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地球の海や河川は食糧不足を解決するものとなるか目ざめよ! 1972 | 1月22日
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である。小さな穴のあいた,通気装置に接続されたプラスチックのホースを海底に敷いて,水域を仕切ることも考えられてきた。立ち登る水泡がカーテンの役をして,望ましくない海生生物の侵入を阻止し,同時に養殖魚類が逃げ出せないようにするというわけである。
また,太平洋に環状サンゴ島があるが,環礁が浅い礁湖を取りまいていることが注目されてきた。日本の科学者たちは,そうした閉鎖された環状サンゴ島で,二,三百㌔にまで成長するマグロの養殖を提案している。
別の研究分野は,魚類を養うために海水を肥やすことである。ある実験では,バージン諸島のセント・クロイクス沖で,直径9㌢のプラスチック製パイプが1.6㌔ほど海中におろされた。海岸のプールにポンプで送り込まれた,養分の豊富な冷たい海水には,すぐに微小な植物が繁茂し,魚の養殖に理想的な状態になった。ある科学者は,海底から栄養分をすくい上げて,海面近くに散布される海底浚渫を提案した。そうすれば,海底の養分を人為的に「湧き上がらせる」ことができるので,そうした水域でふえる魚類を収穫できるというわけである。
スコットランドでは,原子力発電所から出る温水を使って,海での養殖実験に成功した。海の仕切られた水域の水温を上げることにより,新陳代謝の速度と魚 ― この場合はシタガレイとヒラメ ― の食欲が両方とも高められ,その成長が非常に早くなった。しかし,シー・フロンティア誌は,この実験の成功について述べ,一部次のように興味深い論評を掲げた。
「『海を耕やす』という文句は,それが土地の耕作の安易な延長ででもあるかのようにしばしば用いられているが,実際のところ,現時点では,生産よりも問題の多いほうが普通であり,一種類の魚でさえ,企業として採算の合う養殖をするということは,たいへんな努力を意味する」。これは塩水養殖がまだ揺らん期にあることを思い起こさせる。
食糧不足の解決策?
しかしながら,人類の多くが今すでに飢えているのだから,より多くの食糧が即刻必要とされている。海の耕作は,その必要を満たすまでに発達するだろうか。
いろいろな徴候からすれば,それは不可能のようである。バイオ・サイエンス誌はこう述べている。「今の時点では次のことをぜひ言っておかねばならない。それは,塩水養殖による当面の収穫では世界の栄養不足の人々を飢えから解放することにはほとんど貢献できまいということである。飢えた人々の必要とするカロリーを海からの食糧で満たすことはまず望めない。たん白質不足を当面緩和させることに貢献できるとしても,せいぜいわずかなものである」。
養殖で一番見込みのあるのは,現在非常に高い生産性を示している内陸での養殖である。安全な食糧源としての海が汚染のために台なしになるおそれのあることを考えれば,これはとくに真実と言える。
淡水養殖技術が今後いっそう開発されて,たくさんの人が益を受けることは確かである。しかし,人間の深刻な食糧不足の解決をそうした養殖技術にたよれるものではない。
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『音楽つき』バス目ざめよ! 1972 | 1月22日
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『音楽つき』バス
● 読者は,南アフリカ共和国にある包領,レソト王国のいなかをバスで旅行すると,非常に驚かれるかもしれない。その地方のバスの屋根には,内部のマイクロホンに連結した拡声器が取り付けられている。音楽の心得のある人,あるいはグループはだれでも,好きなようにマイクを用いて歌ったり,楽器を演奏したりできる。その結果,時にはたいへんにぎやかになることがあるということだが,音楽好きのレソトの人々は,むっつりと黙って旅行するよりは,そうした音楽を楽しんで旅行するほうがずっとよいと考えている。こうして,バスの乗客や道路沿いの人々は,レソトの音楽つきバスのおかげでなかなかおもしろい経験に浴している。
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