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日本の“弾丸”列車に乗って目ざめよ! 1978 | 10月8日
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列車についてもう少し調べることにしましょう。
カーブとトンネル
今カーブにさしかかりましたが,列車の先頭の部分が見えますか。安全のため,高速区間の全線はできるだけ一直線に作られています。在来線に比べると,いちばん鋭いカーブでも6倍以上もゆるやかになっています。“弾丸列車”はどんな地点でも衝撃を感じさせることなく210㌔の速度で通過できます。また約1.4メートルの広い軌間も列車の安定性を増しています。これは1㍍ちょっとの在来線に比べて三分の一だけ広い軌間です。
稲田で働く人々の姿を見てごらんなさい。おや見そこないましたか。そうです,新幹線にはトンネルが多く,景色が一時的にさえぎられることが少なくありません。現在のところ,南の島九州とは海底トンネルで結ばれていますが,将来は四つの主要な島を“弾丸列車”の海底トンネルで結ぶことが計画されています。この日本全国をつなぐ計画が達成されるなら,現在17時間かかる北海道の札幌から東京までの旅は三分の一の時間に短縮されるでしょう。
ちょうど二時間でわたしたちはもう名古屋駅にすべり込んでいます。二分の停車時間がありますが,わたしたちはここでは降りません。人々が列車からとび降りているのが見えますか。彼らはホームにある小さなうどん屋へ走って行き,一杯の熱いうどんをすすって,発車のベルが鳴り渡ると同時に席へ駆けもどります。
“弾丸列車”の必要
沿線の人々を含め,多くの人は,日本のような島国に高速列車がなぜ必要かと尋ねます。“弾丸列車”を擁護する人々は,日本の国土が南北に長く,主要な工業都市が太平洋沿岸に集中していることを指摘します。過去においては,沿岸の高速道路を改良するだけで足りました。しかしこれはすぐに限界に達し,これ以上多くの車に応ずる余地も,広い道路を新たに作る余地もなくなりました。
東京と日本第二の都市である大阪を結ぶ別の交通機関が必要になったのです。こうして“弾丸列車”が誕生しました。新幹線がなかったなら,日本はこのような急速な経済成長を遂げられなかったであろうと,よく言われます。1964年の開業以来,それは10億人以上の人を運びました。毎日およそ260本の列車を利用する人は35万人にも達します。
安全な旅
今度はアイスクリームの売り子がやって来ました。アイスクリームを食べるのは後にして,その代わりビュッフェに行くことにします。そこには乗客のために速度計が取り付けられています。それを見ると,列車は確かに時速210キロの速度で進行中です。ほとんど信じられない位ではありませんか。このように高速で走っているので,運転手が前方に危険を認めて列車を止めてもまず間に合いません。たとえ間髪を入れずにブレーキをかけたとしても,列車はさらに2,000メートル走ってからようやく止まるのです。
運転手の目に頼ることはできないため,線路に信号はありません。列車自動制御装置(ATC)によって万事が制御されています。全線は3,000メートルずつのブロックに分けられ,機器室では各列車の走行位置がパネルに表示されます。ATCの電算機システムから各ブロックに指令が送られ,その特定のブロックにおける速度を制御します。機器室からは五つの違った速度指令すなわち時速210,160,70,30キロおよび停止の指令が出されます。
わたしたちの乗った列車の走っているブロックが時速210キロの指令をATC装置から受けている時,ひとつ後ろのブロックは時速30キロの指令を出し,そのまた後ろのブロックは時速70キロの指令を出すという具合いになっており,背後からの衝突を防いでいます。そしてこれは,わたしたちの列車が時速210キロで進行している時,前方少なくとも9,000メートルには他の列車は走っていないということです。
ATC装置がうまく働かない場合についてはどうですか。そのようなことは皆無と言ってもさしつかえありません。もっとも“虫”が装置に入り込んだため,停車中の列車が全速力で走っているものとして記録されたことが一度ありました。ATC装置のすべてには予備装置があり,電気機器のすべてにも二重の予備が備えられているので,一方が故障しても他方が肩代わりするようになっています。地震も考慮に入れられており,地震計の示す震度が一定のレベルを超えると,列車は自動的に止まります。
雨,風,雪その他に対処するため,運転手および各駅の職員と絶えず連絡を保たねばなりません。東京の総合司令所にある列車集中制御装置すなわちCTCが,安全のこの面を受け持っています。そこには東京から九州まで全線にわたって列車の走行状態が表示盤に示されています。機器室では係が絶えず表示盤を見守り,必要な情報をそれぞれの列車に流しています。
最近,列車の本数が増加したため,国鉄ではこれらの補助的な制御装置としてコムトラックと呼ばれる電算機システムを採用しました。コムトラック装置は,線路番号,時刻表,各駅の状態などの情報を“記憶”します。
何らかの理由で列車のダイヤが乱れるならば,コムトラック装置は機器室に通報し,調整された発車時刻また必要ならば運転休止をも含む新しいダイヤを自動的に作ります。それは特定の駅におけるアナウンスをも含め,ATC装置の全域にわたって必要箇所を制御できる,驚異的な装置です。
これらすべての予防措置のお陰で,高速の“弾丸列車”は,きわめて優秀な安全の記録を樹立しました。1964年10月1日以来,死者の出た事故は1件も起きていません。常に安全が第一にされています。
さて,わたしたちはもう京都駅に着きました。2時間50分ちょうどです。これであなたは,速いことで世界的に有名な,多くの国にうらやましがられている日本の“弾丸列車”に“乗った”ことになります。
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岩に描かれたなぞ ― ブッシュマン絵画目ざめよ! 1978 | 10月8日
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岩に描かれたなぞ ― ブッシュマン絵画
南アフリカの「目ざめよ!」通信員
美術愛好家にとって,美術館を訪れるのは,胸のときめく楽しい時です。しかし,美術館は大都市にでもまれにしかありません。ところが,南アフリカには,文字通り幾百もの古代美術館があるのです。これに魅了された芸術家や考古学者や観光客は数知れません。
わたしたちが言っているのは,ブッシュマンが描いた岩絵のことです。岩膚一面に描かれた人物や動物の絵を食い入るように見つめる訪問者はこう自問します: これはただいたずらに描かれたものだろうか,それとも何かの音信を伝えるためだったのか。海から幾百㌔も離れた小川のほとりに,ほぼ完全な姿のイルカが描かれているのはなぜだろうか。どのようにして彼らはこれを描いたのだろうか。
その答えを探る
こうした疑問の答えを求めて,また「これらの
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