世界展望
Tシャツ・クリスチャン
◆ フランスのル・モンド紙によると,タイのカウダン難民キャンプに収容されている幾千人ものカンボジア人は仏教を捨ててキリスト教に帰依したかの観がある。新しい宗教に熱心な一因はそうした「態度を取れば,西欧諸国に移住する機会が多くなる」という考えにあるようだ,と同紙は指摘している。同キャンプで忙しく働いている宣教師たちの活動は,プノンペンから来たある難民の次の言葉によく表わされている。「一部の宣教師たちは,クリスチャンになればアメリカに送ってもらえると言っている。わたしの場合は,十字架が描かれ,『愛しています,イエス様!』と書かれたTシャツがもらえるのでクリスチャンになった」。
ドイツの教科書と創造
◆ 「進化」と題する生物学の教科書が最近,西ベルリンの学校で使われるようになった。同書は,序論の部分で生命の起源に関する様々な意見を概説し,最初に「旧約聖書の創世記」という副見出しを掲げて創世記の幾つかの聖句の抜粋を載せている。その後,ラマルク,ダーウィン,テイヤール・ド・シャルダンなどの著名な進化論者や他の人々の短い言葉が続き,そのページの最後には“Wachtturm Bibelund Traktatgesellschaft”(ものみの塔聖書冊子協会のドイツにおける名称)という副見出しの下に同協会の書籍「進化と創造 ― 人間はどちらの結果ですか」の中から次のような引用文が掲げられている。「『自然選択』もしくは『適者生存』は強者を弱者から分けるにすぎません。すでにあるものが生存するだけで,動物や植物の新しい種類ができるはずはありません。そして,突然変異によっても,生物の新しい種類はできないのですから,進化のしくみを説明するものは何もないのです。……真の科学事実は,人間が獣から進化したことではなく,初めから獣とは異なる生物として創造されたことを裏書きしています」。
スペース・シャトルに席<スペース>はなかった
◆ あるニュース雑誌があいまいな記事を載せたため,500㌦(約12万円)出せばアメリカのスペース・シャトルの席を予約できると考えた人々がいた。その後ほどなくして,スペース・シャトルに乗りたいという趣旨の手紙が米国航空宇宙局(NASA)に殺到し,14名の人は予約代金の500㌦の小切手をすでに送ったとのことであった。しかし,その雑誌の記事は実際には科学的な機材のための予約に言及していたので,NASAは事情を説明する手紙を送り,小切手を返さなければならなかった。
キリスト受難劇をめぐる熱い論争
◆ ドイツ連邦共和国の有名なオーベルアンメルガウのキリスト受難劇は,ここ数年論議の的となってきた。というのは,その劇ではユダヤ人がイエスを殺したことになっているからである。気を悪くしているユダヤ人の諸団体は前回その劇が上演された1970年に,7万の予約を取り消させることに成功した。10年に1度上演されるこの劇には普通50万人近い人々が集まる。ユダヤ人の苦情を受け入れて,今年は脚本から36か所が削除されたので,上演時間は8時間から6時間に短縮された。それでも一つの団体は満足せず,その脚本は,「本来ユダヤ人を排撃するものだ」と述べた。しかし,ユダヤ人がイエスの殺害に荷担したことは,聖書にも出ている歴史的事実なので,劇の出演者の一人はこう述べた。「キリストの物語から反ユダヤ主義を示唆する点をぬぐい去ることは,第二次世界大戦の歴史から反独的な箇所をことごとく除き去ることと同様に不可能だろう」。
代替エネルギー
◆ タイ政府は最近3か月間にわたって,エネルギーを保存する試みを行ない,テレビ局に午後6時から8時まで放映を中止するよう命じた。また,石油の輸入量を削減するために,夜間家庭の灯火を暗くすることも求めた。しかし,タイの人口・地域社会開発協会は,政府のそうした措置によって人口が増加する危険があるとみている。その対策として,同協会は,“灯火管制”中,妊娠調節用の器具類の提供や断種手術を無料で行なうことを申し出た。
テレビが引き起こした恐るべき事件
◆ 悪霊に取りつかれた人を描いた映画「エクソシストII」が米国のテレビで最近放映されたが,テキサス州のウィチタフォールズで4歳の少女と母親がそのテレビ映画を一緒に見ていた。話によると,その映画の一場面で,悪霊を追い払うために少女の心臓をえぐり取る光景が映し出された。テキサス州のその幼い少女は,映画の少女と全く同じ手口で殺されているところを後日発見された。少女の母親が殺人の罪で告発された。
あきれた電話料
◆ 米国政府の電話の年間使用料は今や10億㌦(約2,400億円)を上回るまでになっている。その大半は長距離電話料である。ワシントン特別区内だけでさえ,連邦政府諸機関は約4,100万回の長距離電話をかけている。しかも,そのほとんどは日中にかけられる。この巨額の電話使用料には,国防省および秘密調査機関の使用した電話料は含まれていない。
働く女性の増加
◆ 国連の国際労働機関によると,現在全世界に,「経済活動に従事している」女性が約6億人いる。1950年当時の女性労働人口は約3億4,400万人であった。同機関の話では,女性は世界の労働力の3分の1を占めているものの,職種,賃金,労働条件の点では一般に男性と同等の扱いを受けるまでには至っていない。
僧職者のアルコール中毒
◆ バチカンで開かれた修道院長のある会議の席上,ヨセフ・マクナマラ司祭は,司祭や修道女が酒を飲みすぎていると言明した。同司祭は,「司祭をはじめとする聖職者の間でアルコール中毒が増えており,それは世界的規模の問題となっている」と語った。同司祭は,問題を抱えている司祭を援助する目的で設立された,米国に本拠を置く修道会“聖霊の僕”会の総長であるため,この問題をじかに知る立場にある。
緊張のしすぎ
◆ シカゴ警察の発表によると,30歳のある男がシカゴ連邦貯蓄貸付組合の事務所に入り,出納係の女性にカウンターにある金をそっくりよこすよう要求する事件があった。男は片手をポケットに突っ込み,ピストルを持っているふりをしていた。出納係が現金を封筒に入れて犯人に渡したが,犯人はさらに多くの金を要求し,硬貨も渡すよう求めた。出納係が封筒に硬貨を詰めたところ,封筒が破れてしまった。出納係の女性は硬貨を入れる布袋を取って来ると言って席を立ったが,戻ってみると男は気を失って倒れていた。強盗を客と思っていた別の出納係が電話で救急車を呼んだ。強盗未遂犯が目を開けると,警官が待ち構えていて,男を逮捕した。
ヘビはヘビ
◆ 米国,ルイジアナ州モンローの動物園から雄のコブラをテキサス州に送り,雌のヘビと交尾させることになった。モンローの動物園は生まれたヘビの半数を受け取ることになっていた。ニューヨーク・ポスト紙によると,12匹のヘビが生まれ,半数の6匹がルイジアナに送られて来たが,「父親は戻って来なかった。雄を呼び寄せた恩知らずの雌ヘビが割当ての仕事を果たした相手を食べてしまったのである」。
セックスでは教会も国家も一つ穴のむじな
◆ ロイター通信によると,「ロンドンの売春宿が手入れを受け,居合わせた客の中には英国議会の上院議員1名,英国教会の教司付司祭数名,アイルランド議会の議員1名のいたことが判明した」。これは,売春宿の娼婦たちを取り仕切っている女性の裁判の際に明るみに出た。
日本の“スターダスト80”
◆ “スターダスト80”というのは,家庭のごみの一部をトイレットペーパーに変える新計画の名称である。家庭のごみの約43%は紙類であるので,紙の一部を他のごみから自動的に区分けする研究が進められてきた。工業技術院の話では,これに成功したとのことである。すでにこの発表がなされた時点で,横浜の実験プラントでは再生紙を地元の製紙業者に渡し,それから4万巻きのトイレットペーパーが製造されていた。品質は一般に売られているものにひけをとらないと言われている。その上,値段は半分になるとのことである。
日本人は今でも反戦論者か
◆ 戦争の記憶がこびりついているため,日本国民の思想は概して反戦的であると多くの日本人は考えている。数種の地方雑誌が,兵役を命ずる法をどう受けとめるかについて日本の若者に世論調査を行なった。ウィークリー・ポスト誌の報告によれば,十代後半の男子のうち「国のために武器を執れ」という命令には従わないと答えた人は70%だった。それとは対照的に日本の青年商工会議所は,青年実業家の中で国民皆兵に反対を唱えたのはわずか41%だったと伝えている。これらの実業家の過半数(53.9%)は日本の核武装に賛成している。
戦争に対する不安?
◆ 米国政府が将来に対する不安を示すような幾つかの措置を取っていることはあまり知られていない。例えば,連邦緊急管理局は,非常用に蓄えてあるアヘン化合物の量を今後2倍にすると伝えられている。この特別な鎮痛剤が存在するのは,「防衛問題の専門家が,核戦争の生残者には,この種の薬物が当局の以前の見積もり量をはるかに超えて必要とされる,と判断している」ためである,とニューズウィーク誌は伝えている。それに加え米国陸軍は,将来に危機的状況が生じた場合に再徴兵の対象となる60歳以下の退役した将校や下士官約20万人に関する告示を発表した。「今まで,平時に退役軍人が動員の対象とされたことは一度もなかった」とニューヨーク・タイムズ紙は述べている。
アラスカの「巨大な電線」
◆ アラスカにある石油のパイプラインには意外な特性が備わっている。「巨大な電線と言ってもよいだろう」とロンドン・タイムズ紙は述べている。そのため,「多量のサージ電流が検出されている」。北方では大気中の磁気変化が特に激しく,そのためアラスカのパイプラインの壁に電流が生じ,パイプラインがまるで変動する磁場に置かれた電線のようになるものと思われる。50アンペア以上の電流が測定されたが,大気の擾乱が最大になる時期には1,000アンペアもの電流が流れるものと予想されている。(普通の家庭の差し込み口には約13アンペア流れている。)これによって生じ得る問題は,金属の腐食が早まることとパイプラインの電子記録装置が故障することであると科学者たちは述べている。
手に負えない少年
◆ オーストラリアのシドニーに住む18歳の少年は,自動車を不法に使用したかどで週末拘留処分を言い渡されたが,その後再び法廷に立った。少年の弁護士の論じたところによれば,少年は職を失い,刑務所に行くだけの足代もなかったので,刑務所へ行くための車を盗んだのだという。下級判事は今回,懲役12か月の判決を少年に下し,少年に対して,「君は全く手に負えない。これ以上寛大にしても何の益もないことは全く明白である」と述べた。