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アルコールに頼るとどんなことになるか目ざめよ! 1978 | 3月22日
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あります。また,アルコールは,脳の呼吸中枢を麻ひさせ,呼吸を緩慢にならせ,完全に停止させてしまうことさえあります。
脳に対する害
長期間にわたって飲み過ぎると,脳細胞が破壊されてしまいます。しかも人体は,体内の他の細胞の場合とは異なり,脳細胞を補充することはできません。
慢性的なアルコール中毒患者だった人を検死解剖した結果,脳細胞がかなり破壊されていることが分かりました。脳のそうした損傷は,様々な精神障害を引き起こしたり,悪化させたりします。そうした障害の中には,被害妄想を特徴とする精神錯乱の一形態である偏執病や,性格の“分裂”を特色とする精神分裂症が含まれています。例えば,フランスの精神病院にあるベッド数の三分の一は,アルコールの中毒患者で占められています。
アルコール中毒の末期には,酒客譫妄の起きることがあります。これは急にアルコールが入手できなくなったり,飲めてもごく少量しか手に入らなかったりしたときに起こります。また,長時間“飲みくらべ”をした後に起こることもあります。まず最初に,体中に震顫,つまり震えがきて,それから食欲がなくなり,吐き気がします。患者は熱っぽくなり,ふらふらと動き回ります。次いで幻覚が起き,クモやネズミやハエなどが壁や床から飛び出して来るなど,実際にはそこにいないものが目に映ってくるのです。
そのような譫妄,すなわち“精神錯乱”による恐怖は人を自殺に追いやることがあります。それは慢性的な精神障害,あるいは死を招くこともあります。こうした状態に陥った場合の死亡率は20%であると言われています。
アルコール中毒の進行した段階にある人が死を免れるためには,“解毒”が必要です。それには,体内からアルコール分が全くなくなり,体が正常な状態に戻るまで十分の期間禁酒することが必要です。しかし,それには数週間,いや数か月かかるかもしれません。それに,肝臓や脳の受けた損傷など,取り返しのつかない損傷もあります。
若い人々の場合,健康に対する弊害が大人の場合よりも速く起きることがあります。若い人たちの体は成長しきっておらず,比較的小さいために,大人の体のようにアルコールを処理することができないのです。
無実の犠牲者
アルコール中毒による無実な犠牲者の中にはまず赤ん坊がいます。妊娠中に母親が飲酒にふけると,知恵遅れの子供や身体に障害のある子供が生まれて来る場合があります。
フロリダ大学の先天性障害センターの所長,ジェイム・フリアス博士はこう語っています。「これまでに集められた臨床データからすれば,妊娠中常習的にアルコールを飲む婦人が,ある程度知恵の遅れた子供を産む確立は50%で,さらに複数の身体的奇形のある子供を産む確率は30%である,と言って差し支えなかろう」。
研究者たちは,生まれた時に“酔っ払って”いた赤ん坊について報告しています。そうした赤ん坊の血液中のアルコール定量は,多くの土地の法律で酔酒とみなされるアルコール定量よりも高いものでした。新生児の中には,禁断症状の見られる赤ん坊までいました。
赤ん坊に与える害について,デトロイト・ニューズ紙はこう伝えています。「この症候群の後遺症は回復不能のものであり,犠牲者の多くは家庭や施設で一生の間特別な看護を受けねばならない,という点で医師たちは意見の一致を見ている」。
どの程度の飲酒が,出産予定の母親にとって“飲み過ぎ”なのでしょうか。これには様々な意見があります。スミス博士は,一日五杯飲めば,それは飲み過ぎであると語っています。そして,ある定義によると,一杯というのは「アルコール分50%のウイスキーが1オンス(約28cc)入っているカクテル」のことです。スミス博士は,妊娠中にビールやワインを飲み過ぎても同じ結果を招きかねない,と警告しています。
しかし,メディカル・ワールド・ニューズ誌の最近号は次のように述べています。「度を過ごさない飲酒でさえ成長している胎児に有害であることを示す証拠がいよいよ多くなっているのに驚いた,国立アルコール乱用およびアルコール中毒研究所は,すべての妊婦に一日二杯以上の飲酒は控えるよう警告すべきであるとして,政府に強く働きかけている」。この記事は,その証拠は,「極めて説得力のあるもので,憂慮されている」と付け加えています。
ですから,あらゆる点から見て,アルコールの乱用の代価は膨大なものです。しかも,問題は悪化しており,過度の飲酒にふける人は増加の一途をたどっています。
では,アルコール依存を未然に防ぐためにはどうしたらよいでしょうか。すでに,アルコールに依存するようになっている人を助ける方法があるでしょうか。
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アルコール乱用の脅威に立ち向かう目ざめよ! 1978 | 3月22日
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アルコール乱用の脅威に立ち向かう
アルコールの乱用について言えば,「予防は治療に勝る」ということわざが当てはまります。アルコールに依存するようになってから,その結果に対処するよりは,アルコール依存を未然に防ぐほうがはるかに良いでしょう。
その「予防」は子供が幼い時から始める必要があります。幼い子供たちは,親からアルコールに対する正しい見方を学ばねばなりません。親は自分たちの言動によって,大きな影響を子供たちに及ぼします。親が飲酒をほどほどにしておく
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