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楽観的な考えは死滅していますかものみの塔 1957 | 7月15日
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楽観的な考えは死滅していますか
楽観的な考えには何が生じましたか。戦争のくり返し行われる現代の世界に,楽観的な考えは消滅してしまいましたか。第一次世界大戦以前には,楽観的な考えはその絶頂に達していました。真実に明るい将来が見透されていたのです。著名な英国の政治家ウイリアム,エオート,グラッドストンは次のように語つていました,『世紀の経つにつれて世界はますます良くなつている。我々の頭から悲観的な考えをなくそうではないか。そして,今後永久にわたつて楽観的な考えに充ちみちようではないか。』
その『今後』は,まつたく短いものでした。戦後の世界の何処に楽観的な考えがありますか。多くの人々にとつて楽観的な見方は死滅しています。あなたにとつてもそれは死滅していますか。
コロンビア大学の教誨師ジョン・マックギル・クルムの言葉によると,楽観的な考えにたいする希望は死滅しています。上級学生になした話の中で,大学教誨師は次のように語つていました。20世紀の最も最悪な災難は『楽観的な見方の死滅』であり,『事態は前よりも良くなるだろう』という在り来りの楽観的な見方は消滅しているのです。『我々はこの地球を人の住めないようにすることができる,だがそうしていない。そのわけは,指導者たちや人類がほんの僅かな知恵と,忍耐と善意をつくり出しているからだ。』クルムの説明によれば,歴史的な事柄を考えて,いまの生活を見るなら,誰でも楽観的な見地を持つことができない,とのことです。今日の状態は,『歴史上まつたく独特のもので』あり,楽観的な見方は死滅していて『復活の希望はすこしもない』― 1955年5月30日,ニューヨーク・タイムス紙。
楽観的な考えが消滅したと述べているのは,牧師だけにかぎりません。政治家,科学者,歴史家たちも,そのことを認めています。彼らは,悲観的な見方を変えねばならないと信じながらも暗い将来しか予見できません。昨年,アイゼンハウァーが勝利を握つた後にアドライ・スティーブンソンはこう語りました,『今後に横たわる苦難の時代に,でき得るかぎり政府を支持しようではないか。』そのわけで楽観的な考えが消滅した後には,暗い悲観的な考えが入れ変つています。暗い明日についての本も一般人の人気を受けているのです。
小説でさえも悲観的な重苦しい調子になつています。ヒリッピ・ウィリーのエッチ・ジー・ウエルシアンの小説『明日!』の中では,ニューヨークは水素爆弾の爆撃を受けてこなごなになり,ワシントンはクレムリン爆弾で焦土に化しています。小説でない本も同様に悲観的なものです。理論物理学者チャールス・ダーウィンは『次の百万年』(英文)という本の中で遠い将来にわたる予告をしています。著者の結論によると,人間の究極の将来は過去と同じく悲しむべきものであるとのことです。歴史と政治の研究家エルマー・ディビスは「真夜中までの2分間」(英文)という本の中で,間近かい将来を大写しに述べています,『我々は乗るか反るかの戦に面している。我々の勝つことは十中の八,九おぼつかない。もし他の道があるなら,このような結論は人々に受け入れられないだろう。』
悲観の予言者達は,楽観的な事柄を気づくのに失敗しましたか。失敗しました。
今日,楽観的な考えにたいする唯一つの真の根拠があります。それは1冊の本です。しかし,多数の人は忙しい生活をしていてその本を読もうとしません。すなわち神の言葉である聖書のことです。その聖書によつて次の事柄を学びます,つまり,人間の歴史上において楽観的な考えが消滅し状態は歴史上まつたく独自のものとなり,かついちばん抜け目のない政治家たちも道を見出し得ない時が来るということです。サタンの世の『終の時』『最後の日』のあいだ,世界にふりかかる最悪の時は聖書により予告されていました。私たちはいまその時代にいるのです。
キリスト・イエスは私たちの時代を前もつて指し示しました。キリストはしるしを告げておられます。そのしるしは,世界にふりかかる多くの災難で成り立つています。聖書の他の予言と一致しているその災難が生じるとき,『終の日』が来たことになります。1914年以来がそうです。この『終の時』をしるしづける一つの特徴として,イエスは次のように語つています,『地上では諸国民がなやみ,海と大波とのとどろきにおじ惑い,人々は世界に起ろうとすることを思い,恐怖と不安で気絶するであろう。』― ルカ 21:25,26,新口。
最悪の時が世界に臨むとき,楽観的な考えは消滅したことになりますか。そうではありません! それは楽観的な考えの生まれることを意味します。イエスは古今未曾有の艱難について次のように述べられたからです,『これらの事が起りはじめたら,身を起し,頭をもたげなさい。あなた方の救が近づいているのだから。』― ルカ 21:28,新口。
最悪の時でありながら,しかも最善の時であるとはどういうわけですか。サタンの世にとつては最悪の時です。しかし,次の真理に目ざめているクリスチャンにとつては最善の時です。すなわち,神は正義の新しい世を設立して,現在の悪しき組織制度をハルマゲドンで亡す,と約束されているのです。この真理を十分に学び知る人々は,将来に明るい希望を抱きます。それは全く心おどらすものとなります。
この良いたよりを知らせねばなりません。この良いたよりは知られるであろう,とイエスは言われました,『この御国の福音は,すべての民に対してあかしをするために,全世界に宣べ伝えられるであろう。そしてそれから最後が来るのである。』(マタイ 24:14,新口)ヱホバの証者の新しい世の社会は,この良いたよりを遠く広く宣べ伝えています。
それで,楽観的な考えがこの世に消滅していても,それは一向差しつかえありません。この世は,ハルマゲドンのときに間もなく消滅してしまいます。しかし,この世と共にみなさんが死ぬ必要はありません。皆さんが楽観的な見方を棄てる必要はありません。最善を希望することができるのです。この雑誌の宣明している神の御国の良いたよりを学びなさい。それに応ずる行をしなさい。それから,新しい世の社会と共に『のぞみを抱いて喜び』なさい。―ロマ 12:12,新口。
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宣教者は宣教者を改宗するものみの塔 1957 | 7月15日
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宣教者は宣教者を改宗する
エリトチアは,エチオピヤの北にある地で,エチオピアの連邦になつています。その地にいる『ものみの塔』のアメリカ人宣教者夫婦から,最近次の手紙を受け取りました。
『この地でたくさんの聖書研究をしており,その中の或るものは非常に良い研究です。スエーデン伝道団体からの3人の先生もいますが,その先生たちはここ5カ月のあいだ毎週2回ずつ研究して,洗礼を受けたいとの希望を申し出ました。すでに家から家の伝道の業に参加しており,友人たちには絶えず証言しています。
『その中,私たちの新しい兄弟の一人が説教する番になりました。それで,この兄弟は新しい世について語ることを準備し,そして地が燃えて善人はみな天に連れて行かれる,という偽りの教えを曝露しました。その地の人々は,いまだかつて無い程に良く謹聴していました。時折り,偽りの教えが曝露されることに拍手喝采がなされましたが,伝道団体の指導者は言語が理解できないため,そのことが分りませんでした。むしろ,自分たちの養成した素晴らしい先生に誇りを感じていたのです。しかし,この誇りはすぐに消えました。翌日になつて,説教の内容を知つたからです。その説教は,『ものみの塔』「神を真とすべし」また同様な出版物の中から資料を取りました。
『スエーデンから理事が訪問したことによつて,この件は最高潮に達しました。特別な会合が召集され,証者との研究中止を拒絶した先生たちが油をしぼられました。それで,5人の先生以外を除いて,全部の先生は理事の言いなりになりました。
『他の者が退室して後も,この5人は室に留まるようにと言われました。それから,3時間のあいだ聖書の教えについて論じたのです。新しい兄弟たちは,どの点のところでもヱホバの崇拝をしつかり守りました。幾度となく,この理事は興奮して,わめき散らしたので,兄弟たちはくり返しこう言いました,「ヱホバの証者は,私たちが違つた意見を言つても,決してわめき声を立てて話すようなことをしません。ただ聖書を開いて,私たちの間ちがいの何処であるかを示すだけです。」
『この5人の先生が家から家に伝道していると,知つて,理事は特に怒りました。証者の教えを止めないなら,クビにするぞ,とおどかしたところ,5人の中3人は次のように答えました。「あなたが何をしようと,クビになろうと,又は他の如何なるものも,私たちをヱホバから引き離すことはできない。」これには,理事も驚いてしまいました。先生たちは,宗教以外の事なら何でも教えても良い,と決定されました。他の者たちが,宗教を担当することになつたのです。これは先生たちにとつては,真実の勝利でありました。』
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