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なぜ宇宙探検が行なわれているのか目ざめよ! 1973 | 8月8日
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なぜ宇宙探検が行なわれているのか
人間の行なってきた数多くの宇宙探検のおもな理由の一つは地球外生命の調査にあるということを,読者はご存じでしたか。
進化論を信ずる科学者は,生命は果てしない宇宙の至る所に存在する他のどれかの惑星でも進化しているに違いないと主張します。彼らはまた,他の惑星の探索は地球における生命の起源の問題に解明の光を投ずるものと期待しています。
また多くの科学者は,今や宇宙には知性を持つ進化した生きものがたくさんいるのではなかろうかとも語っています。そこで進化論者たちは地球外生命を調査する大規模な計画を進めているのです。
事実,米国立科学アカデミーの宇宙科学委員会のまとめた報告によれば,地球外生命の調査は,「最大の妥当性と意義とを持つ科学的企画であり…その重要性および生物学にもたらす結果からすれば,宇宙科学のあらゆる目標の中で ― 実際,宇宙計画全体の中でこの研究が何ものにもまして優先されるのは当然である」と指摘されています。読者はこのことに同意されますか。
もちろん,人間が宇宙探検を行なう主要な理由はほかにもあります。天体の組成や種々の惑星の表面の状態の調査その他,科学上のさまざまな目的がうんぬんされています。
また,好奇心や,「不可能」なことを行なってみたいという欲望も,人間の行なう宇宙探索の要因となっています。
それがすべてではない
実際,人間の行なっている宇宙探検には,科学的啓発を求める願い,生命の調査研究,「不可能」なことを行なってみたいという人間の好奇心や欲望以上の事がらが関係しています。それは何ですか。国家主義的威信です。
たとえば,アメリカの宇宙計画は,ソ連がスプートニクを軌道に打ち上げた後に真剣に開始されました。ですから,「静寂への旅」と題する本の筆者はアメリカの宇宙開発の偉業について次のように述べました。
「この計画は災いの中から生まれた。それは当面の危機,つまりソ連の宇宙計画の勝利によってもたらされたと考えられる危機に面してあわてて講じた対策として始められた。……しかし,その脅威の決定的な局面は,それがアメリカの威信にかかわる点であった。それこそケネディ大統領を動かした恐れであった。……威信……が結局,アメリカはソ連に打ち負かされているわけにはゆかないという信念を生み出したのである。言いかえれば,威信が世界における勢力と同等視され,月は世俗的勢力を増大させる媒体とみなされたのである」。
威信が主要な動因であったことは,米副大統領にあてた1961年4月20日付のケネディ大統領のメモからもわかります。同副大統領は当時,宇宙評議会の議長でした。そのメモの中でケネディ大統領は次のように尋ねました。
「われわれは,宇宙空間に実験室を打ち上げるとか,あるいは月周回飛行,またはロケットの月面着陸,もしくは有人ロケットによる月旅行を敢行するとかして,ソ連を打ち負かす機会を持てるであろうか。われわれか勝利を博せる劇的成果を約束する何らかの他の宇宙計画があるであろうか」。
それで,宇宙計画の競争が始まりました。これまでにソ連とアメリカの行なった宇宙飛行は合計1千件を上回っています。したがって,宇宙探検に関しては,進化論者による地球外生命の調査研究よりも国家主義的威信のほうがより直接的関係を持っています。
提起された疑いや質問
アポロ月飛行計画が成功し,飛行士が無事帰還したとき,その偉業は大いにたたえられました。ニクソン大統領は,「われわれはこの偉業に神の御手の働きを認めることができるのではあるまいか」と評したほどです。
しかし,その点を疑う向きもありました。たとえば,1973年1月1日号,タイム誌はこう評しました。「こうした[ニクソン大統領の]声明の誤りは,宇宙征服はそのために神が何らかの特別の保護を差し伸べることを意図した純粋の善行であるという仮定にある。もし動機が ― それも特に,アポロ計画のための政府支出に対して賛成票を投じた多くの者たちを動かした露骨な盲目的愛国心が考慮されたのであれば,同計画は善意どころか神の憤りを伴うものとなっていたであろう」。
実際,人間の成し遂げた宇宙飛行の偉業は幾つかの疑いや質問を引き起こしました。最大の質問の一つは,たとえばアポロ月飛行計画のためには250億㌦(約7兆円)が支出されましたが,はたしてそうするだけの価値があったかどうかという問題です。そのお金を地上の状態をいっそう望ましいものにするのに役だてていたなら,どれほどのことが成し遂げられていたでしょうか。アミタイ・エツィオニは自著,「月のおはじき」の中で,「われわれが考えつく唯一の『不可能なこと』とは,月をきわめることであろうか」と問い,こう述べています。「地球はかつて一度も餓死や戦争から解放されたことがない。『不可能なこと』に挑戦したくてたまらない人たちに,こうした問題と取り組んでもらいたいものである」。
その著者はまた,宇宙探検を推進するために挙げられている数多くの科学上の目標が適切かどうかに関しても疑問があるとして,次のように述べています。「宇宙探索は『宇宙はどのようにしてその機能を営むか』『生命はどのようにして地上で始まったか』を教えてくれるであろう,という声明は理路整然として考え方に対するゆゆしい侮辱であり,それは興味深いが,探検のセンセーショナルな面からはかけ離れた,けばけばしい包装品ともいうべきものである」。
アメリカ合衆国の少なからぬ人びとは,アメリカの国旗を6回月面に立てるのに250億㌦を投じたのは,それだけの価値のあることだと考えています。しかし,すべての人がこのことに同意しているわけではありません。「静寂への旅」の筆者たちはこう述べています。「事の成り行きが強力に示すところによれば,アポロ計画に求められた短期的影響の点で,同計画は20世紀のいっそう明白な誤算の一つとみなされるであろう。当面の任務は完全に遂行されはしたものの,同計画の最終目標の達成は水泡に帰した。人間は月面を歩んだが,アメリカ人の生き方を引きつける力の点では何ら偉大な躍進はもたらされなかった」。
しかし,アメリカはアポロ計画から250億㌦相当の威信を獲得しなかったとはいえ,確かに同計画は月に関する新たな理解を人間に与え,月に関する人間の理論の幾つかをいや応なく改めさせるものとなりました。
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月 ― 何が発見されたか目ざめよ! 1973 | 8月8日
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月 ― 何が発見されたか
人間が月へ行って戻って来れば,いくつかの驚くべき事実が明らかにされるのは必至でした。科学的にいって,その種の事がらは数多くありました。その一つは月そのものに関する事がらです。それまで,月は比較的簡単な天体と考えられていました。
しかしそうではありませんでした。米航空宇宙局の月科学の副主任R・J・アレンビーはこう述べています。「おそらくわれわれが学んだ最も重大な事がらは,月は ― 多くの人びとが考えていたような単なる『球状の小塊』ではなくて ― 非常に複雑な天体であるということであろう。アポロ飛行計画によって多くの科学者は振り出しに戻ったも同然である。一般に受け入れられる新しい概念を提供するには何年もかかるであろう」。
さまざまな発見
月はもはや単なる「球状の小塊」ではなくなった以上,月はもともと地球の表層部から飛び出たものであるという一般に受け入れられている理論についてはどうですか。最近の科学的報告はこう述べています。「月は地球の上部地殻から引きちぎられてできたとする考えは,アポロ飛行のもたらした種々の発見の結果,事実上葬られてしまった」― 1972年12月4日付,ニューヨーク・タイムス紙。
月の組成に関しては,アポロ16号の飛行により,月の物質はアルミニウムやカルシウムに富んでいることがわかりました。月の岩石には遊離鉄も含まれていました。アポロ11号の採集した岩石標本からは68種類の既知の元素が見つかりました。月の岩石は本質的にいって,地球の岩石の成分と同様の物質で構成されています。しかし,違う点は成分の割合です。
たとえば,月の岩石のカリウムに対するウラニウムの含有量の割合は,地球の典型的な岩石の場合の4倍にも達することがわかりました。月の岩石に普通に見られるチタンの含有量は,チタンを非常に豊富に含んでいる地球上の典型的な岩石の場合の2倍余に達することがわかりました。月の岩石に見いだされた元素そのものではなく,元素の組み合わせは確かに「地球的なもの」ではありませんでした。月関係のある科学者が述べたとおりです。「アルファベットは同じでも,文法が違うようなものだ」。
1969年に行なわれたアポロ12号の打上げによって,月には磁場の存在することがわかりました。それ以前の無人宇宙船による調査では,月の磁場は探知されませんでした。
月面の温度は摂氏約121度から同零下173度にまで達することがわかりました。また,月面に穴を堀ったところ,約30㌢深くなるごとに温度はだいたい1度ずつ着実に上昇することがわかりました。しかし,月の中心部は半融解状態か,あるいは比較的冷たい状態かについては依然はっきりしたことはわかりません。地震観測の結果は,中心部が半融解状態であることを暗示しましたが,月面および月周回軌道上での磁力計による測定結果を調べたある科学者たちは,月の内部は比較的冷たい状態であろうと考えています。
地球外の生命進化に関する調査についていえば,月面着陸を行なって調べた結果,ほんのわずかでも生物に似たものさえ発見できないことが明らかになりました。何らかの生物,あるいはかつて生きていた生物,つまり化石物質を捜し出そうとして顕微鏡調査も行なわれましたが,月面では何も見いだされませんでした。
読者は月の年齢について疑問に思ったことがありますか。初期のアポロ飛行のさいに持ち帰った岩石の年齢は,33億ないし37億年と推定されています。しかし,レモン大の1箇の岩石の年齢は46億年と推定されています。月の土壌の年齢は42億ないし49億年と推定されています。それで,1970年2月16日号,サイエンス・ワールド誌はこう述べました。「数人の科学者は,月の年齢は約46億年であることを認めた。地球や隕石の年齢もほぼ同じである」。
したがって,今では一般に,月の年齢は地球を含む全太陽系のそれと同じであるという点で意見が一致しています。これは,天と地が大体同じ時期に造られたことを示す聖書の創世記 2章4節の記述を確証する注目すべき事がらです。
偶然に軌道に乗せられたのではない
人間の宇宙探索の偉業によって明らかにされた,月に関する特筆すべき顕著な事がらがあります。つまり,月が偶然にその軌道に乗せられたとはどうしても考えられないということです。この発見について述べたウィリアム・ロイ・シェルトンは,「月に勝つ」と題する本の中でこう書いています。
「何ものかが,地球をめぐる現在の円形軌道に,あるいはそれに近い軌道に月を乗せなければならなかったということを思い起こすのは重要である。高度160㌔の高空で90分ごとに地球の回りを一周するアポロ宇宙船がその軌道に留まっているためには,大ざっぱに言って時速3万㌔の速度を必要とするが,それと全く同様,何かが月に,その質量と高度に即して必要とする精確な速度を与えなければならなかったのである。たとえば,速度や方向をでたらめに決めて地球から月をほうり出せたとは考えられない。人工衛星を軌道に乗せるよう努力しはじめた当初,われわれはこのことを知った。人工衛星を打ち上げるには,衛星本体が特定の速度を保って,地球の表面と平行な特定の高度の特定のコースに達しないかぎり,地球の引力との微妙な平衡を保つのに必要な,望ましい軌道に留まることを可能にする遠心力を持てないことを,われわれは発見した。
「たとえば,1958年3月5日の夜,以前のケープ・カナベラルで私は,首尾よく軌道に乗ればアメリカの2番目の人工衛星になる予定であったエクスプローラー
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