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  • 神の王国について徹底的に教える
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神の王国について徹底的に教える
徹 8章 60–67ページ

8章

会衆は「平和な時期に入[った]」

迫害の波を起こしていたサウロが熱心なクリスチャンになる

使徒 9:1-43

1,2. サウロはダマスカスで何をしようとしていますか。

道を行く険しい顔をした人たちが,目的地のダマスカスに着こうとしています。悪いことをたくらんでここまでやって来ました。ダマスカスにいるクリスチャンたちを家から引きずり出し,縛り,辱め,エルサレムに連行してサンヘドリンからの処罰を受けさせようとしています。

2 一団を率いるのは,すでに手を血に染めた男サウロです。a イエスの弟子ステファノが暴徒たちに石打ちにされた時,サウロはそれに賛成して見守っていました。(使徒 7:57–8:1)エルサレムのクリスチャンたちを苦しめることに飽き足らず,迫害の火をあおってさらに広げようとしています。「この道」として知られる危険な一派を根絶したいと思っているのです。(使徒 9:1,2。「ダマスカスでのサウロの権限」という囲みを参照。)

3,4. (ア)サウロはどんなことを経験しましたか。(イ)これからどんなことを考えますか。

3 突然,まばゆい光がサウロを包みます。仲間たちはその光景を見て,驚愕のあまり何も言えません。サウロは目が見えなくなり,倒れ込みます。そして天からの声が聞こえます。「サウロ,サウロ,なぜ私を迫害しているのですか」。驚いたサウロは,「主よ,あなたはどなたですか」と尋ねます。「イエスです。あなたは私を迫害しています」という答えに,サウロは衝撃を受けたはずです。(使徒 9:3-5; 22:9)

4 イエスがサウロに掛けた最初の言葉から,どんなことが分かるでしょうか。サウロがクリスチャンになった時に起きたいろいろな出来事から,何を学べるでしょうか。その後の平和な時期を,会衆はどのように活用したでしょうか。参考になるポイントがあるでしょうか。

ダマスカスでのサウロの権限

サウロが遠く離れた町でクリスチャンを逮捕する権限を持っていたのは,どうしてでしょうか。サンヘドリンと大祭司は,各地のユダヤ人の道徳を取り締まる権限を持っていました。大祭司には,犯罪者の引き渡しを求める権限もあったと思われます。それで,大祭司の手紙があれば,ダマスカスの会堂の長老たちからの協力を取り付けられたようです。(使徒 9:1,2)

さらにユダヤ人は,自分たちの件に関して,司法の権利をローマ人から与えられていました。使徒パウロがユダヤ人たちから「むちで39回打たれた」ことが5度あったのは,そのためです。(コリ二 11:24)また,マカベア第一書によれば,紀元前138年にローマの執政官がエジプトのプトレマイオス8世に宛てた手紙には,こう書かれていました。「彼らの国[ユダヤ]からあなたがたのもとに,害悪を及ぼす者たちが逃げ込んで来たならば,その者たちを大祭司シモンに引き渡し,彼がユダヤ人の律法に従って罰することができるようにしていただきたい」。(マカバイ記一 15:21,「聖書協会共同訳」,日本聖書協会)紀元前47年,ユリウス・カエサルは大祭司にそれまで与えていた特権をあらためて認め,ユダヤ人の習慣についての問題全てを扱う権利も認めました。

「なぜ私を迫害しているのですか」(使徒 9:1-5)

5,6. イエスがサウロに掛けた言葉から,どんなことが分かりますか。

5 ダマスカスに行こうとしていたサウロを止めた時,イエスは何と問い掛けたでしょうか。「なぜ私の弟子たちを迫害しているのですか」とではなく,「なぜ私を迫害しているのですか」と言いました。(使徒 9:4)イエスは,弟子たちが経験していることを自分のことのように感じているのです。(マタ 25:34-40,45)

6 あなたは今,キリストへの信仰のために,誰かからひどい仕打ちを受けていますか。もしそうなら,忘れないでください。エホバもイエスもあなたが今経験していることを分かっています。(マタ 10:22,28-31)もちろん,苦しいことをすぐになくしてくれるわけではないかもしれません。サウロがステファノの殺害に関わり,クリスチャンたちを家から引きずり出していた時も,イエスは見ていましたが,すぐには止めに入りませんでした。(使徒 8:3)でも,エホバはイエスを通して力を与え,ステファノやほかの弟子たちが信仰を貫けるように助けました。

7. 迫害に耐えて信仰を貫くために,どんなことができますか。

7 次のようにすれば,あなたも迫害に耐え,信仰を貫くことができます。(1)何があっても信仰を捨てない決意をする。(2)エホバに助けを求める。(フィリ 4:6,7)(3)自分で復讐しようとせず,エホバにお任せする。(ロマ 12:17-21)(4)エホバを信じて,耐えるための力をもらいながら,試練を終わらせてくれる時をじっと待つ。(フィリ 4:12,13)

「サウロ,兄弟,……主イエスが私を遣わしました」(使徒 9:6-17)

8,9. イエスから任務を託され,アナニアはどんな気持ちになったかもしれませんか。

8 「主よ,あなたはどなたですか」というサウロの質問に答えてから,イエスはこう言います。「起きて町に入りなさい。そうすれば,何をすべきか告げられます」。(使徒 9:6)目が見えなくなったサウロは,ダマスカスの宿に案内され,そこで3日間断食して祈ります。その間,イエスはダマスカスにいた弟子アナニアにサウロのことを話します。アナニアは,その町に住む「全てのユダヤ人から良い評判を得ていました」。(使徒 22:12)

9 アナニアは複雑な気持ちになったはずです。会衆のリーダーである復活したイエス・キリストに話し掛けられ,特別な任務を任されました。とても名誉なことですが,任務を聞いて怖くなります。あのサウロに会いなさいというのです。アナニアはこう答えます。「主よ,私は多くの人からこの男について聞いています。エルサレムにいる聖なる人たちにいろいろと危害を加えたとのことです。ここでは,あなたの名を呼ぶ人を皆捕らえようとして,祭司長たちから権限を受けています」。(使徒 9:13,14)

10. イエスの指示の与え方から,どんなことを学べますか。

10 不安を口にしたアナニアを,イエスは叱ったりしませんでした。はっきり指示を与え,この意外な任務を果たしてほしい理由を話して安心させます。「この人は私が選んだ器であり,異国の人々に,また王たちやイスラエルの民に私の名を知らせるからです。私は彼に,私の名のためにどれほど多くの苦しみを受けなければならないかをはっきり示します」。(使徒 9:15,16)アナニアはすぐに言われた通りにしました。クリスチャンを苦しめてきたサウロを捜し出して,こう言います。「サウロ,兄弟,道中であなたに現れた主イエスが私を遣わしました。あなたが視力を取り戻し,聖なる力に満たされるためです」。(使徒 9:17)

11,12. サウロにまつわる出来事から,どんなことが分かりますか。

11 こうした出来事から,いろいろなことが分かります。天に戻る前に約束した通り,イエスは私たちが行っている伝道を指揮しています。(マタ 28:20)今は直接話し掛けることはありませんが,主人イエスは忠実な奴隷を通して指揮を執っています。イエスは,召し使いである私たちのために,その奴隷を任命してくれました。(マタ 24:45-47)キリストについて知りたいと思っている人たちを見つけるために,統治体の指導の下,伝道者や開拓者が遣わされています。前の章で見たように,助けを求めて祈っていた人の所にエホバの証人がやって来た,ということがよくあります。(使徒 9:11)

12 アナニアは難しい任務を受け入れ,うれしい経験をしました。私たちには,良い知らせを徹底的に伝えるという任務があります。あなたは,難しいと思えるときも,その任務に取り組みますか。家を一軒一軒訪ねて,知らない人と話すのは,緊張するので嫌だと思うかもしれません。会社や店を訪問したり,道で話し掛けたり,電話や手紙で伝道したりするのは,気まずいので苦手だと感じるかもしれません。アナニアは恐れに負けませんでした。その結果,うれしいことにサウロを助けることができ,サウロは聖なる力を受けました。b そうできたのは,イエスを信頼し,サウロを自分の兄弟と見ていたからです。私たちも不安な気持ちを乗り越えられます。アナニアに倣って,イエスが伝道を指揮していることを確信しましょう。人の気持ちに寄り添うようにし,たとえ相手が友好的でなくても,兄弟になるかもしれないと考えて伝道しましょう。(マタ 9:36)

「イエスについて……伝え始めた」(使徒 9:18-30)

13,14. 聖書を学んでいてもまだバプテスマを受けていないとしたら,サウロのどんなところに倣えますか。

13 サウロはすぐに心を入れ替えました。視力を取り戻した後,バプテスマを受け,ダマスカスの弟子たちと一緒に時間を過ごすようになりました。それだけではありません。「すぐに会堂でイエスについて,この方こそ神の子だと伝え始め」ました。(使徒 9:20)

14 あなたは聖書を学んでいてもまだバプテスマを受けていないでしょうか。もしそうなら,ためらわずに行動したサウロに倣って,大事な一歩を踏み出せますか。もちろん,サウロはキリストが起こした奇跡を体験したので,決断しやすかったでしょう。でも,イエスの奇跡を見た人はほかにもいました。例えば,パリサイ派の人たちは,イエスが片手のまひした男性を癒やしたのを見ましたし,大勢のユダヤ人は,イエスがラザロを復活させたことを知っていました。それなのに,イエスの後に従おうとはせず,むしろ敵対するようになった人までいました。(マル 3:1-6。ヨハ 12:9,10)サウロとは大違いです。この違いは何でしょうか。サウロは誰のことよりも神を畏れていました。それで,人からどう思われるかは問題ではありませんでした。そして,キリストが憐れみ深く許してくれたことに深く感謝していました。(フィリ 3:8)あなたも同じような心を持つようにすれば,伝道したいという気持ちになり,バプテスマのために生き方を変えようと思うでしょう。

15,16. サウロは会堂で何をするようになりましたか。伝道するサウロから話を聞いて,ダマスカスのユダヤ人はどうしましたか。

15 サウロが会堂でイエスについて伝道し始めたことが,どれほど衝撃的だったか想像してみてください。非常に驚き,怒りすら感じたかもしれません。人々は,「これは,エルサレムでイエスの名を呼ぶ人たちに手荒なことをした人ではないか」と言いました。(使徒 9:21)サウロはどうして心を入れ替えたのかを説明し,「この方がキリストであることを論証し」ました。(使徒 9:22)でも論理が全てではありません。古い考えに縛られている人やプライドが高い人には,論理が通じないことがあります。それでも,サウロは諦めません。

16 3年後にも,ダマスカスのユダヤ人はサウロを敵視していて,ついには殺そうとします。(使徒 9:23。コリ二 11:32,33。ガラ 1:13-18)そのたくらみを知ったサウロは,身を守るためにひそかに町を出ることにします。夜の間に籠に乗り,城壁の窓から下ろしてもらいました。そうするのを手伝った人たちを,ルカは「サウロの弟子たち」と呼んでいます。(使徒 9:25)ここから,ダマスカスでのサウロの伝道により,キリストの後に従い始めた人が少なからずいたことがうかがえます。

17. (ア)聖書の教えを伝えると,どんな反応があるものですか。(イ)どんなことを続けるのが大切ですか。どうしてですか。

17 あなたは,家族や友達などに,学んだことを初めて伝えた時のことを覚えていますか。聖書の教えは論理的で素晴らしいので,きっと聞いてくれるはずだと思ったかもしれません。でも,みんなが聞いてくれたわけではなかったでしょう。身近な家族からも冷たくあしらわれたかもしれません。(マタ 10:32-38)でも,上手な伝え方を心掛け,イエスのような人格を身に付けていけば,全く聞こうとしない人もやがて態度を変えるかもしれません。(使徒 17:2。ペテ一 2:12; 3:1,2,7)

18,19. (ア)サウロはバルナバにどのように助けられましたか。(イ)バルナバとサウロにどのように倣えますか。

18 サウロはエルサレムに入り,自分も弟子になったことを話しますが,信じてもらえません。でも,バルナバが間に入ってくれたおかげで,使徒たちに受け入れてもらうことができ,しばらく一緒に過ごします。(使徒 9:26-28)サウロは慎重に行動しましたが,伝道することを恥ずかしいとは全く思っていませんでした。(ロマ 1:16)エルサレムでも熱心に伝道しました。以前キリストの弟子たちを激しく迫害していたまさにその場所で,人目を気にせずに伝道したのです。ユダヤ人たちはリーダー的存在がクリスチャンの側に付いたのを見て怖くなり,サウロを殺そうとします。その計画に「気付いた兄弟たちはサウロをカエサレアに連れていき,タルソスに送り出し」ました。(使徒 9:30)イエスが兄弟たちを通して物事を導いていました。それに従ったことが,サウロにとっても会衆にとってもプラスになりました。

19 みんなが不審に思う中,バルナバが進んでサウロを助けたことに注目してください。この親切のおかげで,熱い心を持った兄弟たちの間に絆が生まれました。あなたもバルナバのように,自分から会衆の新しい人たちを助けようとしますか。野外奉仕で一緒に働いたり,信仰を強められるように助けたりできますか。そうすれば,きっと良い経験ができます。あるいは,あなたが伝道を始めて間もないのであれば,サウロのように仲間に喜んで助けてもらいますか。自分より長く奉仕している人たちと一緒に働けば,伝道が上手になって楽しくなり,かけがえのない友達が見つかるはずです。

「多くの人が主を信じるようになった」(使徒 9:31-43)

20,21. 1世紀と現代のクリスチャンは「平和な時期」をどのように生かしましたか。

20 サウロがクリスチャンになり,エルサレムを無事に離れた後,「会衆は,ユダヤ,ガリラヤ,サマリアの全域にわたって平和な時期に入り」ました。(使徒 9:31)クリスチャンたちは,この「順調な時」をどのように生かしたでしょうか。(テモ二 4:2)聖句には,会衆が「強化されていった」とあります。使徒たちや責任を担う兄弟たちが先頭に立って奉仕し,仲間の信仰を強め,会衆のみんなは「エホバを畏れて聖なる力による慰めを受けながら歩み」ました。例えば,ペテロはこの時期に,シャロン平野の町ルダで弟子たちを励ましました。それにより,その辺りの人たちが「主を信じるように」なりました。(使徒 9:32-35)クリスチャンたちは,ほかのことに気を取られたりせず,仲間と助け合うことや良い知らせを伝えることに集中しました。こうして,会衆は「人数が増加して」いきました。

21 20世紀の終わりごろ,多くの国のエホバの証人が同じような「平和な時期」を経験しました。エホバの証人を何十年も抑圧してきた政権が突然に崩壊し,伝道を禁止する法が緩和されたり解除されたりしました。非常に多くのクリスチャンがその時期を生かして伝道し,大きな成果がありました。

22. 今,自由があるなら,どのように活用できますか。

22 あなたはどうですか。今の自由を活用していますか。もし信教の自由がある国にいるなら,お金や物のことばかり考えさせようとするサタンの誘惑に気を付けてください。(マタ 13:22)エホバへの奉仕以外のことに気を取られ過ぎないようにしましょう。せっかくある今の自由を無駄にせず,一番大事なことのために使いましょう。徹底的に伝道し,仲間の信仰を強めることに集中しましょう。今の自由はいつ突然になくなるか分からないからです。

23,24. (ア)タビタについての心温まる出来事から何を学べますか。(イ)この章を学んで,これからどうしていきたいと思いましたか。

23 次に,タビタ(別名ドルカス)という弟子に起きたことに注目しましょう。タビタは,ルダに近いヨッパという町に住んでいました。信仰のあつい姉妹で,自分の時間や持っている物をエホバと仲間のために使い,「たくさんの善行と憐れみの施しをする」人でした。しかし,急に病気になり,亡くなってしまいます。c ヨッパの弟子たちは大きな悲しみに包まれました。タビタから親切にしてもらっていたやもめたちは特に悲しみました。遺体が置かれている家に,ペテロが到着します。そこでペテロは,キリストの使徒たちがこれまで一度もしたことのない奇跡を起こします。祈ってから,タビタを生き返らせたのです。やもめやほかの弟子たちを部屋に呼んで,生き返ったタビタを見せた時,みんなどんなにか喜んだことでしょう。信仰が強められ,その後の試練に備えることができたはずです。この奇跡は「ヨッパ中に知られ,多くの人が主を信じるように」なりました。(使徒 9:36-42)

姉妹が,体が弱くなっている年配の姉妹に花をプレゼントしている。

どのようにタビタに倣えるか。

24 この心温まる出来事から,大切なことを2つ学べます。(1)命ははかないものです。命あるうちに,神に喜ばれることを精いっぱい行っていきましょう。(伝 7:1)(2)復活は確実な希望です。エホバはタビタがしたたくさんの親切を忘れず,その頑張りが報われるようにしました。私たちが一生懸命してきたことも全部覚えていて,ハルマゲドンの前に死ぬとしても,必ず復活させてくれます。(ヘブ 6:10)では,私たちにとって今が「困難な時」でも「平和な時期」でも,キリストについて徹底的に伝道していきましょう。(テモ二 4:2)

パリサイ派のサウロ

ステファノの石打ちについての「使徒の活動」の記録に,「サウロという若者」が出てきます。彼はタルソス出身でした。タルソスは,現在のトルコ南部に位置する,ローマの属州キリキアの州都でした。(使徒 7:58)その都市には,かなりの数のユダヤ人が住んでいました。本人が書いているように,サウロは「生後8日目に割礼を受けており,イスラエルの子孫,ベニヤミン族の者,ヘブライ人から生まれたヘブライ人」で,「律法に関しては,パリサイ派」でした。ユダヤ人として申し分のない家系だったといえます。(フィリ 3:5)

パリサイ派のサウロ

サウロの家は,ギリシャ文化が栄え,貿易で潤った大都市にありました。タルソスで育ったサウロはギリシャ語に通じていました。初等教育はユダヤ人の学校で受けたようです。サウロは地元の産業だった天幕作りの技術を身に付けていました。たぶん子供の頃に父親から教わったのでしょう。(使徒 18:2,3)

「使徒の活動」によれば,サウロは生まれながらのローマ市民でした。(使徒 22:25-28)つまり,先祖の誰かがローマ市民権を得ていたということです。どのようにして得たかは分かりません。ともかく,その立場のためキリキア州の上流階級に属していました。こうした経歴と教育のあったサウロには,ユダヤ,ギリシャ,ローマという3つの文化で活躍できる十分の土台がありました。

サウロはおそらく13歳までに,さらに教育を受けるため,840㌔を旅してエルサレムに行ったと思われます。そこでガマリエルから直接教えを受けました。ガマリエルはパリサイ派の伝統を教える教師として非常に尊敬されていました。(使徒 22:3)

現在の大学教育に当たるそうした教育は,聖書やユダヤ教の口伝律法を学んで記憶することが中心だったと思われます。ガマリエルの優秀な生徒には将来が約束されていました。サウロがまさにそうでした。こう書いています。「[私は]多くの同年代の同胞よりもユダヤ教に打ち込み,はるかに熱心に父祖たちの伝統に従っていました」。(ガラ 1:14)もっともサウロは,ユダヤ教の伝統に深く傾倒していたため,発足したばかりのクリスチャン会衆を迫害し,ひどい目に遭わせました。

タビタ 「たくさんの善行」をした女性

困っている人にタビタが贈り物をしている。

タビタは港町ヨッパにあるクリスチャン会衆の1人でした。「タビタはたくさんの善行と憐れみの施しをする女性だった」ので,仲間から愛されました。(使徒 9:36)ユダヤ人と異国人の両方が住む地域では,ユダヤ人の多くが名前を2つ持っていました。1つはヘブライ語かアラム語の名前,もう1つはギリシャ語かラテン語の名前でした。タビタにも2つの名前があり,「ドルカス」はギリシャ語名で,「タビタ」がアラム語名でした。どちらも「ガゼル」という意味です。

タビタは病気になって急に亡くなったようです。遺体は葬られる前に習慣通り洗われ,階上の部屋に置かれました。そこは彼女の家だったと思われます。中東は暑いので,亡くなった当日か翌日に葬る必要がありました。ヨッパのクリスチャンは使徒ペテロが近くのルダにいることを聞いていました。ルダはヨッパから18㌔しか離れておらず,歩いて4時間ほどの距離だったので,タビタを葬る前にヨッパに来てもらうだけの時間があります。それで,すぐに来てくれるようペテロに頼むため,会衆は2人の人を派遣します。(使徒 9:37,38)ある学者は次のように言っています。「昔のユダヤ人の間では,使者を2人一組で遣わすのが慣例だった。そうすれば,1人の証言をもう1人が裏づけることもできた」。

ペテロが到着した時のことについて,こう書かれています。「ペテロは……階上の部屋に案内された。やもめたちが皆出てきて,ドルカスが作った外衣などのたくさんの服を泣きながら見せた」。(使徒 9:39)日頃から仲間のために服を作ってあげていたタビタは,とても慕われていました。タビタは,肌にじかに着るチュニックや,その上に着るマントもしくは長い服を作りました。縫ってあげただけなのか,材料費も負担したのかは書かれていません。いずれにしても,「憐れみの施し」をする親切なタビタを,みんな愛していました。

ペテロは,階上の部屋で悲しむやもめたちを見て,胸が痛くなったはずです。学者のリチャード・レンスキはこう書いています。「その嘆き悲しみは,雇われた泣き女やフルート吹きがヤイロの家で騒いでいた時とは大きく異なっていた。そうした作り物の嘆き悲しみではなかったのである」。(マタ 9:23)みんな心から悲しんでいました。夫のことが一度も出てこないので,タビタは独身だったのかもしれない,と言う人もいます。

イエスは使徒たちに任務を託した時,「死んだ人を生き返らせ」る力を与えました。(マタ 10:8)ペテロは,イエスがヤイロの娘などを復活させるのを見ていました。でも,使徒たちが人を生き返らせた記録は,この使徒 9章まで1つもありません。(マル 5:21-24,35-43)ペテロはみんなを階上の部屋から出し,熱烈に祈りました。すると,タビタは目を開け,体を起こします。ペテロはやもめたちやほかの弟子たちを呼んで,生き返ったタビタに会わせます。ヨッパのクリスチャンはみんな,どんなにか喜んだことでしょう。(使徒 9:40-42)

a 「パリサイ派のサウロ」という囲みを参照。

b 聖なる力による奇跡的な能力は,基本的に使徒たちを通して与えられました。しかし今回は,イエスがアナニアに権限を授け,その能力をアナニアがサウロに与えられるようにした,と思われます。サウロはクリスチャンになってからしばらく12使徒に会えませんでしたが,その間もずっと活動していたようです。それでサウロの場合は,伝道の任務に必要な力を受けられるよう,イエスが例外的に取り計らったと思われます。

c 「タビタ 『たくさんの善行』をした女性」という囲みを参照。

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