崩壊してゆく世界 ― 希望がありますか
今日，新聞に，核兵器による大災害の脅威や世界各地における容赦ない経済不況に関する見出しが出ない日はありません。しかし，現代文明を脅かしているのはこうした問題だけでしょうか。過去においても色々な文明が崩壊しましたが，核戦争が原因で崩壊した文明は一つもありません。そして文明は崩壊しても，経済は依然として順調に機能していた場合が少なくありません。それらが崩壊した原因は何だったのでしょうか。その原因を尋ねる歴史家たちは，多くの場合，道徳規準の低下，すなわち内部からの腐敗にたどり着きます。
現代の文明は内部から腐敗しているでしょうか。次の報告はその通りであることを示しています。わたしたちは個人としてこの事態に対処するため何ができるでしょうか。エホバの証人は長年にわたって神の王国がこの問題に対する唯一の解決策であることを指摘してきました。そして，神の王国にいま服する人たちは，自分の家族の中で道徳の崩壊と闘うことができます。次に引用する聖句は，わたしたちの周りに起こっている事柄を神がどうご覧になるか，また，わたしたちがそれらによって堕落させられないようにするためには何ができるかを明らかにしてくれます。
『家族を守れ』と専門家たちは説く
幼児保育の専門家たちが17か国から集まりました。彼らは次のように訴えています。「我々は家族をすべての制度のうちの最も重要なものとして支持するよう努力しなければならない」。
家族という制度は可能な限りのあらゆる支持を必要としています。1981年，米国では，243万8,000人の人が「はい」と言って，結婚しましたが，121万9,000人が「いいえ」と言って，離婚しました。結婚せずに同棲している男女の数は1970年から1980年の間におよそ3倍になり，その時期に生まれた子供は6人につき一人が，結婚していない男女から生まれた子供です。その結果，子供たちは，しっかりした家族による養育がもたらす安定感というものを与えられていません。
その同じ集まりで，ロンドン大学のジェフリー･P･アイビミー教授は次のように語りました。家族を一致させようとする親は，子供たちをしばしば保育園や託児所やテレビに“一時預かり”をさせる習慣があります。同教授によると，そのような習慣は，「親になることを一度も学ばなかった」人々の世代を生み出すことになりました。
「良い妻を見いだしたか。その人は良いものを見いだしたのである。そしてエホバから善意を受ける」― 箴言 18:22。
「結婚はすべての人の間で誉れあるものとされるべきです。また結婚の床は汚れのないものとすべきです。神は淫行の者や姦淫を行なう者を裁かれるからです」― ヘブライ 13:4。
「だれかに対して不満の理由がある場合でも，引き続き互いに忍び，互いに惜しみなく許し合いなさい……しかし，これらすべてに加えて，愛を身に着けなさい。それは結合の完全なきずななのです」― コロサイ 3:13，14。
「少年をその行くべき道にしたがって育て上げよ。彼は年老いても，それから離れないであろう」― 箴言 22:6。
子供に対する虐待
許しを得ずにソーダの缶を持ち去ったという理由で，母親が3歳の娘に熱湯を注いで殺す事件。4か月の幼児が母親に顔をひどく殴られ，精神障害者の施設で一生を送らなければならなくなったという事件。元市長が若い女の子たちに対して5回も性犯罪を重ねたという事件。学校の指導教官が8歳の少年を相手に同性愛行為を行なうという事件。いったいなぜこんな事が起きるのでしょうか。
米国だけでも毎年1,000万人もの児童が身体的また性的に虐待されたり，ほとんどほったらかしにされたりしています。その直接の結果として，数千人の子供たちが死亡しています。子供たちに対してこのような態度を取るのはいったいどんな社会なのでしょうか。
米国コネチカット州の性犯罪者更正計画の所長は次のように述べています。「これと同じ数の子供たちが突然何かの病気にかかったとしたら，我々は重大な伝染病を抱えていることになる」。
「しかし今は，そうしたものを，憤り，怒り，悪，ののしりのことば，……卑わいなことばを，ことごとく捨て去りなさい。……古い人格をその習わしと共に脱ぎ捨て，新しい人格を身に着けなさい」― コロサイ 3:8-10。
「父たちよ，あなた方の子供をいら立たせることなく，エホバの懲らしめと精神の規整とをもって育ててゆきなさい」― エフェソス 6:4。
「聖なる民にふさわしく，あなた方の間では，淫行やあらゆる汚れまた貪欲が口に上ることさえあってはなりません」― エフェソス 5:3。
「悪魔の策略」
心理学の教授フィリップ･G･ジンバードは次のように述べています。「ペーパー･ワークを家に持ち帰る人が増え，仕事のために家を離れることが多くなるにつれて，家族や隣人との接触の機会が少なくなる。我々の時代に対する悪魔の策略は，人間の存在を平凡なものにしてしまい……その理由が慌しさ，仕事量，また経済的不安定などのもたらす不安にあるとの錯覚を起こさせることである」。
その結果はどうでしょうか。「我々は孤独以上に人を死に追いやる強力な理由を知らない。……孤独は，うつ病，偏執病，精神分裂症，強姦，自殺，集団殺人，およびさまざまな病症の基本的な病因であることが明らかになってきている」―「今日の心理学」，1980年8月号。
「自分を孤立させる者は利己的な願望を追い求める。その者はあらゆる実際的な知恵に逆らって突き進む」― 箴言 18:1。
「何事も利己的な野心や安っぽい誇りの欲からするのではなく，互いに対して謙遜になり，他の人を常に自分よりも優れた者と考えなさい。そして，自分の益だけではなく他の人の益を捜し求めなさい」― フィリピ 2:3，4，今日の英語聖書。
「わたしがあなた方を愛したとおりにあなた方が互いを愛すること，これがわたしのおきてです」― ヨハネ 15:12。
厳しい競争の繰り広げられる世界
今日，多くの人々は冷笑的になり，幻滅を感じています。この傾向は，激烈な商業行為，堂々と不正を行なう政治，そして特に犯罪において顕著に見られます。「犯罪は世界中のほとんどどの国においても増加の傾向にある。……犯罪はいよいよ残虐になっている。……青少年や婦女による犯罪数が増加している」と，US･ニューズ･アンド･ワールド･リポート誌は伝えています。
犯罪者はほんの少数にすぎないのでしょうか。決してそうではありません。犯罪は社会構造の中に組み込まれています。例えば，ドイツ連邦共和国では，従業員の不正のために納税者たちに年間10億マルク（約1,000億円以上）の負担がのしかかっています。従業員の不正は道徳的に言って，税金をごまかすこととさほど変わりはありません。ある経済学者は「地下経済[課税の対象となる収入でありながら申告されないもの]によるドルの税収入における損害は昨年度970億㌦（約24兆2,500億円）ほどに達した」と推定しています。別の経済学者は，「実際の総額は2,000億㌦（約50兆円）を上回るのではないか」と述べています。
米国国税局の調査官は，「税金をごまかすことはベースボールに代わるアメリカ最大の娯楽になった」と付け加えています。
「盗む者はもう盗んではなりません。むしろ，骨折って働き，自分の手で良い業を行ない，窮乏している人に分け与えることができるようにしなさい」― エフェソス 4:28。
「盗む者，貪欲な者，……ゆすり取る者はいずれも神の王国を受け継がないのです」― コリント第一 6:10。
「すべての魂は上位の権威に服しなさい。……すべての者に，その当然受けるべきものを返しなさい。税を要求する者には税を」― ローマ 13:1，7。
「しかし，富もうと思い定めている人たちは，誘惑とわな，また多くの無分別で害になる欲望に陥り，それは人を滅びと破滅に投げ込みます」― テモテ第一 6:9。
理想が失われる時
理想が失われると，人々は何事も気にかけなくなり，無情になります。例えば，米国バージニア州リッチモンドの本通りで雨に打たれながら横たわっていたセルマ･クオールの心臓は6回も止まりました。6回ともダグ･ウォールドロップは彼女を生き返らせました。彼は，自動車を止めて助けてくれるように，または救急車を呼んでくれるようにと，自動車で帰宅途中の人々に懇願しましたが，数百人ものドライバーは50分もの間彼を無視して通り過ぎました。セルマは死にました。しかし医師たちの話によると，もし彼女が病院にもう少し早く来ることができたなら，生き延びる可能性は3倍であったとのことです。
米国コネチカット州ハートフォードで，警察官のジェームズ･クイグリーは一人の若い女性がかみそりで手首を切りつけているのを見ました。彼はその女性に近づこうとしましたが，彼女は無原罪懐胎教会の入口の階段に走って行きました。この女性は自分ののどにかみそりを突きつけて，警察や司祭たち，また友人たちをも45分間寄せ付けませんでした。群衆が集まって来ました。人々は，「好きなようにやれ！ 早くやれ！」とはやし立てました。「社会はどうなっているのでしょうか」，信じられないという表情の一人の警察官はつぶやきました。
「幻がなければ，民は放逸に振る舞う。しかし，律法を守っている者たちは幸いである」― 箴言 29:18。
「それゆえ，自分にして欲しいと思うことはみな，同じように人にもしなければなりません」― マタイ 7:12。
『これらのものはこうしてことごとく溶解するのですから，あなた方は，聖なる行状と敬虔な専心のうちにある者となるべきではありませんか』― ペテロ第二 3:11。
今日における道徳規準の低下は聖書が予見していた通りです。（テモテ第二 3:1-5）事実これは，神の王国が現在の混乱した体制を安定した，義にかなった政府に最終的に置き換える時代に住んでいることを示す多くのしるしの一つです。（ダニエル 2:44）その時には，神より任命された王，キリスト･イエスは，「海から海に至るまで，川から地の果てに至るまで臣民を持つことになります」。―詩編 72:8。
今日の道徳の崩壊にあなたは心を痛めておられますか。この状態に毒されることを望まず，近い将来，地が道徳の崩壊に汚染されることがなくなるという確信を得たいと望んでおられるなら，聖書が何と述べているかご自分で調べてみてください。エホバの証人は喜んでお手伝いいたします。そうすれば，神ご自身の次の約束から益を受けられることでしょう。「それらはわたしの聖なる山のどこにおいても，害することも損なうこともしない。水が海を覆っているように，地は必ずエホバについての知識で満ちるからである」― イザヤ 11:9。