『すべての国の民への証言』
エホバの証人の1968年度年鑑より
タイ
人口: 31,800,000人
伝道者最高数: 319人
比率: 99,687人に1人
タイ国では野外における兄弟たちの熱心な働きと多くの本および雑誌の配布にもかかわらず,何年ものあいだ増加が見られませんでした。その間わたしたちの慰めとなってきたのは伝道の書 11章1節の次の聖句です。「あなたのパンを水の上に投げよ。多くの日の後,あなたはそれを得るからである」。わたしたちはタイにおいて人々という水の上に霊的なパンを投げつづけてきました。その成果は過ぐる奉仕年度中にいくらか見られ,その年の間24人の新しい奉仕者がバプテスマを受けました。
年の顕著な出来事は,8月にバンコックの支部の建物で開かれた「人々を弟子とする」地域大会でした。ラオスとベトナムからの宣教者や,タイ語を知らない土地の大ぜいの外国人のため,全部のプログラムは英語とタイ語で同時に行なわれ,御国会館ではタイ語,ふだん事務所になっている部屋では英語のプログラムを聞くことができました。大会をとおして平均300人が出席し,講演に351人の出席を見たことはわたしたちの大きな喜びです。この大会で17人の人が浸礼を受け,その中には2年前に宣教者と勉強していた,そして遠く南のマレー半島から来た男の人もいました。宣教者が他の任地に移ってのち,この人はタイ語の「ものみの塔」誌をひきつづき読み,また定期的に巡回のしもべの訪問を受けていました。自分の学んだ事柄を認識するようになって他の人々にも伝えることを始めたこの人は,報告について説明されるとさっそく孤立した伝道者の報告を送りはじめ,以来一度も報告を欠かしたことがありません。そしてこの大会に喜んで出席し,浸礼を受けました。確かに主の羊は主の声を聞きます。
「パンを水の上に投げ」た結果,今年表われた一つの成果は,支部に手紙を出してさらに文書を求める人が以前のどの年よりも多かったことです。これらの人々をふたたび訪問して多くの良い聖書研究が始められました。その中には2年前に宣教者から雑誌を求めた一人の仏教の僧侶がいます。この人は本の中にまぎれ込んだこの雑誌を見つけて読み返した時,その真理を悟り,ふたたび訪問を受けた時にすぐ「楽園」の本を求め,研究を始めました。最初の章を終えた時,創造者の神を信ずることを言い表わし,自分は僧職について10年になるが,神の事は少しも学ばなかったと述懐しています。まもなく御国会館での講演会に招待されて出席し,「ものみの塔」研究にも残りました。そして今では受けた知識をわかつことも始め,大会にも出席して神に関する理解をますます明らかにしたと語っています。
学校の教師をしているひとりの姉妹は家族の世話もありますが,それでもなお実を結ぶ奉仕者となっています。その心は個人研究や集会で学ぶ良い事柄で満たされているので,機会のある毎に真理のことを生徒に語り,彼らの興味をひくことに成功しているので昼休みには10人もの生徒がほとんど毎日この姉妹と聖書を勉強しています。また学校の休みの日には,彼女の家にやってきて一日中聖書のことを話し合います。その中の5人は今年バプテスマを受けました。その大多数は家族から反対されていますが,真理の側に堅く立ち,家から家に行って熱心に真理を伝えています。
カンボジア
人口: 5,750,000人
伝道者最高数: 2名
比率: 2,875,000人に1人
カンボジアのわたしたちの兄弟は真理に堅くつき,また信仰に堅く立つように励まし合っています。彼らを強め,世界の他の場所にいる兄弟たちとの結びつきを感ずるように助けるため,協会の代表者が定期的に訪問しており,感謝されています。記念式に巡回のしもべを迎えたことは,彼らの喜びでした。彼らは世界の他の土地にいる兄弟たちが祈りのうちに彼ら二人をおぼえるようにと願っています。
ラオス
人口: 3,000,000人
伝道者最高数: 21名
比率: 142,857人に1人
1967奉仕年度最大の祝福は,ギレアデ学校から4人の新しい宣教者をラオスに迎えたことです。彼らはカナダのケベックとアイルランドで奉仕していたので,ここラオスでの宣教者の奉仕に適任と言えます。3週間にわたる熱心な語学の勉強ののち,彼らはラオス語の聖書から日々の聖句を読むことができました。わたしたちはいっそうの助けを求める祈りがかなえられたことをエホバに感謝しています。
ラオスの一兄弟が特別開拓者に任命されたことも喜びでした。彼は首都ビエンチャンの南約300キロの小さな町でわざを押し進めています。
次の経験が示しているように,聖書はどんな宗教の人をもひきつけます。ひとりの宣教者は仏教徒の若い女性にエホバのことばをいくらか伝える機会を得ました。彼女は宣教者のことばに耳を傾けましたが,最後にはきまって「仏教も同じことを教えています」と答えました。
彼女は聖書研究をすることに同意しませんでしたが,時が経つうちに宣教者である姉妹の驚いたことに,彼女の述べる考えは明らかに神のことばから出ているものでした。しかし彼女自身はそれをラオスの仏教の伝統的なものと思い込んでいたのです。彼女が正義を深く愛していることを見てとった姉妹は,二人の友情を培い,それは互いの益となりました。真理の知識を少しずつ授ける一方で,この年若い仏教徒の女性からラオスの人々の習慣や態度を知ることができたからです。やがて姉妹はラオスの別の土地に移りましたが,2年たってこの女の人も同じ町に越したので二人の交際は再び始まりました。
しかしその時までに彼女は真理を受け入れる気持ちが強くなっており,彼女が正義にひかれているところから,聖書の正義の原則,またエホバ神を知りエホバ神に仕えるために献身した人々の間で,すでに行なわれている高い道徳の水準が強調されました。「むすこに対する父親の話」と題する記事が「目ざめよ!」に出た時,姉妹はそれを見せて,聖書に基づいた,そしてエホバの組織によって授けられる教育の実際的な価値を話し合いました。人々が正しい生活をすることを学び,また仲良く暮らせるということに,彼女は感銘を受けたようです。これがおそらく転機となって彼女はまもなく集会に定期的に出席し,聖書研究をするようになりました。彼女はいま自分の学んでいる貴重な知識を他の人々に熱心に伝えています。また真理に接したことを感謝しており,いつかエホバへの献身を象徴することについて語っています。
ベトナム
人口: 16,973,000人
伝道者最高数: 29人
比率: 585,276人に1人
ベトナムの伝道者と宣教者の勤勉な働きは,ようやく実を結びつつあります。いま多くの集会には,勉強して良い進歩を見せている15人の男の人と7人の婦人が出席するまでになりました。そのうち4人はいま伝道者であり,3人はバプテスマを受けています。
ある兄弟はその中のひとりの男の人に2冊の雑誌を配布しましたが,あまり興味が認められなかったのでそれきり忘れていました。二,三日たってその人はバプテスマを授けてほしいと言って会衆に手紙を送ってきました。その人は次のような理由をあげています。「(1)あなたがたの信じている事柄は,この苦しい世の中にあっても生きることの喜びをふたたびわたしに与えてくれました。(2)この宗教はわたしの行動の導きであり,善悪をわきまえ,新しい徳を身につけるのに役だちます」。手紙は次のように結ばれていました。「わたしはエホバの崇拝を守り,一生のあいだ忠実また従順であることをエホバの名によって誓います」。このことののち例の兄弟はふたたび訪問しました。いまこの人はめざましい進歩を見せ,「ものみの塔」研究でも良い答えをしています。関心のある人をつづけて訪問することは確かに大切です。
人々は悪霊崇拝から離れつつあります。6か国語を話す25歳の一婦人はその良い例です。魔法使いの家の出である彼女はいつも占い師をおとずれ,また夜眠ろうとする時,声を耳にしました。彼女との研究が始められた時,彼女は悩みのために自殺しようとしていたのです。彼女はエホバの名を用いることを拒絶しました。しかし夜になると聞こえる声を追い払うには,占い師のもとに行くのをやめ,キリスト・イエスをとおしてエホバに熱心に祈り,エホバの名を口に出して言うことも必要であると告げられました。はじめ気のすすまなかった彼女も,エホバの名を口にするとすぐに声がやむことに驚かされました。二,三日うちに声は全くやんでしまったのです。今では彼女は良い進歩を見せており,最近こう語りました。「いまわたしの目標は皆さんのように外国の地でエホバの証人とともに奉仕することです」。また彼女はエホバが真の神であることを確信しており,今ではエホバの御名をいつも喜んで用いています。