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  • 私は有毒な化学物質に対してアレルギー反応を示しました
    目ざめよ! 1983 | 9月8日
    • 私は有毒な化学物質に対してアレルギー反応を示しました

      「私は殺虫剤や化粧品やペンキのにおいなどにいつも敏感で,その結果発疹が出たり,頭痛がしたりしていました。別に大した事はない,と自分では思っていました。それがどんな事態へと発展するか,全く分かっていませんでした」。ミリーはこのように自分の経験を話し始めました。

      その話は次のように続いています:

      「いまいましいハエね!」 そう思って殺虫紙を何枚か取りつけました。やがて,ハエは1匹も見られなくなりました。『現代の科学技術は本当にすばらしい』と思いました。ところが,それは私の健康の転換点になったのです。

      動悸や筋肉の極度の衰弱,おう吐が起こり,突然大声で泣くようになりました。どうしたというのでしょうか。私は結婚して幸福を味わっており,生活を楽しんでいました。それから,引っ越しをしたのです。引っ越し先のアパートにはゴキブリがたくさんいたので,そこにスプレーをかけました。

      急に呼吸が困難になりました。主人のジェリーが大急ぎで私を病院にかつぎ込みました。家に帰ってから私は抑うつ状態に陥り,混乱して満足に話もできませんでした。間もなく病院に戻りましたが,そこで医師はジェリーに,「奥さんは精神病です。精神分裂病ですね」と告げました。ところが,少し古い移動住宅に引っ越すと,その症状はなくなりました。

      そして,アリが出て来たのです。害虫駆除業者が殺虫剤を噴霧しました。抑うつ状態と吐き気と発作的に泣くこととがみな戻ってきました。30分おきに吐くということが18時間続きました。下痢をしました。骨という骨すべてが痛みました。失意にうち沈んで私たちは精神病院へ行きました。

      病院での血液検査で,白血球の足りないことが分かりました。それは免疫機構に欠陥があることを示唆しているようでした。しかし,そのことを自分の抱える問題と結びつけることは全くしませんでした。そして検査の後,担当の精神科医は,「あなたは決して精神分裂病ではありません。あなたの精神状態は世間一般の人々の大半よりも健全です」と言いました。病院では容態もよくなり,家に戻りました。ところが,家に着いた途端に視界がぼやけ,ほかの症状すべてが戻ってきたのです。

      「病院に連れて来る度に妻はよくなるのですが,家に帰って来るとおかしくなるのです」と,ジェリーは涙ながらに医師に話しました。「アリを駆除するために家に薬を噴霧して以来,おかしくなってしまったのです」。

      「それだ,それだ。少しの間その家から奥さんを出してごらんなさい。そうすれば分かるでしょう」とその医師は興奮した口調で言いました。

      三日間トレーラーで寝ると,症状は消えうせました。問題が家の中にあるということにまだ疑いがあったので,私は家に戻りました。すると,途端にのどがひきつったようになり,舌が膨れ上がりました。これで分かりました。私は家の中の有毒な化学物質に対してアレルギー反応を示していたのです。時たつうちに,香水,家庭用化学製品,毛染め剤,化粧品,ガソリンのにおい,排気ガスなどに反応するようになり,しまいには化繊の衣料にまで反応するようになりました。

      ミリーは20世紀症候群と呼ばれているものにかかっていました。確かに,ミリーの場合は極端な例です。公害に対する大抵の人の反応は,くしゃみ,かゆみ,物が目にしみて目が痛むことなどです。しかし,ミリーのような症例が世界中で増加の一途をたどっているのは,環境汚染の増大に対する警告のしるしなのでしょうか。人間は,聖書の中で幾世紀も昔に予告されていたように,本当に「地を破滅させている」のでしょうか。―啓示 11:18。

  • あなたは公害に悩まされていますか
    目ざめよ! 1983 | 9月8日
    • あなたは公害に悩まされていますか

      前述のミリーの事例からすると,自分が過敏になったり,抑うつ状態に陥ったり,健康上の問題を抱えたりする場合,それは必ず環境汚染のせいだということになるのでしょうか。決してそのようなことはありません。

      わたしたちの体の見事に設計された免疫機構は汚染物質を撃退することができるのです。(詩編 139:14)しかし,遺伝的な体質およびわたしたちの生活習慣のゆえに,各人は異なった反応を示します。ごく少量の化学的汚染物質でさえある人々の健康に影響を及ぼし得ることを示す医学的な証拠は増大しつつあります。

      化学物質に対する敏感な反応

      米国イリノイ州シカゴ市のテロン・ランドルフ博士は「目ざめよ!」誌に次のように語りました。「様々なアレルギー反応を示す2万人以上の患者の治療に30年余り携わってきましたが,化学的な問題が,既に第一の元凶になっているとは言えないまでも,急速にそうなりつつあると私は思っています。環境や工業化された食物からの化学物質の蓄積にさらされることは大いに増大しています。こうした化学物質に対してすべての人が敏感な反応を即座に示すわけではありませんが,少しでも継続的に化学物質にさらされると,大半の人々に害が及びます」。

      しかし,体の免疫機構がこうした汚染物質に対抗するはずではありませんか。米国サンフランシスコの免疫学者,アラン・S・レビン博士はこう説明しています。「化学的な汚染物質は,その毒性によって,免疫機構の“ブレーキ”役を果たす,血液中の“T細胞”[白血球の一種]なるものを減少させて免疫機構を弱めます。その結果,人の免疫機構は制御できなくなり,過度の反応を示します。その人は過敏になり,合成された素材や石油化学製品のほぼすべてに反応するようになります」。

      医学雑誌の伝えるところによると,食品を入れる軟らかいプラスチックの容器,石油コンロやガスコンロのにおい,義歯の素材,合成繊維およびその他数々の近代的な製品に反応する人々がいます。ですから,ミリーの遭遇したような情緒的および身体的な障害は,人の環境の中にある様々な物質に対する反応によって引き起こされることがあるのです。

      「しかし実際のところ,この問題に関して最も重要なのは個々の人の罹患性です」とランドルフ博士は述べています。ニューヨーク市のシナイ山病院の環境科学研究所の所長,アービング・セリコフ博士は全米規模の調査を実施して,同じ結論に達しました。「目ざめよ!」誌のインタビューに答えて,同博士はこう語りました。「個々の人の罹患性は大変重要です。石綿を使う仕事をしている人5人に一人は肺ガンで亡くなります。ほかの4人がそうならないのはなぜでしょうか。私には分かりません。しかし,数々の事柄にこうしたことが見られるのです」。

      ですから,ある人が反応を示す物でも,別の人は平気かもしれません。当人の健康状態,個人の遺伝的特質,精神面での物の見方,ストレスなどすべてが要因となっています。このようなことを知っていると,自分の味わっていないような健康問題と闘っている他の人々に対する思いやりの気持ちを培うのに役立つはずです。(ペテロ第一 3:8)しかし,環境汚染物質の影響は単なるアレルギー反応だけにとどまりません。

      職場

      工業で広く使われている鉱物の石綿は,1982年に,新聞の第一面に載せられた恐ろしい記事の一つになりました。証拠の示すところによると,自分たちの職場で石綿粉塵にさらされた人が今後今世紀の終わりまでに,毎年推定1万人ずつ,石綿の引き起こすガンやその他の関連した病気で死亡する恐れがあります。

      アービング・セリコフ博士はこう述べています。「石綿にさらされると健康にどんな影響が及ぶかということは20年余り前に示されていました。産業経営者は少しなら害はないであろうと考えていたようです。私たちは粘り強くたくさんの情報を集めました。今,その結果を見ています。しかし,時は既に遅かったのです。しっかりした予防策を講じないで1940年から1980年にかけてその粉塵にさらされてきた約2,000万人の人々にとって,将来は不安なものになっています!」(全時間あるいはパートタイムの別を問わず)米国の労働者10人に一人は今や発ガン物質にさらされているため,これまで以上に厳しい安全基準を課している,責任ある産業経営者は少なくありません。

      NIOSH(全米職業安全保健研究所)の神経行動研究部門のケント・アンガー博士は,神経系統に影響を及ぼしかねない,職場の化学物質が医薬品を除いて30種を超えるということを「目ざめよ!」誌に語りました。同博士は次のように述べています。「このうちの一つあるいは幾つかにさらされている労働者がほぼ2,000万人いる。そうした物質は,注意力の持続する時間のわずかな変化,手の震えやしびれ,短期間の記憶喪失,全般的な脱力感,情緒不安定,神経過敏,過敏症などを引き起こすことがあり,場合によっては体がまひしたり失明したりする人もあります。もちろん,ほかの問題でこのような症状が生じるのも見てきました」。

      化学殺虫剤は広く使用されています。世界保健機関は,農業に従事する人の殺虫剤中毒を,発展途上国における主要な健康問題と見ています。同機関の推定によると,それらの国々では毎年殺虫剤によって約50万人が中毒を起こしています。実に1分間に一人の割合です。そのうちの5,000人は死亡します。不妊や流産がこのような化合物の生産や使用と結びつけられています。言うまでもなく,すべての殺虫剤が同じほど有害であるわけではありませんが,中にはその影響が幾年も使用した後に分かるようなものもあります。

      食物,水,そして空気

      毎年害虫のために,世界の食糧のうちかなりの量が失われています。ある推定では,それは40%を超えるとのことです。そのため,1979年だけでも29億㌔の殺虫剤が生産されました。これは地球上に住む人一人当たり500㌘を超える量です。こうした化学物質 ― その中には容易に分解しない物もある ― は,野菜や果物に付着していたり,食物連鎖の中に入ってわたしたちの食べる肉に蓄積されたりする場合が少なくありません。実験動物に先天性の奇形やガンを引き起こすとして米国では使用禁止になっている殺虫剤は他の国々では依然として生産・販売されており,それらは輸入食品の少なからぬものに含まれて米国へ戻って来ます。

      ですから地球上のほぼすべての人の体内には,こうした汚染物質が少量含まれていることになります。これに一体どれほどの害があるか,特にどれほど長期的な害があるかについてはっきりしたことの言える人は一人もいません。しかし,中には殺虫剤に汚染された食物を食べて,ぜんそくの発作や発疹や頭痛などの症状を示す人もいます。

      飲料水は大抵安全ですが,米国ニュージャージー州エッグ・ハーバーで起きたような出来事は増加しています。1981年に,化学廃棄物投棄場で漏出があり,近くの地下水が汚染されました。ニュージャージーの地下水は地下に蓄えられた数ある水系の一つで,米国の飲料水の半分以上はそのような水系によって供給されています。そうした水系が一度汚染されてしまうと,それを浄化する方法はないのが普通です。

      「水を飲まないこと。有毒。化学物質」。エッグ・ハーバーのある家の台所に掛けられたこの標示は,ニュージャージー州一帯および近隣の諸州で幾百もの井戸が閉鎖されたことを痛ましい仕方で思い起こさせています。住民の中で,のどの奥から出るせきや腎臓の病気,神経障害,および発疹などを有毒な化学物質のせいにする人は少なくありませんでした。こうした症状の幾つかは,それに悩まされている人がその地域を一時的に離れたりびん詰めの水に切り替えたりすると消えうせました。同様の化学廃棄物投棄場が全米に幾千か所もあると思われるので,米国環境保護庁の元職員,エクハルト・ベックは,「これは80年代の環境残酷物語になるであろう」と述べました。a

      都市の大気汚染には特にお年寄りや体の弱い人や生まれたばかりの子供の心臓や肺の慢性病を引き起こしたり,悪化させたりする力があると広く信じられています。しかし,どの程度までかは依然として論議の的になっています。規制が強化されて改善された都市もあります。それでも,大気汚染はストレスを加えるものとなります。ある調査の明らかにしたところによると,米国の大都市の中流階級の住民の間で,汚染のひどい地区では汚染がそれほどひどくない地区よりも,高血圧による心臓病で死亡する人が80%も多いのです。

      鉛 ― 潜行性の有毒物質

      ハーバート・ニードルマン博士は,学校に通う5ないし6歳の正常な子供2,146人の乳歯に含まれる鉛の量を分析しました。それから,教師の評価した子供一人一人の行動を調べました。その結果,鉛の量が多いほど,行動が悪くなるということが分かったのです。カナダ,ドイツ,英国でも同様の調査結果が出ています。警鐘はいよいよ高らかに鳴り響いています。

      鉛は古いペンキのはげた破片や粉の形で口に入ることもあれば,有鉛ガソリンの排気ガスという形で体内に吸いこまれることもあり,食べ物の中に混じることもあります。「アメリカ人の食物に含まれる鉛の半分は鉛を使ってはんだづけされた缶に由来するものと思われる。というのは,これらの容器が中身を10倍近く汚染し,食物の約2割は缶詰食品でなっているからである」と,カリフォルニア州の二人の研究科学者たちは結論しています。

      大人は自分たちの口に入る鉛の10%を吸収しますが,子供たちは50%まで吸収します。子供たちはまた,自分たちの吸いこむものをより容易に吸収します。特に害を受けやすいのは,発育段階にある神経系統です。子供の軽い鉛中毒の症状としては,ぎこちない動き,腹痛,遊ぼうとしないこと,過敏症,疲労,食欲不振などがありますが,親はしばしばこうした症状を見過ごし,病状が悪化することもあります。

      自分の生活様式

      公害の影響は多くの場合,無分別な生活様式によって非常に深刻化します。セリコフ博士は次のようなことを明らかにしています。「仕事で石綿を扱う人々の場合,肺ガンで死ぬ危険性は一般の人々よりも7ないし8倍大きくなる。ところが,その人が喫煙する場合,危険性は92倍も大きくなる」。多くの場所で室内の汚染が屋外の汚染よりもひどく,しばしば健康により大きな害をもたらす理由の一つは喫煙にあります。

      食習慣もやはり一つの要素となります。米国のロンスデールおよびシャンバーガー両博士は,人格のただならぬ変化を示した,異常なほど過敏な若者たちを数多く治療したことを報告しました。“栄養価の低いスナック食品”を常食にしていたため,ビタミンB1(チアミン)欠乏症になっていたのです。チアミンを補給し,食べる物を変えたところ,その症状は消え去りました。

      ですから,公害で病気になっているか,それについてあなたには何ができるかという質問に対する答えには,様々な要素が関係しているのです。

      [脚注]

      a 「目ざめよ!」誌,1981年2月22日号の「氷山の一角にすぎない」という記事をご覧ください。

      [5ページの図版]

      自分の職場が公害の源であるということもある

      [6ページの図版]

      これらすべての物から生じる鉛公害はお子さんの健康を脅かしかねない

      [7ページの図版]

      自分の生活様式が公害をさらに悪化させることもある

  • あなたには何ができますか
    目ざめよ! 1983 | 9月8日
    • あなたには何ができますか

      『貯水溝の水を飲まないこと。肝臓ガンを引き起こす可能性のある化学物質で汚染されているため』。チードン郡(中国)に住む人々はこのように勧告されました。この溝の水を飲んで調査を受けた6万7,000人のうち,107人が肝臓ガンになったのに対して,井戸水を飲んでいた人6,000人の中には肝臓ガンになった人は一人もいませんでした。少なからぬ人がこの警告に留意しました。5年後,既に井戸水を飲むようになっていた人2万3,000人を調査したところ,肝臓ガンの症例は1件しかありませんでした。溝の水を依然として使用していた人4万7,000人の間では,216件の症例が見られたのです。

      環境が原因で引き起こされる病気すべてがこれほど容易に避けられるわけではありません。しかし,自分の健康を守るための措置を講ずることはできます。聖書はこう述べています。「分別のある人は難儀が来るのを見てそれを避けるが,考えのない者はそれに向かって進んで行って,のちに後悔する」― 箴言 22:3,今日の英語聖書。

      『環境に問題があるのだと,どうして分かるだろうか』と思われるかもしれません。症状は大抵徐々に現われるので,その点を見定めるのは容易なことではないかもしれません。しかし,休暇を取って比較的公害の少ない地方へ行くととても良い気分になり,家に戻ると再び具合が悪くなるようであれば,その病気は環境に何らかの原因があるのかもしれません。その手がかりとして,一番気分が悪くなるのはどんな時かを思い起こしてみるようにします。通勤の途中でしょうか。職場や台所や庭などにいる時でしょうか。それとも洗剤のようなものを使用している時でしょうか。

      しかし,解決されない重大な健康上の問題があれば,資格のある医師に診てもらうのは得策でしょう。環境とは関係のない身体的な病気ということもあるからです。もちろん,どの医師に診てもらうかを決めるに当たって識別力を働かせなければなりません。中には,悪気はないにしても,汚染物質の強い影響力を認めようとしない医師もいるからです。ピーター・ブレイエッシーはJAMA(アメリカ医師会ジャーナル)の1981年1月16日号(英文)の中でこう述べました。「そのような環境問題を医師が認めるのは重要なことである。インタビューを受けた大人の中には,医師の治療を受けても症状が軽減しなかったと言う人が少なくなかった。中には4年以上治療を受けていた人もいた」。

      環境医学

      ミリー(3ページをご覧ください)はほとんど何に対しても敏感でした。掛かりつけの医師の協力で,ミリーはそのような障害を専門にしている米国テキサス州ダラスにあるブルックヘブン医学センターに入院しました。そして,環境制御病棟に数週間入っていました。そこは,環境汚染物質や合成素材をすべて排除した,特別設計の幾つかの部屋からなっています。検査の結果,ミリーがどんな物に敏感かがはっきりしました。短い断食の期間の後に,ミリーは注射や運動やビタミン補給剤などを使って自分の免疫機構を強化する難しい計画に入りました。体が自らを強めるまでは,ある種の汚染物質や食品を絶対に避けなければなりませんでした。やがてミリーは抵抗力を増し,今では以前よりも正常な生活を送っています。

      ミリーの受けた助けは,臨床生態学と呼ばれる医学の専門分野から差し伸べられたものですが,この専門分野は論議の的になりながらも,開拓されつつあります。ミリーの事例は極端なもので,入院に数千ドルの費用がかかりました。それほどひどくない患者は大抵医師の診療室で治療されます。ランドルフ博士は「目ざめよ!」誌のインタビューの中で,自分の取り組み方を次のように定義しました。「これは本質的に言って環境医学です。私たちは全体論的な見方をします。つまり,体全体およびそれが環境に反応する仕方を見るわけです。病気の結果よりも,その原因を治療するよう努めます」。しかし,同博士の著書である「アレルギーに対する別の取り組み方」(1980年)の中で,共著者のモス博士は,「これで,頭痛や抑うつ状態,関節炎,慢性疲労などのあらゆる症例が治るわけではない」ということを認めています。ほかの取り組み方としては,従来のアレルギー専門医や臨床毒物学者の取り組み方があります。「目ざめよ!」誌はこれらの治療法のいずれをも支持しているわけではなく,単にそうした治療法について報告しているにすぎません。では,自分の環境を改善するためにどんなことができるでしょうか。

      家庭環境を改善する

      人は自分の生活の7割を家庭で過ごすこともあるので,屋外の公害よりも,汚染された屋内の空気のほうが危ない,という場合が少なくありません。これは,家庭用洗剤やエアゾール式のスプレー,室内防臭剤,殺虫剤などを使ってはならないという意味でしょうか。適度に使っても自分自身や家族の成員が反応するのなら別ですが,必ずしも使ってはならないとは言えません。普通,自分の家の空気を毎日入れ替えるだけで十分です。特に汚染物質がたまる冬の間はそうすることが必要です。

      排気用のファンを回さずにガス・オーブンを使うと1時間以内に都会のスモッグの3倍も空気が汚れることがあるので,ガスコンロの換気が十分になされているよう注意します。調理および暖房用にガスではなく電気製品を使わなければならなくなった人もいます。

      ペンキや溶剤,ペンキ除去剤などを使う時には,必ずその場所の換気が十分に行なわれるようにします。指示書を注意深く読み,それに従ってください! 古いペンキやしっくい,接合用コンパウンドをサンドペーパーで落としたり,石綿セメントをこねたりする時には,毒性を秘めている粒子を吸いこまないようきちんとしたマスクを使うようにします。しっくいのコンパウンドやパイプと暖炉の断熱に用いるセメントの中にも,石綿を含まない物が多くあるので,そうした商品のほうがよいと思われるかもしれません。

      古いペンキのはがれたものや家のほこりで汚れた手などを口の中に入れないよう子供たちに注意を与えます。また,自動車の交通量の多い所では遊ばせないようにします。鉛ではんだづけをした缶に入った食品や飲み物を使う場合には,一度開けたら,中身を缶の中に入れて貯蔵することがないようにします。

      飲料水が汚染されているという疑いがあれば,地方自治体の当局者に検査してもらえるでしょう。汚染されていないびん詰めの水を使ったり,(定期的に交換すれば)化学物質を除くよう作られたフィルターを使ったりすることも解決策になるでしょう。

      職場の環境

      アンガー博士は次のように述べています。「自分がどんな物を使って仕事をしているかを調べ,それにさらされている結果としてどんなことが起きているか自問してみるべきだと思います。しかし,あわてふためくことはありません。健康上の問題があったり,人格の変化に気づいたり,週末になると気分がずっとよくなるように思えたりするなら,ほかの従業員にも尋ねてみて,同じような影響を受けているかどうか調べます。それから,潜在的な危険のある物質に過度にさらされていることがないかどうかを調べるよう,会社か政府に申請できます」。時には危険な物質が思いもよらないような職場にあることがあります。例えば,ブレーキのライニングには石綿が含まれています。ですから,自動車修理工は注意しなければなりません。

      信頼の置ける会社の備える保護用の器具を活用し,常識を働かせるようにします。一人の労働者が口ひげに殺虫剤をつけたまま食堂でサンドイッチを食べていたことがありました。ですから,物を食べる前には手や顔を洗うことです。家族を守るためには,帰宅前に服を着替えることが時には必要かもしれません。

      ある種の殺虫剤を濃縮した物が戦争中神経ガスとして用いられていたのをご存じでしたか。ですから,殺虫剤を噴霧した畑の近くでは,露天の水場で水を飲んだり顔や手を洗ったりするのは危険です。皮膚から殺虫剤を吸収しかねません。殺虫剤が詰められていた金属製の缶やビニールの袋は決して再利用してはなりません。殺虫剤を噴霧したら,定められた期間がたつまで畑に行ってはなりません。子供たちは特に殺虫剤中毒になりがちなので,子供たちが何を使って仕事をしたり遊んだりするかを注意深く見守るようにします。

      栄養と生活様式

      チリのある州の飲料水には幾年もの間高濃度のヒ素が含まれていました。この有毒物質によって病気になった人と死亡した5人の子供について調査が行なわれ,研究者たちは次のような結論を出しました。「これらの乳児や子供たちの栄養状態が低かったことがヒ素の慢性毒の効果を著しく助長した可能性が高い」。(下線は本誌。)栄養不足は毒物の影響を悪化させることがあります。ですから,栄養価の高い,バランスの取れた食事をするよう努めましょう。個々の人の経済的な状況のために,それが困難になることがあるかもしれません。しかし,豆類や葉菜や果物など簡素な食べ物は,大抵ビタミンやミネラルを豊富に含んでいます。

      「栄養と環境衛生」という本によると,研究室での実験は,ビタミンCがクロムの毒や数々の有毒な化合物および発ガン性のある化合物から体を守るものとなるかもしれないことを示しているということです。また,ビタミンAは,ある種の殺虫剤が体に蓄積する危険を少なくし,ビタミンB類は鉛および30種以上の有毒な化合物の濃度を低下させ得るということです。このような研究はまだすべての人から決定的なものとはみなされていないので,きちんとした医学的な指導を受けずに,単にビタミンを大量に飲むだけでは有害な結果を招くことがあります。

      たばこの煙は慢性気管支炎を引き起こすことがあり,気腫を悪化させ,肺ガンを引き起こしかねません。これは聖書が助言しているように,「肉と霊のあらゆる汚れ[汚染,王国行間逐語訳]から自分を清め」る一層の理由になるはずです。そうです,喫煙をやめるのです!―コリント第二 7:1。

      自分の内的な感情や考え方,自分の「霊」にどんなものを入れるかということも影響を及ぼします。「人の霊は病苦に耐えることができるが,打ちひしがれた霊については,だれがこれを忍ぶことができようか」。(箴言 18:14)『どこから来たか分からないなぞのガス』にさらされた一群の労働者たちは,めまいや吐き気を訴え,中には失神した人もいました。ところが,ある調査が明らかにしたところによると,症状が一番重かった人々はそもそも仕事に大変不満を抱いていた人々だったのです。といっても,有害な反応が,すべて「うちひしがれた霊」のせいであるというわけではありませんが,化学物質にさらされること以外の要素も一役買っている場合のあることがこの例から分かります。

      このように,自分の環境の質を改善するためにわたしたちにできることはたくさんあります。では,恒久的な解決策についてどんな希望があるでしょうか。

      [9ページの図版]

      缶を開けたらその中に食べ物を入れておいてはなりません!

  • 完全な解決策が得られるというどんな希望がありますか
    目ざめよ! 1983 | 9月8日
    • 完全な解決策が得られるというどんな希望がありますか

      ジョイスとその夫は金属の製錬会社から6㌔離れた所で3人の子供を育てました。一人の子供は学習困難症で,もう一人はリューマチ熱にかかっています。ジョイスはぜん息で,工場から出る煙のために外へ出られない日が少なくありません。

      「ここにずっと住んでいたのが間違いだったのかしら」とジョイスは疑問を投げかけました。ご主人のルーはこう言葉を加えました。「私たちはアイダホ州の北中部に農場を持っています。……そこでは[化学殺虫剤を]噴霧する飛行機が絶え間なく飛び回っています。それではほかにどこがあるというのでしょうか。ロサンゼルスですか。ラブ運河ですか。スリーマイル島ですか。一体どこへ行ったらいいんだろうか,と少し思い悩んでしまいます」。

      その通りです。公害の影響を免れるためにどこへ行ったらよいのでしょうか。そうするには,道徳的な汚染に関して述べた使徒パウロの言葉を借りて言うと,「実際には世から出なければならないことになります」。(コリント第一 5:10)ですから,問題を軽減するために多少打つ手はあるとしても,生活上の他のストレスと同じく,公害にも耐えなければならないかもしれません。

      内面的な力の必要性

      使徒パウロは,「外面の人は確かに消耗しますが,内面の人は日ごとに新鮮な力を受ける」と書きました。(コリント第二 4:16,フィリップス訳)体の「消耗」を避けることはできません。たとえ公害がなくても,わたしたちすべては年を取って死んでゆきます。しかしパウロは,日ごとに神との緊密な友好関係を培うことにより,「新鮮な力」で思いと心にかかわる内的な推進力を新たなものにしました。将来に対する神の約束に自分の注意を集中することにより,問題に対処することができたのです。

      ミリーの受けた圧力は異なった性質のものでしたが,彼女にとっては同じほど厳しいものでした。(3ページをご覧ください。)ミリーは,「余りの痛みと混乱で,忍耐することが1分ごとの闘いであったこともありました」と語っています。その問題に対処するためにどんなことが役立ったのでしょうか。

      ミリーはこう説明しています。「私は聖書と聖書研究の手引き書を読むことを決して欠かしたことがありません。インクのにおいのためにそれらの書物を保護用のガラス読書箱に入れなければなりませんでした。ほとんど注意を集中できない時もありました。しかし,こう懇願したものです。『エホバ,お願いです,今日一日を何とか切り抜け,あきらめないでいられるように,助けとなる事柄をあなたのみ言葉から示してください』。エホバはいつも私の祈りに答えてくださり,このすべてを切り抜けさせてくださいました」。エホバの証人の愛ある助けを受けながら聖書を研究し,それを当てはめることにより,あなたも同様の内的な力を引き出すことができます。

      別の力の源は,ミリーの家族と地元のエホバの証人の会衆の他の人々から差し伸べられた,励みとなる支えでした。彼女が出席できない時には聖書の講演を録音し,中にはミリーが敏感な反応を示さないような材料で彼女のために衣服を作ってくれる人もいました。ミリーの住む,公害の全くない“金属製家屋”を別の場所に移さなければならなくなった時,幾つかの会衆から大勢の人々が手伝いにやって来ました。

      『しかし,聖書に従った生活をしても,この世が変わるわけではない! そうしたところで,ほかの人が汚染を引き起こすのをやめさせることにはならない』というふうに考える人は少なくありません。今,人間の作り出した公害に完全に終止符を打つということは,信じ難いほど複雑なことです。例えば,「英国で一番多く煙を出し,一番きたない」工場は,伝えられるところによると4,000人近くの人々に職を提供していて,それを閉鎖するとその地方の雇用状況が悪くなるため,公害を出し続けることが政府によって許されたと言われています。

      貪欲と利潤の必要性,および大抵の場合一番安い製品とか見てくれの良い果物や野菜しか買わない消費者とを特徴とする今日の経済体制のために,公害を出さないような代用物を採り入れるのが困難になっています。危険な殺虫剤が環境に浸透するのを政府が許したいきさつを詳しく調査した後,ルイス・リージェンスタインは自著「毒されたアメリカ」の中で,「産業経営者の圧力と政府の無策の複合」に責任があるとしました。リージェンスタインは,『現在の体制の絶望的な無力さ』を際立たせました。確かに,この体制全体が別のものによって取って代わられねばなりません。

      神の王国 ― 義の政府

      王イエス・キリストのもとにある義の政府のために,神は現在のこの貪欲な体制全体を除き去ることを約束しておられます。その王イエス・キリストは,自分の臣民すべてに対して純粋の関心を示されます。「彼らの血はその[イエスの]目に貴重なものとなります。地には穀物が豊かに実り,山々の頂であふれんばかりに実ります」。(詩編 72:14,16)生態学にかかわるすべての事柄について完全な知識を備えているので,キリストによる神の政府は地球の住民を中毒させることなく,すべての人に豊かな備えをします。

      『でも,既に有毒な化学物質で満ち満ちているような所はどうなるのだろうか』と思われるかもしれません。過去において神は,水を浄化し,汚染された食物から毒を除くご自分の力を示されました。(列王第二 2:19-22; 4:38-41をご覧ください。)将来,神はそのような力を,地球に備わっている回復の過程と共に用いて,汚染されていない美しい楽園を作り出されます。―ルカ 23:43。

      人間が現在,わたしたちの地球を歴史上ほかのどの時期にも知られていなかったような仕方で「破滅させている」ことを示す圧倒的な証拠があるのですから,神の王国が「地を破滅させている者たちを破滅に至らせる」時は間近に迫っているのです。―啓示 11:18。

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