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中国を通ってヨーロッパへ ― 列車の旅目ざめよ! 1978 | 2月22日
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人,ポーランド人,ドイツ人,アフガニスタン人,ベトナム人など,ほとんど全員が外国人でした。少しでも英語の話せる人は,英会話を試みようと私たちの所にやって来たので,私たちの客室は人々のたまり場のようになりました。
列車は,万里の長城を抜けて山岳地帯に入りました。日干しレンガ造りの家屋が,ヒマワリの咲き乱れる明るい野原に群れをなしています。それから,北に進路をとると,周囲の風景は変化し始めます。小さな農家が農耕を行なっていますが,作物の発育が遅く,作柄はよくないようです。川といっても名ばかりで,川底がわずかに湿っているだけでした。夕方にはゴビ砂漠の端の不毛の荒地に入っていました。
午後8時50分のこと,やかましい音楽と強い断続的な言葉がスピーカーから流れてきて,国境の町アルリエンに到着したことを知らせました。ここで,車内の検査や機関車と食堂車をモンゴルの車両と入れ替える作業が行なわれ,その間二時間半ほど,私たちは駅でお茶をすすりながら待ちました。列車全体が地上から2.4㍍ほどの高さに持ち上げられ,車輪をモンゴルとソ連の鉄道で採用されている広軌道用のものに取り替える作業も行なわれました。列車は,少し走ると,国境のモンゴル側にあるザミンウデに着きました。ここで,もう一度検査を受け,一時間ほど待たされました。午前12時15分,つまり中国の入国査証の期限が切れてからちょうど15分後に列車は動き出し,私たちは夜の眠りにつく準備を始めました。
9月2日: 目を覚ますと,“新世界”が待ち受けていました。雲一つない青空の下にどこまでも荒野が広がっています。列車内は見晴らしの良い展望台のようでした。フタコブラクダが群れを作って,背中のこぶを揺すりながらのんびり歩いているのが所々に見えました。野生の馬も群れを作っていました。時々,遊牧民の白い円形のテントの集落が見えました。遊牧民はこれらのテントを移動式の住居として用いています。
ゴビ砂漠の町に列車が停車することはめったにないので,町の人々は列車の到着を首を長くして待っています。続々と列車に入り込んでは,軽食を売ったり,食堂車でビールを飲んだり,カン詰めを買い込んだりしていました。町の住民はその日のために盛装していました。長い頭飾りを付けてズボンをはき,チュニックコートのようなものを羽織り,その上からきらびやかな飾り帯を締めるといういでたちが彼らの民族衣装でした。
停車時間が一番長かったのは,首都ウランバートルでした。その間に,結婚式に参列している人々に出会い,新郎新婦の写真を撮りたいというと彼らは大喜びし,自分たちが回し飲みした同じ杯で地酒を飲んでみるよう強いて勧めました。キャベツのスープと黒パンをごちそうになった後,私たちは列車の客室に戻って,真夜中の国境越えに備えました。今度はソ連領に入ります。
シベリアからヨーロッパへ
9月3-8日: 朝になると,前夜の砂漠は樹木のうっそうと茂る山々に変わっていました。霧雨の降る,どんよりした寒い日でした。私たちは,分厚い毛布を体に巻き付け,暖房の入っていない列車の中で震えていました。そうです,これがシベリアなのです!
列車はどこまでも続く水辺を何時間か走りました。波が岩に砕けてしぶきを上げています。このバイカル湖は,冷たい淡水湖で非常に深く,米国の五大湖全部を合わせたほどの量の水をたたえています。
こうして,つらくて長いシベリア横断旅行が始まりました。列車は何時間も何時間も山の中を走り,やがて低地のオウシュウシラカバやモミの木の深い森の中に入りました。たまに,森が開けて,丸太小屋の部落が見えることもありました。工業都市もあって,工場からは黒煙が吐き出されていました。停車する度に,乗客が町に出て売店<キオスク>をのぞくため,列車は空になりました。こうした売店では,バブシュカス(老女)がパンや卵,チーズや花などを売っていました。
9月6日,午後4時に,私たちはモスクワに到着しました。モスクワでは数時間の間に,地下鉄に乗って,少しの見物をし,ホテルを見つけ,そこでその晩モスクワをたつ列車の最後の二枚の切符を手に入れました。翌朝,私たちを乗せた列車はポーランドの国境を越え,数時間後にはドイツに入り,快調にスピードを上げて一路ルクセンブルクへ向かいました。そして,ルクセンブルクから飛行機でニューヨークへ渡りました。
私たちは,香港から東欧に到る広大な地域を二週間半かけて旅行しました。私たちとは多くの点で全く異なった生活を送っている人々の世界をかいま見た今回の旅行を決して忘れることはないでしょう。どこの土地でも,ごく普通の人々が私たちを親切にもてなしてくれました。私たちは,国家間の障壁の取り除かれる日の到来をいよいよ熱望するようになりました。
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さあ,気球に乗りましょう目ざめよ! 1978 | 2月22日
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さあ,気球に乗りましょう
飛行機に乗って空を飛んだ経験のある人は少なくないでしょう。それは時速160キロで飛ぶ,単発の小型機であったかもしれません。あるいは時速960キロほどで巡航する商業用航空機であったかもしれません。いずれにせよ空からの眺めはいつでも息をのむほどすばらしいものです。しかし,全く音をたてないで,リンゴを木からもぎ取れるくらいの高度を,時速8キロから9キロで飛ぶ航空機に乗ったことのある人がどれほどいるでしょうか。
そんなことは不可能だ? ではご自分で乗ってみるのはいかがですか。私のすてきな気球に一緒に乗りましょう。
まず気球についてひとこと
現在は二つの基本的な型の気球が使われています。ガス気球は,子供たちがサーカスでもらう,ヘリウムガスでふくらませた風船によく似ていて,空気より軽いガスに頼って空中に浮上します。そのガスは水素ガスかヘリウムガスです。
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