨーク・タイムズ紙にのせられた同記事はさらに,「国際通貨制度はどこかひどく狂っている」とつけ加えた。
西欧経済の見通しはなぜそのように暗いのだろうか。主要な原因はアメリカのドルにある。ドルは海外で大きな困難に遭遇している。「一般に信じられているのとは反対に,アメリカのドルはかつてないほど病んでいる」とUSニュース・アンド・ワールド・リポート誌は述べた。
一時,米ドルは高く評価された。外国の民間人も政府もドルの保有量が多ければ,喜んだものである。しかしいまはちがう。
収入を上回る支出
なぜこういう事態が生じたのであろうか。例をとって考えてみよう。仮にあなたが週給1,000ドル(36万円)の職についているとする。自分は経済的に裕福だとあなたは言うだろうか。たいていの人はそう言うにちがいない。
しかし,もし毎週1,100ドル費やすとしたらどうだろう。来年は週ごとに1,200ドル使うとすればどうなるだろう。毎年,収入以上の支出がつづくとすればどうなるだろう。貯蓄を使い果たしたあと借金するようになることは,むずかしい計算をしなくとも明らかである。
やがて銀行や証券会社は,あなたが収入をはるかに越えた生活をしていること,したがって危険な取り引き相手であることに気づくだろう。また,倒産するものと見て,貸付けを停止するだろう。
だから,どれだけの収入があっても,収入以上のお金を費やしつづければ,たしかに裕福とはいえない。それは繁栄への道ではなく,破産への道である。破産を避けるには,もし手おくれでなければ,生活の仕方を変えねばならない。収入に相応したお金の使いかたをしなければならない。
週に100ドルもうけても,1,000ドルもうけても,10万ドルもうけても,それは問題ではない。決定的な要素は,どれだけ使うかである。もうけるよりも多くの金を使いつづけるなら,ついには問題が生ずる。
国際経済の問題はこれよりもはるかに複雑ではあるが,基本的にいって,アメリカに生じたのはこれである。アメリカは外国でもうけるよりも多くの金を費やしてきた。そのためにアメリカは,国際取引において目下破産に近い状態にある。
なぜそうなったのか。共産主義圏外の多くの国々が,国際経済にどのような制度をもうけているかを知れば,その理由をよりよく理解する助けになるだろう。
西欧の金融体制
どの国においても,物品の売買にはローカル・カレンシー(特定の国または地域でしか通用しない通貨)が用いられる。たとえば,フランスの市民は,店に行って品物を買い,フランス・フランを支払う。彼はどんな時点においても,自国の通貨の購買力を知っている。
しかし,もしフランスの市民が,アメリカ製の自動車を買いたいときにはどうなるだろう。その自動車のドル価格に対して幾フラン支払わねばならないだろうか。そこには,政府,業界そして個人に対して,彼らの通貨が,他国の通貨と関連してどれほどの価格があるかを知らせるなんらかの国際的制度がなければならない。
政府は,国際取引において,需要と供給の法則,つまり他国による自国の通貨の評価に依存しながら,自国の貨幣価値を上げ下げすることができる。しかしそれは通貨の相対価値の絶えまない変動を招く結果になるだろうし,その変動が非常に大きい場合もあるだろう。
そのようなシステムだと,世界貿易は困難なものになる。業者は,外国で物を買うにせよ,売るにせよ,一定期間にわたるその相場を知りたい。自国の通貨で他国の通貨をどのくらい買えるかを知らねばならない。それを知ることによって,自分の製品の価格を定めることができる。
したがって,世界貿易にとっては安定した為替相場が非常に望ましいわけである。そこで,そのような制度が国際通貨基金の加盟国により協定された。この国際通貨基金というのは,共産圏外の100以上の国々で構成されていて,1944年,米ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで開かれた会議で設立されたものである。同基金は,国際通貨問題にかんする諸国家間の協力を取り決めた。加盟国はまた,通貨の公定価値を上下1%以上変動させないことに同意した。
ドルは『金も同様』
各国の通貨の価値は,米ドルの関係を基礎とする,という原則を加盟国は認めた。アメリカの経済力と産業力のゆえに,ドルは当時最強の通貨だったのである。
また,ドルはどの加盟国においても一種の準備金として受け入れうることが認められた。ドル紙幣のうしろだてとなるのはなんだろうか。それは金である。ドルを保有する国は,それをアメリカにもどし,その代りに1オンス35ドルという公定価格で金を得ることができる。
金には常に真実価値がある。紙幣とちがって金は,産業,装身用金細工,芸術その他に用いられ,需要が絶えない。だから,もし国際通貨基金の一国のドル保有高が多くなりすぎる傾向が見えたら,アメリカにもどして金に替えることができる。たしかにドルは『金も同様』であった。
この制度があるために,アメリカの実業家はドイツから機械を購入するとき,ドルがドイツ・マルクでどのくらいの価値があるか,前もって知っていた。そしてドイツ人は,そのドルを保有しておいてアメリカ製品の購入に使うことも,他の通貨と交換することも,あるいは,それをもどして金を得ることができることも知っていた。こうしたことはすべて,世界貿易を容易にした。
しかしなぜ諸国家は貿易を行ない,こうしたことを経ねばならないのだろうか。それは異なる国々が,ある品物を他の品物よりも経済的に生産できるからである。それらの国は,その品物を用いて,自分たちが全然生産しない,あるいは能率的に生産できない品物を手に入れることができる。
たとえば日本は,自動車,テレビ・セット,ラジオなど,多くの品物を他の国々に売る。そして,それによって得たお金の一部を,中東からの石油の購入に当てる。なぜ石油を買うのか。日本はこれというほどの石油を生産しないからである。石油がなければ,日本の産業は行きづまってしまうだろう。そこで,大量に生産する物を売り,そのお金で,あまり生産できない物を買うのである。
増大する問題
1944年に協定を見たこの制度は,国々が収入にほぼ見合った支出を行なう限りにおいては効果的であった。それは週給1,000ドルの人が,今週は1,000ドル少々使うかもしれないが,来週は1,000ドルも使わないというのに似ている。もうけただけのものを使うようにして,差引勘定の平衡を保てば,ある期間問題はない。
ところが,常習的に収入以上のお金を費やすなら,やがて問題が生ずる。世界貿易の面で一国が同様のことをすれば,やはり問題にぶつかるのである。
1950年,アメリカは他国でお金を使ったので,外国人は米貨を86億ドル所有していた。しかしそれは問題にはならなかった。アメリカは228億ドルの金準備があった。莫大な余剰である。他国はいつなんどきでも,ドルを金に交換することができた。1950年にはまだ,ドルは『金も同様』であった。
しかしながら,10年後の1960年には,その余剰の金は姿を消していた。外国所有のドルの総額は,アメリカの金保有高を越えた。そして1970年までに事態はいっそう悪化した。ある推測によると,外国人は430億を上回るドルを所有していたが,アメリカは110億少々の金しか保有していなかった。外国人に対して支払い能力の4倍の借金があったわけである。
しかも事態はよくなっていない。実際のところ,1970年は最高に不安定であった。その1年だけで,アメリカは,海外での取引で100億ドルという驚くべき大きな赤字を出した。また1971年の最初のわずか3か月間に出した赤字は実に合計55億ドルであった。
かりに他の国々が,自分たちの所有するドル全部を金に換えることを要求してきたならばどうなるだろう。ニューズウィーク誌は次のように答えている。「アメリカが窓を閉じ,国際金融体制を……一時混乱に陥れることはほとんど確実である。国際経済という不思議の国が日常生活に影響をおよぼすのはこのしゅんかんである。その混乱は,1930年代のスランプに似た世界的デフレーションという結果を招くであろう」。
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ドル問題の背後にあるのは何か目ざめよ! 1971 | 11月22日
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ドル問題の背後にあるのは何か
アメリカの国際収支はなぜこういう状態になったのだろうか。20年間になぜそんなに赤字がふえたのだろうか。
簡単に言えば,前にも述べたように,アメリカは海外で自国の収入を上回る支出を常習的に行なってきたからである。
これはアメリカが過去において,外国に売るよりも多くの物を外国から買い入れたという意味だろうか。そうではない。ごく最近までアメリカは,他国との貿易において常に輸出のほうが超過していた。
ではなぜそのように大きな赤字が出たのだろうか。なぜならアメリカは,世界貿易における商品の売買には含まれない,ほかの物のためにドルを費やし,あるいはドルを与えたからである。
この点で非常に重要な位置を占めるのは,対外経済援助である。第二次世界大戦以来,何億ドルもの莫大な額のドルが他の国々に与えられた。そのうえに,アメリカ人は海外で休暇をすごしては他の国々でドルを使う。彼らは,アメリカに来て休暇をすごす外国人よりも多くのお金を使うので,この面でも勘定は赤字になる。
ほかにもドルを流出させる領域がある。退職したアメリカ人の多くは外国で生活する。彼らは年金を受け取り,それを自分が住んでいる国で使う。またアメリカの企業家は,外国で運営する工場や設備にお金を使う。それに加えて,アメリカ人は投資として外国の有価証券を買う。
最大の犯人
しかしながら,アメリカのドルを流出させる最大の品目は,このうちのどれでもない。ではなんだろうか。1971年5月3日号,インダストリー・ウィーク誌は,「交易の赤字をつくる最大の原因は……海外における軍事費である」と述べている。
軍事費には,他国における武器購入費,海外でドルを消費する軍人の給料などが含まれる。また,アメリカと同盟関係にある外国の軍隊の維持費や必需物資の供給費もある。
そのような軍事費について,ニューヨーク・タイムス紙は,「1960年代中,軍事費にかんする米国の国際収支赤字は320億ドルにのぼった。ヘンリー・H・ファウラー元財務長官が強調したとおり,次の10年間には,そのような流出を許すわけにはいかない」と述べている。
そうした軍事費の別の面は,実際に価値のある物を何も生産しないということである。戦争も戦争準備も,国の納税者の富を破壊するものである。敵対する二国家が戦争用の飛行機や戦車を作るとき,永続する経済利益的になるものは何一つ生み出さない。それらの武器が建物や工場,都市,土地の破壊に用いられるとき,どれほどの富が生産されるだろうか。それだけの武器を作る費用とその使用は,国を豊かにするだろうか,それとも貧しくするだろうか。その答えは明らかである。
なるほど,戦争をするということは,戦争の道具が生産されなければならぬことを意味する。それは仕事をつくりだす。しかしその仕事は,経済的富,人類にとって実際に価値のあるものを生産してはいない。土地,家庭,樹木,公園,学校,病院などが改善されただろうか。もし戦争道具の生産に使われるお金がこれらのものに使われたなら,真の永続する経済的利益がもたらされるだろう。
したがって,長い目で見れば,多くの国が費やす戦費は,彼らの富をふやすものではなく,取り去るものである。アメリカの場合,海外における莫大な軍事費は,国際決済で破産状態に向かっている主因をなしている。
不気味な進展
アメリカの立場から見れば,最近,もうひとつ不気味な事態が進展している。アメリカがかつて他国との商取引において有していた莫大な余剰は姿を消しつつある。
最近は輸入のほうが輸出よりも急速にふえている。二,三十年前,アメリカしか能率的に生産できなかった商品の多くを,今では他の国々が生産できるようになっている。しかもそれらの国々の多くは,安い費用で生産する。
アメリカ製品の価格はインフレが原因で急騰している。そのために世界貿易におけるアメリカ製品はいっそう高くなる。外国人は,同質の商品をそれより安く生産する国から買うことを好む。
アメリカの消費者も問題を大きくしている。アメリカ製の品物が高いために,外国製品を買うことが多くなっている。今年,アメリカで売られている靴5足のうち2足は輸入品である。テレビは10台のうち6台,ラジオは10台のうち9台が輸入品である。また,ドイツのフォルクスワーゲンとか,日本のトヨタ・ダットサンなどの外車が殺到して,国産車の中に割り込んでいる。
このように外国商品はアメリカのいたるところで市場をさらっている。国外のみならず国内においても,それらの商品はアメリカ製品の売れ行きを阻害している。もしこの情勢がつづけば,アメリカは,海外における軍事費を全部削除してもやがて赤字を出すことになるだろう。
不均衡は危機を招く
アメリカの国際収支の赤字は何年かにわたって蓄積されてきた。しかし,アメリカの政府当局者は,政治的圧力その他により,他国に金交換をひかえるよう説得することができた。もし金交換に『かけつける』なら,国際通貨基金は互いに密接な関係にあるために,国際通貨基金加盟国全部が危機に見舞われるだろうと警告した。
しかし,親切な銀行家でさえ,選択の余地がほとんど,あるいはまったくなくなる時がくる。彼はお金を借りようとする人々に,『もう貸せない』と言わねばならない。1971年の春そういうことが起こった。この思いきった処置は,1970年中,および1971年のはじめに生じた事態のためであった。
1970年,アメリカは景気後退に悩まされた。この景気後退からの脱出策として種々の試みがなされたが,そのひとつが金利引き下げであった。これは企業を刺激するのが常である。お金を安く借り出せるからだ。自動車を買いたい人,家を建てたい人,あるいは事業を拡張した人はおそらく,金利の低いときに金を借りて使うだろう。
しかしながら投資家は,金利が低ければ利益が少なくなる。そこで多くの投資家は,アメリカでの投資をやめ,金利の高いヨーロッパでの投資に切り換えてしまった。
1971年の春,ドルがヨーロッパに殺到した。投資家たちが高利を求めたばかりではない。ドルが弱いために投機家たちはドルを手離して,もっと強いヨーロッパの通貨,とくに西独マルクを手に入れることを望んでいた。これらの強い通貨はやがて価値が上がり,自分たちは利益が得られると考えたのである。
しかしそういう通貨が一国内に流入すると,その国には使ったり貸したりするお金がふえ,インフレが激化する。何年かにわたるアメリカの赤字はすでに相当なものであるのに,ドルのこのヨーロッパ,特に西独への流入は,まったく重荷に小付けというところであった。ヨーロッパ各国の中央銀行は突如「受け入れを断わる」と言った。一時的にこれ以上のドルの受け入れを拒否したのである。そして自国の通貨を金融市場で上に『浮動』させた。
それは,自国の通貨の変動を1%だけ許すという,国際通貨基金の協定に固執しないことを意味した。そして,自国の通貨が,需要と供給にしたがってそれ自身のレベルをさぐることを許した。ドルの需要が弱く,ヨーロッパの通貨の需要が強かったので,それらの通貨の価値は数%上昇した。
それは実際上,ドルの価値を減ずることであった。アメリカがみずからそれをしないので,他国が自国の通貨を高く再評価することによって,それをしたのである。結果は同じことであった。今や同じ外国製品やサービスを買うのに,より多くのドルを支払わねばならない。
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問題は是正できるか目ざめよ! 1971 | 11月22日
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問題は是正できるか
アメリカの国際収支の赤字は調整できるだろうか。世界の金融体制は今後どうなるのであろうか。
この赤字を調整するには,アメリカはそのやり方を根本的に変化させねばならないだろう。それには軍事費の大幅な削減を含まねばならないだろう。それは,全世界の軍事基地を減らすか,または少なくとも,他国にその費用を支払わせることを意味するだろう。しかしどちらも困難なことである。
1971年5月,ヨーロッパ駐在の30万を越える軍隊とその扶養家族20万人を減らして費用を節約する提案が出されたとき,政府は強く反対した。政治的考慮が勝利を収めたのである。ドルが大量に流出するにもかかわらず,軍隊とその家族は現在のところ駐留地にとどまるだろう。
削減が行なわれた一地域は,アジアと太平洋で,軍隊はベトナムも含めて同地域内の多くの場所から徹退している。
ジレンマ
軍隊の大幅な削減に加えて,アメリカはインフレを押え,物価の上昇を阻止しなければならない。物価が下がれば,アメリカ製品は世界貿易においてより競争力を増すであろう。
しかし,それをしようとすれば,往々にして事業が停滞し,失業率が高くなる。悪性インフレの減少が試みられた1970年に起こったのはまさにそれであった。お金の入手をむずかしくするために金利が引き上げられた。政府や企業の消費額が削減された。このすべては景気の後退,失業率の上昇を助長した。政府与党でそうした事態を望むものはひとつもない。
したがって,アメリカはジレンマに陥っている。ドルの流出をへらして赤字を少なくするには国内のインフレを是正しなければならない。しかしそれは経済を沈滞させて何百万人ものアメリカ人を憤慨させる。だから,政治的にみて,景気後退は,他国を怒らすよりももっと悪いと考えられている。それらの国々は,アメリカの選挙のときに投票するわけではない。
他方,景気後退を避ける,もしくは是正するためにアメリカの企業を刺激することは,通常インフレをひき起こす。金利は引き下げられて借款と消費がふえる。政府や企業の消費も増加する。お金の入手が容易なために人々はさらに多くを費やす。そのために商品の需要は大きくなり,生産の増加が要求され,それに伴って仕事もふえる。しかしそうなると,物価は上がってアメリカ製品は高くなり,世界貿易における競争力が弱くなる。
繁栄してくると,人々は外国製品をも含めてすべての物にたくさんお金を費やすのがふつうである。また外国で休暇をすごす可能性も大きくなる。こうしたことはみな国際収支を悪化させる。連邦準備制度理事会の理事長アーサー・バーンズが,アメリカの財政状態は非常にくずれやすいので,現在の事業ブームを乗り越えられるかどうかは疑わしいと言った理由は,このジレンマにある。
見込み
赤字の防止対策にはどんな見込みがあるだろうか。政府当局者の一部には楽観的な傾向が見られる。
しかし民間の経済学者の多くは楽観的ではない。バンカーズ・トラストの主任経済学者ロイ・レイヤーソン博士は,「外国の民間および政府の債権者のドル要求にほぼつり合うドルが供給できるように,アメリカは国際収支の赤字を減らさねばならない。アメリカはこれをしてこなかった。また将来それをする見込みもないようである」と述べている。
一経済学者の指摘するところによると,代々の財務長官は,二,三年のうちに赤字を解消すると約束してきたが,約束を果たしてはいない。かえって赤字は急増した。したがって,西欧諸国およびアメリカとの間の効果的な均衡を得るという基本的な問題が未解決のまま,現在まで残っているわけである。
このために,カナダのマイヤーズ・ファイナンス・レビュー誌は,「世界は,存在するあらゆる通貨を巻き込む通貨危機に近づいている」と警告している。またヨーロッパのある銀行家は,「われわれは最後に,30年代以来最悪の通貨混乱を迎えることになるかもしれない」と言っている。
尊敬されているフランスの経済学者ジャック・ルッフは,アメリカのドル問題に同情を示しながらも,「問題は手の施しようのないところまできているかもしれない。そして国際収支の復元は,1931年の場合のように,強制的な整理 ― すなわち破産 ― による以外にないかもしれない」と述べている。
かりに一時的な改善が行なわれたとしても,長期の見通しはどうだろうか。1930年代の大不況のときのような通貨混乱がふたたび世界を襲うだろうか。
実際にはそれよりもはるかに大きな混乱がのぞむことは確実である。どんな制度にせよ,利己的な利害関係の上にたてられた制度は,みずからの滅びの種をまくのである。もし十分の時間が与えられるならば,利己的な国家や個人の利害関係の上にたてられた現在の世界経済体制は崩壊するであろう。歴史は他のさまざまな体制がそうなったことを示しているとおりである。
しかし,現在の経済諸体制の終わりは,それが貪欲であるという理由だけで到来するのではない。神の介入によって,それらの体制の終わりがもたらされる。わたしたちの時代について,聖書はこう預言している。「この王等の日に天の神一の〔王国〕を建たまはんこれは何時までも滅ぶることなからん 此〔王国〕は他の民に帰せず却てこの諸の〔王国〕を打破りてこれを滅せん 是は立て永遠にいたらん」― ダニエル 2:44。
現行のすべての政府はその経済体制もろとも,こうして神の力によりまもなく打ち砕かれて消滅してしまうのである。したがって,人間の問題はもはや,利己的な政治および経済上の利害関係によって支配されなくなる。人間の問題は義の政府,経済面をも含めすべての分野において人類の永続的益をはかる神の天の政府によって支配される。神はすべての正義愛好者の永続的祝福のために,そのような政府を立てることを約束された。―エペソ 1:8-10。
あなたはその政府から益を受けるであろうか。それはあなたが今その政府について学び,自分の生活を,その政府の創造者である神の要求に合わせるために何を行なうかに大きく依存している。
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渡り鳥のチャンピオン目ざめよ! 1971 | 11月22日
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渡り鳥のチャンピオン
● 北極あじさしは他のどんな渡り鳥よりも遠距離を飛行する。毎年,北極の最北の島々から南極までの約3万5,400キロもの往復旅行をして帰って来る。人間が用いる複雑な運行装備なしに,それほどの遠距離をわずかな狂いもなく旅行する。
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