前書き
聖書をその原語であるヘブライ語,アラム語およびギリシャ語から現代の言葉に翻訳することは,重い責任の伴う仕事です。聖書は,昔の聖なる人々が霊感を受けて今日のわたしたちの益のために書き記した,66冊から成る神聖な書物であり,その翻訳は,聖書の著者であられる天のエホバ神のお考えやみ言葉を他の言語に移し換えることを意味します。
これは人に厳粛な気持ちを抱かせます。この仕事に携わる翻訳者は,聖書の著者であられる神に対する恐れの念と愛を抱いており,そのお考えや宣言をできる限り正確に伝えなければならない,という特別の責任を神に対して感じます。翻訳者たちはまた,永遠の救いのため,至高の神の霊感の言葉を,その翻訳に頼って熱心に研究する読者に対しても責任を感じます。
献身した人たちから成る当委員会は,このような重い責任を自覚しつつ,長年にわたって聖書の「新世界訳」を刊行してきました。その翻訳は当初,1950年から1960年にかけ,6巻に分けて英文で発表されました。聖書は実際にはただひとりの著者による1冊の本ですから,これらの分冊すべてを1巻にまとめることが翻訳者たちの最初からの願いでした。分冊で発表された最初の版は欄外参照資料や脚注を載せていましたが,1巻にまとめられて1961年に発表された改訂版には,脚注や欄外参照は載せられていませんでした。改訂第2版は1970年に発表され,脚注付きの改訂第3版は翌1971年に発行されました。1969年に当委員会は,「ギリシャ語聖書王国行間逐語訳」を発表しましたが,それは,ウェストコットとホートによって校訂されたギリシャ語本文(1948年再版)の各行の下に英語への字義通りの訳を逐語的に掲げたものです。発行以来35年の間に,「新世界訳聖書」は,その一部もしくは全体が他の10の言語に翻訳され,その印刷および頒布部数の総計は4,000万部を超えています。
この新しい版は,単にこれまでに出された改訂版の翻訳本文をさらに洗練しただけのものではなく,1950年から1960年にかけて初めに英語で提供された脚注の比較研究資料および欄外(相互)参照資料を全面的に一新し,改訂したものとなっています。
この改訂版の種々の特色およびその利用法については,序文をご覧ください。この1984年改訂版は,印刷,他の主要な言語への翻訳,および頒布を目的として,当委員会から,ペンシルバニア州の ものみの塔聖書冊子協会に譲り渡されました。わたしたちは,聖書の著者であられる神の霊に頼ってこの改訂版の作業を進めましたが,わたしたちにこのような特権を与えてくださったその神に対する深い感謝の念をもって本書を提供いたします。霊的な進歩のためにこの翻訳を用いる人々の上にその方の祝福があるようにと,わたしたちは祈ります。
1985年1月1日,ニューヨーク州,ニューヨーク市