世界展望
喫煙の増加
◆ 健康に有害であるとの警告が出されているにもかかわらず,たばこは全世界で前以上にのまれるようになった。1969年9月30日,国連農業機構の物品問題に関する委員会に提出された報告によると,1966年(完全な統計の入手できる最新の年)に消費されたたばこの本数は,2兆8,000億本以上に上る。これは1955年から59年までの毎年の平均を45パーセント上回り,毎年の増加数は700億本になる。
犯罪と政治
◆ 犯罪組織は,今日のアメリカ政府にとって「疑いなく最強の院外団」であると,犯罪矯正協議会の議長,ジョン・J・バックリーは語った。彼はさらに,選挙運動への寄付という形で犯罪が政府内に浸透していることを述べ,「主としてこの方法で犯罪組織は,政府,警察など,またその末端に手を伸ばしている」と語った。バックリーによると,大統領付犯罪委員会は,合衆国における選挙運動基金の20パーセントが犯罪組織から来ると推定している。彼はまたこう語った。「いつか合衆国の大統領を選んでみせる,と犯罪組織は話している。彼らはすでに州知事を当選させている。これは,私たちの生活にとって,たいへんな脅威である」。
「二つのしかばね」
◆ 「二つのしかばねが結婚したからといって,生きた人間が生みだされるであろうか」。これは英国教会とメソジスト教会が,合意に達しえなかった時に発表された答えである。教会に見られる幾列もの空席は英国の教会の現状を物語っている。教会は,中年および老年層にとってはいささかの意義をもっている。しかし,一般の人および青年層にとって教会が無意味な存在であることを大ぜいの教会員は認めている。ある牧師が語ったように,「教会はまだ20世紀にはいっていない」のである。
『ローマから離れる』傾向
◆ 幾千人ものオーストリア人が,ローマ・カトリック教会を離脱している。その理由は数多い。ナチスがオーストリアを占領した時,ヒトラーは旧教徒と新教徒の両方に税を強制し,それを各所属の教会に直接納める取り決めを設けた。戦後,宗教団体はこの税を撤廃する意向をまったく見せなかった。この態度に対する反発がある。しかし教会税の問題は,教会からの離脱に潜む要因の一つに過ぎない。ヨーゼフ・ツァイニンガー司祭は次のように話している。「我々の頭痛のたねとなっているのは,教会内部の現状に心を痛めて離脱していく信者たち,それに,『ローマから離れようとする』最近の著しい傾向である」。バチカンの権威を認めない,オーストリアのカトリック信者はますます多くなっている。いわゆる境界線上のカトリック信者をとどめておくために,教会はばく大な時間と費用を使っている,とツァイニンガー司祭は語った。しかし,「今に至るまで,この傾向をはばむことができない」とも語った。ウィーンは人口180万の都市で,そのうち90パーセントがカトリック信者である。1967年に比較して,離脱者の数は35パーセント増しとなった。
DDTの殺害効果
◆ DDTは奇跡の殺虫剤と言われてきた。値段が安いだけでなく,使いやすく,強い効果がある。そのうえ,累積的な効果を持っている。つまり,長年にわたってそれに触れたものは死んでいく。しかし,DDTが他の生物に危険なのはこの特質による。鳥・動物・魚の体内に蓄積されるのである。鳥・魚・動物の体内に殺虫剤が蓄積した場合,その肉を食べる人間に害が及ぶことについては証拠がじゅうぶんにある。最近,五大湖産コホ種のさけのかんずめは,DDT濃度が高すぎるとして非難された。DDTは牛乳や飲料水からも検出されている。カナダのアルバータ州では,キジとシャコのDDT蓄積量が非常に高いから,今年は狩猟解禁を中止してはどうかという話が持ち上がったほどである。化学会社に対しては,DDTから,他の「もっと安心できる」殺虫剤の生産に切り替えよとの声が強くなっている。
「腐敗がまん延」
◆ 1969年10月9日,アメリカ合衆国上院の一調査会で,在ベトナム米国陸軍クラブの組織には「腐敗がまん延して」おり,「最も一般にみられる腐敗はぴんはねである」との証言がなされた。上院調査委員会に出た一婦人職員は,自分がベトナムの米国陸軍クラブ管理者たちに対し,2年間に8,000ドル(288万円)から1万ドル(360万円)も払い,クラブ管理者は年15万ドル(5,400万円)の収入があり,スイスの銀行に預金のある者も多く,「たいそう良い暮らしをしている」と語った。上院での証言により,軍曹の一グループが西ドイツ在留陸軍クラブを不正に管理していた事件も明らかになった。かれらは,自動販売機の売り上げから,毎週5,000ドル(180万円)から7,000ドル(252万円)相当の「上まえ」を得ていた。
死刑の復活
◆ 英国では絞首刑の一時廃止期間に定められていた5年の期限が1970年に終了する。選挙も同年に行なわれるので,各党の代表者たちにとり,法と秩序という問題は総選挙の争点となって浮かび上がってくるであろう。このため昨年10月9日,保守党大会においては殺人に対して死刑を復活させるようにとの案が上程された。年次党大会に出席した代表者たちは,1,117票対958票の多数決をもって,殺人に対する絞首刑の復活を党の公約として掲げることに決定した。これによって,治安がいっそう保たれるというのである。
『今日の教会は混乱を呈している』
◆ ヤンクトン大学の学長,ドナルド・B・ウォードは,「地下教会はばかげている」と題する一文の中で次のように述べている。「今日の教会が混乱を呈していることには同感である。主も知りたもうごとく,教会はその儀式を近代化し,時勢に適した賛美歌を作り,今日のことばで祈りをささげることが確かに必要である。教会は自分に対してまったく正直であるべきであり,現状に体当たりしなければならない。だからといって,地下教会を提唱するのは,ばかげている」。教会の状態がどの程度悪化しているのかという問いに,ウォードは次のように答えた。「教会にはすべて,病気におかされた所があるかと思うと,健康ではちきれんばかりの時もある。組織全体が病状を呈しているというよりも,むしろ,個人の態度や人間関係に問題があるのではないか」。神のことばは,両方に問題があることを示している。
落ち着かないレーニア山
◆ レーニア山は雪をいただいて,ワシントン州西部にそびえている。この高さ4,392メートルの休火山が,最近地質的に不安定な兆候を示し続けている。アメリカ地質調査所の科学者たちの話によると,これは必ずしも爆発の前兆ではないが,いずれにせよ十分な警戒が必要である。火山錐の頂上に新しい熱地点が見られるし,昨夏の測定器の記録は,地震活動が増大していることを示していた。