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  • 人種間に見られる著しい相違
    目ざめよ! 1978 | 1月8日
    • [黒人の]それ以上の進歩は抑えられてしまうようだ」。1882年のチェンバー百科事典は大英百科事典と同じ説をとっていないものの,「黒人は高等な猿と人類をつなぐ環を成す」という見方について述べています。

      今日でも,ある人々は黒人を個人として劣った者と見ています。その見方は消滅していません。ある人は自分が育った土地で一般にされていた見方についてこう書きました。「わたしが育った南部の田舎町では,黒人は神にのろわれており,そのために黒いのだと言われていました。……事実,黒人は結局のところ人間ではなくて動物界の一部であると言われていました」。

      今日,科学者の中にさえ,黒人は生物学的に白人に劣ると考えている人がいます。1974年,著名な教育者たちの賛同を得て権威ある書物の体裁を整えた大部の著作が,この見方を支持する論議をしていました。1974年4月6日付ガーディアン紙は著者ジョン・R・ベーカーについて次のように述べています。「文体によってかもし出される非常にいとわしいふんい気の中で受け取ると,『黒人種』をあまり知らない読者であれば,黒人が人間以下であるような印象を受けるに違いない引用と言及をデータに見せかけて随所に巧みに用いている。(例えば,『ロングによれば,黒人は「動物的あるいは臭いにおい」で区別される』)」。

      それで人種間の相違についてはどうですか。実際にそれはどれほど大きいものですか。

  • 人種的優越性なるものについて
    目ざめよ! 1978 | 1月8日
    • 人種的優越性なるものについて

      あなたは人種をどのように見ていますか。もっとはっきり言えば,白人を生まれつき黒人に勝るものと考えていますか。口でどのように答えるかは別として,あなたの態度と行動は何を示していますか。

      人はよく自分は人種的偏見を持っていないと言います。それでも民族的優越感を抱く人々の見方が長い間まかり通ってきたというのが実情です。それで黒人が生来,白人に劣っていて,永久に低い地位に甘んずるように定められているという考え方は,多くの人の間に根強く残っています。

      このような考え方はどこに端を発しているのでしょうか。またこれほど根強いのはなぜですか。

      宗教の役割

      白人を生まれつき勝った者とする現代の考え方は,アフリカの黒人を征服して奴隷にしたことに端を発しています。奴隷貿易には正当化が必要でした。それに従事した人々が自称クリスチャンであったため特にそう言えます。フランスの法学者また政治哲学者であったシャルル・デ・セコンダ・モンテスキューは,奴隷売買者の理屈をこう説明しています。「奴隷たちを人間と考えることは我々にとって不可能である。彼らが人間ということになれば,我々自身クリスチャンであるという事が当然疑われてくるからだ」。

      米国の自称クリスチャンも奴隷制度を正当化することが必要でした。南部の綿花栽培者の経済が黒人奴隷を所有することに依存していたからです。それで米国の一歴史家は次のように述べています。

      「南部諸州はこの慣行を聖書的に裏書きするために聖書をくまなく調べた。……奴隷制度は聖書の中で是認され,事実,命ぜられてさえいる,そして神によって定められた,また特に黒人を益する制度であるというのが,南部諸州のおきまりの論議であった」― クレメント・ウッド著「米国史大全」,217,337ページ。

      教会は率先して奴隷制度を正当化しました。黒人はのろわれた人種であり,そのために皮膚が黒いのであると教えられました。1844年にメソジスト教徒は奴隷制度をめぐって南北に分裂しました。バプテスト派は1845年そして同じ頃に長老派教会も政治的なメーソンディクソン線に沿って分裂しています。1902年に至ってさえ「“黒人は獣”かそれとも“神の像”か」という広く読まれた本が,セントルイスの一聖書館から出版されています。この本は「黒人が人類に属するものでない事を示す聖書および科学上の決定的な証拠」と題する章を含んでいます。

      それで教会の是認の下に,黒人は生まれつき白人に劣るものと見られてきました。大英百科事典は次のように嘆いています。「米国でクリスチャンの手により奴隷とされたのはアフリカ人にとって不幸な事であった。これら米国人は奴隷所有者の慣行を自分たちの信条と調和させることができないため,黒人の概念を鋳直して黒人を財産とみなすようになった。権利と自由を持つ人間とは見なかったのである」― 1971年版第16巻,200ページD。

      しかしこのような見方を擁護したのは教会だけではありません。この点では哲学者も科学者も同様でした。

      他の人々も白人の優越を擁護する

      1830年代に米国南部の哲学者たちは,人間が生来,不平等であるとの原理を確立しました。これは当時すでに南部のたいていの人が受け入れていた考えです。そして当時の米国で一流の自然人類学者ジョサイア・C・ノットは,この考えを生物学的に裏づけることを試みました。さまざまの人種は別々に進化したのであって,黒人はいっそうサルに近いという見方を一部の人々はするようになりました。証拠とされるある特徴を挙げて大英百科事典は次のような見解を述べています。「黒人は白人よりも低い進化の段階に位置しており,最も高等な類人猿にいっそう近いものと思われる」― 1911年版第19巻,344ページ。

      同様な考え方をしている人は,米国自然人類学協会の元会長チャールトン・S・クーン教授を含め,今日でもいます。同教授の主張によれば,人間の五つの人種は互いに交流することなく「別々にホモサピエンスに進化した。すなわち進化は一回ではなくて5回である」とされています。全米テレビ放送において一スポークスマンは,クーン教授が証拠を提出しており,黒人種は進化の段階において白人種よりも20万年おくれているとの立場をとっている」と公言しました。

      黒人に対してこのような考えが長い間抱かれてきたことを知る時,初期米国人が「万人は平等に創造されている」と言いながら,人間を劣等視する奴隷制度を是認していた訳を理解できます。ポール・B・ホートン,ジラルド・R・レズリー共著「社会問題の社会学」第3版は次のように説明しています。

      「『万人は平等に創造されている』との格言は黒人には適用されなかった。彼らは“財産”であって人間ではなかったからである。黒人を劣等者として扱うことを正当化するため,聖書に記されたハム族ののろい,不完全あるいは別個の進化,地理的決定論,知能テストの証拠などの論理が次々と提出された。このような考えが信じられている限り ― そしてたいていの人はそれを信じきっていた ― 差別を行なう一方で民主主義の理想を唱えることに何の不都合もなかった」。

      黒人は「人間でない」などと主張する人は,今日ではまずいないでしょう。それでも多くの人は,黒人が生来劣った者であると今なお信じています。彼らの高い文盲率と犯罪発生率,低い経済的,社会的地位そして特に知能テストの成績の概して低いことが,生物学的に見て黒人の劣る“証拠”であると考えられています。しかしこの証拠は生物学的に劣ることを本当に証明するものですか。白人と比べた場合,黒人が概して白人に及ばないのは,環境の面で何か理由がありますか。

      米国の黒人の起源

      アメリカ黒人のアフリカにおける先祖は文化あるいは文明を持たない野蛮人であったと考えている人が米国には多くいます。彼らは知性に乏しく,子供のようで,込み入った事柄を成し遂げたり,あるいは進んだ文明を発達させる能力に欠けていると考えられています。しかしワールドブック百科事典の説明によると,事実はそうではありません。

      「何百年も前にアフリカ各地には,高度に発達した黒人の王国が存在していた。……黒人の王や貴族の中には,富と栄誉をほしいままにした人々もいた。彼らの首都は時として文化と交易の中心地になった。1200年から1600年の間に西アフリカのチンブクツには黒人とアラビア人の大学が栄え,スペイン,北アフリカ,中東にその名を高くしていた」― 1973年版第14巻,106,107ページ。

      アフリカの文化がヨーロッパのものとかなり異なるのは事実です。しかし異なるという点では東洋の文化も同じです。また不幸なことにある人々は異なる事と劣る事とを同一視しています。しかしそれと同時にアフリカ人の生活と文化が最近の世紀において抑えられたことも否定できません。進歩の停止,一種の退歩が見られました。しかしなぜですか。

      その理由は主として奴隷売買のためです。これについてアメリカ百科事典に次の記述がありました。「それは黒人の文化と産業の組織を破壊し,芸術の進歩を阻止し,政府を覆し,1600年以来の暗黒大陸を特色づけた,現代における文化の停滞を招いた」― 1927年版第20巻,47ページ。

      奴隷売買の規模と,それがアフリカの社会に及ぼした衝撃は想像を絶するものです。1976年版新大英百科事典によれば,「船に乗せられて大西洋を渡った奴隷の人数は3,000万人から1億人に上るものと推定され」ています。もっと内輪の推定ではその数を「約1,500万人」としています。しかしこの少ないほうの人数でさえも驚くべきものです。死亡した人の数を考慮に入れるならば特にそう言えます。

      アフリカ人を捕えることは白人が直接に行なった場合と,戦争や狩込みによって黒人が同胞を捕え,これを白人の奴隷商人に売った場合と両方あることを認めねばなりません。最初の責任がだれにあったにせよ,捕えられた者たちは海岸へと行進させられ,船積み地点に抑留されました。それから二人ずつ鎖でつながれ,船倉に詰め込まれたのです。そこはやっと横になれるだけの広さしかなく,光も新鮮な空気もないまま彼らは,大西洋を渡る50日間の航海の大部分をそこで過ごしました。捕えられた者たちの約三分の一は船に乗せられるところまで行かないうちに死亡したものと推定されています。そしてもう三分の一が航海中に死亡しました。

      鉱山や大農園で働く奴隷が西インド諸島と南アメリカに初めて連れて来られたのは,1500年代の初めでした。1619年にはオランダの奴隷船が北アメリカに初めて黒人をもたらしました。しかし彼らは奴隷としてではなく契約労働者として連れて来られたのです。しかし1600年代の後の時期に奴隷制度は確立され,やがて米国に約400万人の黒人奴隷を数えるまでになりました。

      奴隷制度が彼らに被らせたもの

      アフリカ人は西インド諸島にまず連れて行かれるのが普通でした。そこで彼らは“慣らされ”,奴隷として仕込まれてからアメリカに船で送られたのです。集団的な反抗を防ぐため,同じ部族の出身者を別々にする方策か採られました。家族でさえも引き離され,売買人や新しい主人によって新しい名前が奴隷に与えられました。黒人を卑屈にさせ,従順にならせることが目的とされました。そうする過程において彼らの人格はゆがめられ,知性は抑圧され,そして反抗の空しいことを悟った時に,多くの場合,黒人は自分たちが劣等者であるかのように振舞い始めたのです。

      黒人を完全に服従させ,またそれを確実にするために奴隷抑制法が制定されました。アメリカ百科事典に次の事が出ています。

      「奴隷は,財産を所有すること,火器を所持すること,商業に従事すること,主人の許しを得ずに農園を離れること,他の黒人に不利な証言をする以外に法廷で証言すること,契約を結ぶこと,読み書きを習うこと,あるいは白人の同席なしに集会を開くことができなかった。……白人が奴隷または解放された黒人を殺しても,あるいは強姦しても,それは重大な犯罪とはみなされなかった」― 1959年版第20巻,67ページ。

      奴隷所有の行なわれていた州の大多数において,黒人に読み書きを教えると,罰金,むち打ち,投獄のいずれかの刑を課せられたのです。

      1808年に米国では奴隷売買が禁止されました。しかし法律を無視して売買は続けられました。奴隷の需要はそれまで以上に大きかったからです。これは遂に邪道の極み ― 売るために奴隷を生産するという結果になりました。アメリカ百科事典は次のように説明しています。

      「もうけの多い大規模な国内奴隷売買が発達した。それには奴隷制度の最も残酷かつ冷酷な一面が伴っていた。古くからの州では,さらに南の州で売るために奴隷を繁殖させたこと,家族の者を別々に売って家族のきずなを絶えず引き裂いたことなどがそれである」― 1959年版第20巻,67ページ。

      黒人は「人間ではない」という考え方のため,遂には家畜と同様,彼らを繁殖させて売ることまで行なわれるに至ったのです。次いで1865年に米国の奴隷制度は突然に廃止されました。それでも従来からの態度は根強く残り,差別のための法律や他の手段によって黒人は“彼らの立場”― 白人への隷属という地位 ― に置かれたままでした。

      絞首刑という私的制裁は支配のための重要な手段のひとつでした。1890年から1900年までの間に年平均166件のリンチが行なわれました。またアメリカ百科事典に次の記述が見えます。「白人男子が黒人の女を性的に利用することは,ひきつづき大目に見られた。黒人は警察の手で,また多くの場合,法廷においてもはなはだしく不公平で差別のある扱いをされた」― 1959年版第20巻,70ページ。

      これは古代史の話ですか。そうではありません。今生きている黒人で祖父母が奴隷であった人は大ぜいいます。そして今生きている人は,かつて奴隷であった人の口から当時の生活がどんなであったかを聞いているのです。1950年代に入ってもなお米国のマスコミは黒人を劣等者として描き,白人の従者という彼らの役割を動かし難いもののように扱っていました。

      しかし一般に黒人は雑誌にしてもテレビ,新聞にしても犯罪の場面以外には登場しませんでした。彼らは,二流の学校教育に甘んじ,ある種類の職業から閉め出され,白人ならば受けられる多くの恩典を与えられずに,至るところで差別されました。事実上どこにおいても機会のとびらは彼らに閉ざされ,境遇を改善する望みは多くの黒人から全く奪われていたのです。

      これらの実情に照らしてみる時,学業その他における黒人の成績が平均して白人と同じ程度に良いことを実際に期待できるでしょうか。ある一定の水準に達しないからといって,彼らを劣った民族であると考えるのは公正なことですか。彼らにも機会の開かれる時,何が見られますか。

      機会と動機づけ

      1947年以前の米国で野球の大リーグは黒人に門戸を閉ざしていました。その年,人種問題の緊張が高まるにつれて一人の黒人がプレーを許されました。ほどなくして黒人たちが野球界に頭角を表わし始め,1971年,ピッツバーグ・パイレイツが世界チャンピオンとなった年,守備についたこのチームの選手9人の全員が黒人であった試合もあります。他のスポーツにおいても同様な事態が見られ,今年のニューヨーク・タイムズ紙にも,「プロのバスケットボールは事実上,黒人の試合である」と書かれているほどです。

      これは何を意味するものですか。生物学的に見て黒人は身体面で白人に勝るという事ですか。それとも機会が開かれ,教育を授けられ,動機づけの与えられる時,黒人もひけをとらないという事ですか。明らかに後者のほうです。野球選手,音楽家,科学者,大学教授などの才能を生まれつき持っている人種がある訳ではありません。これらは学んで身につけるものです。

      生来,愚鈍な人種もあれば,侵略的で好戦的な人種もあり,さらには温和で卑屈な人種もあるなどと言って人種を型にはめるのは間違っています。人種それぞれにあるがままの姿は,特に彼らが受ける教育と訓練および動機づけに由来するものです。例えば,温和で屈従的なのが中国人生来の特性であると一般に考えられていました。しかし過去数十年間にわたり共産主義の下で異なる教育と動機づけを授けられた今日の中国人をそのように見る人はまずいないでしょう。

      とはいえ,生まれつき,生物学的に黒人は白人よりも知力の点で愚鈍であり,知能の劣る人種であるという考えが根強く残っています。はたしてその通りかどうか,確かな証拠がありますか。

      [9ページの図版]

      次ページのさし絵の中にある言葉: 右上,「黒人はいかが 署名者はバージニア州よりルムプキンに着いたばかりで,変化に富んだあらゆる色合いの,総数40名ばかりの,あつらいむきな黒人の一団を引き連れています。同人は針女,女中,作男をとりそろえ,いかなる買い手の注文にも応ずる自信があります。同人はこの地域の,それもほとんど当郡内において200名余の奴隷をすでに売っており,今までのところ顧客の満足を得ているものと自負しております。当市場において常に取り引きしている以上,表示を偽っても彼には何の得にもなりません。したがって売られる奴隷はすべて掛け値なしの優良な者ばかりであることを保証します。連絡は同人の競売室まで。 J・F・モーゼズ 1859年11月14日 ジョージア州ルムプキン」。

      中央,「わたしも人であり兄弟ではないのか」。

      左下,「黒人売りたし 次期公判の火曜日,11月29日に,価値ある八人家族の召使いを競売にかけます。内訳は次のとおりです。黒人の男で優秀な作男一人。17歳になる,飛び切り上等の少年で信頼の置ける下僕一人。上手なコック一人,女中一人,針女一人。残りは12歳未満の子供。彼らを売りに出すのは欠陥があるためでなく,私が北部へ行くことになったためです。また,家具や台所用品,馬屋用具一式なども数多くあります。条件に融通性あり。および,……は競売当日お知らせします。 ジェイコブ,P・J・ターンブル,……1859年10月28日」。

      [クレジット]

      ションブルグ黒人文化研究センター,ニューヨーク公立図書館,アスター,レノックス,ティルデン財団提供

  • 黒人よりも白人のほうが知能程度が高いか
    目ざめよ! 1978 | 1月8日
    • 黒人よりも白人のほうが知能程度が高いか

      その通り,と答える人は少なくありません。白人は,人種として,黒人よりも優れた知能を受け継いできていると言うのです。

      ノーベル物理学賞の受賞者ウイリアム・ショックリーは,それが事実であると強く主張し,こう語っています。「私の研究からすれば,アメリカの黒人に知的および社会的欠陥の見られる主要な原因は……元来人種的な遺伝によるものであるという見解を出さねばならない」。

      カリフォルニア大学バークリー校のアーサー・R・ジェンセン教授は,生物学的に言って,白人のほうが黒人よりも知能の点で優れている,という意見を唱える代表的な人物です。同教授は,「全体的に見て,白人よりも黒人のほうが,知能遺伝子の数は少ないようである」と述べています。

      そのような主張にはどんな根拠がありますか。

      その主張の根拠

      人種の相違は,遺伝と大いに関係があると指摘する人は少なくありません。黒人は,色の黒い皮膚,厚いくちびる,そして縮れ毛を受け継ぎ,白人は全く異なった特徴を受け継ぎました。ですから,一群の人々がそれほど異なった身体的特質を受け継いだのであれば,人種によって異なった度合の知能を受け継ぐのは当然である,と論じる人もいます。しかし,本当にそうなのでしょうか。人種として黒人の受け継ぐ知能は白人のそれよりも劣っていると言われるのはなぜですか。

      それは,主に,知能指数(IQ)検査の結果によります。こうした検査の結果を見ると,黒人の知能指数を白人の知能指数と比べると,平均15ほど低くなります。社会および経済上の地位のほとんど変わらない白人と黒人を検査した場合でさえ,平均すると白人の知能指数のほうが黒人の知能指数よりもはるかに優れています。そのような証拠からジェンセンは,「アメリカの黒人と白人の平均知能指数の相違の二分の一ないし四分の三ほどは,遺伝的な要素による」と結論しています。

      知能検査の結果が進化論に基づく結論と結び付いて,黒人の知能は劣っているという多くの人々の意見を強めてきました。科学者の中には,人種は幾十万年もの間かなりの程度別個に進化してきた,と論ずる人もいます。黒人は白人よりも遅く,ホモサピエンスの類に入る進化論上の戸口を通過したのだ,と言うのです。

      黒人の知能が遺伝的に白人よりも劣っているという主張の主な根拠は今日の知能検査にあるのですから,その検査について調べてみましょう。

      知能と知能検査

      まず最初に,知能とは一体何を意味しているのでしょうか。

      これは意外に難しい質問です。知能と呼ばれるものには,非常に多くの異なった特質の含まれることがあります。人は,名前や日付を容易に覚えられるなど,ある面では“知能的”であっても,数学の問題を解くなど,別の面では“足りない”ところを見せるかもしれません。ですから,何をもって知能と言うか,普遍的に受け入れられる定義はありません。

      では,知能検査はどうですか。その検査によって,知能を測定することができますか。英国のリーズ大学の精神物理学教授パトリック・メレディスはこの点に関して,次のように注解を述べています。「フランス人はピグミー族より頭が良いとされているかもしれない。しかし,ピグミー族が自分たちの自然環境の中で,繊維を用いて橋を作り,首尾よく生活しているのを見ると,知能とは一体何なのかと自問したくなる。知能指数は,一定の情況の下で人がどのように行動するかを示すものではない。知能検査は全く非科学的な概念である」。

      知能検査では知能に含まれる数多くの要素の全容を把握できないということは,一般にも認められています。人々の境遇や背景があまりにも多岐にわたるため,知能の全容を把握できないのです。では,知能検査は何を測定するものなのでしょうか。

      米国南部のある大学の心理学教授アーサー・ウィンビーは,「様々な研究結果から,知能検査は先天的な知力を測定するのではなく,教室や家庭で教え込むことのできる技能を測定するものだ,という結論に到達する」と語っています。

      この点を確証するものとして,知能検査の受け方を教えられると,めざましい結果の得られることが示されました。一調査員の報告によると,ミシシッピ州に住む一人の黒人学生は,そのような検査の受け方について指導を受けたところ,六週間で知能指数を飛躍的に向上させました。

      人は知能指数に基づいて誤った結論を出す場合があり,それが大きな影響を及ぼしかねないことは容易に想像できます。今では大学教授になっている,アメリカの一黒人は次のように書いています。

      「15歳の時,私の知能指数は82だった。……この知能指数に基づいて,指導教師はれんが工になるよう私に勧めた。『手先が器用』だから,というのがその理由であった。……それでも私はフィランダー・スミス大学へ行き,同校を優等で卒業し,州立ウェイン大学で修士号を,そしてセントルイスのワシントン大学で博士号を得た。私と同じほどの能力のあった他の黒人たちはまっ殺されてしまった」。

      しかし,知能検査で白人の知能指数が黒人を平均して15上回るという事実は厳として消えません。それはなぜでしょうか。黒人には生来白人と同じほどの知能があると論ずるなら,どうして黒人の知能指数が白人の知能指数を上回らないのですか。

      情況に照らして問題を検討する

      黒人の平均知能指数が低いことには数多くの要素が関係しています。特にアメリカの黒人は,白人よりも劣った,好ましくない者として扱われた結果,非常に不利な立場に置かれています。米国の前連邦最高裁判所長官アール・ウォーレンは,アトランティック誌の1977年4月号の中で,人種に対する現代の態度を例示しています。

      1950年代の半ばごろ,最高裁判所で学校での人種の分離に関する判決が下されようとしていたとき,米国のアイゼンハワー大統領は,分離法維持に好意的な判決を下すよう影響を及ぼすため,ウォーレンをホワイトハウスの晩さんに招きました。ウォーレンは次のように書いています。「大統領は私に腕を回し,歩きながら南部諸州の差別問題について話し,こう語った。『あの人たち[南部人たち]は別に悪い人たちではない。ただ,自分たちのかわいい娘が学校で大きな黒人の隣りに座らなくてもいいようにしてやりたいと思っているだけなのだ』」。

      この大統領の言葉に表わされているように,白人は一般に,“黒人に身のほどをわきまえさせる”よう努めてきました。それは,白人の享受している様々な益を受けられない,差別された,従属の地位です。奴隷制の時代,およびその後差別が法的に認められていた時代に,そうすることは比較的容易でした。反抗的な黒人は,むち打ちやリンチやその他の方法で処罰されました。その結果,子供のような,屈従的で,物わかりの悪い“サンボ”のような人格が形成されました。白人は一般に,黒人がこうした人格を遺伝的に受け継いできたと考えてきました。しかし,ハーバード大学のトーマス・F・ピティグリュー教授はこう説明しています。

      「アフリカ人に関する人類学的データで,サンボのような型の人格を示すものは何もない。また,[ナチ・ドイツの]強制収容所は,様々な民族に属する白人の囚人にも同様の人格を形成させた。またサンボは単に抽象的な意味での“奴隷制”の所産なのでもない。米国の場合ほど害のなかったラテン・アメリカの[奴隷]制度は,そのような型の人格を生み出さなかったからである」。

      ですから,知能検査の結果は,300年に及ぶ抑圧というこの情況に照らして検討しなければなりません。その期間に,黒人の多くは,自らを守って生き抜くために,屈従的な人格を身に着けていったのです。そして,19世紀の後半までは,米国内の多くの土地で,黒人が読み書きを学ぶのは違法とされていたことを忘れてはなりません。それ以後も,黒人は全体として,白人と同等の教育を受ける機会に恵まれませんでした。

      環境の影響

      就学前の家庭教育の質も,知力の形成に直接関係しています。米国では,子供たちが学校に上がる前の五歳の時点で,すでに白人と黒人の知能指数の差である15がそのまま出ているのは興味深いことです。中には,これをもって黒人は生まれつき白人より知能が劣っている証拠だと唱える人もいますが,ほかにも要因のあることを示す証拠があります。

      幼年期は,知的成長にとって大切な期間です。シカゴ大学のベンジャミン・ブルーム博士および他の教育者たちの説によれば,子供は5歳になるまでに,その後の13年間に匹敵するほどの知的成長を遂げています。そのような結論に同調するものとして,サイエンス・ニューズ・レター誌はこう論評しています。「幼年期に子供の知能は,学んだり探求したりすることを促す,反応しやすい環境に大いに影響される場合がある」。

      しかし,アメリカの黒人の多くが置かれている家庭環境を考えてみてください。黒人の家族は,白人の家族に比べて多くの場合に,一家が離れ離れになっています。父親は大抵家にいません。勤め口を捜してほかの土地へ行かねばならないのでしょう。多くの黒人家庭では,母親独りで子供を育ててゆかねばならないのです。そのような環境の下で,白人に匹敵するような知力を形成させる,幼年期の教育的訓練が受けられると思いますか。

      さらに,最近の調査の示すところによると,黒人白人を問わず,親が子供たちに個人的な注意を十分に向けてやれない大家族では,子供たちの知能指数が低くなっています。黒人の家族は平均的に見て白人の家族よりも大きいので,それも黒人の知的能力が低いことの一因となっているのかもしれません。

      考慮すべき別の要素は,家庭環境が異なっているという点です。白人と黒人の文化には相当の開きがあります。そして伝統的な知能検査には,白人に有利な文化的偏見が確かにあります。例えば,絵を用いるスタンフォード-ビネー検査では,取り澄ました白人女性と,黒人の容ぼうをした,余り髪の手入れの良くない女性を見せられます。子供が“美しい”ものとして,白人女性を選べば“正解”とされ,黒人を選べば“誤り”とされます。

      忘れてはならない別の事柄は,数多くの黒人の知能指数が,白人全体の平均知能指数をはるかに上回っているという点です。事実,第一次世界大戦中,米国北部のある地方出身の黒人たちは,知能検査で,南部のある地方出身の白人たちよりも高い知能指数を示しました。これは,黒人が生まれつき白人よりも知能が劣っていないことを示しています。アメリカの生物学者テオドシウス・ドブザンスキーは,事実を明らかにする次のような所見を述べています。「平均してみると人種間の相違は,各人種内の個々の人の間の差よりもずっと小さい。言い換えれば,どの人種であれ,脳が大きく,知能指数の高い人は脳の大きさや知能指数の点で,自分の属する人種や他の人種の平均値をもしのいでいる」。

      医師で大学教授でもあるロバート・カンクロの編集した,「知能 ― 遺伝および環境の影響」という本は,黒人の知力が低い一因として,環境面の要素を,かなりの紙面を割いて検討しています。黒人の経験してきた不利な状況すべてを考え,筆者はこう結論しています。「アメリカの黒人の平均知能指数がアメリカの白人の平均にわずか15及ばないだけであるということは本当に驚くべきである。この相違が生物学的に必然的であるとみなす理由は全くない」。

      著名な人類学者アッシュリー・モンターギュは同様の結論に到達しました。彼はこう書いています。「栄養が悪く,健康管理が不十分で,住居の質がひどく,家族の収入が少なく,家庭の崩壊が行き渡り,懲らしめが与えられず,どちらかと言えばゲットーに完全に閉じ込められ,個人としての価値が常に卑しめられ,ほとんど何の見込みもなく,願望はざ折し,その他の様々な環境面の不利な条件を抱えていれば,大抵の場合に遺伝的な要素のせいにされる,知能面での欠陥が必然的に生ずるはずである」。

      モンターギュは結論として,「どんな人種も,いかなる仕方であれ,生物学的あるいは精神的に他の人種よりも優れているとか劣っているとかいうようなことはない」と述べています。

      しかし,人種間の平均知能指数の差は,白人が黒人よりも優れた知能を受け継いだためではないことを示す証拠がありますか。

      証拠から導き出せる結論

      白人が黒人よりも優れた知能を受け継いだことを示す証拠も,そうでないことを示す証拠もありません。しかし,はっきり言えるのは,環境が知的成長に大きな影響を及ぼすということです。例えばイスラエルの恵まれない東洋系ユダヤ人の子供で,キブツと呼ばれる生活共同体に入れられ,集団で育てられた子供は,同じような背景を持って生まれて自分の親たちに育てられた子供より高い知能指数を示しました。また,白人の養家で育てられたアメリカ・インディアンの子供たちは,インディアン保護特別保留地にいる自分の兄弟や姉妹たちよりもかなり高い知能指数を示しました。しかし,黒人に関しても同じことが言えるでしょうか。

      白人家庭で育てられた黒人の子供たちに関する最近の調査は,黒人の場合も同様であることを明らかにしています。幼いうちに黒人の子供を養子にして自宅で育てた,百余りの白人家庭をも対象にしていたその調査は,それら養子にされた黒人の知能指数が白人と比較しても引けを取らないことを示しています。調査に従事した人々は,「全般的に見て,我々の調査は環境的要素の効力を印象づけるものであった。……もし異なった環境が黒人の子供たちの知能指数を平均90ないし95から110へ引き上げることができるなら,遺伝決定論者の推進する見解は,黒人と白人の間に現在見られる知能指数の隔たりを説明するものではなくなる」と書いています。

      ですから科学的な見解は,黒人の平均知能指数の低いことの原因すべてとは言わないまでも,その大半は環境的な要素によって説明できるとしているようです。ニューヨークの人口協議会のフレデリック・オスボーンは,「人種の生物学的および社会学的意味」という本の中で次のように要約しています。「今日まで行なわれてきた諸調査から引き出せる結論はただ一つしかない。主な人種間の知能検査の結果に見られる違いは,その環境に関して知られている相違に起因する違いよりも大きいものではない。この点に関しては,科学的に意見の全般的な一致を見ている」。

      黒人への機会が開かれるにつれて,事業,教育,医学などの分野で成功を収める黒人が増加しているのは興味深いことです。

      しかし,人種間の知能の比較という問題について,明確な答えは出せないことを認めねばなりません。証拠は現在のところ決定的なものではなく,様々な解釈が引き出せます。一人の著述家の述べるとおりです。「同じ証拠から,百の異なった結論を出すことができ,実際に出されてきた。人の到達する結論は,理性と同じほど感情に左右される」。

      それでは,黒人は白人よりも知能程度が低いことを証明しようとして,どうして知能指数の問題を取り上げるのですか。英国のオープン大学の生物学教授スティーブン・ローズは,ある人々がそれを取り上げる理由をこう説明しています。「知能指数の人種的および階級的相違に関する遺伝学的な根拠の問題は,……自分たちの差別的な慣行を観念学的に正当化しようとする人種差別的社会あるいは階級差別的な社会においてしか意味をなさない」。

      黒人が遺伝的に低い知能を受け継いでいるという説に関して激しい論争があった結果,全米科学アカデミーは次のように言明しました。「黒人と白人の知能の間に,実質的な遺伝性の相違があるという説にも,ないという説にも,科学的な根拠は存在しない。環境のあらゆる面を平等化する方法など現在では予想もできないような方法がなければ,この問題の答えは理知的な推量の域を脱しない」。

      しかし,一つのことは確かです。それは,別の人種に属する人を劣った者とみなす確かな根拠はないということです。聖書は,人種の別を問わずわたしたちすべてに,「他の者が自分よりも上であると考えてへりくだった思い」を持つよう健全な助言を与えています。―フィリピ 2:3。

      しかし,人が聖書のこの優れた助言を当てはめるのを妨げる,根強い見解がまだあります。その顕著なものは,自分の属する人種以外の人種の人々には,不快な体臭があるという考えです。

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