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ある人は法と秩序をどう見るか目ざめよ! 1970 | 1月8日
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ある人は法と秩序をどう見るか
現在の法と秩序は実際には自分たちの益になっていないと感じている人が少なからずいます。そうした人は単なる路上の安全や資産の保障以上のものを求めています。
たとえば,アメリカ,テキサス州ヒューストンのクロニクル紙は,「若者の中には,法と秩序ということばを不快に感じている者もある」と伝えました。多くの若者は,自分たちよりも年配の世代が造り上げた周囲の世界に反発しています。USニューズ・アンド・ワールド・リポート誌は,そうした反発の理由の一つを次のように述べました。
「戦死した者の約半数は,たいていの州においてまだ選挙権も与えられないような若者であった。年齢別に見ると,20歳の戦死者がいちばん多かった。……そうした若者のほとんどは職業的な軍人ではなく,軍服を着てまだ一,二年にしかならない者たちであった」。
自分たちが制定せず,また承認もしなかったにもかかわらず,自分たちが殺し,殺されることを求める法律に対して不満を感ずる若者が多くなっているのです。そうした若者はその種の法律を不当なものと見ています。
社会の少数者グループも現行の法と秩序に対して異なった見方をいだいているでしょう。ニューヨーク・タイムズ紙はアメリカの黒人の多くについてこう伝えました。「アメリカでの法と秩序の維持が強調される場合,黒人はそれを,自分たちの犠牲においてなされるものと見ている」。それで彼らが求めているのは,彼らに対して社会正義と機会の均等とを実現する法と秩序です。
また,貧しい土地に住む人々は,自分たちが圧迫されてやせた狭い土地に拘束され,経済的な隷属状態にあるのは,現行の法律のためであると感じています。
またある人々は,たとえそれほどの貧困を経験していなくても,ある種の法律を不当なものと感じています。たとえば,自分がかなりの所得税を払っているのに比べ,富裕な人々が免税項目への投資によって,ほとんどあるいは全く所得税を納めていないのを見るかもしれません。また道路の指定された側とは反対の側に車を止めて罰金を課せられた人もいます。十分な駐車地がなく,そこがただ一つのあいた場所であったのかもしれません。こうした事柄がいろいろ重なって不満がつのり,反抗気分になる人々もいます。
今日,物事の行なわれる方法に何か欠陥があることは明らかです。今日の世界の状態に対しては,至る所で不満が増大しています。どうしたら解決できますか。法律をいっさいなくし,秩序を全く無視してしまうことですか。そして,すべての者が自分の好むままに行動することですか。これは無政府状態,つまり全くの混乱に終わるでしょう。そうした状態を望む者はまずいません。なんらかの法が必要であり,なんらかの秩序が存在しなければなりません。
しかし,問題は,だれの法,まただれが定める秩序を求めるかということです。法と秩序が守られ,しかもすべての人に真の正義と平等を実現するような体制が存在しますか。では,今日までにどんなものが試みられてきましたか。人間が造り出したさまざまな体制は成功してきましたか。人々は問題の解決策を持っていますか。もしそうでないとすれば,だれが解決策を持っていますか。それはどんな解決策ですか。
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人々は解決策を持っているか目ざめよ! 1970 | 1月8日
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人々は解決策を持っているか
今日増大する不法に対してどんな解決策が提出されていますか。
ときに提案されることの一つは,もっと力を行使せよということです。「警察力を増強し,刑罰を重くせよ」と叫ばれています。
犯罪者が自分の悪行に対してなんらかの刑罰を受けるべきことを,正当に否定できる人はいないでしょう。聖書は,神が,ご自分の民であった古代イスラエルに対し,悪行者に対する刑の規定を含む律法を与えたことを述べています。その中には死刑も含まれていました。(民数 35:31。出エジプト 22:1-6)そして,今の時代にあって取り締まりを緩和するならば,事態はさらに悪化することが予想され,これを否定できる人もいないでしょう。
それで問題点は,今日の人間社会における法律的な取り締まりを強化すれば,犯罪の上げ潮を食い止めるのに効果があるかということです。
取締当局は問題を解決できるか
犯罪の増加に伴い,多くの土地では警察力が増強されています。しかし,警察力による犯罪の防止は,公衆の協力に依存するところが大きいという点を忘れてはなりません。今日,多くの土地において,警察に対する協力は最低の状態になっています。これに加えて,警察官自身も,心を腐敗させる誘惑的なさそいを受けやすいという立場にあります。
今日,警察力を増強することは,安全を守るという点でどの程度効果があるでしょうか。タイム誌1969年6月3日号がニューヨーク市について伝えた次の事柄は,あなたにとっても興味のあるものでしょう。
「同市の一区画ごとに警官を配置し,1日24時間パトロールさせるとすれば,年間250億ドルの費用がいる。これは[アメリカ]国防省の年間総予算の3分の1にあたる。
「これが可能であるとしても,それによって犯罪を食い止めることはできないだろう,と警察当局者は語っている。犯罪の過半は,住居,飲食店,建物内部の通路,エレベーターなど,警察官がパトロールしない場所で起きているからである」。
問題のむずかしさを認めた,アメリカ全国犯罪委員会の前委員長ジェームズ・ボレンバーグは,「単に法律を執行しても完全には処理できない犯罪行為が多い」と語りました。なぜですか。
なぜなら,法律の執行だけで,人の誤った欲望や憎しみの感情を正すことはできないからです。それは人の基本的な態度を形づくるものではありません。考え方の基本が誤っている場合,法律を執行するだけでそれを矯正することはできません。
また,法律を執行するだけで,不正,偏見,貧困などを取り除けるわけではありません。それは貪欲な人を寛大にならせ,ごう慢な人を謙そんにならせるわけではありません。法律を執行するだけで,不満や犯罪の原因となる状態をなくせるわけではないのです。
政府は何をできるか
地方当局者よりは大きな権力を持つ国の政府は問題を解決できますか。国々の政府はどんな実績を残していますか。
たとえば,諸国家の政府は相互の間に平和な関係を保ち,なんらかの問題が生じた場合でも,正当な原則に従い,秩序だった仕方で解決してきましたか。あなたご自身がその答えを知っておられます。1914年以来,諸国家は破壊の程度において先例のない大戦争に介入してきました。そのために,1億以上の人が殺され,またけがをしてきたのです! 家屋その他の資産に与えた損害は膨大な額に上ります。どの国も敵国に対する憎悪をあおりたて
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