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    目ざめよ! 1980 | 10月8日
    • 高まる恐怖 婦女暴行

      婦女暴行! この言葉を聞くだけでおびえてしまったり,胸が悪くなったりして,それに関する記事を読む気になれない読者もいることでしょう。もしそうであれば,そして読者が女性であれば,そのような人こそこの問題について特に考える必要があるのです。そのように言うのは,暴行魔がその餌食となる女性を選ぶ方法が関係しているからです。

      「暴行を働こうとする者は,襲いやすい女性をねらう」というのは,デンバー総合病院の暴行対策研究センターの所長,ジェームズ・セルキンの弁です。精神医学の一教授,ジーン・G・エイブルは,そのような襲われやすい人をこう描写しています。「暴行魔のほとんどがねらっているのは,びっくりして,気を失う控え目な女性で,ちょっと抵抗しただけであきらめる人である」。

      暴行魔に脅されたなら,そのようなタイプの女性になってしまいますか。あなたはどんな反応を示しますか。

      被害者の大半が示す反応

      暴行の危険に直面した女性がおびえるのは当然のことです。事実,ボストン大学の二人の教授は,暴行の被害に遭った人80名を面接した後,「ほとんどすべての女性の場合に,強姦に対する主な反応は恐怖であった」と述べています。そして問題となるのは,そうした恐怖のために身がすくんでしまいがちである,という点です。

      犯された一人の女性は次のような例えを語っています。「夜,車を運転していて,ヘッドライトのまぶしい光に照らされてウサギが身動きできなくなっているのを見たことがありますか。もうだめだ,と言わんばかりにその場に立ちすくんでしまうのです。まさにそのようなことが起きるのです」。

      大抵の場合,恐怖と共に,錯乱状態やためらいが生じます。例えば,ある19歳の女性はこう説明しています。「とにかく体力を使って相手を払いのけるということは全然ありませんでした。びっくりしたこともありましたが,世間知らずだったので女の子は言われた通りにするものだと思っていたのがいけなかったのです。……余りにも突然の出来事だったので,ただうろたえるだけで,どうしてよいか分かりませんでした」。

      この女性は同じような状況下で他の多くの人が示したのと同じ反応を示しました。あきらめてしまったのです。抵抗する,それも力の限りに抵抗する心構えのあった人はほとんどいませんでした。エリザベス・R・ドーベルは,米国のセブンティーン誌の誌上で,驚くべき事実を明らかにしました。「1974年にニューヨーク市で通報された婦女暴行事件4,057件のうち,相手に抵抗した例はただの1件だけでした。……暴力をもって脅されて激しい恐怖感に襲われるために,大抵の女性は無力になってしまうのです」。

      暴行魔の脅しに屈して,その言うなりになりますか。どのように抵抗したらよいか,知っておられますか。

      抵抗するすべを知る必要

      中には,特に相手が凶器を手にしている場合など,抵抗しないようにと告げる助言者もいるでしょう。そうした人々は,男の言うなりになって,それ以上の害を被らないようにするのが最善だ,と言うのです。しかし,それは賢明な助言でしょうか。

      「[それは]はなはだしい誤りだと思います」と述べるのは,米国の高校で強姦に対する自衛法を担当する一教師,フランク・リーナです。「生徒の少女たちには,恐怖に負けて犯されるままになるなら,事が済んだ後に,顔を覚えられまいとして殺すかもしれない,と教えています」。他の専門家も同様の意見を述べ,抵抗するよう女性に勧めています。

      しかし,どのように抵抗するかという問題は,極めて現実的なものです。一婦人はこう語っています。「自信がないのでこわいのです。……そんなことが自分の身に起きなければよいと思います。もしそうなったら,どうしてよいか分かりません」。

      しかし,多くの土地の現状からすると,女性が抵抗する方法をわきまえているのは大切なことです。暴行魔に襲われかけたときには,他の状況下での自分の反応とは全く異なった仕方で反応する仕方を学ばなければなりません。

      今日,現実の脅威となっているか

      「でも,実際のところ,婦女暴行は比較的少ないのではありませんか。強姦される可能性はあまりないのではありませんか」と尋ねる向きもあるでしょう。

      婦女暴行に関する統計のあるものを見ると,そのようにみなすこともできるでしょう。1933年には,米国で4,930件の婦女暴行の届け出があったにすぎません。1962年に,その数は1万6,310件に達しましたが,それほど多くの女性がその影響を受けているとは思われませんでした。

      しかし,届け出のあった婦女暴行の件数はその後16年間に4倍に増加し,1978年に6万7,131件に達しました。また,昨年の最初の9か月間に,その件数はさらに9%増加しました。婦女暴行はアメリカで増加率の最も著しい犯罪です。しかし,届け出られた婦女暴行の件数は,今日の女性の直面する脅威がどの程度のものかを十分に示してはいません。

      それは婦女暴行の大半が当局に届けられていないからです。届け出るのはきまりが悪いと思う被害者は少なくありません。暴行されたという自分の訴えが疑われたり,邪推されたりするのを恐れている場合や,単にプライバシーを侵害されたくないという場合もあるでしょう。家族の言ったりしたりすることを恐れる人もいます。暴行魔のうち有罪宣告を受けて投獄されるのは2%にすぎないので,わざわざ通報するまでもないと考える人もいます。

      種々の調査は,婦女暴行が驚くほどの件数に上っていることを示しています。一般に,実際の数字は届け出のあった件数の3ないし5倍とされています。タイム誌は,「ある解説者によると,毎年,50万人が暴行魔に襲われている」と述べています。「犯罪から身を守る方法」という本によると,「婦女暴行全体の90%は届け出のないままになっていることを示す推定もある」とのことです。

      ですから,米国だけでも,1日に1,000人以上が婦女暴行の被害を受けているのです。しかもこの数には,1年間に強制わいせつ行為の犠牲になる6万人の子供たちのほとんどは含まれていません。

      しかし,婦女暴行は決して米国だけの問題ではありません。南米やアフリカ,ヨーロッパでも性的暴行の数は増加しています。

      婦女暴行が今日それほど大きな問題になっているのはなぜでしょうか。人を暴行へと走らせるものは何ですか。

  • なぜ起きるのか
    目ざめよ! 1980 | 10月8日
    • なぜ起きるのか

      婦女暴行を働く男が増えています。「婦女暴行に対処する」という本はこう述べています。「大学のキャンパスでの婦女暴行事件が余りにも多いので,大きな学校では暴行対策を実施している。(米国の)中西部の一大学では,エスコート制度が発足した。ところが,エスコートを買って出た男性に暴行されたと通報する女性が幾人も出た」。

      婦女暴行は何ら目新しい事ではありません。聖書は幾千年も昔に,ヤコブの娘やダビデの娘が強姦されたことについて述べています。しかし,今日,そのような行為が日常茶飯事になってしまったのはどうしてでしょうか。―創世 34:1,2。サムエル後 13:1-14。

      暴行の心理

      今日の多くの男性が女性をどう見ているかは重要な要素です。そうした人々は,男性を性的に楽しませることが女性の主な役目であると心得ているようです。ポルノの驚くべき普及は,そのような物の見方の要因となっています。女性を描写するのに,“肉の塊”という言い回しが使われることもあります。そのような言葉を語らせる心理はまさに,婦女暴行を働くような人の心理でもあるのです。

      若者たちは大抵,こうした態度を体得するような環境で育てられます。少年は幼いころから,攻撃や暴力は,男らしさや雄々しさの表われであると教えられます。また少女は,男性を勝ち得るためならどんな手段にでも訴えること,つまり事実上,男性をもてあそぶことを学びます。この点について解説した,シカゴの婦女暴行対策センターの一カウンセラーはこう述べています。「婦女暴行は,男女が教えられてきた互いの扱い方の当然の帰結である」。

      発育期に乱れた性体験をしたことが原因で,暴行魔になってしまった人もいます。親族の女性の中に,少年を性の慰みものにする人のいたことが女性に対して攻撃的な感情を抱く一因となったのです。米国の性犯罪者200人を対象にした一調査の明らかにしたところによると,そのうちの44%は母親と同じベッドで寝たことがあり,母親はその際に性的な振舞いをした,とのことです。

      現代の生活様式の変化

      女性が世間に出て,男性と張り合い,ますます“平等”になってきているという事実を,アメリカで婦女暴行が増加している別の理由として挙げる人もいます。カリフォルニア州の一弁護士,カミール・E・ルグランの説によると,意識しているいないにかかわらず,強姦は男の方が女性よりもまだまだ強くて力があるのだということを示し,『女性にその分をわきまえさせる』手段となっています。

      現代の女性が昔よりもずっと自由に動き回るようになったこと自体も,女性が暴行に遭う可能性を大きくしています。心理学者,カロリン・J・ハーシュはこう説明しています。「暴行が増えたのは,外出する女性が増えたからである。50年前,夜間に男性の付き添いなしに独りで出歩く女性は全くといってよいほどいなかった。今日,それは少しも珍しいことではない」。

      また,今日の女性の中には暴行を受けやすい状況に自分を置く人が増えています。受けのよいテレビの一コマーシャルは,家に独りで居る女性が自分のアパートに男性の知人を呼び,アルコール飲料を勧める場面を映し出します。その女性は視聴者に,そうすることは現在,“少しも悪いことではない”と説き付けます。非常に多くの人々が聖書の道徳規準を捨てているので,そのような状況に置かれた女性が自分の意に反して性交渉を強いられるお膳立てはできていると言えます。

      “デートで暴行”

      この表現は多くの人に奇妙に思えるかもしれませんが,適切な表現です。ある権威者の推定によると,「暴行の35%」はデートの際に起きます。また,暴行の「大半」はそうした状況で起こるとする権威者もいます。それで,“デートで暴行”ということになるわけです。

      1,070件の暴行事件を調査した際,イリノイ大学の社会学者,ポーリーン・バートは,そのうち59%の場合に,加害者は被害者の知っている男性でした。この問題を指摘し,トロント・スター紙は次のように述べています。「女性が性犯罪の犠牲になる場合,その加害者が当人の知っている人,襲われるまで当人が好意を寄せ信頼していた人であることも少なくない。そのうち半数ほどの事例で,女性は相手が性を目的として言い寄って来たときその第一歩を許した」。

      では,どうして暴行になるのですか。

      基本的に言って,聖書の道徳規準を尊重しない男性とデートをするからです。多くの人にとって,デートはふさわしい配偶者を見いだす手段というよりは,一種の“遊び”のようなものになっています。そうしたデートの際に,女性の“意図を取り違える”男性もいます。「そのような男性は,女性が一緒にアルコールを飲めば,性交渉もオーケーだと考える」と,心理学者のジーン・G・エイブルは説明しています。女性のアパートへ招かれたり,女性の方が男性のアパートへの招きに応じたりすると,その男性は女性が性関係を持つつもりだと考えかねません。たとえ実行する段に及んで,女性が「だめ!」と言って逃げようとしても,同じことです。

      暴力とセックス

      男性を婦女暴行に駆り立てるものが何かについて,議論が戦わされています。情欲を満足させるためだ,と一般には考えられます。しかし大抵の場合,もっと多くのことが関係していると言う人もいます。ボストン大学の研究者の一グループはこう伝えています。「婦女暴行は見せかけだけ性的な行為である。肉欲の快楽や性の充足よりも,地位・敵意・支配欲・優越感などにかかわる性的な行動の型である」。

      討論会では,二つの意見の間に,極めてはっきりとした線が引かれます。ある新聞のコラムニストは,多くの人の意見を代表し,「婦女暴行は性欲からくる犯罪ではない。暴力からくる犯罪だ」と述べています。中には主に暴力犯罪と呼べるような婦女暴行があることに疑問の余地はありません。その動機は女性を傷付け,支配し,『その分をわきまえさせる』ことにあります。また,女性の側にそのつもりがあってもなくても,男性が性欲をつのらせることも,多くの男性が女性に性関係を強いる主な理由になっています。

      ロサンゼルスに住む,社会学者で,犯罪学者でもあるドナ・バリはこの問題に関心を抱き,645人の精神科医にアンケートを送付しました。同女史の質問の中には次のようなものがありました。「女性が性犯罪の犠牲者になりたくないなら,自分の服装や行動の語る事柄が男性にどう解釈されるかについて考えてみるのは賢明なことだろうか」。また,「ビキニ,ぴったりしたセーター,短いスカート,えりぐりの深い服,流行のノーブラなどは,性犯罪に走りやすい者の注意を引くスタイルと言えるだろうか」。

      精神科医の88%は最初の質問に“はい”と答え,2番目の質問には62%が“はい”と答えました。バリ女史はこう注解しています。「女性に対する憤りが[暴行の]動機としてよく挙げられる。この憤りは大抵の場合,肌もあらわな服装に刺激され,かもと思ったものに引かれて,最後までやり通そうとして拒否される結果生じるものである」。

      80代の老婦人や幼い子供まで被害者になるのですから,服装は暴行につながる要因の一つにすぎないことは明らかです。しかし,どんな要素が関係しているにしても,男性が女性に性関係を強要することを正当化するものはありません。

      処罰されない犯人

      婦女暴行が急激に増加するさらに別の理由は,犯人が法によって処罰されないことにあります。AP通信によると,「(米国)シアトル市の警察は昨年,308件の婦女暴行の通報を受けたが,そのうち,有罪の判決を受けた犯人は6人だけであった」と,述べています。暴行を働く者のうち有罪の判決を受け,懲役刑に服するのはわずか2%ほどにすぎません。そのほかの者たちは野放しの状態です。聖書の述べる通り,「悪い業に対する刑の宣告が速やかに下されなかったので,それゆえに,人の子らの心はその中で悪を行なうことに固まってしまった」のです。―伝道 8:11,新。

      有罪を宣告された暴行魔でさえ,ほどなくして釈放され,再び暴行を犯します。「回転木戸のような裁判とは陳腐な表現だが,まさにその通りなのである」と,一警察官は語っています。

      時代のしるし

      こうして婦女暴行やその他の犯罪は増加の一途をたどり,暴力的で性に狂った世界を造り出しています。その世界は,住むには余りにも危険な場所です。意味深いことに,聖書によると,この事物の体制の「終わりの日」は,「対処しにくい危機の時代」となります。人々が「粗暴な者,善良さを愛さない者」になるからです。ですから,婦女暴行の,前例を見ないほどの増加は,わたしたちが聖書預言の中に予告されている非常に重大な時代に生きていることを示す別の証拠にほかなりません。―テモテ第二 3:1-5。

      婦女暴行に遭わないようにする方法を扱った本の著者はこう述べています。「この本の助言を読んで,それは妄想に近い,と言う人もいよう。……しかし,妄想に取りつかれなければ生き残れないのである。この社会について考えてみれば,妄想は当然予期される。それを恥ずかしく思ったり,否定しようとしたりしてはいけない。むしろ,それをうまく処理するのである」。

      どんなことができるでしょうか。どうすれば婦女暴行から身を守れますか。

  • 身を守る方法
    目ざめよ! 1980 | 10月8日
    • 身を守る方法

      婦女暴行について考えるのは実に不快なことですが,自らそうした目に遭うのは全くもって恐ろしいことです。そして,前の記事に指摘されているとおり,わたしたちはこの事物の体制の「終わりの日」に生きているので,そうした被害がこれからも増えてゆくことは十分予想されます。

      これは,女性が自分の身を守る方法をわきまえていなければならないことを意味します。一つの大切な点は,どういう状況が暴行に発展しやすいかを知ることです。

      デートの際に抵抗する

      デートの際に犯される女性は少なくありません。よくある例は,二人がキスをし,ペッティングさえ行なっている場合です。そして,男性の方が性的に興奮して,さらに多くを求めます。しかし,女性の方はそれ以上進もうとはしません。男性は執ように迫り,女性はおびえて,うろたえ,あきらめてしまうのです。17歳の少女は次のように述べています。

      「私はどちらかと言うとおとなしくて,内気で,言われたことによく従うほうでした。それに処女でした。……最後のデートの際,私は車の後ろの座席で彼に押し倒されて,抱き付かれました。そして私はあきらめてしまったのです」。

      若い女性がこれほど容易に犯されるのはなぜでしょうか。そもそもの誤りは,聖書の道徳規準に付き従おうとしない男とデートをすることにあります。2番目の誤りは,妥協しやすい状況にうまく引き込まれてしまうことです。若い女性は自分が心配しているように見られたり,愚かに見られたりしたくないのかもしれません。それで男性が目的を遂げようとする最初の段階で強い立場を取らないのです。しかし,強姦予防策に関する女性のためのハンドブックの中で,その著者たちはこう勧めています。「ぶっきらぼうに抵抗しなければなりません。愚かだと思われることもあるでしょう。きっと求婚者を失うでしょうが,それはこの場合に損失ではありません」。

      この本の著者たちはさらにこう述べています。「状況に調子を合わせるようになってしまうと,もう逃げられません。要は最初の一歩を許さず,その問題から全く離れていることです」。確かに若い女性は,キスのような予備的な性戯を始めることがどんな影響を及ぼすかを十分にわきまえていなければなりません。長年にわたって婦女暴行について調査を行なってきたフレデリック・ストラスカは,キスをした一被害者についてこう語っています。

      「次に[ゲールの]犯した誤りは,『キスをするぐらいたいしたことではないじゃないの』と考えたことでした。キスという行為はそれだけで非常に強力な性的行為です。上くちびるは体の中でも特に敏感な箇所の一つです。男性でも女性でも,激しいキスをすると,性器そのものを愛撫されると同じほど性的に興奮するものです。……

      「マイクにしてみれば,ゲールのほうが自分を誘惑し,じらしていると思えました。彼女にそのつもりはなかったかもしれません。きっとなかったことでしょう。しかし,マイクのほうはそう受け取ったのです。同様の状況に置かれれば,大抵の男性はそう感じるでしょう。ゲールはそうした行為までを許し,ストップの意思表示をはっきりしなかったため,深入りして引っ込みのつかない立場へマイクを追いやってしまったのです」。

      親には自分の娘を守るためにできることが数々あります。親は娘が付き合っている若者についてよく知っていなければなりません。その若者は神の道徳上の要求を尊重しているでしょうか。その人はそれらを生活に当てはめているでしょうか。そうであれば,問題はないはずです。しかし,若者が本当の動機を隠しおおせたような場合,若い女性は恐れずに,どんなことをしても自分は言いなりにはならないということを示さねばなりません。

      女性が抵抗するためにできる事柄は数多くあります。デートの相手が不純な意図を持っていることが明らかになったとき,一人の女性は他の女性も効き目があると述べる事をしました。その人は相手の男性から顔をそむけ,のどの中に指を突っ込み,振り向きざまに相手の男性に向かって吐きかけたのです。とたんに男性の情欲は消え去り,同情的になり,女性の健康を気遣い,その家まで送って行きました。

      自分の知っている他の人々に抵抗する

      知人の中には,親族・隣人・女友達の親族などを含め,暴行魔に変わる人がほかにもいるかもしれません。自分の身を守るには,気をつけていることが肝要です。わたしたちを抱き締めたり,愛情や注意を示したりする親族や友人すべてを疑ってかかるべきだという意味ではありません。しかし,どの暴行魔もだれかの親族であり,また友人であることを覚えておきましょう。

      親族を訪問した際,15歳の少女は人のいない時に,いとこに犯されました。17歳の少女は義姉の弟のアパートへ来るようにとの誘いを受け入れ,その結果,暴行されました。それはよくあることで,加害者は被害者の女性の知っていた人,それも大抵の場合に信頼していた人です。驚いてショックを受け,うろたえる女性の多くは,残念なことに容易にその餌食になってしまいます。そのため,被害者の親でさえ,それが和姦ではなかったのか,との疑問を抱く場合がよくあります。

      そのような状況に置かれた女性にとってふさわしいのは,恐れずに抵抗することです。どんなものであれ粗野で不快な行為を行なうことにより,自分を魅力的でも女性的でもないように見せ,うまく暴行を免れた人もいます。また,暴行をしようとした人を言葉によって撃退した人もいます。

      子守りを務めた14歳になる少女は,その子の父親に家まで送ってもらいました。途中,その父親は道からそれて,人目につかない所へ入って行きました。そして,少女に触わり,愛撫しだし,それから少女の服を脱がせにかかりました。その時,少女はもがくのをやめ,こう言いました。「ジョーンズさん,9年か10年もすれば,お宅のかわいい娘さんにも,こういうことが起きるかもしれないのよ」。それを聞いて,その父親は冷水を浴びせられたようになって手を止め,謝罪し,涙まで流しました。

      予防措置を講ずる

      「予防が鍵だ。わたしの意見では,婦女暴行の95%までが未然に防げた」と一警察官は語っています。自分の行為の引き起こし得る結果について考えてみる必要があります。

      例えば,ヒッチハイクのならわしは,女性を襲われやすい立場に置きます。二人の婦女暴行問題研究家の作成したアンケートに対する解答によると,見ず知らずの男に襲われた女性の大半は,暴行された時にヒッチハイクをしていました。ヒッチハイクをする人を乗せるのも賢明なことではありません。

      同様に,余りよく知らない男性を家に入れるなら,暴行を身に招きかねません。それは庭の手入れのために雇った人かもしれません。飲み物を出してあげたいと思うことでしょう。または,“緊急な”電話を掛けさせて欲しいと言って,戸をたたく人かもしれません。賢明なのは,飲み物を外へ持って出てその人に渡したり,助けを必要としている人に代わって電話を掛けたりすることです。特に犯罪がひん発する地区に住んでいるなら,独りで居るときに見ず知らずの人を家に入れてはなりません。

      また,ドアや窓にきちんとした錠前を取り付け,自宅の戸締りに万全を期します。独り住まいだとそれだけ危険も大きいので,その場合には同室できる人を探すとよいかもしれません。

      在学中の娘を持つ親であれば,放課後,親よりも先に帰宅する娘のことを考える必要があります。娘が自分の兄弟以外の男の子と二人だけで家にいたり,娘がグループの中の紅一点であるというような状況に置かれたりしないように注意します。暴行に遭わないようにする方法や襲われた場合にどうするかについてお嬢さんと話し合うのです。

      服を着換える際に,ブラインドを下ろすのは賢明なことです。肌もあらわな服装で家の中を歩き回り,外の人に見られるようなことがあってはなりません。一人の女性はそうした服装で家の中を歩き回っていました。隣の人はそれを誘いとみなし,ある晩,女性のアパートへやって来ました。その女性は隣人を家に上げ,暴行を受けました。

      もしできることなら夜の独り歩きを避けるようにします。暴行魔は大抵16歳から24歳ぐらいまでの女性を選びますが,それよりもずっと年が行っているからとか,ずっと幼いからという理由で自分は襲われないなどと考えてはなりません。子供や80代の婦人でさえ,襲われることがあるのです。暴行事件によってはセクシーな服装がその要因となっている場合があるので,慎み深い服装をするのは賢明です。

      ニューヨーク市の婦人警察官メアリー・キーフは暴行魔が大抵どのように活動するかを説明し,取るべき予防措置を示唆し,次のように述べています。「暴行魔は普通,遅い時間(午後8時から午前4時ごろが一番多い),あるいは寂しくて人けのない場所,つまり近道・空地・コインランドリーなどを選びます」。

      しかし,予防措置を講じたにもかかわらず,ある日,暴行魔に襲われたとします。どうしたらよいでしょうか。

      見知らぬ者に抵抗する

      一口に言えば,抵抗せよ,ということです。おじけづいてはいけません。婦人警察官メアリー・キーフが語っているとおりです。「暴行を働こうとする者は,いったん怪しむことのない女性の前に立ちはだかると,相手を脅して難なく自分の要求に応じさせることができるかどうかを確かめます」。

      ですから,自分が決して言いなりにならないことをはっきり示すのです。相手が何をしようとしても一筋縄では行かないことを最初に分からせるのです。これは専門家の言うところです。心理学者ジェームズ・セルキンはこう語っています。

      「襲われたその瞬間,つまり犯人がその意図を明らかにしたその瞬間から,女性が抵抗するのは大切なことである。この時点で犯人はまだ重罪を犯しておらず,手軽に性の幻想旅行をしようという自分の望みを砕いた女を苦労して物にするより,もっと簡単に要求をのむ犠牲者を求めるほうが楽なのである」。

      ジーン・G・エイブル教授はこう語っています。

      「暴行を防ぐために,女性はき然とした,明確な態度で,また,きびきびした,有無を言わせない口調で,どんなことがあっても性交渉に応じることはなく,すぐその場を去らないならひどい目に遭うことを伝えねばならない。そして,暴行の脅しに遭ってどう応じようかうろたえて,身をすくめている無抵抗な人間ではなく,暴行魔から見て,手強い,攻撃的な敵でなければならない」。

      最初に断固とした態度で抵抗することには本当に効果があります。一人の女性はニューヨーク市で次のような経験をしました。

      「私は買い物をして,午後9時ごろ帰り,自分の住む建物に入って行きました。いつものように,入る前にエレベーターを調べました。異常はありませんでした。ところが,4階まで昇ったとき,エレベーターのドアがこじ開けられました。一人の男が4階で私に追い付くため階段を駆け上がってきたのです。私はその男に気付いていませんでした。男はエレベーターの中へ入り,私に近づき,自分と性関係を持てば,痛い目には遭わせないと言いました。

      「男がそれ以上近づく前に,私は怒りの気持ちを抱かずに,男にこう話しました。『私にそんなことを求めるなんて,気は確かなの。私がクリスチャンで,そんなことをしてはいけないということをご存じないの。私はそのようなことはしません。それに,今,家へ帰るところで,家では家族が待っているわ』。

      「すると男は,『分かった,分かった,分かったよ。怒らないでくれ。それから,お願いだから叫び声を上げないでくれ。おれは出て行くよ』と答えました。こうして男は5階で降り,階段を駆け下りて私から逃れました」。

      それでも,『男がナイフや銃を手にしていたらどうだろう。抵抗すると危険ではないだろうか』と尋ねる向きもあるでしょう。どうすべきかは当人の決める問題です。しかし,婦女暴行の問題では一流の女性評論家であるスーザン・ブラウンミラーは,自著,「わたしたちの意に反して」の中でこう述べています。

      「男は暴力的で,言うなりになった方が安全だ,という広く流布された作り話があるとはいえ,襲われた人が逃れようとして抵抗した結果,犯人を“刺激”して,殺人を犯させるはめになったということを示す証拠は全くありません」。

      一方,抵抗したおかげで,女性が暴行されずに,また殺されずに済んだという例は一再ならずあります。“ボストンの絞殺魔”として知られるアルバート・デサルボは,脅しに屈しやすい女性を選びました。デサルボの指を骨の所までかみ切り,大声で叫び続けて抵抗した一ウェートレスは,暴行されることも,殺されることもありませんでした。デサルボは怒って,うろたえながら逃げ出しました。

      使うべき武器

      女性はどの程度まで抵抗できますか。襲ってきた男を傷つけても正当であると言えますか。上記のウェートレスの場合と同じく,正当と言えます。それでも襲って来るなら,性交を拒むため,どんな手段でも用いられます。女性は自分の夫や父親や信頼できる友人に話して,身を守る方法に関する助言を得られるでしょう。男の急所に一撃を加えて,目的を遂げられないようにさせた女性もいます。しかし,たとえ力のある闘士とは言えないような女性にも,強力な武器があります。

      その武器とは自分の声のことです。叫び声を上げることは,暴行魔を撃退する効果的な方法となってきました。興味深いことに,古代のイスラエルの娘には,襲われた場合に,叫び声を上げる責務がありました。―申命 22:23-27。

      一人の女性はラジオの台本の指示で叫び声を上げるよう求められましたが,その際,叫び声の威力が見事に示されました。この女性はそれまでに叫び声を上げたことはありませんでした。やっとのことでその女性が力の限りに叫ぶと,あっけに取られたグループの人々は,「もう二度とご免だ」という反応を示しました。その声は人々を本当に驚かせたのです。試しに,いつか,ありったけの力を出して叫び声を上げてみてください。自分がこの強力な武器を持っていることを忘れず,必要とあらばそれを使うのです。

      間近に迫った解放

      今日,女性のほとんど,そして場合によっては男性でさえ,性の暴行を受ける恐れに直面しているのは,確かに残念なことです。世界の暴力は疫病のように広がっています。それが存在しないかのように装うなら,自分が犠牲者になる可能性を大きくするようなものです。ですから,賢明なのは,問題を直視することです。予防措置を講ずるようにします。そして,万一襲われたなら,力の限り抵抗します。

      うれしいことに,そのような問題がもはや存在しなくなる時代が間近に迫っています。神の次の約束が間もなくその成就を見ようとしているからです。「もう少しすれば,邪悪な者はもういない。あなたは必ずその居所に注意を向けるであろう。だが,彼はいない。しかし温和な者たちこそ地を所有し,豊かな平和にこの上ない喜びを見いだすのである」― 詩 37:10,11,新。

  • 古代メソポタミアから見た大洪水
    目ざめよ! 1980 | 10月8日
    • 古代メソポタミアから見た大洪水

      私が話しかけた青年は歴史を学ぶ学生でした。私が聖書の歴史に関心があることを話した時,その学生は,「聖書から何を得られるとお考えですか。もっと古い歴史上の記録があることをご存じないのですね」と言いました。この言葉は今でも私の耳にこびりついています。

      「何のことを言っておられるのですか」。「ギルガメシュ叙事詩ですよ。その歴史は聖書の記録よりもずっと昔にさかのぼるんです」。

      私は,古代バビロンのギルガメシュ叙事詩の中に,全人類を滅ぼした大洪水に関する記述があることを思い出しました。この洪水伝説が,聖書の創世記 6章から8章にある大洪水に関する記述よりはるかに古い歴史に基づいていると言う人は多くいます。

      好奇心にかられた私は,この問題を少し調べてみる気になりました。蔵書の充実したウィーン国立図書館で,ギルガメシュ叙事詩に関する専門書を何冊か見つけることができまし

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