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「神の秘義」に対する地上の敵『その時,神の秘義は終了する』
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を使って老齢の使徒ヨハネを「捕われの身」とし,彼をパトモス島に拘禁しました。彼はそこで,「イエスとともになって患難と王国と忍耐」を仲間のクリスチャンたちと分け合ったのです。(啓示 1:9)当時,「野獣」の第七の「頭」は一種の秘義でした。というのは,間接的に,啓示 17章9,10節はそれに関しヨハネにこう述べているからです。「他のひとりはまだ到来していない。しかし到来したなら,少しの間とどまらなければならない」。したがってこの第七の「頭」は,象徴的な「野獣」の頭の中で,より現代に近い政治的世界強国であると考えられます。この第七の世界強国は,政治的預言者,また政治国家の崇拝を促進させる者としての役割を果たします。それゆえ,それは第七の頭として「野獣」に属していながら同時に,別個の身分また存在を持つものとして描かれているのです。ヨハネは啓示 13章11-13節でその姿について次のように述べています。
40 第七の世界強国は,獣の頭であることに加え,他のどんなものとして幻の中で描かれていますか。
40 「また,わたしは別の野獣が地から上って行くのを見た。それには子羊のような二本の角があったが,龍のごとくに話しはじめた。そして,第一の野獣のすべての権威をその前で行使する。また,地とそこに住む者たちに,致命的な打ち傷のいえた第一の野獣を崇拝させる。また,大いなるしるしを行なって,人類の前で火を天から地に下らせることさえする」。
41 (イ)第二の野獣はなぜ第八世界強国ではありませんか。(ロ)それが「子羊のような二本の角」を持っていることは何を表わしていますか。
41 この第二の野獣が第八世界強国であるはずはありません。なぜなら,全世界に及ぶサタンの政治組織全体を表わす「第一の野獣」は,ただ七つの政治的な「頭」に限られているからです。それは,第一の野獣のこの第七の「頭」が果たす歴史的な役割を,さらに詳しく描写するための,別の表現にすぎません。というのは,地から上って来たこの第二の野獣は,「子羊のような二本の角」を持っており,それは政治的な二重結合すなわち二重世界強国を象徴しているからです。聖書預言の中で取り上げられているこの第七世界強国は,英米世界強国であり,それはつい最近,世界の活動の舞台に登場して来ました。そして,1914年の異邦人の時の終わりに至るまで,そして今日なお,世界支配に関し成功を収めています。
42 二つの角を持つ野獣が象徴的な「地」から上って来たということは何を象徴していますか。
42 この二本の角を持つ野獣は,象徴的な「地」から上って来ました。地は,「第一の野獣」が上って来た海よりも安定しています。この野獣が今から二世紀前の西暦1763年,“驚異の年”に出現した時には,「地」つまり,海から出て来た獣が支配していた広い地域の人びとは,明確に制定された強い統治機関の下にあって比較的安定した状態にありました。どのようにですか。
43 海から出て来た獣の統治下にある地の大きな部分は,すでに,象徴的な「地」と言い得るほどに安定した状態になっていました。どのようにですか。
43 そのころまでには,ヨーロッパ諸国の宗教上の立場は,ローマ・カトリックかプロテスタントかのいずれかに落ち着いており,さらに,フランス帝国,オーストリア帝国,オランダ帝国,スペイン帝国,ポルトガル帝国といったヨーロッパの大帝国がすでに成立を見ていました。当時フランス帝国は,北アメリカ大陸に広大な領土を有しており,大英帝国もそこに植民地を持っていました。大英帝国は,1600年12月31目,女王エリザベス一世が勅令により英国東インド会社を設立した時その基礎を築きました。しかし1583年,英国はすでに北アメリカのニューファンドランドを領有しており,その後,セントローレンス川以南に13の植民地を建設しました。
44,45 大英国とアメリカ合衆国が二重世界強国となった経過を説明しなさい。
44 1775-1783年の独立戦争により,アメリカの13の植民地は大英国から独立をかちとり,アメリカ合衆国が形成されました。しかしそれは,1763年,大英国が自らを「世界最強の商業及び植民帝国」として確立した後のことです。その年に終了した七年戦争によって得た,アメリカ,インド,また海上における利得により,別の歴史家の言うように,「イギリス王国は大英帝国となった」のです。
45 アメリカ合衆国と大英帝国は,言語が同じである,主にプロテスタントの国である,多くの共通の伝統を有する,民主主義形態の国家である,などの多くの共通点を持っていました。両国は再調整の時を経て,外交および通商面で良い関係を保つことが共通の益になるとの認識に立ちました。アメリカ合衆国は大英国と非常に密接に結び付いていたため,1914-1918年の第一次世界大戦のさいには,中欧諸国つまりチュートン連合国と戦った大英国に協力しました。さらに,1939-1945年の第二次世界大戦においても,英国に援助の手を差し伸べた後,アメリカ合衆国は自ら戦争に突入し,やはり大英国の側に付きました。このように,大英帝国とアメリカ合衆国は,地から出て来た,二本の角を持つ野獣によって表わされている二重世界強国,つまり第七世界強国として,現代史を通じ共に行動してきたのです。
46 “ワシントン1月14日”発の1969年ニューヨーク・タイムズ紙の一記事は,大英国と合衆国が二重世界強国を形成していることをどのように指摘していますか。
46 以上の事柄と一致した内容を伝える,“ワシントン1月14日”発の特電がニューヨーク・タイムズ紙に掲載されました。それは,アメリカ合衆国での八年間にわたる勤務の終了をわずか二週間後に控えた,駐米英国大使パトリック・ディーン卿に関する報告を伝えています。その特電は次のとおりです。
パトリック卿は,英国と合衆国の「特別な関係」が,国際的な政治社会における幾多の変化により,かなり修正された形を取りながらも,依然存続するとの確信を抱いている。両国の関係はもはや,ルーズベルト大統領とチャーチル首相との間に,また,やや規模を下回ったが,アイゼンハワー大統領とマクミラン首相との間に存在した,重大な危機に際し高いレベルの政治会談が必要とされる,というようなものではない。とはいえ,その関係は,共通の言語と遺産から発する単なる感情的な愛着以上のものである,と大使の職を去るパトリック卿は考える。両国のこの関係が最もよく発揮されるのは,両国の外交官の間で行なわれる戦略上重要な諸問題に関する意見の交換や分析などの実務レベルにおける協議,大使とディーン・ラスク国務長官のレベル,及び両国の首都間のより低いレベルにおいてである。―ニューヨーク・タイムズ紙,1969年1月15日付,17ページ。
47 二本の角を持つ獣はどのように,「第一の野獣のすべての権威をその前で行使」しますか。
47 数世紀の間に,大英帝国は次第に地上最大の帝国に発展し,ついには地表の四分の一および地球人口の四分の一を支配するに至り,さらに海洋をも制はすることになりました。合衆国の好意ある態度と協力は,同帝国に力を添えました。こうして,二本の角を持つ地の獣は,「第一の野獣のすべての権威をその前で行使する」のです。
48 「第一の野獣」の崇拝には何が含まれますか。この点に関しクリスチャンはどんな立場を取りますか。
48 この地の獣は,実際には「第一の野獣」に属し,その象徴的な第七の「頭」なのですから,それが次の預言的な描画を成就するのは当然のことと言えます。それは,「地とそこに住む者たちに,致命的な打ち傷のいえた第一の野獣を崇拝させる」。(啓示 13:12)「第一の野獣」を崇拝することは,龍つまり悪魔サタンの世界的な政治組織を崇拝することを意味します。それには,「第一の野獣」の第七の「頭」,すなわち,二つの角を持つ第二の獣によっても表わされている第七世界強国,つまり英米二重世界強国を崇拝することが含まれます。政治機関の崇拝という問題に関し,イエス・キリストは,当時第六世界強国であったローマ帝国に敵対する政治活動に全く関与されませんでした。また,今日に至るまでの彼の忠実な追随者たちも,第六世界強国および第七世界強国の政治に干渉したことはありません。彼らは神の王国を第一に求めているのです。―マタイ 6:33。ヨハネ 17:14,16。
49,50 (イ)「人類の前で火を天から地に下らせる」古代の例を一つ挙げなさい。(ロ)それを行なったエリヤの目的は何でしたか。(ハ)二つの角を持つ獣はどのように,またどんな目的で象徴的な火を天から地に下らせましたか。
49 それにしても,二つの角を持つ地の獣はどのように「大いなるしるしを行なって,人類の前で火を天から地に下らせることさえ」したのですか。(啓示 13:13)天から火が下るよう祈り求めることは,西暦前10世紀の預言者エリヤを思い出させます。カルメル山におけるバアルの預言者450人との争いのさい,預言者エリヤは,バアルの預言者たちが不名誉な敗北を被った後,真の神エホバに祭壇を築き,祈りをささげました。その祈りにこたえて天から火が下り,ずぶぬれになった祭壇の上の犠牲を焼き尽くしました。その後,十部族から成るイスラエル王国の新しい王が,自分の死を予告したエリヤを捕らえるため兵士の群を遣わした時,エリヤは天から下ってきた火により,二度にわたり「神の人」として保護されました。その火は各51人から成る二軍の兵士を焼き尽くしたのです。―列王上 18:17-40。列王下 1:2-12。
50 エリヤはこうした目覚ましい業により,エホバが唯一の生けるまことの神であるということのみならず,自分が真に「神の人」,エホバ神の真の預言者であることを実証しました。それに対応する理由をもって,二本の角を持つ地の獣は象徴的な火を天から地に下らせ人びとが自分に対して尊敬を払うよう命じました。特に,それが装う預言的な役割,および偶像礼拝を促進させることによって果たす祭司的な役割に対する尊敬です。世の観点から見る限り,この二重世界強国は天からの是認と支持を受けている証拠を提出しました。さもなければ,どうして地上の政治および軍事上最高の地位にのしあがることができたでしょうか。その驚くべき拡大と,最高の地位を維持するための陸海両域における勝利は,地上のその地位の正当性を支持する,超人的な天からの火のようでした。その上,この英米二重世界強国は,「地」から上って来たその出現当初から,クリスチャンであると主張してきました。大英帝国の君主は,神の恩寵によって支配すると主張し,英国国教会の宗教上の最高首長を務めています。
51 二本の角を持つ象徴的な獣は,子羊のような姿をしていましたが,龍のように語りました。どのように。
51 ですから,二本の角のあるこの象徴的な地の獣は,「子羊のような二本の角」を持ち,神の子羊イエス・キリストの政治的代表者であるかのような振りをしました。それは,子羊のように無害で,攻撃も侵略もせず,だれをも傷つけたり詐取したりする意図はないかのように装いました。しかし現実には,「龍のごとくに話しはじめた」のです。「大いなる龍」悪魔サタンがエホバ神にいどみ,全人類を支配する権利を要求したのと同じく,二本の角を持つ地の野獣も,帝国の力および陸海両軍の力の権により,全地と七つの海を支配する権利を要求しました。龍のように地とその諸民の多くを飲み込み,営利的な詐取と海軍基地の建設を目的としてそれを植民地化したのです。「日の没することのない大英帝国」と言われるようになったのも,もっともなことです。それに加えて,北アメリカ合衆国は南北アメリカ全土を支配するようになりました。このように,地的「野獣」の,羊のような二本の角が与えた印象は,全くの偽りでした。
52 この非常に強力な二重世界強国を出現させたサタンの目的は,明らかに何であったと考えられますか。
52 「大いなる龍」の,王冠を頂いた第七の頭は,七つの世界強国すべての中で最強のこの二重世界強国を,目に見えない様で統御していました。しかもそれは,明らかに,「神の秘義」の敵として最強の世界強国を龍が必要とする,その時においてだったのです。
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「野獣の像」『その時,神の秘義は終了する』
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第23章
「野獣の像」
1,2 啓示の幻に示されているように,「第一の野獣」は何を使って自分に対する崇拝を要求しますか。
像は長い間,偶像礼拝のために用いられてきました。「第一の野獣」すなわち,サタンの世界的な政治組織は,偶像化されることを好み,人びとが像を用いて自分を偶像化するよう促します。いえ,実際にはそうすることを要求するのです。それも,第七の頭
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