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    目ざめよ! 1982 | 10月22日
    • 激増する暴力行為

      暴力行為の根源

      ● 十代の少年4人が16日間暴れ回り,数人の年配の男性を殴り ― そのうちの一人は死亡 ― 二人の十代の少女を馬のむちで打ち,一人の男性の足にガソリンを浸した綿布を結んで火を付け,別の男性を7ブロック引きずり回したあげく川に投げ込みおぼれさせました。「すごい冒険だった」と少年の一人は言いました。「面白いからやっただけさ」ともう一人の少年は付け加えました。4人とも良い家庭の出で,学校での成績もよく,年下の子供たちの相談相手になっていました。

      ● 8人の子供を持つ,63歳のジョセフは眠れませんでした。起き上がってガレージへ行き,銃を2丁つかみ,近所の静かな通りを渡って,近所の人がプールサイドで開いていた水泳パーティーに向かって発砲しました。ジョセフは二人を殺害し,ほかの二人に重傷を負わせ,次いで自分のこめかみに致命傷を負わせる一発を撃ち込みました。警察はこの虐殺の動機をつかめませんでした。

      ● マージョリーは自分の住む,ぜいをつくした家の電動皿洗機の水が台所の床を水浸しにしてしまったためにかんしゃくを起こしていました。急いでモップを取りに走りましたが,丁度その時,6歳になる息子が甲高い泣き声を上げてその部屋に入って来ました。ところが,無視されたためにごみ箱の中味を広がってゆく水たまりの中にぶちまけました。マージョリーは息子の顔を力一杯平手打ちにしました。子供は恐れと痛みのために叫び声を上げました。次いで彼女は皮のベルトをつかみ,何度も何度も繰り返し息子のおしりをたたきました。やめることができなかったのです。

      ● 25歳になるリーの家族の間には,ある期間,悪感情がつのってきていました。この男は母親と妹に対して憤りを抱いていました。母親はリーが母親の物を盗んだと言って,家から出て行くよう命じました。ほんのしばらく後に,リーが母親に銃を向けて金を求めたときに,積もり積もった敵意が出てしまいました。「自分の母親を撃つことなんかできないわ」と母親は叫びました。リーが発砲し,母親は床にくずおれ,死亡しました。次いでリーは妹を二度撃ち,ひん死の重傷を負わせて逃亡しました。

      こうした話は枚挙にいとまがありません。攻撃的傾向を抑えない時に生ずる暴力行為は,多くの街角や家庭で幅をきかせています。あなたの隣人,親族あるいは友人の中に,そのような人がいたかもしれません。理由のない攻撃的傾向は,年齢・人種・経済・社会・民族などの違いとは無関係なのです。

      暴力行為があなたの生命や身内の方に影響を及ぼすことは十分あり得ます。暴力犯罪の数が世界的に劇的な増加を見せているからです。英国では,1970年から1980年までの間に,殺人が50%増加しました。ドイツ連邦共和国,南アフリカ,イタリア,カナダなどの国々はいずれも,警戒を要するような,暴力犯罪の増加を報告しています。「暴力行為に走る我が国の若者の数は増加の一途をたどっていることに疑問の余地はない」と,トロントの検察官代理は語りました。

      警察に通報される暴力行為は氷山の一角にすぎません。家庭というプライバシーの背後には,数えきれないほどの攻撃行動が隠されています。研究の示すところによると,人を最も殺しやすいのは,街をうろつく強盗ではなく,友人や知人や家族なのです。米国の社会学者の一チームは,「血のつながった兄弟姉妹の間,夫婦の間,親子の間の暴力行為は,『ほかのどんな個人同士の間におけるよりも,あるいは戦争や暴動を除けばほかのどんな状況よりもひんぱんに起こり得る』」ことを明らかにしました。

      確かに,今日の状況は聖書が2,000年前に預言的に描写していた事柄の成就となっています。「しかし,このことを知っておきなさい。すなわち,終わりの日には,対処しにくい危機の時代が来ます。というのは,人々は自分を愛する者……自然の情愛を持たない者……自制心のない者,粗暴な者,……となるからです」― テモテ第二 3:1-5。

      しかし,人々が非常に粗暴で攻撃的になり,罪のない人にしばしば激しい怒りを爆発させるのはなぜでしょうか。例えば,一人の若者は自分のガールフレンドの父親とささいなことで口論をしました。怒りを爆発させて暴力行為に走った若者はその人を撲殺し,ガールフレンドの妹を強姦してから刺し,ガールフレンドの弟をも刺して致命傷を負わせ,サークルベッドで寝ていた2歳の赤ちゃんをナイフで刺しました。後ほど刑務所で,この若者は自分が実際に人を殺したことを覚えていませんでした。そして,「あれやこれやがうっ積していて,それが一度にすべて出たのだと思います」と言いました。それから,信じられないといった様子で首を振り,こう付け加えました。『僕は,ここにいるのは自分なのだろうか,これをみんな自分がしたのだろうか,と疑いながらそこに座っていました』。

      この若者が,自分の内面に積もり積もった攻撃的傾向を抑えることは可能だったのでしょうか。そのような攻撃的傾向の根はどこにあるのでしょうか。親の世話をも含め,この若者のそれ以前の生活事情がからんでいたのでしょうか。若者の置かれた環境に原因があるのでしょうか。どこか体に悪いところがあったのでしょうか。それは若者自身の欠陥のある考え方の産物だったのでしょうか。しかし,このすべて以外にも,ご家庭に暴力行為を入り込ませないためにどんなことができるのでしょうか。続く一連の記事はこうした質問に探りを入れています。

      攻撃的な行動の根がどこにあるかについては現在数々の説があります。幾人かの権威者たちが原因また解決策であると考えている事柄を読者が理解できるようにするため,「目ざめよ!」誌の編集部員はこの分野で活動する4人の研究者をインタビューしました。このあと4ページにわたって暴力行為の根に関するそれらの研究者たちの意見を示す,インタビューの結果が示されています。

  • それは体か
    目ざめよ! 1982 | 10月22日
    • それは体か

      暴力行為の根源

      ● 米国ペンシルバニア州カーネギー-メロン大学のケネス・E・モイヤー教授は,インタビューの中で,わたしたちの体の一定の状況は脳の諸系統を刺激し,強い闘争的傾向を生み出すことがあると述べています。

      人がはっきりした理由もなく,乱暴になることがあると思われますか

      このことについてはかなりの議論があります。しかし,ある男の人が家族に対する憎しみを徐々につのらせていった,次のような事例は少なくありませんでした。この人は自分の妻と娘を刺そうとして,怒り狂った状態で病院に運び込まれました。脳腫瘍が見付かり,それが除かれると攻撃的な態度は消え失せました。脳腫瘍が必ずしもそのような行動を引き起こすわけではありません。それでも,脳のある部分に直接電気刺激を与えると,怒りを覚え,乱暴を働く患者がいることを実験は示しています。

      教授の研究は,暴力行為の原因としてどんなものがあることを明らかにしていますか

      男性ホルモンの過多や低血糖症,アレルギーなどのために,敵意を抱きやすくなる人がいることを示す証拠が幾らかあります。

      こうしたものは自動的に暴力行為の引き金になるのでしょうか

      そうではありません。わたしたちの行動は単なる内面的な感情以上のものの表われだからです。たとえ強い敵対感情があっても,人は自分の学習経験や環境などのゆえに,乱暴にならないこともあるのです。

      しかし,人によっては,乱暴にならないようにするのは難しいということですか

      そう思います。もっとも,必ずしも不可能というわけではありませんが。例えば,私の同僚のところへ,暴力に走りやすい自分の傾向を憂慮する一人の男の人がやって来ました。検査の結果,脳に障害のあることが分かり,脳に電極を差し入れてその障害を見付け出す努力が払われました。検査の途中で,「女房を殺してやるんだ!」と言って立ち上がって出て行こうとしました。医師に頼まれて,この人はもう一度自分の脳に電気的な刺激を加えてもよいと言いました。そこで医師は,暴力行為を抑えることで知られている脳の一中枢を刺激しました。その人は即座に友好的になり,「本当にありがとうございました。すんでのところで女房を殺すところでした」と言いました。

      脳の機能と体の化学的な働きを制御することが解決策になるでしょうか

      ある人にとってはそれが解決策になることもあるでしょう。しかし,それが唯一の解決策だとは思いません。本当の意味で制御するには,欲求不満を生み出す環境上の要素を正し,さらに体がどこも悪くないかどうか確かめてみなければなりません。

      攻撃抑制剤は役に立つでしょうか

      ある種のホルモンのバランスを調整する薬には効き目がありました。ある人々が人生の特定の時期を切り抜けるのにかなり役立つ薬は数々あります。こうした薬は,医師によって注意深く投与されれば,患者を歩く死人のようにしてしまうことはなく,脳の中の特定の問題を治療することになります。

      攻撃的傾向をなくすには,結局は学習に頼らなければならないとおっしゃるのはなぜですか

      脳に対する刺激や薬の使用はごく限られています。雇われた殺し屋や戦時中の爆撃機のパイロットのように,乱暴ではあっても,相手に対して個人的な敵意を抱いてはいない人には,そうしたものは効き目がありません。しかし,乱暴でない人の積極的な模範を備えるためにも,教えが必要とされます。

  • それは食べ物か
    目ざめよ! 1982 | 10月22日
    • それは食べ物か

      暴力行為の根源

      ● 米国オハイオ州カイヤホーガ・フォールズの主任保護観察官バーバラ・リード女史とのインタビューから,同女史が10年以上にわたって,家庭内暴力を含む軽微な犯罪を行なった人々を,それらの人々の食べ物を調節することによって治療してきたことが分かりました。

      お仕事はどんな成果を収めていますか

      私たちの部門で扱った1,000件の事例について,5年間の統計的な詳しい調査を行ないました。四つの裁判所と当方とを調べた結果,89%は再び問題を引き起こしてはいないことが分かりました。

      あなたのやり方はどんなところがほかと異なっているのでしょうか

      通常のカウンセリングに加えて,違反者の食事や運動の習慣をよく調べ,提案を与えます。

      普通,どんなところに問題がありますか

      そうした人々の大半は朝食をとりません。そうした人々は,ドーナッツ,菓子パン,あめ,アイスクリーム,清涼飲料水などの形で,通常,1日に小さじ30杯から150杯もの砂糖を摂取しています。そうした人々は平均して1日に,500ccの清涼飲料水を3本から16本飲みます。めったに野菜は食べません。ミルクや特定の食品に対するアレルギーを示すこともあります。

      食べ物と犯罪はどのように結び付いていますか

      犯罪行為は一つの要因によってのみ引き起こされるものではありません。しかし,白砂糖やカフェイン,アルコールなどを含む食べ物を絶えず摂取していると,体にストレスを高じさせる反応が引き起こされます。アドレナリンが増えると反応する副腎はやがてほぼ使い尽くされてしまいます。ところが,人が犯罪行為やけんかをすると,アドレナリンは発散されます。このようにエネルギーを燃え上がらせるため犯罪行為や敵対行為に走る人もいると思います。また,悪い食習慣は人をいらいらさせ,暴力行為を起こしやすくさせます。

      乱暴な人は自分の行為を食べ物のせいにできるでしょうか

      わたしたちには自分の精神を平静に保つ責任があります。ある種の食品が問題を引き起こすことを知っていながら,なおかつそれを食べるなら,その人にはアルコール中毒患者が酒を飲む場合と同じように責任があります。その人は,どんなことになるか分かっているのです。言うまでもなく,大抵の人はこの問題について全く知りません。

      同じ物を食べていても,犯罪者にならない人がいるのはなぜですか

      人は皆異なっています。ある人は何年間もアルコールを飲んでいても,アルコール中毒にはなりません。中には,砂糖やカフェインに対してより敏感に反応する人がいます。遺伝によって依存を受け継ぐことがあるのかもしれません。私たちの扱ったケースの150件中50件は,親か祖父母が糖尿病や低血糖症であるとの診断を受けていました。

      食事を改善すれば家庭内暴力を和らげることができるでしょうか

      確かにそう言えます。私たちが扱った家庭内暴力の事例では,例外なく,ひどい食事が主要な問題になっていました。もちろん,これにはアルコールの乱用が含まれています。しかし,人々が“栄養価の少ないスナック食品”を大量に食べていたというケースが少なくないのです。けんかばかりしていた一夫婦は,コーヒーと清涼飲料水とアイスクリームで生きているようなものでした。私は,新鮮な野菜,新鮮な果物,全粒小麦のパン,朝食用穀物食<セリアル>から成る健康的な食事と1日に水をグラスに6杯飲むよう取り決め,一緒に散歩をするよう勧めました。2週間で事態はよくなりました。良い食事と運動はストレスに対処する優れた手段です。

      この方法は社会復帰の分野でどの程度用いられているのですか

      ほとんどの人はこのことについて知りません。しかし,試した人は効き目があることを知っています。現在のところ,少なくとも七つの州に同様の計画があります。

  • それはテレビか
    目ざめよ! 1982 | 10月22日
    • それはテレビか

      暴力行為の根源

      ● レナード・エロン博士はテレビの暴力が子供に及ぼす長期的な影響を調べてきました。シカゴ・サークルにあるイリノイ大学の社会科学の研究教授であるこの博士は,インタビューの中で,人は乱暴な行動を学習するのであって,それにはテレビが大きな役割を果たしている,と述べました。

      博士の研究はどんな点で独特のものでしたか

      私共は,ある若者が非常に攻撃的になる原因を探るため,21年間にわたって同じ若者を調査しました。1960年に,875人の8歳児を対象にして調査し始めました。10年後,私共はそのうちの475人とその仲間たちに再びインタビューしました。そして,今,400人以上に対する20年目の追跡調査を終えたところです。

      結果はどのようなものでしたか

      8歳の時にテレビの暴力番組を好む傾向が強ければ強いほど,その時も,また10年後にもその子の敵がい心が強くなることが分かりました。これと同じ調査が5か国で行なわれていて,既にフィンランドとポーランドからの調査結果が手元にあります。その調査結果は私共の調査結果を確証しています。

      テレビの暴力番組が攻撃的な態度を引き起こすと思われますか。それとも乱暴な子供がただ暴力番組を見たがるにすぎないのでしょうか

      驚いたことに,8歳の時に攻撃的ではなかったのにテレビの暴力番組を多く見た子供は,19歳になった時に,8歳の時極めて攻撃的であったものの,ほとんどテレビの暴力番組を見なかった子供たちよりも,著しく粗暴になっていたことが分かりました。

      どうしてテレビの暴力番組を見ると攻撃的になるのでしょうか

      そういう番組は問題を解決する方法を教えます。そして,そうした解決策を何度も何度も繰り返し並べ立てます。番組や漫画の主人公が暴力を戦術としてうまく用いるのを見て,自分たちも同じようにしようとするかもしれません。

      テレビの暴力番組が唯一の原因でしょうか

      そうではありません。子供の生い立ちも大きな影響を及ぼします。両親が互いにけんかをしたり,子供をうとんじたり,過酷なお仕置をしたりすると,子供はより攻撃的になることが分かりました。しかし,私共の研究の示すところによると,攻撃的な態度を示したために罰を加えられたとき,親が自分のことを気遣っていてくれると感じた子供は,攻撃的な態度を和らげ,罰が効を奏します。もっとも,気遣いを示すような親は普通過酷な罰は加えないものです。

      テレビの暴力番組と乱暴な親とでは,どちらが大きな影響を及ぼすでしょうか

      一概には言えませんね。しかし,8歳児が19歳になってどれほど乱暴になるかを定める点で,親の不一致や社会的な地位など,ほかの何よりも,その子がいつも見るテレビ番組が将来を正確に知るための手がかりとなることは分かっています。最近の3年にわたるシカゴでの研究で,テレビの暴力番組を沢山見ていたある子供たちの態度を矯正しました。すると,生活のほかの分野には何も変化が生じなかったのに,その子たちの攻撃的な態度は和らぎました。

      この問題に関して親たちにどんなことができるとお考えですか

      親は子供の見る番組を規制しなければなりません。また,テレビで見る事柄は現実ではなく,人を殴って問題を解決してはならないという点を子供たちに説明することです。テレビがいかに非現実的かを説明する小さな努力を私共が払うだけで,目覚ましい成果がありました。親が同じことをすれば,それ以上大きな成果があるに違いありません。

  • それは考え方か
    目ざめよ! 1982 | 10月22日
    • それは考え方か

      暴力行為の根源

      ● 「犯罪は犯罪者の物の考え方から生ずる」と,米国バージニア州アレグザンドリアの臨床心理学者兼コンサルタントのスタントン・セームナウ博士は,インタビューの際に述べました。同博士は,かたくなで多くの場合乱暴な犯罪者を対象にした無数のインタビューと,そうした人々を社会復帰させるための努力とを通じて,犯罪者の精神を探ることに17年を費やしたチームの一員でした。

      環境や育ちが決定的なものではないとお考えになるのはなぜですか

      貧しい人々の大半は犯罪者ではありません。裕富でも犯罪者になる人は少なくありません。少数派の大半は犯罪者ではなく,多数派の中にも犯罪者になる人は大勢います。私たちが扱った犯罪者の半分以上は安定した家庭の出でした。そうした人たちの兄弟や姉妹や隣人は,普通,同じ環境の下で生活しながら犯罪の道に進みませんでした。

      環境を変えるだけでは十分でないと言われるわけですか

      その通りです。スラム街を一掃しても犯罪はなくなりません。犯罪はスラム街にではなく,人の精神に宿っているのです。環境を変えたところで,内面的な人となりは変わりません。聖書も,『その心に思うごとくその人となりもまたしかればなり』と述べている通りです。(箴言 23:7,文語訳)犯罪者の考え方を変えなければなりません。

      調査の結果,最も一貫して見られる考え方の誤りはどのようなものであることが分かりましたか

      言うまでもなく,犯罪者たちは誤った考えを誤った考えとはみなしません。しかし,「犯罪者の性格」の中で,私たちは欠陥のある考え方の型を52列挙しました。その中で最も一貫して見られるのは次のような考え方です。(1)世界は自分たちのもので,何であれ自分たちの欲するものを,望むときにいつでも取ることができるという見方。(2)恐れを切り断つ能力。極度に楽観的である。けがをしたりつかまったり良心のとがめを感じたりすることに対する恐れさえも,その瞬間は完全に切り断たれてしまう。(3)チームワークの感覚がない。9人の犯罪者から成る野球のチームがあれば,各々自分がキャプテンだと考えるであろう。(4)極端な考え方をする。自分は第一人者か,さもなくば全く取るに足らない者と考える。

      どのようにして考え方を変化させるのでしょうか

      当人が変える気にならなければなりません。当人がふさぎ込んでいるときに近付くようにします。拘禁されたり,自分の家族を失いそうになったりしているときがよいかもしれません。その人の生い立ちについて聞いて,自分は環境の犠牲者で救いようがないと考えさせるのではなく,当人の生活がいかに堕落しているかを丁重な仕方で話します。本人の自己嫌悪を増し加えるように努めます。

      どんな明確な理想を教えるのですか

      全面的な傾倒の必要性,また他の人に責任を転嫁してはならないということです。幾らかの進歩を示していた一犯罪者はこう述べました。『両親がもっと愛を示していてくれたなら,自分は犯罪者にはなっていなかっただろうとこれまでは考えていました。でも,今では自分のような息子だったからこそ,親がそのようになってしまったのではないかと思います』。「自分がしなければならない」が「自分にはできない」に取って代わりました。また他の人に対する感情移入を教えました。

      犯罪に戻ることを防ぐものは何ですか

      私たちはそうした人々に自分で自分の批評家になるよう,つまり自分の考え方が道徳的に正しいかどうか常に自ら鑑定するよう教えました。このように絶えず道徳的に自らを評価することが,犯罪をとどめる最も重要な方法です。

      博士の努力はどれほど成功を収めていますか

      私たちのやり方を開発し,それにみがきをかけた後,1970年から1976年までの間に30人の大物の犯罪者と密接に働きました。そのうちの13人は完全に変化を遂げ,法律をよく守る市民になっています。

  • 暴力行為を根絶することは可能か
    目ざめよ! 1982 | 10月22日
    • 暴力行為を根絶することは可能か

      暴力行為の根源

      暴力行為の原因は複雑です。前述のインタビューの中に挙げられている要素に加えて,アルコール中毒,欲求不満,精神病,遺伝,さらには脳の中の化学的な不均衡をさえ挙げる人も少なくないでしょう。しかし,本当に挑戦になるのはその根を明らかにすることではなく,暴力行為を除き去ることです。

      例えば,北米のその国でも,暴力犯罪による死亡率が最も高い州の出身者である,ある新聞の編集長はこう語っています。「これは我々の血統なのだ。例えば,この私は教育を受けており,当然そんなことをしてはいけないことは分かっているはずである」。ところがこの人は,自分もカッとなれば,人を殺すであろうことを認めました。

      ですから,暴力行為を根絶するには世俗の教育以上のものが必要とされます。しかし,なぜでしょうか。イエス・キリストによると,「心から,邪悪な推論,殺人……が出て来(る)」からです。(マタイ 15:19)暴力行為を除き去るには心を変化させなければなりません。しかし,そうするだけの力のあるものが何かあるでしょうか。

      神の言葉の力

      使徒パウロはこう書きました。「神の言葉は生きていて,力を及ぼし,どんなもろ刃の剣よりも鋭く……心の考えと意向とを見分けることができるのです」。(ヘブライ 4:12)聖書の中に含まれている神からの音信は心を動かします。心を動かすその力は1世紀中に特に顕著に現われました。厳しい環境にもかかわらず,クリスチャンになった人々は自分たちの性格を変え,激発的な怒りの代わりに優しい愛情を身に着けました。―コロサイ 3:7-11。ローマ 1:29。

      「そうであれば,我々だけが犯罪と無縁である」。これは2世紀の自称クリスチャンの著述家,テルツリアヌスの誇らしげな言葉です。そして,クリスチャンではない人々に対し,彼らの暴力的な犯罪者の長いリストの中からクリスチャンの名を一人でも挙げることができるなら,挙げてみるがよい,と述べています。

      しかし,それは神からの音信を学ぶことによってのみもたらされたわけではありませんでした。こうした事柄を知りながら,その音信に従わなかったために益にあずかれなかった人たちもいました。ですから心からの従順が神の聖霊の助けと相まって,変化を生み出したのです。次ページに掲げたわくの中には神からの実際的な助言の幾つかが示されています。―ヘブライ 4:6-11。コリント第一 6:9-11。

      今日効を奏するか

      「世界で最も行儀の良いグループの一つとしての評判」がある,と「新カトリック百科事典」はエホバの証人のことをほめています。全体としてエホバの証人の間に犯罪や暴力が見られないことを,国や自治体の役人たちも同様に称賛しています。現在エホバの証人は,聖書を学び,その内容を当てはめるよう150万近い家族を助けています。次に挙げる幾つかの経験はその成果を示しています。

      アルは13歳の時から刑務所に類する施設を出たり入ったりしていました。殺人未遂,強盗,誘かい,放火などの罪で30年の刑に服していたときに,その刑務所に週に一度やって来るエホバの証人と聖書を研究するようになりました。やがて,アルは自分の人格を変化させただけでなく,1981年に釈放されるまで,同じく人格を変えるよう刑務所内の他の人々を助けました。この人の詳しい経験談は,「ライオンから子羊に」という主題のもとに23ページに載せられています。

      別の例は,背が高くがんじょうな体つきをした男性で,けんかならいつでも応じるという人だったビルです。その気の短さがたたって,何度も仕事を失いました。ようやく路面電車の車掌の仕事を確保しましたが,勤務中に二度暴力ざたを起こし ― 鉄の破片で一人の人を襲い,また自分を侮辱した別の人の顔につばを吐きかけた ― その後またもや解雇されました。やがて,この人はエホバの証人の集会に出席するようになりました。「エホバの基準を十分認識することを学び,二度とその基準を踏み外したくないと思いました。こうした基準を見いだしていなかったなら,今ごろは死んでいたことでしょう。聖書から真理を学んだおかげで,行動する前に時間をおいて考えることができるようになりました」と語るビルは,今では会衆の温和な監督になっています。

      ステラの悪態は一ブロック先からでも聞こえました。この女性は,通行人や郵便配達人,自分の子供たち,夫,果ては武装保安官にまでののしりの言葉を吐きました。ステラはすんでのところで夫を手おので殺すところでしたが,間一髪のところで外れました。彼女を爆発させかねないものは幾らでもありました。ある日のこと,フライパンで鶏を揚げていたところ,油が幾らか跳ねてやけどをしてしまいました。怒ったステラは鶏をフライパンごとドアの外に投げ捨ててしまいました。ところが,投げ出してしまってから夕食に食べる物がそれしかないことに気付いたのです。結局,鶏肉をきれいにして,それを揚げ終えなければなりませんでした。

      ステラはこう真相を話しています。「訪れたエホバの証人に,自分は気が短いのでクリスチャンには絶対になれないと話しました。しかし,聖書を勉強するのを手伝ってくれると申し出た婦人の穏やかさに深い感銘を受けました。私はぜひとも彼女のようになりたいと思いました」。「激発的な怒り」が神に対するゆゆしい罪であることを学んだ後,ステラは自分の気性を制御するよう努めました。―ガラテア 5:19-21。

      エホバの証人になった後にも,ステラは自分の霊を守るために絶えず努力しなければなりませんでした。姦淫にふける夫がほかの女性たちと浮気をしていたのです。ステラはこう説明しています。「ときには,主人を本当に殺してやりたいと思いました。でも,神に祈って,暴力を振るわないようにする力を与えてくださいと懇願しました。神はいつも私の祈りを聞き届けてくださいました。やがて,主人が完全に私たちを見捨てたときに解放がもたらされました」。ステラは神の助けを得て首尾よく自分の乱暴な行状を抑えることができただけでなく,娘の一人を助けて激しやすい気質を克服させ,キリストの弟子になるよう助けることさえしました。

      では,自分が感情を逆なでされた時にはどうしたらよいでしょうか。どうすれば家庭に暴力行為が入り込まないようにできるでしょうか。

      家庭に暴力行為が入り込まないようにするために

      ● 自分はどうして怒っているのだろうか,と自問してみる。何で腹を立てたのか見極めるようにする。

      ● 問題の原因に取り組む。うっぷんをはらすよりも,激しい怒りを静めるようにする。例えば,誇りや利己心のためにすぐに気分を害されるだろうか。そうであれば,自分のことを余り考えないようにする。また,人生の優先事項を分析してみる。物質を得ることが平和よりも大切だろうか。

      ● けんかが起きたら,その場を立ち去れるか。「言い争いが突然始まってしまう前にそこを去れ」。(箴言 17:14)一時的にせよ,その場を去ることにより,聖書の原則について思い巡らし,平静さを取り戻せる。

      ● 暴力行為は神の不興を買うことを子供たちに教える。(詩編 11:5)子供たちの見るテレビや映画を注意深く監督する。テレビは子供の行動に影響を及ぼさないなどと考えて自分を欺いてはならない。テレビはこれまでに考案されたものの中で,人間の行動に最も強力な影響を及ぼすものの一つであるという,証明済みの知識に基づいて,広告主は幾十億ドルものお金をつぎ込むのである。愛をもって子供を懲らしめ,無分別で残虐な仕打ちをして子供をいら立たせてはならない。子供たちのことをどれほど気遣っているか分からせるようにする。自分の模範によって,問題を解決する穏やかで親切な方法を悟れるよう子供たちを助ける。―エフェソス 6:4。

      しかし中には,どんなものであれ当人を変化させようとする助けを受け付けない人もいます。それでは,今日の暴力行為を根絶するための完全な解決策はどのようなものですか。

      完全な解決策

      「邪悪な者たちが草木のように芽生え,有害なことを習わしにする者たちが皆咲き出るとき,それは彼らが永久に滅ぼし尽くされるためなのです」。(詩編 92:7)聖書は,暴力を振るって他の人々を傷つける者たちを神が間もなく滅ぼされることを約束しています。神はご自分の天の政府,つまり王国を用いて,地球上から暴力を一掃されます。聖書は神のお用いになる王イエス・キリストについてこう述べています。『助けを叫び求める貧しい者……を彼は救い出すのです。……彼は虐げと暴虐から彼らの魂を請け戻し,彼らの血はその目に貴重なものとなります』― 詩編 72:12,14。

      その結果どのような状態がもたらされますか。「その日には義なる者が芽生え,豊かな平和が月のなくなるときまで続くことでしょう。そして,彼は海から海に至るまで,川から地の果てに至るまで臣民を持つことになります」― 詩編 72:7,8。

      何という魅力的な情景でしょう。平和を愛する臣民が地を満たすのです。そのような状態のもとで生活するのはすばらしいことではありませんか。現在の暴力に満ちた状態は,わたしたちが「終わりの日」に入って久しいことを示す証拠であり,わたしたちの生きているうちにエホバ神がこの変化をもたらすことを示す証拠です。そうです,暴力のない世界は確かに間近に迫っているのです。―テモテ第二 3:1-4。マタイ 24:3,10-14,34。

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