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  • 薬剤の乱用問題はあなたとあなたの近隣にどのような影響を与えるか
    目ざめよ! 1974 | 2月22日
    • 薬剤の乱用問題はあなたとあなたの近隣にどのような影響を与えるか

      あなた自身が薬剤を乱用することはないかもしれません。しかし,そのような使い方をしている人は多くおり,あなたもその影響を全く受けないわけではありません。

      麻薬中毒者の横行は,街路を歩く人々や中毒者の家庭に大きな恐怖を与えます。米国の場合,大都市における犯罪の半数は麻薬中毒者によると言われます。そのため,暗くなってから家の外に出ることさえ恐れる人が多くいます。

      同国において,麻薬中毒者による商品の万引き額は年々20億㌦を超えると伝えられます。商店はこれを埋め合わせるために商品の価格を上げねばなりません。また,従業員の麻薬使用のゆえにアメリカの諸企業は年々幾億㌦もの損失を被っています。その損失は製品価格のつり上げという形で一般消費者に背負わされます。さらに,麻薬中毒を抑制するさまざまな施策のために毎年多額の資金が投じられ,それは税金という形で国民が負担します。

      しかし,影響はそれだけではありません。薬剤で興奮した人の運転する車があなたにぶつかって来ることもあります。あるいは,何かのことであなたの家族のだれかが麻薬中毒者となるなら,それは言い知れぬ悲嘆のもととなります。

      驚くべき流行

      薬剤の乱用はいたるところで危機的な規模に達しています。「なんとかして一日を過ごすためにアルコール,たばこ,睡眠薬,強壮剤,精神安定剤などを乱用する」おとなたちを含め,「幾百幾千万のアメリカ人が麻薬類にうつつを抜かしている」と,科学出版物の編集者アルトン・ブレイクスリーは書きました。

      しかし,特に影響を受けているのは若い世代です。薬剤の乱用はアメリカの諸学校において「はなはだしい流行病」のごとき様相を帯びています。これは米国下院特別犯罪委員会の昨年6月の報告です。同委員会はさらに次のように述べました。

      「われわれの調査結果から言えば,わが国の諸学校における薬剤乱用の危機は,われわれの最悪の期待をもはるかにしのぐものであった……それは若者たちに感染し,学校を悪に染まらせ,いたるところに破壊のつめあとを残している」。

      「薬剤の乱用に全く巻き込まれないでいるのは,沈着で特別の力を備えた子どもだけである」― 1973年6月30日付ロサンゼルス・タイムズ紙。

      問題に驚いたニクソン大統領は,「アメリカ社会の最大の敵は麻薬である」と言明しました。ニューヨーク市のある中毒者治療センターの所長ミッチェル・S・ローゼンタル博士は語りました,「薬剤の乱用はいわば広範囲に広がった疫病であり,社会のいかなる部分もその影響を免れない」。

      これは真実ですか。実情はどうなっていますか。

      いろんなところに及んでいる

      ニューヨークに住んでいる人なら,麻薬問題の深刻さをまず疑わないでしょう。麻薬中毒者がよろけるようにして街を歩いている姿はいつでも見ることができます。学校に通う子どもであれば,いろいろな薬剤が生徒の間で次から次へと回されているのを知っているでしょう。

      ニューヨーク州選出の下院議員チャールズ・B・レンジェルは書きました,「ヘロインがわれわれの学校制度の機能を破壊した……麻薬類はチューインガムのごとくに容易に手に入り,少女がロッカー室で[大麻たばこの]煙を吐き,13歳の子どもが15歳の販売人から麻薬を買っている」。しかし,他の都市の場合はどうでしょうか。

      麻薬の問題はそこにもあります。プロバスケットボールの一流選手であるネイト・アーチボールドは述べました,「麻薬はどこにでもある。ニューヨークだけではない。どこの都市に行ってもそれは目につく。裏通りに行けばある」。幾つかの報道記事を次に掲げます。

      ● 下院商業委員会の一分科会は組織化されたスポーツに関する調査の結果を次のように述べました。「程度の差こそあれ,麻薬の使用は,ほとんどすべてのスポーツ競技,いろんなレベルのスポーツ試合において見られる」― 1973年5月12日付ロサンゼルス・ヘラルド・イグザミナー紙。

      ● 「海軍当局が昨日明らかにしたところによると,海軍部内における麻薬の問題は非常な程度に及び,この問題をかかえない軍艦や海軍基地は一つも存在しないばかりか,『多くのところでそれは深刻な問題となっている』― 1971年7月21日付サンディエゴ・ユニオン紙。

      ● 「中毒者の麻薬をもてあそぶ習慣は一日に200㌦(約6万円)を要することもあるが,これが麻薬の関係した数々の犯罪を生み出している。当局者は,デトロイト市の強盗事件の七割,また銀行破りの九割までを麻薬に帰している」― ニューズウィーク誌,1972年2月28日号。

      ● 「オクラホマシティーにおいて麻薬の乱用傾向は急激な増大を見た……その傾向のゆるみは見えない」― 1971年4月17日付デイリー・オクラホマン紙。

      ● アラスカ,アンカレッジ市の7年から12年生の学生1万5,000人を対象とした包括的な調査の示すところによると,それら学生の41%以上は,たばこやアルコール以外の麻薬類を使用した経験がある。―「アメリカ医学協会ジャーナル」,1973年2月5日号。

      ● 「南カリフォルニア麻薬取締り当局の報告によると,全高校生の八割までが不法な麻薬の使用を試みている。小学5年で麻薬に接する学童さえ少なくない」―「アップ・ルック」,第一巻第一号。

      東部,西部,北部,南部を問わず,どこに行っても麻薬の問題があります。小さな町においてさえそれが見られます。例えば,カリフォルニア州パームスプリングスでは,麻薬問題が深刻化しているため,子どもを学校にやることを不安に感じている親がいます。コロラド州のアスペンとボールダーでは麻薬が自由に公然と使用されています。ミシガン州イーストジョーダン,ニューハンプシャー州ナシュア,イリノイ州ランシング,そうです,ほとんどどんなところでも,不法な麻薬が使用されています。

      これを信じない人がいるかもしれません。しかし,麻薬の不正使用はごく普通の人々の周囲にさえ及んでいるのです。テキサス州ヒューストンで13歳の息子が行くえ不明になったフレッド・ヒリジェストはそのことを知りました。彼はこう語ります。『何が起きているか,どれほど多くの子どもがうろつきまわって麻薬遊びその他にふけっているか,わたしは少しも知らなかった。しかし,デービッドを捜すようになって三週間のあいだに,わたしは実に多くのことを学んだ』。

      ヒリジェストはさらに語ります,『麻薬などの生活に落ち込んでいる子どもはせいぜい一割ぐらいだろうと思っていた。ところが,ずっと見てゆくうちに,ほとんどすべての人の子どもが,おそらくは八割までがそれに陥っているように思えた』。アーチボールドが述べたとおり,「裏通りに行けばある」のです。

      しかし,薬剤の乱用はただアメリカだけの問題ですか。他の国の場合はどうでしょうか。

      世界に広がる薬剤の乱用

      国連のクルト・ワルトハイム事務総長は述べました,「薬剤の乱用は……さらに広がって,新しい様相を帯びている。幾つかの国では,国家的な非常事態とも言える段階に達している」。1972年11月22日付の,医療関係の新聞メディカル・トリビューンは,「世界じゅうの子どもの間に広がる麻薬類の常用」という見出しを掲げました。

      麻薬類の不正使用は英国における特別の問題となっています。ロンドンのデーリー・メイル紙は,「今日,麻薬類の不法な使用はほとんど制御しきれない状態に達している」と伝えました。全英麻薬中毒予防協会会長H・デイル・ベケット博士は語りました,「英国全体を通じて,麻薬類の実験的な使用がなされない学校はまずないであろう」。

      オーストラリアにおいても同様の事態が見られます。同国の関税担当国務大臣D・L・チップは述べました,「今年十代に入る子どもを持つ人に対しては,18歳になるまでにその子どもはなんらかの麻薬その他の危険な薬剤を提供されることがあるだろう,という点を保証できる」。

      カナダ,オンタリオ州のスペクテイター紙は,「ヘロインの疫病的脅威 ― 全国的な話し合いも」という見出しをのせました。カナダ西部のブリティッシュコロンビア州では,不法なヘロイン市場が同州の十大産業の間に広がっていると言われます。ヘロイン中毒が広範に及んでいるため,バンクーバー市の市長は,「これを一掃するためには軍隊が必要であろう」とさえ語りました。

      こうした傾向は次々と他の国に波及しています。巨大な醜い高潮のように,薬剤乱用の波は世界のあらゆるところに押し寄せています。

      背後にはどんな理由があるのでしょうか。人々はなぜ麻薬類を乱用するのですか。その危険は実際のところどれほど大きいでしょうか。

  • 人々が麻薬類に頼るのはなぜか
    目ざめよ! 1974 | 2月22日
    • 人々が麻薬類に頼るのはなぜか

      人々がなぜ麻薬類に頼るのかという点について,単純な答えはありません。人が薬剤を,特に麻薬類を乱用することの背後には人それぞれの理由があると,その道の専門家たちは見ています。しかし,この問題の背後には一つの基本的な理由があります。

      それは,そうした目的の薬剤があまりに容易に手に入るという点です。例えば,バルビタール系の薬剤だけでも年間525トン以上が米国内で生産されています。国民は,その多くを,医師の処方に従って消費しています。ミッチェル・S・ローゼンタル博士は,1971年中に,「[米国内の[すべての男女子どもの感情をまる一か月のあいだ“高進”させたり,“抑制”したり,あるいは“それから脱却”させたりする」に足るだけ向精神薬が医師たちによって処方された,と語りました。

      しかし,これら“合法”の処方薬が危険なのですか。これらが現在の薬剤乱用の危機を導いたのですか。

      医療に用いられる麻薬

      バルビタールは一種の鎮静剤であり,医師たちはこれを催眠薬として広く用いています。バルビタール系の薬剤は全部で26種類ほど知られています。事実上それらはみな合法的な製薬会社によって作られていますが,生産量のかなりの部分は不法なルートに流れます。市街において,バルビタールの錠剤は“ダウナー”もしくは“レッド”と呼ばれます。これの引き起こした問題があまりに大きくなったため,当局者は,1972年を,「ダウナーの年」と呼びました。

      就眠のためにこの薬剤を習慣的に使うと中毒症状が起きるようになります。また,ただ“スリルや快感”のためにこの薬を乱用して中毒になる人も多くいます。米国にはバルビタールの中毒者が百万人ほどいると言われます。中毒者とは,薬のきれたときの苦しみを除くためにさらに薬を必要とする人のことです。バルビタールの中毒者にとって,その薬を急に断つことは非常に激しい苦痛であり,それによって死ぬ人さえいます。また,米国の場合,バルビタール類ののみすぎで死ぬ人が毎年三千人を超えています。

      さらに,“ペップ ピル”もしくは“アッパーズ”などとも呼ばれる興奮剤もはんらんしています。その中で主要なものはアンフェタミンです。医師たちはこれを,食欲の抑制や疲労の回復また憂うつ症の軽減のために処方することがあります。しかしながら,合法的に製造されるアンフェタミン類の半分は不法なルートに流れると推定されています。これらの薬剤も危険なものであり,多くの人の命を奪い,あるいはその生涯をだいなしにしてきました。

      こうして,“合法的”であり,医師たちの処方する薬剤が,麻薬禍をもたらす一つの大きな要素となっています。しかし,世間を騒がせ,さらに大きな問題を生み出しているのは別の種類の麻薬です。

      非医療用薬剤

      そのうち最も危険なものはヘロインです。毎年約10~12㌧が米国内に密輸入されていると伝えられます。米国にはヘロイン中毒者がおよそ56万人おり,これは1960年代初めの十倍に当たります。ヘロインの乱用はほんとうに命取りの災いとなります。

      ニューヨーク市だけでも毎日約四人がその影響のために死にます。ヘロイン常用者は,それを手に入れるために,一日に40㌦から50㌦(約1万5,000円)を投じます。これだけの資金を得るために中毒者たちは,ニューヨーク市だけで,毎日平均して300万㌦相当の盗みを働いています。

      LSD(リゼルギン酸ジエチルアミドの略)は,幾十となくある幻覚剤のうち最も強力なものです。近年,多くの地下製造所がこの薬剤を作るようになりました。そのため,大きな需要があるにもかかわらず,LSD錠剤の価格は数年前の約十分の一に低減しています。LSDは,ヘロインやバルビタール系の薬剤のように中毒症状はきたさないとはいえ,その使用者に異様な影響を与えます。

      基本的に言って,この薬剤は知覚作用を変化させます。特に狂ってしまうのは視覚です。幻覚や妄想が生じ,そうした症状が服用後数か月のちにさえ生じます。薬の作用下では非常に恐ろしい幻想を見ることもあります。また,LSDの使用者は暗示にかかりやすく,他の人や外界の影響を容易に受けるようになります。LSDの使用者に関して恐るべき経験が伝えられるのはこのためです。例えば,1973年4月26日付ロンドン・デーリー・メイル紙は,LSDの作用下にある一学校教師がテームズ川の水面を歩こうとし,なんらもがくしぐさもなく水中に没したことを報じています。

      さらにマリファナの流行によって,薬剤の乱用による危機は拡大しました。マリファナは禁製品であるにもかかわらず,およそ2,400万人のアメリカ人がこれを使用した経験があり,そのうち800万人は常用者ではないかと見られています。マリファナの作用はLSDよりは穏やかですが,それでも感覚の異常をきたします。マリファナを吸煙すると,わずか五分が一時間のように感じられます。音や色彩が普通以上に強く感じられます。また,マリファナの常用者については,歩行時のよろめき,手のふるえ,思考の錯乱,感覚の異常などの悪影響が知られています。

      マリファナの吸煙が特に身体に与える影響はどうでしょうか。興味深いことに,ニューヨーク市にあるコロンビア大学医学部の医師たちによる最近の一書簡は次のように述べています。「マリファナの煙は,人間の肺の組織培養においてガンを引き起こす」。ユタ大学研究チームのリーダーであるモートン・A・ステンシェバー博士は,「マリファナはわれわれが考えるよりずっと危険なものであるかもしれない」との結論を下しました。

      しかし,麻薬類のこうした危害が知られているにもかかわらず,人々は依然としてそれを使用しています。なぜ? 年々これに頼る人が幾百万人も増加しているのはなぜですか。

      薬に取りつかれた社会

      多くの権威者は,現代社会が薬に取りつかれているという点を理由として指摘します。一医師はこう説明しました。「薬の広告放送を聴き,その宣伝を読む人はみな,あれかこれかの錠剤をのむことによって,気持ちを平静にすることも,意気を高揚させることも,眠りにつくことも,体重を減らすことも,痛みや不快感を和らげることも自在にできるのだと思い込む」。そして,ほとんどどんな症状に対してもなんらかの薬が処方される傾向にあります。

      マサチューセッツ州保健局のもとに麻薬中毒者の社会復帰を指導しているマシュー・デュモント博士は語りました,「今日のアメリカ社会における麻薬禍の根本的な源を何か一つ挙げるとすれば,それはわたしの仲間たる医師たちである……医師たちは毎年130億錠に上るアンフェタミンやバルビタール類を処方している」。下院の特別犯罪委員会も同様の見解を表明しています。「[麻薬禍に対する]過失は,はっきり言って,われわれの製薬業者,薬品卸しおよび小売人,および医師たちにある」。

      しかし,これらの人々だけが責めを負うのではありません。薬を消費するおとなたちにも責任があります。人は,薬品が一種の毒物であることを知り,それによって得られる益が害を補ってあまりあると思える場合にのみ使用すべきです。a しかし,おとなが何かの障害や緊張が起きるごとに,あるいはただ快楽を目的として薬を服用するのであれば,青少年がそれを避けるべき理由をどこに見いだせるでしょうか。『おとながたばこをのみ,酒に酔い,いろんな薬剤に頼っているのであれば,自分がマリファナを吸ったり鎮静剤をのんだりしていけない理由はない』と考える若者がいるとしても不思議ではありません。

      しかし,親の良い手本だけでは足りない面があります。家庭外での交友も健全なものであることが大切です。精神病治療研究会という団体の調査によると,麻薬中毒者100人のうち84人までは“友人”を通して麻薬に接しています。麻薬を提供される若者の多くは,ただ好奇心からそれを使用します。初めのうちは,その薬の作用を快いものと感ずるかもしれません。しかし,やがてその“とりこ”となり,恐ろしい問題をかかえるようになります。

      しかし,人々が麻薬に頼ることには別の理由もあります。各種の薬剤が容易に手に入り,薬にあやつられた社会にいることだけが問題の要因ではありません。その,ほかの理由とはなんでしょうか。

      満ち足りることのない欲求不満の生活

      麻薬問題の権威者であるジェームズ・E・アンダーソン博士は,「麻薬に頼るのは,事実上,その人の生活に空虚な部分があることの表われである」と述べて,根本的な理由を指摘しました。マシュー・デュモント博士も同じ点を指摘しています。同博士はこう語りました。「われわれは,麻薬を使用する若者の生活に何が欠けているのかを考えなければならない」。

      家庭に問題のある場合が少なくありません。フロリダ州デード郡の学校教師・管理者・助言者たちによる調査が見いだしたのはこの点です。また,南カリフォルニア大学の臨床医学の助教授L・ジェームズ・グロルド博士も,「わたしは,ほとんどいつも,家庭に根本的な問題があることを知った」と述べています。同博士はさらにこう述べました。「十代の男女は,家族間にある緊張や欲求不満から逃れる手段として家庭の薬箱にあるものを実験的に用い,それから麻薬の常用へと進む例が少なくない」。では,家族内における問題にはどんな原因があるでしょうか。

      父親は世のいろいろな仕事のために忙殺されている場合が少なくありません。母親は自分が置きざりにされているように感じ,自分の生きる目標とか生活上の役割に関してはっきりしたものを見失います。自由な意志の交流はほとんどなされなくなります。互いに心を分け合うことも,互いを真に思いやることもほとんど行なわれなくなります。こうして,子どもは,物質面ではすべてのものを与えられていながら,欲求不満を,何か満たされないものを感じ,あるいはただたいくつ感をいだくようになります。その空白を満たすために,快楽や“スリル”を求めて,あるいはただ感情的な痛みを和らげるために,麻薬が用いられます。

      ただ親に反抗する手段として薬剤の乱用という手段に訴える若者もいます。名の知れたある映画女優の息子は自分が麻薬を使うようになった理由をこう説明します。「わたしは母親をびっくりさせてやりたかった。みけんを強打するようにして。害になろうがなんだろうが,母親に注意を向けて欲しかった。わたしは傷ついた。でも,母親をも傷つけてやりたかった」。

      しかし,若者を麻薬に走らせるものは,家庭レベルの問題だけではありません。いわば体制全体が崩壊しつつある,と感じる若者が多くいます。彼らは,戦争,暗殺,貪欲,偽善などを見,どこを向いても人々が躍起になって物質上のものを追い求めているのを見ます。これは彼らに嫌悪感をいだかせます。そのため彼らは,こうした生き方から“脱け出”ようとします。彼らは事実上,『食べて飲んでただ楽しもう,あすは死ぬかもしれないから』といった態度を取ります。こうして彼らはすさんだ生活や麻薬に走り,ただ“スリル”や感覚の刺激を求めて生きるようになります。

      では,問題の解決はどこにあるのでしょうか。

      教育が解決となるか

      麻薬教育を実施している学校は多くありますが,実際の成功は得られていません。むしろ,その種の教育が好奇心をあおり,その効果を知ろうとして若者がわざわざ麻薬を使うようになった例さえ少なくありません。麻薬教育の先駆者とされるヘレン・ノウリス女博は,その教育計画の失敗を簡単な例えで説明しました。たばこの火を消しながら,「見てください,わたしが良い例です。喫煙がわたしにどんな害を与えるかを知っていますが,それでもわたしはたばこをのんでいます」と言いました。

      ですから,単に麻薬の有害性について論ずる教育だけでは十分ではありません。では,若者に麻薬の使用を控えさせ,すでに中毒している人たちにもその悪習を断たせるほどの力をどこから得ることができるでしょうか。

      カナダの新聞ザ・スペクテイターの論説欄がその答えを指摘しました。マリファナの広範囲な流行について論評した同誌は次のように述べました。「人類は常に感覚の刺激を渇望してきた。これに対して法律は無力である。唯一の有効な武器は宗教であるが,われわれの社会においてこの点が全般的に哀れむべき状態にあることは言を待たない」。

      世の宗教が麻薬問題と取り組む面で暗い失敗を見ているのはなぜでしょうか。一つの主要な理由は,若者が空虚であり無意味であるとして排撃する,この体制の生き方,考え方,生活の目標などを是認しているのはそうした宗教そのものである

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