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子供に対するわいせつ行為 ― どの母親にとっても悪夢のような出来事目ざめよ! 1985 | 4月22日
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子供に対するわいせつ行為 ― どの母親にとっても悪夢のような出来事
若い母親にとって,悪夢が現実になりました。4歳になる娘が腹痛を訴えたので,医師のところへ連れて行きました。医師は徹底的に診察した後,重い口調で母親に,お子さんはわいせつ行為の被害者です,と言いました。その子は暴行されたのです。母親はニューヨーク市当局に通報し,当局はすぐにその性的虐待がニューヨーク市ブロンクス区のある託児所で起きたことを突き止めました。
その託児所を調査したところ,果たして恐るべきことが明らかになりました。一人,また一人と,わいせつなことをされた事実を明らかにしたのです。最終的には,少なくとも30人の子供たちがその同じ託児所で性的虐待を受けたことを明かしました。そのうちの一人は淋病にかかっていました。次いで,別の託児所でも子供たちがわいせつ行為の犠牲になったということが表沙汰になりました。さらに別の託児所のことも明らかになり,結局,ニューヨーク市だけでも七か所の託児所が捜査されなければなりませんでした。
新たな事件が報道される度に,米国のほかの地方からも,子供に対するわいせつ行為の報告が寄せられるようになりました。スキャンダルは広まり,子供を持つ親たちは互いに,「一体どうなっているの?」と顔を見合わせています。全くどうなっているのでしょう。たまたまわいせつ行為事件が多発したにすぎないのでしょうか。それとも,広く行なわれていたのが,今になって目につくようになったのでしょうか。
まん延する問題
実を言えば,子供に対するわいせつ行為はずっと前から行なわれてきている事柄で,今日それは確かにまん延しています。1983年にニューヨーク市の婦女暴行対策諮問特別調査委員会の委員長は,『婦女暴行,近親相姦,およびその他の形の性的虐待の犠牲になる幼い子供たちの数は著しく増加している』と報告しました。米国のニューハンプシャー大学の家庭内暴力研究計画のデービッド・フィンケルホール博士は,この問題に関する大規模な調査を実施しました。そして,面接調査を受けた親の9%には,性的虐待を受けていた子供のいることを明らかにしました。女性の15%および男性の6%は,子供のころ自分自身性的虐待を受けていました!
正確な統計を手に入れるのは困難ですが,米国では,国立児童虐待・放任対策センターに,子供たちに対するわいせつ行為が1年間に5万5,399件あったという記録があります。しかし,これは近親相姦による虐待の事例にすぎません。友人,近所の人,教師,それに見知らぬ人々などによる性的虐待を加えると,その数字はかなり大きなものになります。アメリカ児童福祉連盟のスポークスマンは「目ざめよ!」誌の記者に,「我々の手元にある数字は氷山の一角にすぎない」と語りました。
レディーズ・ホーム・ジャーナル誌に載せられた一記事は次のように推定しています。「幼女に対する性的虐待のほうが広く見られ,大人の女性に対する婦女暴行の4倍に達する。5歳から13歳までの間に,幼女4人につき一人の割で,露出癖,不穏当な愛撫,婦女暴行,あるいは近親相姦など,大人による何らかの形の性的虐待のえじきにされている。最もよく犠牲になるのは女の子であるが,襲われる子供の20ないし25%は男の子である」。
医師たちは,そのような性的虐待が長期にわたって有害な影響を及ぼすことを確信しています。そこで,子供を持つ人はこう考えるでしょう。『うちの子は危険にさらされているだろうか。子供たちを守るためにどんなことができるだろうか。子供たちに危害を加えようとするのはどんな種類の人だろうか』。
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子供に対するわいせつ行為 ―『一体だれがそんなことをするのか』目ざめよ! 1985 | 4月22日
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子供に対するわいせつ行為 ―『一体だれがそんなことをするのか』
この質問に対してほとんどの親は間違った答えを出すでしょう。わいせつ行為というと,大抵の人は,子供たちに局部を見せたり車や木立の中へ子供たちを誘い込んだりする,見知らぬ,怪しげな人物を頭に描くでしょう。子供たちをたぶらかして連れ去り,ポルノや売春に使って子供を食いものにするグループがあることも広く伝えられています。そのような事柄も確かに起こりますが,こうした人々は子供にわいせつ行為をする者によくあるタイプとは掛け離れています。では,子供にわいせつ行為をするよくあるタイプの者たちとはどんな人なのでしょうか。
スーは教会関係のあるグループの世話係をしていた男性にわいせつなことをされていました。その男は青少年のクラブを運営しており,だれからも非常に好感を持てる人だと言われていましたが,スーをはじめほかの少女たちを性的に虐待していたのです。別の少女は身の上相談欄に手紙で,大好きなおじさんがいつもわたしをひざの上にのせてなでまわすのでいやです,と訴えました。ある男性は,幼いころ,家族の親しい友人の成人した息子に絶えず性的に虐待されていたことを覚えています。11歳の少年は同居していたおばにわいせつなことをされました。ニューヨークに住むある女性は,7歳の時に自分の祖父にわいせつなことをされた,と言っています。15歳の少年は,診察の際に医師にわいせつ行為をされました。パムの場合はもっとひどく,何年もの間,実の父親からわいせつなことをされていたのです。また,メアリーは二人の兄と年上のいとこにわいせつなことをされました。
事実,子供に対する性的暴行のうち,見知らぬ人が行なうのは3分の1足らずだと思われます。通常,被害者は加害者を知っています。虐待するのは多くの場合,親族です。ですから,大抵,子供たちは自分が知っており,信頼している人々にわいせつ行為をされるのです。そのために,子供たちを守るという問題がいっそう難しくなります。
わいせつ行為の現場
多くの親が思い違いをしていることがもう一つあります。わいせつ行為というと,暴力を伴い,子供が抵抗して,お願いだからやめてと泣き叫ぶ状況を思い起こすことです。少なくとも初めは,そのようなことは全くないかもしれません。性的虐待は最初,上辺ではふざけた,あるいは愛情のこもった接触という形を取ることがあり,そこから発展してゆきます。虐待をする者は年上の者に本来備わっているあらゆる権威を用いて,子供を説得し,子供に圧力をかけることでしょう。子供のころ,早く寝るとか,野菜を全部食べるなど,自分のしたくないことをするように言われても,大人には従うようしつけられたことを覚えていますか。わいせつ行為をする者はこのしつけを悪用するのです。児童虐待の罪で有罪を宣告されたある男は,「従順な子供はいいかもだ」と言いました。
一人の子供にわいせつな電話が何度も掛かってきました。どうして電話を切らなかったのかと尋ねられると,その少女は,相手が話をしている時にそんなことをするのは失礼だと思った,と語りました。30歳になる一女性は,5歳の時に祖父に迫られたことを覚えています。その女性は祖父から,「良い子はおじいちゃんのためにこういうことをしてくれて,決してお母さんには話さないものだよ」と言われました。5歳の子供で,そのような欺きを見破れる子が何人いるでしょうか。
また,子供の時に物を買ってもらうことやプレゼントをとても喜んだのを覚えていますか。虐待をする者たちは大抵,児童虐待の関係を始めるために子供にありがちなこの特性を利用します。例えば,学校の用務員から,「お金をあげるから,放課後,事務所で少し付き合ってくれるかな」と言われたら,子供はどうするでしょうか。あるいは,子守に来た人から,「僕のためにあることを先にしてくれたら,遅くまで起きていてテレビを見てもいいよ」と言われたらどうでしょうか。
子供は生来秘密というものが好きですが,わいせつ行為をする者はこの傾向を悪用することがあります。幼いころ,秘密があると,胸がときめきませんでしたか。ある幼い女の子には,親にはずっと話さなかった秘密がありました。ところがある日,その子がませた,性的しぐさをするのに両親は気づきました。そんなことをどこで覚えたのかと尋ねると,その子は,「それは内緒」と言いました。秘密を守ってはいけないこともあると父親が言い聞かすと,その子は秘密を明かしました。自らも子供を持つ40歳の親類の男性が,その子を押し倒して,性的な暴行を加えていたのです。
最後に,脅しが伴うこともあります。子供を不安な気持ちにさせる巧妙な脅しです。ある女性の話によると,その人は子供のころ,継父から性的に虐待されました。継父はその女性が6歳の時から4年間性的な虐待を加えたということです。どうして母親にそのことを告げなかったのでしょうか。「そのことを人に言おうものなら,警察がやって来て継父を捕まえ,母は職を失うことになる,と言われました。家族は食べる物に困るようになり,それはみんな私のせいになるというのです」。
著述家のゲール・シーハイは以上の点の多くを総括してこう述べています。「わたしたちは自分が子供のころ,大人には何でもできるように思えたことを忘れている」。同女史はさらにこう述べています。「親や子守が,普通の入浴や身体検査のふりをして,性行動を始めるのはごく簡単である。子供が,何かいけないことをしているということにようやく気づくのは,内緒だと言われてからである。『これをしたことを,お母さんに言ってはいけないよ』― あとは一言脅しを加えるだけで十分である ―『さもないと,お母さんに嫌われてしまうよ』」。子供はその種の心理的な脅しに立ち向かうことができるでしょうか。
子供にとって最善の身の守り
これでお分かりのように,わいせつ行為をする者は思いもかけない人物で,世故にたけた,こうかつな術策を用いることがあります。子供に対するわいせつ行為は歴史が始まって以来ずっと存在していると言っても過言ではないかもしれません。しかし,この世代が進行し,いよいよ大勢の人が「自分を愛する者,……自然の情愛を持たない者,……自制心のない者」になるにつれて,その脅威は大きくなってゆきます。(テモテ第二 3:1-3)しかし,子供には非常に強力な身の守りがあります。それは何ですか。それは子供の親です。親は,子供たちにわいせつ行為をしかけようとするほかの大人から子供たちを一番よく守れる大人と言えます。どのようにして子供たちを守ってやれるのかを考えることにしましょう。
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少女は自分の教会の牧師にわいせつなことをされた
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子供に対するわいせつ行為 ― お子さんの身を守ることは可能です目ざめよ! 1985 | 4月22日
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子供に対するわいせつ行為 ― お子さんの身を守ることは可能です
幼いころ実の兄と義理の兄にわいせつなことをされた若い女性はこう語っています。「怖くて,だれにも話しませんでした。それで,子供を持つ方すべてにお勧めします。『家族であろうとなかろうと,いけない仕方で自分の体に触れることをだれにも許してはならない。そんなことをしようとする人がいたら,怖がらずにその人のことを言いつけるようにとお子さんに是非とも教えてあげてください』」。この女性はさらに,「これはどんな子にでも,いつ何時起きるか分からないのです」と述べています。
この堕落の一途をたどる世界にあって,わたしたちはわいせつ行為から子供の身を守るためにはっきりした措置を取らなければなりません。成り行きにまかせて,ただ何事も起こらないよう希望しているだけでは賢明とは言えません。
防衛の第一段階
防衛のための第一段階は,襲われやすい状況に子供を置かないようにすることです。例えば,自分と同じ年ごろの若者と一緒にいるより子供たちと一緒にいることを好むように思える若い人に子守を頼むことには注意するよう親は勧められています。ある臨床心理学者の報告によると,わいせつ行為を行なったために心理学者の治療を受けている者の3分の2は,子守をしている時にその犯罪に走りました。
スーザン・M・スグロイ博士は,問題を引き起こす結果になったさらに二つの状況を挙げています。子供が大人や十代の若者と(ベッドや部屋で)一緒に寝ること,および大きな家族の集まりの際に大人たちが自分たちの楽しみに熱中して,年長の子供たちが年下の子供たちの世話をしていると思い込んでしまう場合です。
事実を言えば,子供たちを親の監督下に置いておける時間が長ければ長いほど,わいせつ行為をしかける者が子供たちを襲う機会は少なくなります。アンは3人の子供を持つ母親ですが,一番下の14歳になる男の子に独りでショッピングセンターを歩き回ることや,独りで公衆便所へ行くことをさえ許さないほどです。男の子はそのために非常に束縛されているように思っているかもしれませんが,母親にはそうするだけの理由があったのです。アンは幼いころ,わいせつ行為の犠牲になったことがあるのです。
しかし,親は四六時中自分の子供をそのようにしっかり見守っているというわけにもゆきません。共働きをしている親は,託児所を利用するか,親族や子守に自分の子供をあずけてゆくよりほか仕方がないでしょう。また子供たちは学校へ行かねばならず,親がいつも一緒にいてやることはできません。親族や友人の訪問もあります。それに,近所の人たちもいます。子供たちが非常に襲われやすいことを考えると,どうしたらその身を守ってやれるでしょうか。実際のところ,道は一つしかありません ―
その危険について子供に話す
心理学者のデブラ・シャルマンはこう語りました。「子供たちに対して,危険は存在しないというようなふりをするのは愚かなことです。子供たちは自分が襲われやすいことを知っており,当然のことながら身の安全を気遣っています。現実的な方法で危険に対処するための手段を子供に与えてやるのは親の仕事の一部です。そのような情報を正直に,積極的な仕方で与えてやれば,子供を怖がらせるのではなく,安心させることになります」。そうです,子供たちにこの問題について話してやらなければならないのです。
これは口で言うのは簡単ですが,実際に行なうのはそれほど簡単なことではありません。一番危険なのは友人や親族であるので,特にそう言えます。子供たちを木立の中に誘い込んだり,車に乗せて連れ去ったりする見知らぬ人については,すでに子供たちに警告してあるかもしれません。では,子供たちが知っていて,尊敬し,さらには愛してさえいるかもしれない人々から身を守るための「手段」をどのようにして与えてやることができるでしょうか。
本能に従うようにさせる
前述の母親,アンの話によると,親族の男性にわいせつ行為をされたときはまだ5歳でした。それでも,自分が何かいけないことをしているということは分かっていました。もっとも,どうやってそれをやめさせるかは分かりませんでした。そして残念なことに,そのことについて親に話すこともできませんでした。当時,話し合いのパイプはあまり良い状態になかったのです。
アンの経験は,正邪についての自然の感覚を子供たちは普通持っているということを示しています。わたしたちはこの本能を強化してやり,たとえ大人が違ったことを言っても,その本能に従わなければならないことを教えておかねばなりません。はっきりと,「いや,そんなことをしちゃいや!」と言うだけで,わいせつ行為をしかけようとする者を思いとどまらせるのに十分であることも少なくありません。アンの経験はまた,子供たちとの間に話し合いのパイプを開いておく必要性を示しています。
最近,一夫婦がこの問題について話し合っていました。心配になった二人は,これまでにわいせつなことをされた経験があるかどうか女の子に尋ねてみたところ,ある,と言ったので二人は震え上がりました。家族ぐるみで古くから付き合っていた,信頼していたはずの友人が幾度もそのようなことをしていたのです。その家族は子供たちと非常によく話し合う家族でした。それなのに,なぜその子はその時まで何も言わなかったのでしょうか。話をどう切り出してよいか分からなかっただけでした。ですから一度問題が取り上げられると,待っていましたとばかりに話し出しました。
どのようにして話してやったらよいか
まず,話を持ち出さなければなりません。一つの提案は,スキャンダルがニュースで報道されたら,親はその機会を活用して子供たちに,「これまでだれかにあのようなことをされたことがある?」と尋ね,それから,だれかがそのようなことをしようとしたらどう行動すべきかをさらに子供たちに話します。
子供たちに聖書を教える親は,話を切り出すのにその一部を用いることができます。ヤコブの娘ディナの物語を使ったり,人がほかの人に対してしてよい事柄には限界があることを説明します。(創世記 34:1-4)タマルとアムノンに関する物語を使って,たとえ近親者であっても互いに対してしてはならない事柄があるという点を示せるでしょう。(サムエル第二 13:10-16)また,そのような事柄が子供たちの身に実際に生じたら,親はそれを知りたいと思っているということを子供たちが理解しているかどうか確認しなければなりません。親に話しても,怒られはしないということを悟らせるのです。
メアリーは幼いころわいせつなことをされたので,わいせつ行為をしかける者たちに対して自分の3人の娘たちに用心させるよう細心の注意を払いました。どんな方法でそうしたのでしょうか。子供たちが物心のつくころになるとすぐに,「だれかがいけないところを触ったら,お母さんに話しなさい。怒ったりはしませんからね」と言いました。いけないところがどこなのか,子供たちはどのようにして知ったのでしょうか。メアリーの話によると,子供たちが3歳ぐらいの時にその部位を示してやったということです。入浴させるときや寝る用意をさせるときに,子供たちの体の,ほかの人々が触れてはならないところを指差してやりました。子供たちが少し大きくなってからは,さまざまな状況を示してやりました。「だれにもそこを触らせてはいけません。学校の先生やお巡りさんにも触らせてはいけません。お母さんやお父さんだってお前たちのその場所に触れてはいけないのよ。そしてお医者さんがお前たちのその場所に触れていいのは,お母さんかお父さんがお前たちと一緒にいるときだけです!」
それには効果があったでしょうか。ある親類の者がメアリーの6歳になる娘と遊んでいた時のことをメアリーは覚えています。その親類の者のしていたことを幼い女の子は気持ちが悪いと思うようになりました。その子はどうしたでしょうか。その男性から離れたのです。その親族に下心があったのかどうかは分かりません。しかし,自分の娘が,「正しくない」とか「変だ」と感じだした時に,その状況から抜け出したことをたいへんうれしく思いました。
このように,親は子供たちに,見知らぬ人に付いて行かないようにとか,交通量の多い道で遊ばないようにとか,電線に手を触れないようにと言い聞かせるのと同じように,わいせつ行為から逃れることについても話しておかなければなりません。実の親をも含めてほかの人が侵してはならない子供たちの体の境界線について説明すべきです。また,実際に何かが起きるようなことがあれば,親はそのことについて知りたいと思っていることをはっきりと話しておかなければなりません。そして,子供たちをとがめたりはしないということもはっきりさせておきます。
「もしも……?」ゲーム
大人がより深い経験とより大きな知力を用いて子供たちを欺き,何らかのふさわしくない行動に加わらせ,子供たちが自分独りではその欺きを見抜けないという場合があります。「物を言わぬ子供たち」という本の著者であるリンダ・チャーハート・サンフォードは,事前の措置を取るための手段を提案しています。それは,「もしも……?」ゲームです。ある状況を設定して,子供たちがその状況に置かれたらどうするかを折に触れて尋ねてみます。「もしも子守に来た人が,お兄さんと一緒にお風呂に入ってゲームをしたら,遅くまで起きてテレビを見ていてもいいよ,と言ったらどうする? その人にどんなふうにお話ししたらいいかな?」「もしもだれか知っている人に車に乗せてもらって,触ってはいけないところにその人が触ろうとしたらどうする? どうしたらいいと思う?」「もしも年上の友だちが,お前がいやだと思うような触り方をしたり,服を脱がせて,一緒に秘密の遊びをしようと言ったりしたらどうする?」
子供たちにその答えを教える際に,親は,大人に向かって,いやです,と言ってよい場合があること,また,秘密を明かさなければならない場合もあることを教えます。「お母さんのところへ行って聞いてきます」などと言うように訓練されていれば,わいせつ行為をしかけようとする人の大半を思いとどまらせることができます。「もしも……?」ゲームで,正しい答えを子供が学べば,自らの身を守るための良い手段を身に着けていることになります。子供が誤った答えをするなら,もう一度質問をして,ほかの答えを示唆するようにします。
用語を教える
次に挙げるある女性の経験は,わいせつ行為に関して子供たちの直面する別の問題を物語っています。その人はこんな話をしました。子供のころ性的虐待を受け,そのことを母親に話そうとしました。しかしきちんとした用語を知らなかったので,どんなことがあったか説明できませんでした。母親は,だれかが愛情を示そうとしただけで,幼い娘のほうが状況を誤解して誇張しているのだと考えました。
同様のことがよくあるので,社会事業家は親が子供たちに体の各部の正しい名称を教えることを勧めています。最悪の事態が生じた場合に,子供たちが事態を説明できるよう用語を教えておくことです。
注意をしながらも,平衡を保つ
我が子がわいせつ行為の犠牲になるかもしれないというのは,親にとって一番ひどい悪夢の一つです。しかし,ほとんどの大人は子供にわいせつなことをしないという点を覚えておかなければなりません。親族のほとんどは子供たちのことを愛してくれており,性的虐待から子供たちを守ることに親と同じほどの関心を抱いているでしょう。
しかし一方,わいせつ行為の犠牲になることはあり得るのです。そして,それが自分の子の身に起きないようにと願うだけでは不十分です。聖書の箴言は,「災いを見て身を隠す者は明敏である」と述べています。(箴言 22:3)ですから,わたしたちの住む時代のことを考慮に入れると特に,注意深くあるのは賢明です。襲われやすい状況に子供たちを置かないようできる限り努力し,大人でさえ踏み越えるべきでない境界線のあることを子供たちに説明し,その境界線を踏み越えようとする大人がいたら,その人がどんな人であろうと,どう反応すべきかを教えるなら,わいせつ行為を行なう者から子供たちの身を守るためにかなりのことをしていることになります。
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