-
なぜこのような状態になったのか目ざめよ! 1971 | 10月8日
-
-
(1930年),アメリカ・ペンシルベニア州のドノラ(1948年)そしてロンドン(1952年)などの場所では,空気や霧がある期間よどんだために,これらのガスは大きな害を及ぼしました。ドノラではスモッグが発生してから3日目までに5,910人,つまり町の人口のほとんど半分が病気になりました。ロンドンでは霧のひどかったその週とその翌週との間に,死者が4,000名を越えました。今日,世界中の主要都市で,多くの住民は目がチカチカしたり,肺が刺激されるのを経験しており,気腫,気管支炎,肺ガンにかかる人もふえています。そうした住民は急には死なないかもしれませんが,寿命はたしかに縮められているのです。
以上の事柄すべてに加えて,科学技術が他の二つの分野,すなわち農業と戦争の分野にも足を踏み入れたことを考え合わせねばなりません。人力の減少に直面した農場は機械化され,化学肥料や殺虫剤を使うようになりました。そのために収穫は増加しましたが,汚染も同様にひどくなりました。戦争用の機具や装置の科学的発達,とくに核爆弾の発達は,放射性汚染物という新しい危険を生み出しました。第二次大戦の終結から1963年までに400回の核爆発テストが行なわれました。1963年の核実験停止条約以来,さらに300回ほどの地下実験が行なわれました。今日では,東南アジアの広範囲にわたる地域が枯葉剤で荒らされています。
人口増加は汚染を悪化させる
世界人口は何千年もかかって1850年に10億人に達しました。1930年までには20億になり,今日では36億を下らず,向こう30年間にはこの倍になることが推測されています。この人口の増加はおもに都市で見られました。1740年の英国の総人口は600万を少し上回るにすぎませんでした。今日ではロンドン市だけでもそれ以上の人が住んでいます。
この「人口爆発」は,絶えまない生産量の増大と,より大規模な経営を要求することにおいて産業革命を助けました。人がふえたので ― 産業・家庭・輸送における ― 電力の需要は増大しました。拡大をつづける都市は周囲の農地を蚕食しました。新しく境界となった土地は,多くの場合,汚染によって荒らされるか,またはやせ衰えるまで耕作されていためつけられました。食物はしだいに遠くからトラックで輸送しなければならなくなりました。
人々が荒廃の町からのがれるようになって郊外が開けました。しかしついにはここでも,乗用車を私有する人が増加し,汚染が促進されることになりました。かつては緑の田園であったところに,幅と長さを拡大し続けるアスファルトやコンクリートの道路から成る広大な道路網が発達しました。「アメリカだけでも,酸素を放出する樹木のはえた土地40万4,000ヘクタールが毎年舗装される」と「タイム」誌は述べています。ブラジルのサンパウロでは今日,一人当たり半平方ヤードの緑地しかありません。空の旅が盛んになるにしたがって空港も広い土地を窒息させることに加わり,それと同時に大気もひどく汚すようになりました。
一時,工業都市の中の特定の環境状態の改善に成功が収められたことは事実です。1843年から44年にかけての英国のマンチェスターのような都市は,今日では存在しません。当時,マンチェスターのある区域には,212人になんとひとつのトイレしかないありさまでした。しかし今日のわたしたちは,スラム街として知られている特定の区域だけでなく,地球全体 ― 土地,水,空気 ― がよごされていく状態を見ています。
「消費社会」の発達
大企業は常にその製品のための市場を必要とします。産業革命の初期においては,しばしばデフレーションが生じました。新しい量産機械のために,供給がたびたび需要を追い越したからです。大工場は,個人で生産を行ない,二つか三つの職を身につけていて時には農業をも営んだ昔の職人とは違って,柔軟性がなく,しかもその時の需要に応じて調節するということができませんでした。
「人口爆発」はこの問題を部分的に相殺したにすぎません。それは,産業の絶えまない「成長」への野望を満足させるには不十分でした。そこで製造業者は需要を刺激し育成することを考えました。宣伝,周期的な新型の生産,ちょっとした改善を加えて古いモデルをつまらなく思わせることなどは買い気をそそりました。目標は人々の必要とする物の供給ではなく,欲するようにさせるものを提供することでした。品物はしばしば長持ちしないように作られ,そうすることによって,需要の持続が図られました。この「計画的な廃用促進」のために,安いことは多くの場合質や持ちよりも重要視されました。
こうしたことすべては,よく言われる「使い捨て」社会,つまり品物をしばらく使って,捨ててしまう社会を生み出しました。この浪費をやめることは,多くの国の経済に大きな影響を及ぼすと考えられます。
ですから,問題はきわめて複雑で根深いことがおわかりでしょう。それは徐々に生じ,幾世代もの間に蓄積されたものです。しかしながら,根本原因はただ一つなのです。それは何でしょうか。
-
-
根本原因を明らかにする目ざめよ! 1971 | 10月8日
-
-
根本原因を明らかにする
大量浪費と大量汚染は依然今日まで続いています。しかし根本原因はなんでしょうか。
人間の発明の才でしょうか。人間はその歴史をとおして物を発明してきましたから,発明の才そのものではありません。事実,聖書の創世記は,ユバルのような,世界的な洪水以前の人間について述べています。ユバルは「琴と笛とをとるすべての者の先祖」で,トバルカインは「銅と鉄の諸の刃物を鍛ふ者」でした。(創世 4:21,22)問題を起こすのは人間の発明の能力ではなく,その能力の誤用です。
同様に,問題は産業だけにあるのでもありません。産業にもあらゆる規模のものがあります。害をもたらしたのは産業の集中であり方法です。しかし
-