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増大する石油危機目ざめよ! 1974 | 3月22日
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ような問題がありました。それゆえ,アラブ産油国が米国向けの石油を削減する以前から,ロサンゼルス・ヘラルド・イグザミナー紙が次に述べるような事態が生じていました。「現在のところ予備の石油を産出する能力を持たない米国は外国系の石油にいよいよ依存するようになっている」。そして,ニューヨーク・タイムズ紙はこう付け加えています。
「西半球の石油供給地が米国向けの出荷をそれほど拡大することはできないから,将来に予想される原油輸入増加の大部分は,中近東とアフリカなど,東半球の供給地に頼らねばならないというのが,政府と産業界の一般的な合意点である」。
カナダは米国に対する主要な石油供給国ですが,このカナダもいろいろな問題をかかえています。そのため,カナダもまもなく石油やガスの輸出を削減せざるをえないであろうと見られています。トロント・スター紙はこう伝えます。
「エネルギーに飢えた米国のためにわれわれの[石油]資源が急速に枯渇してしまうことを防止しないかぎり,カナダは,馬や馬車,そして汚い石炭がまの時代に戻らざるをえないであろう。これは,世界で最も著名な科学者のひとりである,トロントの地球物理学者J・ツゾー・ウイルソンの警告である。
「石油や天然ガスの供給が減少してゆく一方でそれらに対する需要が増大しているために,北アメリカの文明は今後10年以内に絶望的な危機に陥るかもしれないと彼は言う。……
「『ガスや石油に対する需要は飽くことなく急速に増大しているため,北極の石油資源もエネルギー供給の問題に長期的な解決となりえないことは明らかである』とウイルソンは書いている」。
こうして,好むと好まざるとにかかわらず,北アメリカと西ヨーロッパと日本は,他の国から膨大量の石油を輸入し,しかもその量を増大させてゆかねばなりません。これは幾つかの大きな問題を生み出します。それは,一つには,莫大量の石油埋蔵の確認されている二つの場所が,これらの国に概して好意的でない地域にあるためです。
第一の場所は,中近東や北アフリカのアラブ回教諸国です。石油の埋蔵が確認されている次に大きな場所はソ連です。つまり,共産圏とアラブ回教諸国が地上の最大の石油源を握っていることになります。そしてわたしたちは,最近のアラブ-イスラエル戦争以来,そうした石油の源泉に何が起こりうるかを見てきました。
しかし,これら石油保有地の位置は,単に政治上の問題だけでなく,石油を買い入れる国々に対して大きな経済上の問題をも生み出します。どのようにですか。
驚くべき石油代価
米国,西ヨーロッパ諸国,日本が輸入する石油の代価はすでに巨額に上っています。これらの国は石油のために毎年幾十億㌦もの資金を払い,その資金は主に,中近東と北アフリカの産油国に行きます。
仮に石油の価格が変わらないとしても,増大する石油需要のために,先進工業諸国は自国の富をしだいに多く払い出してゆかねばなりません。ところが,石油の価格は同じ状態でとどまってはいないのです。それは著しく上昇し,すでに数年前の幾倍にもなりました。しかも,価格が今後も上昇しつづけてゆくことをだれもが予期しています。石油の需要はどんどんと増大しているからです。
今後どのような事態になろうとも,あらゆる形のエネルギー源,特に石油は,その価格の上昇が続くと,権威者たちが明言しているのはこのためです。安い燃料,安価なガソリンの時代は終わりました。
価格の非常な上昇と,輸入量の増大とのために,石油消費国は,石油のためにいよいよ多くの代価を払ってゆかねばなりません。これは,それらの国の対外収支を悪化させます。つまり,自国が得る以上の資金を支払ってゆかねばならないのです。こうして巨額の支出がいよいよ増大してゆくことは,これらの国ですでに進行している悪性のインフレをいっそう過熱させます。それによって,石油だけでなく他の多くの物の生産コストや売り値がいっそう上がります。石油製品を使用する人はより高い代価を払い,それを埋めるためにやがて賃上げを要求します。賃銀コストが上昇すると,製造業者は自分の製品価格をさらに上げます。こうして石油価格の上昇は,すでにある悪性インフレの炎をさらにあおることになります。
西欧経済の基盤とされる米国はその対外収支の面ですでに重大な問題をかかえてきました。これまで幾年もの間,米国は海外で取得する以上の資金を支出し,諸外国に対する負債を積み上げてきました。そして,増大する石油輸入に伴う支払い債務はこうした状態をいっそう悪化させます。
多少の例を挙げれば,1973年中,米国は石油輸入のために約70億㌦を支払ったと推定されています。経済学者たちは,1975年までにこの数字が150億㌦に上るものと見ています。そして,米国のサウジアラビア駐在大使であるジェームズ・アキンズは,同国の輸入する石油の代価が,1980年までに「年額400億㌦を超えるであろう」と述べています。こうした超大な支払いをしてゆくことはたいへんなことでしょう。米国がその支払いに見合うだけ輸出を伸ばせると見る専門家はほとんどいません。それゆえ,石油問題が危機と呼ばれる理由も納得できます。
カナダ,西ヨーロッパ諸国,日本について見ても,事情はそれほど異なりません。これらの国はみな,今後毎年輸入してゆかねばならない莫大量の石油に対し,その支払いの面でしだいにつのる問題をかかえることになります。
しかし,もしこれらの国が輸入する石油の代価を払いきれず,あるいはなんらかの理由で供給量の削減を受けるならどうなりますか。北アメリカ,西ヨーロッパ諸国,そして日本の,今日見るような,工業本位の生活は大きな変化を強いられることになります。
ソ連は莫大な石油資源を有しており,こうした石油不足には直面していません。ソ連の大油田およびルーマニアの小さな油田は,東ヨーロッパ共産主義諸国の需要をまかなうことができます。それで,ソ連とその友好国は有利な立場にあります。中近東と北アフリカのアラブ回教諸国,およびそれと親しい関係にある国々についても同じことが言えます。
しかし,北アメリカ,西欧諸国,日本などの場合には事情が異なります。これらの国は必要量の石油を得るという面ですでに問題をかかえており,その問題は今後数年の間ただ増大してゆくことが考えられます。それらの国に住む人の生活はなんらかの面でその影響を受けずにはすみません。物の値段や生活のしかたは決してこれまでと同じままでは進まないのです。
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祈りについてどんなことをご存じですか目ざめよ! 1974 | 3月22日
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祈りについてどんなことをご存じですか
祈りはほとんどだれもがすることです。もっともある人びとは,それほどひんぱんには祈りません。万策尽きたあとの最後のとっておきの手段としている人も少なくありません。
たとえば,第二次世界大戦中,「救命いかだの上に無神論者はひとりもいない」ということがよく言われました。飛行機が海中に墜落して無線はだめになり,陸地は1,600㌔のかなたにあり,糧食はほとんど底をつき,救助者の影も形も見えず,万策尽き果てたとき,人びとは目を上げて祈りました。
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