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  • ペニシリン発見の特異ないきさつ
    目ざめよ! 1980 | 10月22日
    • たかびの培養液を用いて仕事を行なうようになりました。そして,幾度も失敗を重ねた後,ついにその不可解な物質を安定した粉末状にすることに成功しました。

      病菌を植えられた4匹のネズミが治療されると,大騒ぎになりました。そして1941年に,初めて人体に使用され,成功を収めたのです。「ペニシリンの効果は全く奇跡のように思える」と科学者の一人は報告しました。ペニシリンを1億2,000万倍に薄めても,バクテリアに対する効果は失われないことが示されたのです。それは全く信じ難いことでした。

      戦時中の様々な問題のため,フローリーは貴重なかびを携えて英国から米国イリノイ州のペオリアへ移りました。フレミングのかびはペニシリンの大量生産には適していませんでした。広範囲に及ぶ調査の結果,ケネス・B・レイパー博士の助手で“かびのメリー”という名を付けられた,ペオリアに住むメリー・ハントが,腐ったカンタループ・メロンから生産に適したかびを発見しました。それ以来,このかびを培養したものがペニシリンの主要な生産源として用いられるようになりました。やがて,ペニシリンは多くの国で大量に生産されるに至り,フレミング,フローリー,チェーンの3人は1945年にノーベル医学賞を受けました。

      解明されない不思議な現象

      「おかしいな」というフレミングの言葉は,1928年に培養皿の上で見た現象が説明し難いものであることを示していました。フレミング自身を含め,多数の科学者が同じ現象を再び生じさせようと試みたものの,これまで一度も成功していないというのは全く信じ難いことのように思えます。「それはまさに,医学の分野でこれまで生じた最高に幸運な出来事の一つであった」とフローリー卿は語りました。36年後,ロナルド・ヘア教授はその不思議な現象を解明しようとして一連の複雑な実験を行ない,フレミングの実験室で生じた事柄は極めて例外的な現象であったに違いないことを確証しました。

      1971年には,エルンスト・ボリス・チェーン卿がその当時の科学的見解を要約して次のように語りました。

      「フレミングが観察した現象は極めて単純明解に思えるが,現実にはそうではない。それがいかに複雑であるかを,またその現象が生じるにはごくまれにしか起こらない状況が幾つも同時に生じる必要のあることを認識し,理解している人はほとんどいない」。

      実験室の培養皿で目にしたことをフレミングは誤解し,間違って受け止めたのであり,フレミングが考えていたようなことは起き得ないとの見解を表明する人もいます。ペニシリンを発見した人物,時,方法に疑念が表明されるとしても,幾多の人命を救ってきた実に驚くべき薬が得られたという最終結果は残ります。

      ペニシリン禍

      過敏な体質でない人にとってペニシリンは副作用のない薬であることが知られていますが,過敏な人はこれによって発疹が出たり呼吸困難に陥ったりすることがあります。まれにはショック状態に陥る人もおり,悪くすると死ぬ場合もあります。ペニシリンは万能薬ではありません。風邪などのように通常の病気の中でも,ペニシリンの全く効かないものが数多くあります。抗生物質はウイルスの感染症には全く効果がないからです。バクテリアの感染に対してだけ効き目があります。しかし,1980年1月10日号のサイエンス・ワールド誌は,多くの医師が「大事をとって,バクテリアの感染を防ごうと事前に」抗生物質を投与していると伝えています。

      ペニシリンの評判が高いため,知識の乏しい患者の中には,すぐに症状が軽くなると考え,ペニシリンの使用を希望する人が少なくありません。そして残念なことに,医師はいとも簡単にこの薬を処方しています。テキサス南西医科大学の内科の助教授であり,ダラス在郷軍人会病院伝染病科の医長でもあるジェームズ・スミス博士は,「わたしは培養検査をしなければペニシリンを処方しない」と語っています。保健衛生の当局者は住民全体の見地からすれば,ペニシリンを大量かつ不必要に使用することは極めて望ましくないと警告しています。以前はペニシリンで退治できたバクテリアが抵抗力を備えるようになり,それがまん延する危険があるからです。「抗生物質の乱用を続けてゆくなら,我々はその代償を支払うことになる」と,ワシントン大学の微生物学および医学の教授スタンリー・ファルコウ博士は語っています。同博士は,抗生物質に対して既に抵抗力を備えている数々の耐性菌について言及した際,「我々はいつでも代わりの薬を手に入れることができるわけではない」とも語りました。医師の中には必要な場合だけに限ってこれを処方する人がいます。そして本当に必要な場合というのはそれほど多くはありません。また,ペニシリンを最後の切り札として使う薬の一つに見なしている国もあります。医師の勧めがない限りこれを用いてはなりません。

      バクテリアは命取りになりかねない数々の病気を引き起こしますが,ペニシリンにはそのバクテリアを殺す強力な能力が備わっています。しかも人体の防御機能を損なうことなくその力を発揮します。この二つが相まって,ペニシリンは今日の特効薬の仲間入りをしました。人類がそれを偶然見つけた経緯は特異としか言いようがありません。本当のことを知っている人はだれもいないのです。

  • 一つ一つの細胞は城壁をめぐらした都市
    目ざめよ! 1980 | 10月22日
    • 一つ一つの細胞は城壁をめぐらした都市

      最近号のニューズウィーク誌上で,人間の細胞というミクロの世界の探検が行なわれました。筆者は,かくも極小の領域で果たされる機能が極めて多岐にわたることに驚きの声を上げました。「これら100兆個に及ぶ細胞の各々は,城壁をめぐらした都市と同じように機能している。発電所が細胞のエネルギーを供給する。工場が,化学的な取り引きを行なう上で重要な単位であるたんぱく質を生産する。複雑な輸送システムによって,特定の化学物質が細胞の内外を問わず,ある地点から別の地点へと運ばれる。バリケードに立つ見張りの者は輸出入の管理を行ない,危険な徴候がないかどうか外界を観察する。訓練の施された生物学的軍隊が侵入者と戦うべく控えている。中央集権的な遺伝子政府が秩序を保っている」。

      この小さな“政府”に関する目を奪う別の働きは,製造されたたんぱく質が細胞内の適正な目的地に到達するように図らう“郵便業務”です。「文字通りの郵便業務の場合と同様,細胞内にも郵便番号制度があるように思う」とロックフェラー大学の一科学者は述べています。細胞内のリボソームによって造られるたんぱく質は,20ないし50のアミノ酸による番号が付けられ,“あて名が書かれる”と考えられています。同科学者の話によれば,「正確な細胞内小器官の表面は,ビザを承認して国境を通過させる機関のように,そのあて名を識別してたんぱく質を中に入れる」とのことです。

      同誌は再三にわたり,細胞がどのようにその働きを遂行するかを科学はほとんど究めていない,と指摘しています。例えば,「異なった細胞内の特定の遺伝子にその働きをさせたり働きをやめさせたりして,さまざまな状況下で異なった仕事を行なわせる化学的メカニズムの不思議さに,研究者たちは当惑したままでいる」と述べられています。その記事は,ノーベル賞受賞者であるロックフェラー大学のクリスチャン・デ・ドゥーブの次の言葉も引用しています。「今日の我々は,細胞内で生じていることは表現できても,なぜそうなるかは理解していない」。

      この記事全体を通して,次のような表現が目につきます。「人間の細胞とその小器官つまりその内部にある構成要素は,まだ多くの秘密におおわれている」。「調節作用ほど生物学者の首をひねらせるものはない。例えば,すい臓と目の細胞は共にインシュリンを造り出せる遺伝子を有しているが,すい臓がインシュリンを製造するのに対して目の細胞は製造しない」。ある遺伝子は,その遺伝子が必要とされない細胞内では働かないよう化学的に固定されるかに見えますが,そのしくみについて同記事は「しっかり固定される遺伝子とそうでないものがあるのはなぜか。科学者はまだ答えを得ていない」と述べています。そしてこのような結論を下しています。「どんな答えも,細胞に関する新しい,より複雑な問題を提起するようだ。……微小で神秘的な細胞の世界で確かなことがあるとすれば,人間の細胞はその秘密のすべてを決して明らかにしないことだ」。

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