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宇宙はどのようにして生じたか ― 創世をめぐる論議あなたのことを気づかう創造者がおられますか
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二つの核力
宇宙の組み立てに関係しているのは,単に重力と電磁力との微妙な調和だけではありません。物理学的に見ると,あと二つの力があって,それがわたしたちの生命とかかわりを持っています。
その二つの力は原子の核の中で作用しており,あらかじめそのように考量されたことを十分に証拠立てるものとなっています。強い核力について考えてください。それが,原子の核内で陽子と中性子を結び付けています。この結び付きによって,軽い元素(ヘリウム,酸素など)から重い元素(金,鉛など)まで,各種の元素が構成されています。もしその結合力がほんの2%ほど弱かったなら,水素以外の元素は存在していないでしょう。逆に,もしこの力がわずかに強かったなら,重い元素だけができ,水素は全く存在していないでしょう。わたしたちの命に影響があるでしょうか。この宇宙内に水素がなければ,太陽は,生命のもととなるエネルギーを発散するための燃料がないことになります。そしてもちろん,わたしたちには,水も食物もないことになります。水素はこれら二つに必須の構成要素です。
ここで論議する四番目の力は弱い核力と呼ばれるもので,放射性崩壊を制御しています。それは,太陽内部での熱核反応にも影響を与えています。『この力も微妙に調整されているのだろうか』とお尋ねになるでしょうか。数学者で物理学者でもあるフリーマン・ダイソンはこう説明しています。「この弱い[力]は,もう一方の核力の幾百万分の一と極めて弱い。太陽内の水素がゆっくりと安定した割合で燃焼するのにほどよい弱さである。この弱い[力]がもっと強かったり弱かったりしても,太陽のような星に依存している生物すべてはやはり生存しにくいことになる」。そうです,こうして精密な割合で燃焼しているおかげで,地球は温暖に保たれ,焼けて灰になってしまうことはなく,わたしたちは生き続けているのです。
科学者たちはまた,弱い力が超新星の爆発にもかかわっていると考えています。それが,たいていの元素の生成され,放出される仕組みである,と言うのです。「もしそれらの核力が何らかのかたちで今日あるところとは多少とも異なっていたならば,星々はわたしたちを形造っている諸元素を造り出すことができないであろう」と,物理学者ジョン・ポルキンホーンは述べています。
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[20ページの囲み記事]
「種々の同時発生的な組み合わせ」
「その弱い力が少し強くなるだけで,ヘリウムは造られなかったであろう。それが少し弱くなるだけで,水素はほとんどすべてヘリウムに変換してしまっただろう」。
「ヘリウムが幾らかあり,しかも爆発している超新星もあるような宇宙が存在するチャンスの幅は非常に狭い。我々の存在は,この種々の同時発生的な組み合わせに,そして[天文学者フレッド・]ホイルの予言した,異なる核エネルギー・レベルの同時共存というさらに劇的な一致に依存している。我々は,これまでのどの世代にもまして,自分たちがいかにしてここに存在するに至ったかを知っている。しかし,これまでのどの世代とも同じように,それがなぜなのかをまだ知らない」― ニュー・サイエンティスト誌。
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