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    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 聖書を開いて見ている男性

      なぜ聖書を調べるべきでしょうか

      あなたは聖書をお読みになったことがありますか。聖書は歴史上,他に類を見ないほど広く頒布されてきた特異な本です。あらゆる文化圏の人々が,聖書の音信に慰めと希望を見いだしてきました。その助言が日々の生活に役立つことを実感している人は少なくありません。とはいえ今日,聖書についてあまり知らない人も大勢います。宗教に関心があるかないかは別として,あなたも聖書に興味を持っておられるかもしれません。この冊子は,聖書の内容のあらましを説明する目的で発行されました。

      聖書を読み始める前に,この本について知っておくとよい事柄が幾つかあります。聖書は実際には66冊の書から成っていて,創世記で始まり,黙示録とも呼ばれる「啓示」の書で終わっています。

      聖書の著者はだれでしょうか。これは興味深い質問です。実のところ,聖書はおよそ1,600年の期間にわたり,約40人の人によって書き記されました。しかし,注目すべきことに,それらの人は自分たちが聖書の著者であるとは述べていません。そのうちの一人は,『聖書全体は神の霊感を受けたものです』と書きました。(テモテ第二 3:16)別の人は,「わたしによって語ったのはエホバの霊で,その言葉はわたしの舌の上にあった」と述べています。(サムエル第二 23:2)ですから,聖書を記した人たちによれば,著者は宇宙の至上の支配者であるエホバ神です。聖書の中で明らかにされているように,神は人間がご自分に近づくことを願っています。

      聖書を理解する上で欠かせない別の点として,聖書には一つの主題があります。それは,人間を支配する神の権利が天の王国によって立証される,というものです。この冊子を読み進めると,その主題が創世記から「啓示」の書まで,聖書全体を貫いていることが分かります。

      上記の事柄を思いに留めつつ,世界で最も有名な本である聖書がどんなメッセージを伝えているか調べてみましょう。

  • 創造者は人間に楽園を与える
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • エデンの園にいるアダムとエバ。動物もいる

      セクション1

      創造者は人間に楽園を与える

      神は宇宙と,地球上の生命を創造する。完全な男女を創造し,美しい園に住まわせ,二人に命令を与える

      エデンの園にいるライオン,鳥,シカ

      「初めに神は天と地を創造された」。(創世記 1:1)書物の書き出しの言葉として,世界中でこれ以上有名なものはないと言えるでしょう。この簡明かつ壮大な一文により,聖書全巻の中心を成す方が紹介されます。その方は全能の神エホバです。聖書の冒頭のこの節は,神がわたしたちの住む地球を含む広大な宇宙の創造者であることを明らかにしています。次の節以降で説明されているように,比喩的に「日」と呼ばれている一連の長い期間の中で,神は自然界のあらゆる素晴らしいものを造り,人間のために地球という住まいを整えました。

      神の地上の創造物の中で,最高の傑作は人間です。人間は神の像に造られ,愛や知恵などエホバの特質を反映することができます。神は地面の塵から人を造り,アダムと名づけて,エデンの園という楽園に置きました。その園は神ご自身が設けたもので,実り豊かな美しい木々で満ちていました。

      神は人が配偶者を必要としていることを見て取ります。そこでアダムのあばら骨の一つを使って女性を造り,妻としてアダムのところに連れて来ました。この女性は後にエバと名づけられます。アダムは喜びにあふれ,「これこそついにわたしの骨の骨,わたしの肉の肉」という詩的な表現を口にします。それに対し,神はこう述べます。「それゆえに,男はその父と母を離れて自分の妻に堅く付き,ふたりは一体となるのである」。―創世記 2:22-24; 3:20。

      神はアダムとエバに二つの命令を与えます。まず,地を耕し,地球という住まいを管理して,やがて子孫で満たすようにと言いました。次いで,広大な園の中の1本の木,「善悪の知識の木」の実だけは食べてはならないと告げます。(創世記 2:17)この命令に背いた場合,二人は死ぬことになります。これらの命令に従うなら,アダムとエバは,神を自分たちの支配者として認めていることを示せました。また,神への愛や感謝を示すことにもなりました。二人には神の思いやり深い支配を受け入れるべき十分な理由がありました。完全な人間だったこの男女には欠陥がありませんでした。聖書はこう述べています。「神は自分の造ったすべてのものをご覧になったが,見よ,それは非常に良かった」。―創世記 1:31。

      ― 創世記 1章と2章に基づく。

      • 聖書は,地球や人間がどのように創造されたことを示していますか。

      • 神はアダムとエバがどんな生活を送れるようにしましたか。

      • 神は最初の人間夫婦にどんな命令を与えましたか。

      神の名前

      聖書の中で神は,「創造者」や「全能の神」といった様々な称号で呼ばれています。神の属性 ― 神聖さ,力,公正,知恵,愛など ― を強調している称号もあります。しかし,神はエホバという固有の名も持っています。この名前は聖書の原本に約7,000回出ていました。最初に登場するのは創世記 2章4節です。エホバという名には,「彼はならせる」という意味があります。それは安心感を抱かせる名前です。神はご自身が意図したいかなる目的をも遂行でき,ご自分の述べた約束をすべて果たせる,ということを意味しているからです。

  • 楽園が失われる
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • エバは禁じられた木の実に触れている

      セクション2

      楽園が失われる

      反逆したみ使いが最初の男女を唆し,アダムとエバは神の支配を退ける。その結果,罪と死が世に入る

      人間を創造するはるか前に,神は目に見えない霊の被造物である無数のみ使いを創造しました。後に悪魔サタンとして知られるようになった反逆的なみ使いが,エデンで狡猾にエバを誘惑し,神が禁じた木の実を食べさせようとします。

      サタンは蛇を使って語りかけ,神がエバと夫に良いものを与えないでいることをほのめかします。このみ使いはエバに,彼女も夫も禁じられた木の実を食べても死ぬことはないと言います。サタンはこうして,神は自分の子どもである人間にうそをついていると非難しました。欺く者であるサタンは,神に背けば啓発と自由が得られると主張し,不従順な歩みを魅力的なものに見せかけたのです。しかし,それは地上で語られた最初のうそであり,すべて偽りでした。ここで問題とされたのは,神の主権すなわち至上の支配権です。つまり,神には支配する権利があるのか,また神は義にかなった仕方で臣民の最善の益を図って支配権を行使しているのか,ということです。

      エバはサタンのうそを信じました。禁じられた木の実を食べたいと思うようになり,とうとう少し食べてしまいます。その後,夫にも実を与え,夫もそれを食べます。このようにして,二人は罪をおかしました。単純に思えるその行為は,実際には反逆の表明だったのです。アダムとエバは故意に神の命令に背くことにより,完全な命を含むすべてのものを与えた創造者の支配を退けました。

      その胤は「お前の頭を砕き,お前は彼のかかとを砕くであろう」。―創世記 3:15

      神は反逆者たちに裁きを宣告します。そして,蛇の背後にいたサタンを滅ぼす胤つまり救出者が到来することを予告します。神はアダムとエバを直ちに死に至らせることはせず,猶予期間を与えることにより,二人のまだ生まれていない子孫に憐れみを示します。その子孫は希望を持つことができます。神から遣わされる者が,エデンでの反逆によってもたらされた悲惨な結果を取り除くからです。この将来の救い主に関する神の目的がどのように果たされるのか,まただれが遣わされるのかについては,聖書が書き記されるにつれて徐々に明らかになってゆきました。

      神はアダムとエバを楽園から追放します。エデンの園の外で何とか生きてゆくためには,汗水流して土地を耕さなければならなくなりました。やがてエバは妊娠し,長子のカインを産みます。アダムとエバには他の息子や娘たちも生まれますが,その中にはアベルや,ノアの先祖となったセツがいました。

      ― 創世記 3章から5章,啓示 12:9に基づく。

      • 最初のうそは何でしたか。だれが語りましたか。

      • アダムとエバはどのように楽園を失いましたか。

      • 神は反逆者たちに裁きを宣告した際,どんな希望の根拠を与えましたか。

      不完全さと死

      アダムとエバは,楽園で永遠に生きる見込みを持つ完全な人間として神に創造されました。神に反逆した時,二人は罪をおかしました。そのため,完全さを失い,命の源であるエホバとの関係が断たれてしまいます。それ以後,アダムとエバ,そして二人の不完全な子孫すべては,罪とその結果としてもたらされる死を免れることができなくなりました。―ローマ 5:12。

  • 人間は大洪水を生き残る
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 雨と洪水の中,水面を動く箱船

      セクション3

      人間は大洪水を生き残る

      神は邪悪な世を滅ぼすが,ノアとその家族を保護する

      人間が増えるにつれ,地上に罪と悪が急速に広まりました。たった一人で預言を行なっていたエノクは,神がいずれ不敬虔な人々を滅ぼすと警告します。それでも悪は蔓延し,一層ひどくなります。一部のみ使いたちがエホバに反逆し,天での持ち場を離れて地上で人間の姿になり,貪欲にも女性たちをめとりました。その不自然な結びつきにより,混血の子孫である巨人たちが生まれます。ネフィリムと呼ばれたそれらの暴漢たちは,世の中の暴虐と流血に拍車をかけます。神は地上の創造物が損なわれるのを見て,心に痛みを覚えました。

      エノクの死後,邪悪な世の中で周囲とは明らかに異なる人がいました。ノアという人です。ノアとその家族は,神の目に正しいことを行なおうとしました。神は当時の世の邪悪な人々を滅ぼすことにした時,ノアと動物たちは守りたいと思いました。それで,巨大な箱船を造るようノアに告げます。その箱船の中で,ノアとその家族および多くの動物たちは,全地球的な規模の大洪水を生き延びるのです。ノアは神に従いました。そして,箱船を造るのに費やした幾十年もの間,「義の伝道者」としても働きます。(ペテロ第二 2:5)ノアはやがて来る大洪水について警告しますが,人々は耳を貸そうとしません。ついに,ノアと家族が動物たちと共に箱船に入る時が来ます。入り終わると,神が箱船の戸を閉じました。その後,雨が降ってきます。

      豪雨が40日40夜降り続け,陸地はすっかり水に覆われます。邪悪な人々はいなくなりました。何か月もたち,水が引いてゆくと,箱船はある山の上で止まります。箱船から出られるようになったころには,丸1年が経過していました。ノアは感謝を表わすために,捧げ物をエホバにささげます。神はそれにこたえてノアと家族に,二度と再び洪水によって地上の生物をぬぐい去ることはしないと約束します。その慰めとなる約束を思い出させる,目に見える保証として,エホバは虹を生じさせます。

      大洪水後,神は人間に新しい命令を幾つか与えました。動物の肉を食べることを許しましたが,血を食べることは禁じました。さらに,地に広がるようノアの子孫に命じたものの,それに従わなかった人たちもいます。ある人々はニムロデという指導者のもとで団結し,後にバビロンと呼ばれるようになったバベルという都市に巨大な塔を建て始めます。その目的は,全地に広がるようにとの神の命令に逆らうことでした。しかし,神は人々が使っていた唯一の言語を混乱させ,様々な言語を話すようにさせることにより,反逆者たちの目的をくじきます。人々は意思を通わせることができなくなったため,計画を断念し,散ってゆきました。

      ― 創世記 6章から11章,ユダ 14,15に基づく。

      • どのように悪が地上に広まりましたか。

      • ノアは強い信仰をどのように示しましたか。

      • 大洪水後,神は人間に何をすることを禁じましたか。

      神と共に歩む

      アダムとエバの子孫のほとんどはエホバの支配を退けました。しかし,そうしなかった人たちもいます。アダムとエバの息子で,信仰を抱いていたアベルは,その最初の例です。後に,エノクとノアは神と共に歩んだと言われました。つまり,エホバに喜ばれる生き方をしたということです。(創世記 5:22; 6:9)聖書の記録の大部分は,同じように神を自分たちの支配者とした男女に焦点を当てています。

  • 神はアブラハムと契約を結ぶ
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • アブラハムは星を見上げる

      セクション4

      神はアブラハムと契約を結ぶ

      アブラハムは信仰を抱いて神に従う。エホバはアブラハムを祝福して子孫を殖やすことを約束する

      ノアの時代の大洪水から,350年ほどが経過しました。族長アブラハムは,繁栄していたウルという都市に住んでいました。ウルがあったのは,現在のイラクの領土内です。アブラハムは際立った信仰の持ち主でした。しかし,その信仰は試されることになります。

      エホバはアブラハムに,生まれ育った国を離れ,外国の土地へ行くよう告げます。アブラハムはためらわずに従い,家の者たちを連れて行きます。その中には妻のサラや甥のロトもいました。そして長旅の末カナンに行き着き,そこで天幕生活をするようになります。エホバはアブラハムと契約を結び,アブラハムから大いなる国民を作ること,地上のすべての家族がアブラハムによって祝福されること,またアブラハムの子孫がカナンの地を所有することを約束しました。

      アブラハムとロトは繁栄し,羊や牛の大きな群れを持つようになります。アブラハムは寛大にも,ロトに住みたい場所を選ばせます。ロトはヨルダン川の流れる肥沃な地域を選び,ソドムという都市の近くに落ち着きました。ところが,ソドムの人々は不道徳で,エホバに対して甚だしい罪人でした。

      後にエホバ神は,アブラハムの子孫が天の星のようにおびただしい数になることを再び保証します。アブラハムはその約束に信仰を置きました。しかし,愛する妻のサラにはずっと子どもが生まれません。アブラハムが99歳,サラが90歳近い時に,神は二人の間に息子が生まれることを告げます。神の言葉どおり,サラはイサクを産みました。アブラハムには他の子どももいましたが,エデンで約束された救出者はイサクを通して来ることになります。

      ロトとその家族はソドムに住むようになっていましたが,義人ロトはその都市の不道徳な住民のようにはなりませんでした。エホバはソドムに裁きを執行することにした際,間近に迫った滅びについてロトに警告するため,み使いたちを遣わしました。み使いたちはロトと家族に対し,ソドムから逃げ,後ろを振り返らないようにと言います。それから神はソドムと,近くの邪悪な都市ゴモラの上に火と硫黄の雨を降らせ,住民をすべて滅ぼします。ロトと二人の娘は逃れました。しかし,ロトの妻は振り返ってしまいます。残してきたものに未練があったのかもしれません。その不従順な行動のため,ロトの妻は命を失いました。

      ― 創世記 11:10–19:38に基づく。

      • アブラハムがカナンに移り住んだのはなぜですか。

      • エホバはアブラハムとどんな契約を結びましたか。

      • エホバがソドムとゴモラを滅ぼしたのはなぜですか。

      契約の神

      聖書時代において,契約は約定もしくは正式な協定に相当するものでした。エホバは,エデンで予告した救出者に関するご自分の目的がどのように果たされるかを,厳粛な約束から成る一連の契約によって徐々に啓示しました。アブラハムと結んだ契約は,約束の者がアブラハムの家系から出ることを示しました。後の時代に結ばれた他の幾つかの契約により,その者がだれであるかがさらに明らかになってゆきます。

  • 神はアブラハムとその家族を祝福する
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • アブラハムは短刀を手にし,イサクは祭壇の上に寝かされている

      セクション5

      神はアブラハムとその家族を祝福する

      アブラハムの子孫は繁栄する。神はエジプトでヨセフを保護する

      エホバは,将来ご自分の最愛の者が苦しんで死ななければならないことを知っていました。創世記 3章15節の預言は,そのことを示唆していました。その死がどれほど大きな痛手となるかを,神はどのように人間に伝えるのでしょうか。聖書に記録されている一つの出来事を通してそうします。神はアブラハムに,愛する息子イサクを犠牲としてささげるよう求めたのです。

      アブラハムは強い信仰を持っていました。予告された胤つまり救出者がイサクを通して来ることを,神が約束したのを思い出してください。アブラハムは,必要とあれば神がイサクを復活させてくださると信じ,従順に息子をささげようとします。しかし,すんでのところで神のみ使いにとどめられます。神はアブラハムが自分の最も大切なものを進んでささげようとしたことを褒め,この忠実な族長に対する約束を再び述べます。

      後にイサクには,エサウとヤコブという二人の息子が生まれます。ヤコブはエサウと違って霊的な物事の価値を認識していたので,報いを受けます。神はヤコブの名をイスラエルに変え,12人の息子はそれぞれイスラエル国民の部族の頭になります。しかし,この家族はどのようにして大いなる国民になったのでしょうか。

      息子たちのほとんどが弟のヨセフをねたんだことがきっかけとなり,一連の出来事が生じます。ヨセフは兄たちによって奴隷として売られ,エジプトへ連れて行かれます。しかし,神はその忠実で勇敢な若者を祝福します。ヨセフはひどい苦難を経験しますが,やがてエジプトの支配者ファラオの目に留まり,大きな権威を与えられます。それは時宜にかなったことでした。飢きんが生じ,ヤコブは食料を買わせるために息子の幾人かをエジプトへ遣わしますが,その食物をすべて管理していたのがヨセフだったのです。ヨセフは兄弟たちとの劇的な再会の後,悔い改めていた兄たちを許し,家族全員がエジプトで暮らすよう手配します。彼らは非常に良い土地を与えられ,繁栄してゆきます。神がご自分の約束を果たすために物事をそのように運んだことを,ヨセフは理解していました。

      ヨセフは兄たちに,自分がだれかを明らかにする

      年老いたヤコブは,増えてゆく家族に囲まれてエジプトで余生を送りました。そして死の間際に,約束の胤つまり救出者が息子のユダの家系に生まれ,強力な支配者になることを予告しました。それから何十年も後,ヨセフは自分が死ぬ前に預言をし,神がいつの日かヤコブの子孫をエジプトから連れ出すと述べます。

      ― 創世記 20章から50章,ヘブライ 11:17-22に基づく。

      • 神はアブラハムに何を求めましたか。それによって人間にどんなことを伝えましたか。

      • ヨセフはどのようないきさつでエジプトに行くことになりましたか。その後どうなりましたか。

      • ヤコブは死の間際にどんなことを預言しましたか。

  • ヨブは忠誠を保つ
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 体じゅうにはれ物ができたヨブ

      セクション6

      ヨブは忠誠を保つ

      サタンは神の前でヨブの忠誠に疑問を投げかけるが,ヨブはエホバに忠実であり続ける

      人間は,極限まで試され,従順を示しても全く得にならないように思える場合でも,神に忠実であり続けるでしょうか。ヨブという人に関連して,この疑問が提起され,答えが出されました。

      イスラエル人がまだエジプトにいたころ,アブラハムの親族のヨブは,現在のアラビアに当たる地域に住んでいました。ある時,天のみ使いたちが神の前に集まり,その中に反逆者サタンもいました。エホバはみ使いたちの前で,ご自分の忠節な僕ヨブに対する確信を言い表わします。ヨブのように忠誠を示している人はほかにいないと述べたのです。しかしサタンは,ヨブが神に仕えているのは神から祝福され保護されているからだと主張します。そして,持っているものをすべて失えばヨブは神をのろうだろうと言います。

      天で,み使いたちが神の前に集まり,サタンもその中にいる

      神は,サタンがまずヨブの富と子どもたちを奪い,次いでヨブを病気にならせることを許します。ヨブはサタンが関与していることを知らなかったので,なぜ神がそのような試練をお許しになるのか理解できませんでした。それでも,ヨブは神に背を向けたりはしませんでした。

      3人の偽りの友がヨブの元にやって来ます。ヨブ記の大部分を占める一連の発言を通して,3人はヨブを不当に非難します。隠された罪ゆえに神から処罰を受けているということをヨブに認めさせようとするのです。彼らは,神がご自分の僕たちに喜びを見いだすことも,信頼を置くこともないとさえ主張します。ヨブは彼らの間違った推論を退け,確信をこめて,自分は死ぬまで忠誠を保つと宣言します。

      しかし,ヨブは自分の正しさを証明することに気を取られすぎていました。それまでずっと議論に耳を傾けていた,年下のエリフという人が口を開き,ヨブの間違いを指摘します。ヨブは,人の正しさが立証されることより,エホバ神の主権が立証されることのほうがはるかに重要であるという点を十分認識していなかったのです。エリフはさらに,ヨブの偽りの友たちを厳しくとがめます。

      次にエホバ神がヨブに話しかけ,ヨブの考え方を正します。エホバは数々の素晴らしい創造のみ業に注意を引き,神の偉大さと比べて人間がいかに小さな存在であるかをヨブに悟らせます。ヨブは神からの矯正を謙虚に受け入れます。「優しい愛情に富まれ,憐れみ深い方」であるエホバは,ヨブの健康を回復させ,以前の2倍の富を与え,10人の子どもを授けました。(ヤコブ 5:11)ヨブは厳しい試練のもとでもエホバへの忠誠を保つことにより,人間は試みに遭うと神に忠実でなくなるというサタンの主張に対して見事な答えを提出しました。

      ― ヨブ記に基づく。

      • サタンはヨブに関連してどんな疑問を提起しましたか。

      • ヨブがエホバへの忠誠を保ったことにより,何が成し遂げられましたか。

      重要な論争

      サタンは,当時地上で最も潔白で神を恐れる人だったヨブが,利己的な理由でのみエホバ神に仕えていると主張しました。そうすることにより,知性を持つ被造物すべても同様であるとほのめかしたのです。こうしてサタンは,エホバに対する人間の忠誠に疑問を投げかけました。これはサタンがエデンで提起した主要な論争,つまりエホバの主権は正当で義にかなっているかどうかという論争の一部です。ヨブ記は,被造物が神への忠誠を保つことにより,エホバの主権の立証に寄与できるということを示しています。

  • 神はイスラエルの子らを救い出す
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • モーセは十戒が記された石の書き板2枚を携えている

      セクション7

      神はイスラエルの子らを救い出す

      エホバはエジプトに災厄を下し,モーセがイスラエルの子らをその地から導き出す。神はモーセを通してイスラエル人に律法を与える

      イスラエルの子らは長い年月の間エジプトに住み,繁栄していましたが,ヨセフのことを知らない新しいファラオが王位に就きます。この冷酷な暴君は,殖え続けるイスラエル人を恐れて奴隷にし,生まれてくるイスラエル人の男子をすべてナイル川でおぼれさせるよう命じました。しかし,一人の勇敢な母親が自分の赤ちゃんを守ろうと,かごに入れて岸辺の葦の間に隠します。ファラオの娘がその男の子を見つけてモーセと名づけ,王家の一員として育てます。

      モーセは40歳の時,イスラエル人の奴隷をエジプト人の職長から守ろうとして問題を起こしました。そのため遠い地へ逃げ,亡命者として生活します。そして80歳の時,エホバに遣わされてエジプトに戻り,ファラオの前に出て,神の民の解放を求めます。

      ファラオは全く聞き入れようとしません。それで神はエジプトに十の災厄を下します。モーセがファラオの前に出て次の災厄を回避する機会を差し伸べるたびに,ファラオはふてぶてしい態度を示し,モーセとその神エホバをさげすみました。ついに十番目の災厄により,エジプトの地にいるすべての初子に死が臨みます。しかし,エホバに従って犠牲の子羊の血を戸柱につけた家族の初子は無事でした。滅びをもたらす神のみ使いがそれらの家を過ぎ越したのです。イスラエル人はこの驚くべき救いを記念し,年に一度,過ぎ越しと呼ばれる祝いを行なうようになります。

      長子を亡くしたファラオは,モーセとすべてのイスラエル人にエジプトを去るよう命じます。民はすぐにエジプトを脱出します。ところがファラオの気が変わり,多くの戦士と兵車を率いて跡を追います。イスラエル人は紅海の岸で逃げ場を失ったかのように見えました。しかし,エホバは紅海の水を分け,イスラエル人が水の壁の間の乾いた海底を歩いて渡れるようにしたのです。エジプト人たちが急いで追いかけると,神は水の壁が崩れ落ちるようにし,ファラオとその軍勢はおぼれてしまいます。

      後にイスラエル人がシナイ山のそばで宿営を張っていた時,エホバはその民と契約を結びました。モーセを仲介者として用い,神は生活のほとんどすべての面で導きや保護となる律法をイスラエルに与えました。民が忠実に神の支配に服し続けるなら,エホバが彼らと共にいて,イスラエルは諸国民にとって祝福となるはずでした。

      しかし,イスラエル人の大半は嘆かわしい信仰の欠如を示しました。それゆえエホバは,その世代を荒野で40年間さまよわせます。モーセは廉直な人ヨシュアを後継者として任命します。そしてついにイスラエルは,神がアブラハムに約束した地に入ることになります。

      ― 出エジプト記,レビ記,民数記,申命記,詩編 136:10-15,使徒 7:17-36に基づく。

      • モーセはどんないきさつで,イスラエルを救い出すために神に用いられることになりましたか。

      • 過ぎ越しが祝われるようになったのはなぜですか。

      • エホバはどのようにイスラエル人をエジプトでの奴隷状態から解放しましたか。

      最大のおきて

      モーセを通して与えられた約600の律法の中で最も有名なのは,出エジプト記 20章1-17節に記されている十戒でしょう。しかしイエス・キリストは,神の律法の中で最大のおきてはどれかと尋ねられた時,こう答えました。「あなたは,心をこめ,魂をこめ,思いをこめ,力をこめてあなたの神エホバを愛さねばならない」。―マルコ 12:28-30。申命記 6:5。

  • イスラエルの民はカナンに入る
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • ヨシュアは,ときの声を上げ,祭司たちは雄羊の角笛を吹く

      セクション8

      イスラエルの民はカナンに入る

      イスラエルはヨシュアに率いられてカナンを征服する。エホバはご自分の民を圧迫から救い出すため,裁き人たちに権限を与える

      イスラエルがカナンに入る何世紀も前に,エホバはアブラハムの子孫にその地を与えることを約束していました。そしてついにヨシュアの指導のもと,イスラエル人は約束の地を手に入れようとしています。

      神はカナン人を裁き,滅びに値するとみなしました。彼らが極めて下劣な性的慣行や非道な流血行為で地を満たしたからです。したがって,イスラエル人は征服するカナン人の諸都市を完全に滅ぼすことになっていました。

      しかし,その地に入る前に,ヨシュアは二人の斥候を遣わします。二人はエリコという都市に住むラハブという女性の家に宿を取ります。ラハブは斥候たちがイスラエル人であることを知っていましたが,家に迎え入れてかくまいます。ラハブはエホバがご自分の民を何度も救ったことを聞いていたので,イスラエル人の神に信仰を持っていました。それで,自分と家の者たちの命を助けることを斥候たちに誓わせます。

      後にイスラエル人がカナンに入り,エリコを攻めた際,エホバは奇跡的にエリコの城壁を崩壊させます。ヨシュアの軍はなだれ込んでその都市を滅ぼしますが,ラハブとその家族の命は助けます。その後,ヨシュアは速やかな軍事行動により,6年で約束の地の大部分を征服しました。それから土地はイスラエルの部族の間で分配されます。

      カナンの地の地図[11ページの地図]

      長年にわたって指導者として働いたヨシュアは,生涯の終わりごろに民を呼び集めます。そして,エホバが父祖たちのために行なった事柄を振り返り,エホバに仕えるよう民を促します。しかし,ヨシュアと年長者たちの死後,イスラエル人はエホバから離れて偽りの神々に仕えるようになります。およそ300年にわたり,民はエホバの律法に幾度も背きました。その間,エホバはフィリスティア人などの敵がイスラエルを圧迫することを許します。しかし,民がエホバに助けを求めると,エホバはイスラエル人を救うために全部で12人の裁き人を任命します。

      聖書の「裁き人の書」に記録されている裁き人の時代は,オテニエルから始まり,歴史上最も力の強い人だったサムソンで終わります。「裁き人の書」の興奮を誘う記述の中では,次の基本的な真理が繰り返し示されています。エホバに対する従順は祝福につながり,不従順は災いをもたらすということです。

      ― ヨシュア記,「裁き人の書」,レビ記 18:24,25に基づく。

      • エホバがラハブとその家族の命を助けたのはなぜですか。

      • イスラエル人はヨシュアの死後にどんな行動を取りましたか。

      • 聖書の「裁き人の書」にはどんな基本的な真理が示されていますか。

  • イスラエル人は王を求める
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 石投げを持つダビデを,サウルの軍の兵士たちが見ている

      セクション9

      イスラエル人は王を求める

      イスラエルの最初の王サウルは不従順になる。神は後継者のダビデと,永遠に存続する王国のための契約を結ぶ

      サムソンの時代の後,サムエルがイスラエルで預言者および裁き人として仕えました。イスラエル人は,自分たちも他の国々のように人間の王が欲しいとサムエルに訴え続けます。それは神にとって侮辱的な要求でしたが,エホバは民の求めに応じるようサムエルに指示し,サウルという謙遜な人を王として選びました。しかし,やがてサウル王はごう慢で不従順になります。エホバはサウルを王の立場から退けることにし,別の人を任命するようサムエルに告げます。選ばれたのはダビデという青年でした。とはいえ,ダビデが王となったのは何年も後のことです。

      ダビデは,まだ十代のころだったと思われますが,サウルの軍にいた兄たちを訪ねました。イスラエル軍の兵士たちは皆,敵の一人の戦士におびえていました。それはゴリアテという巨人で,イスラエル人とその神を嘲弄し続けていたのです。ダビデは憤り,その巨人との勝負に応じます。そして幾つかの石と石投げだけを持って,3㍍近い身長の相手に向かって行きます。ゴリアテがあざけると,ダビデは自分のほうが強力だと答えます。エホバ神の名において戦っているからです。ダビデはたった一つの石でその巨人を打ち倒し,ゴリアテ自身の剣で首をはねます。フィリスティア軍は恐ろしくなって逃げてゆきます。

      最初,サウルはダビデの勇気に感銘を受け,ダビデに軍の指揮をさせます。しかし,ダビデが幾度も成功を収めると,サウルは激しくねたむようになります。ダビデは自分の命を守るために逃げなければならず,何年ものあいだ逃亡者として生活しました。それでもダビデは,サウル王がエホバ神から任命されたことを念頭に置き,自分を殺そうとしていた王に忠節であり続けました。やがてサウルが戦いで死ぬと,程なくしてダビデはエホバの約束どおり王になります。

      「わたしは必ず彼の王国の王座を定めのない時までも堅く立てる」。―サムエル第二 7:13

      王となったダビデは,エホバのために神殿を建てることを切望しました。しかしエホバは,ダビデの子孫の一人が建てることになると告げます。それを行なったのはダビデの息子ソロモンでした。とはいえ,神はダビデと胸の躍るような契約を結ぶことにより,ダビデに報いを与えました。ダビデの家系が類例のない王朝となるのです。最終的に,この家系からエデンで約束された胤つまり救出者が出ることになります。その方は「油そそがれた者」を意味するメシアとして神から任命されます。エホバはそのメシアが永久に存続する王国つまり政府の支配者となることを約束しました。

      ダビデは深く感謝し,神殿の建設のために大量の建築資材や貴金属を集めました。また,霊感のもとに多くの詩を作りました。生涯の終わりごろ,ダビデは「わたしによって語ったのはエホバの霊で,その言葉はわたしの舌の上にあった」と述べました。―サムエル第二 23:2。

      ― サムエル記第一,サムエル記第二,歴代誌第一,イザヤ 9:7,マタイ 21:9,ルカ 1:32,ヨハネ 7:42に基づく。

      • エホバがサウル王の代わりにダビデを王としたのはなぜですか。

      • ダビデは王になる前からどんな特質を示していましたか。

      • ダビデの家系から出ることが予告された,約束の胤つまり救出者はどんな立場に就きますか。

  • ソロモンは知恵をもって支配する
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • シェバの女王がソロモンの王座に近づく

      セクション10

      ソロモンは知恵をもって支配する

      エホバはソロモン王に知恵の心を与える。ソロモンの治世中,イスラエル人は比類のない平和と繁栄を享受する

      もし一つの国家全体がエホバを主権者とし,エホバの律法に従ったなら,民はどのような生活を送ることになるでしょうか。その答えは,ソロモン王の40年にわたる治世中に示されました。

      ダビデは死ぬ前に,息子のソロモンを後継者として選びました。神はソロモンの夢の中で,一つの願いを述べるようにと言います。ソロモンは,民を公平かつ賢明に裁くことができるように,知恵と知識を願い求めます。エホバは喜び,ソロモンに賢くて理解のある心を与えます。さらに,ソロモンが従順であり続けるなら,富と栄光と長寿を与えるとも約束しました。

      ソロモンは知恵のある裁きを行なうことで有名になりました。一例として,二人の女性が一人の赤ちゃんをめぐって言い争い,どちらも自分が母親だと主張したことがありました。ソロモンは,その赤ちゃんを二つに切って女性たちに半分ずつ渡すよう命じます。片方の女性はそれに同意しますが,本当の母親はすぐに,子どもをもう一人の女性に渡してくださいと懇願します。ソロモンはそう願い出た女性が母親であることを見抜き,その女性に赤ちゃんを与えました。間もなく全イスラエルがその司法上の裁きについて聞き,人々は神の知恵がソロモンの内にあることを知ります。

      ソロモンの偉業の一つは,エルサレムにエホバの神殿を建てたことです。それは壮麗な建造物で,イスラエルにおける崇拝の中心地となりました。神殿の奉献式で,ソロモンはこう祈りました。「ご覧ください,天も,いや,天の天も,あなたをお入れすることはできません。まして,私の建てたこの家など,なおさらのことです!」―列王第一 8:27。

      ソロモンの名声は他の国々に広まり,遠いアラビアのシェバにまで達しました。シェバの女王は,ソロモンの栄光と富を見に,またその知恵の深さを試すためにやって来ます。女王はソロモンの知恵とイスラエルの繁栄に強い感銘を受け,この賢王を王座に就けたエホバを賛美します。エホバの祝福により,ソロモンの治世は古代イスラエルの歴史上,最も平和で繁栄した時代となりました。

      残念ながら,ソロモンはエホバの知恵と調和した歩みを続けませんでした。神の命令を無視して何百人もの女性と結婚しましたが,その多くは異国の神々を崇拝していたのです。妻たちは徐々にソロモンの心をエホバから引き離し,偶像崇拝へと傾けさせました。エホバはソロモンに,王国を引き裂いて取り上げると告げます。ただし,ソロモンの父ダビデに免じて一部がその家系のために残されると言います。ソロモンの背信にもかかわらず,エホバはダビデとの王国契約に対して忠節を示し続けました。

      ― 列王第一 1章から11章,歴代第二 1章から9章,申命記 17:17に基づく。

      • 神はソロモンの願いにどう応じましたか。

      • ソロモンはどのように知恵を示しましたか。

      • ソロモンはなぜエホバから離れてゆきましたか。その結果どうなりましたか。

  • 人々を慰め教える,霊感のもとに作られた歌集
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • ダビデは,たて琴を弾きながら歌っている

      セクション11

      人々を慰め教える,霊感のもとに作られた歌集

      ダビデや他の人たちは崇拝に用いる歌を作る。「詩編」には,そのうち150の歌が収められている

      聖書の中で最も長い書は,多くの神聖な歌を編さんしたものです。それらの歌は,約1,000年にわたる期間に作られました。「詩編」には信仰を言い表わす奥深い感動的な言葉がたくさん収められており,これまでに記されたあらゆる書物の中でも際立っています。喜び,賛美,感謝から,苦悩,悲嘆,悔い改めに至るまで,人間の様々な感情が表現されています。詩編作者たちが神を信頼し,神と近しい関係を築いていたことは明らかです。では,歌の中で取り上げられているテーマを幾つか考えてみましょう。

      エホバは正当な主権者で,崇拝と賛美を受けるに値する方。「その名をエホバというあなたが,ただあなただけが全地を治める至高者である」と,詩編 83編18節は述べています。幾つかの詩は,創造のみ業 ― 星の輝く天や,地上の驚くべき生物,素晴らしい人体の造りなど ― ゆえにエホバを賛美しています。(詩編 8,19,139,148編)またある詩は,忠節な者たちを救い,保護するために行動する神として,エホバの栄光をたたえています。(詩編 18,97,138編)さらに,虐げられている者に安らぎをもたらし,邪悪な者を処罰する公正な神としてエホバを高めている詩もあります。―詩編 11,68,146編。

      エホバはご自分を愛する者たちを助け,慰める。「詩編」の中で最も有名な詩は,おそらく23編でしょう。作者のダビデはエホバを,ご自分の羊を導き,守り,世話する愛情深い羊飼いとして描いています。詩編 65編2節は神の崇拝者たちに,エホバが「祈りを聞かれる方」であることを思い起こさせています。重大な悪行を犯してしまった人の多くは,詩編 39編と51編に大いに慰められてきました。その中でダビデは,深刻な過ちに対する心からの悔い改めを述べ,エホバが許してくださるという確信を言い表わしています。詩編 55編22節は,エホバを信頼し,その方に個人的な重荷をすべてゆだねるよう促しています。

      エホバはメシアの王国を通して世界を一変させる。「詩編」には,予告された王であるメシアに明確に当てはまる句がたくさんあります。詩編 2編は,その支配者が敵対する邪悪な諸国民を滅ぼすことを預言しています。詩編 72編は,その王が飢えや不公正や虐げを終わらせることを明らかにしています。詩編 46編9節によれば,神はメシアの王国を通して戦争を終わらせ,あらゆる兵器を滅ぼします。詩編 37編にあるとおり,邪悪な者たちは除き去られますが,義なる者たちは地上で永久に暮らし,世界的な平和と一致を楽しみます。

      ― 「詩編」に基づく。

      • 「詩編」はエホバの支配権の正当性をどのように支持していますか。

      • 神がご自分を愛する者たちを助け,慰めることは,どの詩に示されていますか。

      • 「詩編」によれば,エホバはどのように世界を一変させますか。

      歌の中の歌

      「ソロモンの歌」の中でソロモン王は,すでに羊飼いの若者を愛していた美しい乙女の心を勝ち得ようとしたことについて記しました。そして,たとえ莫大な富を持っていても,愛に関して必ずしも思いどおりになるわけではないということを明らかにしています。霊感のもとに書かれたこの歌は,男女が互いに身体的な魅力を強く感じても不品行を避けられるということも示しています。羊飼いの若者と乙女が自制心や貞潔さを表わす様は,称賛に値します。

  • 生活に役立つ神からの知恵
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 穀物を収穫している聖書時代の人々

      セクション12

      生活に役立つ神からの知恵

      「箴言」は霊感のもとに記された助言を集めたもので,大半がソロモンによって書かれ,日々の生活に導きを与えている

      エホバは知恵に富む支配者でしょうか。この疑問に明確な答えを出す一つの方法は,エホバの助言を考察することです。その助言は役に立つでしょうか。それを当てはめると,意義のある良い人生を送れるようになるでしょうか。賢王ソロモンは,幾百もの箴言つまり格言を記しました。それらは生活のほとんどあらゆる面に言及しています。幾つか例を考えましょう。

      神に依り頼む。信頼は,エホバとの良い関係を持つ上で欠かせません。ソロモンはこう書きました。「心をつくしてエホバに依り頼め。自分の理解に頼ってはならない。あなたのすべての道において神を認めよ。そうすれば,神ご自身があなたの道筋をまっすぐにしてくださる」。(箴言 3:5,6)神の導きを求め,神に従うことによって依り頼むなら,意義深い人生を送れます。そのような歩みにより,人は神の心を歓ばせることができ,エホバが敵対者であるサタンの提起した論争に対して返答することに貢献できるのです。―箴言 27:11。

      知恵をもって人と接する。夫や妻,子どもたちに対する神の助言は,今日かつてないほど役に立っています。神は夫たちに,「あなたの若い時の妻と共に歓べ」と告げ,妻だけを愛し続けるようにと諭しています。(箴言 5:18-20)結婚している女性は「箴言」の中に,夫や子どもに称賛される有能な妻に関する生き生きとした描写を見いだすことができます。(箴言 31章)子どもに対しては,親に従うようにという助言があります。(箴言 6:20)この書はさらに,友情の大切さを示しています。人は孤立すると利己的になるからです。(箴言 18:1)わたしたちは友人から良くも悪くも影響を受けるので,友を賢く選ぶ必要があります。―箴言 13:20; 17:17。

      知恵をもって自分と向き合う。「箴言」は,アルコールの乱用を避けること,健全な感情を育み有害な感情と闘うこと,勤勉に働くことなどに関する貴重な助言を与えています。(箴言 6:6; 14:30; 20:1)また,神の助言を無視して人間の判断に頼ると悲惨な結果を招くと警告しています。(箴言 14:12)さらに,「命は[心]に源を発している」ということを思い起こさせ,心を腐敗的な影響から守るよう促しています。―箴言 4:23。

      こうした助言に従うならばより良い人生が送れるということを,世界中の幾百万という人々が実感してきました。結果としてそれらの人たちは,エホバを支配者として受け入れるべき十分の理由があると感じています。

      ― 「箴言」に基づく。

      • 「箴言」を学ぶと,どんなことが分かりますか。

      • 「箴言」は,神に依り頼むことや,知恵をもって人と接し自分と向き合うことについて,どんな助言を与えていますか。

      「伝道の書」

      どうすれば満足のゆく意義深い人生を送れるでしょうか。ソロモンは,答えを探すのにうってつけの立場にいました。巨万の富,比類のない知恵,強大な権力を有していたので,それらが真の幸福をもたらすかどうか試すことができました。多くの物を手に入れる喜びを味わい,大勢の美しい女性と結婚し,最高の娯楽を楽しみました。また,大規模な建設事業を推し進め,知識を得ようと学問書を研究しました。その結果どうなったでしょうか。「すべてのものはむなしい」ということを悟ったのです。そして,次の事柄を深く認識するようになりました。「すべてのことが聞かれたいま,事の結論はこうである。まことの神を恐れ,そのおきてを守れ。それが人の務めのすべてだからである」。―伝道の書 12:8,13。

  • 良い王たちと悪い王たち
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • イスラエル人の若い王

      セクション13

      良い王たちと悪い王たち

      イスラエルは分裂する。多くの王がイスラエル人を治めるが,ほとんどは神に不忠実だった。エルサレムはバビロニア人に滅ぼされる

      エホバが予告したとおり,ソロモンが清い崇拝からそれた後,イスラエルは分裂します。ソロモンの子で後継者のレハベアムは無情な人でした。そのため,イスラエルの12部族のうち10部族が反逆し,北のイスラエル王国を形成します。エルサレムのダビデの王統に引き続き忠節を示した2部族は,南のユダ王国となります。

      どちらの王国の歴史も波乱に富んでいましたが,それは主に信仰の欠けた不従順な王たちのせいでした。イスラエル王国の王たちは最初から偽りの崇拝を促進したため,同王国はユダ王国よりも悪い状態でした。死者を復活させることさえしたエリヤやエリシャをはじめ,預言者たちが強力な業を行なったにもかかわらず,イスラエルは邪悪な歩みを繰り返しました。ついに神は,北王国がアッシリアに滅ぼされることを許します。

      ユダはイスラエルより100年以上長く存続しましたが,やはり神から処罰を受けます。ユダの王たちの中で,神の預言者たちの警告に応じ,民をエホバに立ち返らせようとした人はごくわずかでした。例えばヨシヤ王は,ユダを偽りの崇拝から清める運動に着手し,エホバの神殿を修復しました。モーセを通して与えられた神の律法の原本が発見された時,ヨシヤは深く心を動かされ,改革をいっそう強力に推し進めました。

      しかし残念なことに,ヨシヤの後継者たちは良い模範に倣いませんでした。そのためエホバは,バビロンがユダを征服し,エルサレムとその神殿を滅ぼすことを許します。生き残った人たちはバビロンで捕囚の身となりました。神はその状態が70年間続くことを予告しました。ユダの地はその間ずっと荒廃していましたが,やがて民は約束どおり故郷に帰ることを許されます。

      とはいえ,約束の救出者,予告されていたメシアが統治するようになるまで,ダビデの家系の王が治めることはなくなります。エルサレムでダビデの王座に座した王のほとんどは,不完全な人間には支配する資格がないということを示しました。真に資格を有するのはメシアだけです。それゆえエホバは,ダビデの家系に属する一連の王たちの最後の一人にこう告げました。「冠を取り外せ。……それは法的権利を持つ者が来るまで,決してだれのものにもならない。わたしはその者にこれを必ず与える」。―エゼキエル 21:26,27。

      ― 列王記第一,列王記第二,歴代第二 10章から36章,エレミヤ 25:8-11に基づく。

      • イスラエルはどのようないきさつで分裂しましたか。結果として生じた二つの王国はどうなりましたか。

      • ダビデの王統はどうなりましたか。なぜですか。

      • ヨナの経験した事柄から,エホバについてどんなことを学べますか。(囲みをご覧ください。)

      ヨナ書

      イスラエルが二つの王国に分裂していた時代,神はヨナに対し,遠くの暴力的な都市ニネベに行って人々に警告の音信を伝えるよう命じます。ところが,ヨナは反対方向へ行く船に乗ります。そのため神は事を運び,ヨナが奇跡的に巨大な魚に呑み込まれるようにします。ヨナが魚の腹の中でエホバに祈ると,魚はヨナを陸に吐き出します。それからヨナは任務を遂行します。

      こうして神はヨナに従順に関する教訓を与えますが,その後,別の問題が生じます。ヨナがニネベの人々に宣べ伝えたところ,彼らが悔い改めたため,神は憐れみを示して処罰を差し控えました。すると,ヨナは非常に不愉快になったのです。神がどのように二つ目の奇跡を行ない,もっと同情心に富む人となるようヨナを教えたか,この興味深い書をお読みください。

  • 神は預言者たちを通して語る
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 神の預言者が音信を伝える

      セクション14

      神は預言者たちを通して語る

      エホバは預言者たちを任命して,裁きや清い崇拝,またメシアの希望に関する音信を伝えさせる

      イスラエルとユダの王たちの時代に,特別な役割を担う人たちが活躍しました。それは預言者たちです。際立った信仰と勇気を示した人たちで,神からの宣告を伝えました。神の預言者たちが取り上げた重要なテーマを四つ考えましょう。

      1. エルサレムの滅び。神の預言者たち ― とりわけイザヤとエレミヤ ― は,エルサレムが滅ぼされて見捨てられることをずっと前から警告し始めました。その都市がなぜ神の怒りを招いたのか,生々しい表現で明らかにしています。エルサレムはエホバを代表していると主張していましたが,偽りの宗教の慣行,腐敗,暴力行為などにより,その主張が真実ではないことが示されました。―列王第二 21:10-15。イザヤ 3:1-8,16-26。エレミヤ 2:1–3:13。

      2. 清い崇拝の復興。70年間の捕囚の後,神の民はバビロンから解放されます。そして荒れ果てた故郷に戻り,エホバの神殿をエルサレムに再建します。(エレミヤ 46:27。アモス 9:13-15)イザヤは,バビロンを打ち倒して神の民に清い崇拝を復興させる征服者の名前 ― キュロス ― を,約200年も前に予告しました。それだけでなく,キュロスの異例の戦術についても詳しく述べていました。―イザヤ 44:24–45:3。

      ユダヤ人の流刑者たちがバビロンを去り,エルサレムに帰還する

      3. メシアの到来と経験する事柄。メシアはベツレヘムという町で生まれることになります。(ミカ 5:2)謙遜にも,ろばに乗ってエルサレムに入ります。(ゼカリヤ 9:9)穏やかで親切ですが,大勢の人たちから嫌われ,退けられます。(イザヤ 42:1-3; 53:1,3)そして,悲惨な死に方をすることになります。メシアの命はそれで完全に終わってしまうのでしょうか。そうではありません。メシアの犠牲により,多くの人々の罪が許されることになっているからです。(イザヤ 53:4,5,9-12)メシアの復活によってのみ,そのことが成し遂げられます。

      4. メシアによる地上の統治。不完全な人間は平和な支配を行なうことができませんが,メシアなる王は「平和の君」と呼ばれます。(イザヤ 9:6,7。エレミヤ 10:23)その統治のもとで,すべての人は互いに平和な関係を築き,あらゆる動物とも平和に暮らします。(イザヤ 11:3-7)病気は存在しなくなります。(イザヤ 33:24)死さえも永久に呑み込まれます。(イザヤ 25:8)メシアの統治期間中,死の眠りに就いていた人々が地上に復活します。―ダニエル 12:13。

      ― イザヤ書,エレミヤ書,ダニエル書,アモス書,ミカ書,ゼカリヤ書に基づく。

      • 神の預言者たちはどんな音信を伝えましたか。

      • 預言者たちはエルサレムの滅びと復興をどのように予告しましたか。

      • エホバの預言者たちはメシアについてどんなことを述べましたか。

      • 預言者たちはメシアによる地上の統治をどのように描写しましたか。

  • 捕囚にされた預言者が将来を垣間見る
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • ネブカドネザルが夢の中で見た像

      セクション15

      捕囚にされた預言者が将来を垣間見る

      ダニエルは神の王国とメシアの到来について預言する。バビロンが陥落する

      エルサレムが滅ぼされる前に捕囚としてバビロンへ連れて行かれた若者ダニエルは,神に対する際立った忠誠を示しました。征服されたユダ王国から他の幾人かのユダヤ人もダニエルと共に捕囚として連れて行かれますが,皆ある程度の自由を与えられます。バビロンで過ごした長い生涯の間,ダニエルは神から大いに祝福されました。ライオンの坑の中で死を免れたばかりか,幻を与えられて遠い将来を垣間見ることさえしました。ダニエルが記した極めて重要な幾つかの預言は,メシアとその統治に焦点を当てています。

      ダニエルはメシアがいつ到来するかを知る。ダニエルは,神の民が待ち望む「指導者であるメシア」がいつ到来するかを告げられます。それは,エルサレムの城壁を修復して建て直せという命令が発せられてから69週年後です。一週間が7日なのに対し,一週年は7年です。その命令が出されたのは,ダニエルの時代のずっと後の西暦前455年でした。その時から69「週」つまり483年を数えると,西暦29年になります。その年に何が起きたかは,この冊子の続く部分で取り上げられます。ダニエルはさらに,贖罪のためにメシアが「断たれる」,つまり処刑されることを予見します。―ダニエル 9:24-26。

      メシアは天で王となる。天そのものの特異な幻の中で,ダニエルは「人の子のような者」と呼ばれるメシアがエホバのみ座に近づくのを見ます。エホバはその者に「支配権と尊厳と王国」を与えます。その王国は永久に存続します。ダニエルはさらに,メシア王国に関する,胸の躍るような事柄を知ります。王は,「至上者の聖なる者たち」と呼ばれる一群の人々と共に統治を行なうのです。―ダニエル 7:13,14,27。

      神の王国は世の諸政府を滅ぼす。神はダニエルに,バビロンの王ネブカドネザルを当惑させた夢を解き明かす能力を与えます。王は夢の中で巨大な像を見ますが,その頭は金,胸と腕は銀,腹と股は銅,脚部は鉄,足は鉄と粘土が混ざり合ったものでできていました。山から切り出された石が,もろい足のところを打って,像を粉々に砕きます。ダニエルは,像の各部が一連の世界強国を表わしていることを説明します。それらは,金の頭であるバビロンから始まり,長きにわたって順に台頭します。この邪悪な世の最後の強国の時代に,神の王国が行動を起こすことをダニエルは予見します。神の王国は世のすべての政府を打ち砕き,その後永久に統治します。―ダニエル 2章。

      老齢になったダニエルは,バビロンの陥落を目にします。預言者たちが予告していたとおり,キュロス王がその都市を征服したのです。それから程なくして,ユダヤ人たちはついに捕囚から解放されます。故郷が70年間にわたって荒廃することが予告されていましたが,まさしくその期間が終了した時に故国に戻りました。忠実な総督や祭司や預言者たちの指導のもと,ユダヤ人たちはやがてエルサレムを建て直し,エホバの神殿を修復します。では,483年間が経過した後に何が起こるのでしょうか。

      ― ダニエル書に基づく。

      • ダニエルはメシアや神の王国についてどんなことを知りましたか。

      • 神の王国は世の諸政府に対してどんな行動を取りますか。

  • メシアが現われる
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • ヨハネがイエスにバプテスマを施す

      セクション16

      メシアが現われる

      エホバはナザレのイエスが遠い昔に約束されたメシアであることを明らかにする

      エホバは,人々が約束のメシアを見分けられるようにするでしょうか。確かにそうします。神が何を行なったか考えてみましょう。ヘブライ語聖書が書き終えられてから400年ほどたった時のことです。ガリラヤ地方の北部のナザレという都市で,マリアという若い女性が,思いも寄らない訪問を受けます。ガブリエルという名のみ使いが現われ,マリアにあることを告げました。神がご自分の活動力である聖霊を用いて,処女のマリアに男の子を産ませるというのです。その子は待望の王,永久に統治を行なう者となります。それは神のみ子であり,神がその命を天からマリアの胎内へと移すのです。

      マリアは,その畏怖の念を起こさせるような割り当てを謙虚に受け入れました。婚約者である大工のヨセフは,神から遣わされたみ使いの説明を受け,マリアが妊娠した理由を得心し,マリアと結婚します。しかし,メシアがベツレヘムで生まれるという預言はどうなるのでしょうか。(ミカ 5:2)その小さな町は,ナザレからおよそ140㌔も離れていました。

      ローマ人の支配者が人口調査を命じ,人々は郷里で登録を行なうよう求められます。ヨセフとマリアは二人ともベツレヘムの出身だったようで,ヨセフは身重の妻をその町へ連れて行きます。(ルカ 2:3)マリアは粗末な家畜小屋で出産し,飼い葉おけの中に赤ちゃんを横たえます。神は程近い丘の中腹にいた羊飼いたちに大勢のみ使いを遣わし,たった今生まれた子どもが約束のメシアつまりキリストであることを伝えます。

      後に,他の人たちもイエスが約束のメシアであることを証言します。預言者イザヤは,ある人物が現われてメシアの重要な業のための道を備えるということを予告していました。(イザヤ 40:3)その前駆者とは,バプテストのヨハネです。ヨハネはイエスを見ると,「見なさい,世の罪を取り去る,神の子羊です!」と叫びます。ヨハネの弟子の幾人かは直ちにイエスのあとに付いて行き,そのうちの一人は「わたしたちはメシアを見つけた」と言います。―ヨハネ 1:29,36,41。

      証はそれだけにとどまりませんでした。ヨハネがイエスにバプテスマを施すと,天からエホバご自身の声が聞こえます。エホバは聖霊によってイエスをメシアとして任命し,こう言いました。「これはわたしの子,わたしの愛する者である。この者をわたしは是認した」。(マタイ 3:16,17)ついに待望のメシアが現われたのです。

      これはいつのことでしょうか。西暦29年,ダニエルの予告した483年間がまさに終わった時でした。この事実は,イエスがメシアつまりキリストであることを示す圧倒的な証拠の一つです。では,イエスは地上にいる間,どんな音信をふれ告げるのでしょうか。

      ― マタイ 1章から3章,マルコ 1章,ルカ 2章,ヨハネ 1章に基づく。

      • エホバはどのようにみ使いたちを用いてイエスがメシアであることを明らかにしましたか。

      • 神はどのようにバプテストのヨハネを用いてイエスがメシアであることを示しましたか。

      • エホバご自身はみ子がメシアであることをどのように言明しましたか。

      どういう意味で神の子か

      エホバはイエスの父親ですが,人間の男性と同じ仕方で父親になったのではありません。イエスはもともと女性から生まれたのではなく,神によって創造されたのです。実のところ,イエスはエホバの最初の創造物でした。(コロサイ 1:15-17)エホバはみ子を創造することによってみ子に命を与えたので,イエスの父親と呼ぶことができます。エホバは霊者であるみ子を創造した後,宇宙を含む他のすべてのものを造る際に,イエスを「優れた働き手」として用いました。―箴言 8:30。

  • イエスは神の王国について教える
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • イエスは群衆を教える

      セクション17

      イエスは神の王国について教える

      イエスは弟子たちに多くのことを教えるが,主要なテーマは神の王国だった

      イエスは地上でどんな使命を果たすのでしょうか。イエス自身こう述べています。『わたしは神の王国の良いたよりを宣明しなければなりません。そのために遣わされたからです』。(ルカ 4:43)イエスがご自分の宣教の主題だった王国について教えた四つの点を考えましょう。

      1. イエスは指名された王。イエスは,ご自分が予告されていたメシアであるとはっきり述べました。(ヨハネ 4:25,26)加えて,預言者ダニエルが幻の中で見た王であることも示しました。イエスは使徒たちに,ご自分がやがて「栄光の座」に座ること,また使徒たちも座に座ることを告げました。(マタイ 19:28)そして使徒たちを含む支配者の一団を「小さな群れ」と呼び,そのグループに属さない「ほかの羊」がいることも説明しました。―ルカ 12:32。ヨハネ 10:16。

      2. 神の王国は真の公正を促進する。イエスは,王国によって最大の不公正が除かれることを示しました。王国はエホバ神のみ名を神聖なものとし,サタンがエデンでの反逆以来み名に浴びせてきた非難をすべてぬぐい去るのです。(マタイ 6:9,10)イエスはさらに,男性も女性も,富んだ人も貧しい人も分け隔てなく教えることにより,常に公平さを表わしました。イエスの使命は主にイスラエル人を教えることでしたが,サマリア人や異邦人にも助けを差し伸べました。当時の宗教指導者たちとは違い,人々を偏り見たり,えこひいきしたりすることはありませんでした。

      3. 神の王国は世のものではない。イエスは政治的に不穏な時代に生活していました。生まれ育った国が外国に支配されていたのです。しかし,人々がイエスを当時の政治問題にかかわらせようとした時,イエスは退きました。(ヨハネ 6:14,15)そしてある政治家に対し,「わたしの王国はこの世のものではありません」と言いました。(ヨハネ 18:36)また追随者たちにも,『あなた方は世のものではありません』と告げました。(ヨハネ 15:19)たとえイエスを守るためであっても,追随者たちが武器を使うことをイエスは許しませんでした。―マタイ 26:51,52。

      「イエスは……村から村へと旅をされ,神の王国の良いたよりを宣べ伝えまた宣明された」。―ルカ 8:1

      4. キリストの支配は愛に基づく。イエスは,人々の重荷を軽くし,人々をさわやかにすることを約束しました。(マタイ 11:28-30)そして,その言葉どおりにしました。人々が思い煩いに対処し,人間関係を改善し,物質主義と闘い,幸福を見いだせるよう,愛のこもった実際的な助言を与えました。(マタイ 5-7章)イエスは愛を示したゆえに,あらゆる階層の人々にとって近づきやすい人でした。最も立場の低い人たちでさえ,大勢イエスのもとにやって来ました。イエスが自分たちを親切に扱い,尊厳を重んじてくれることを確信していたのです。イエスが素晴らしい支配者になることは間違いありません。

      イエスはさらに,別の非常に強力な方法によって神の王国について教えました。多くの奇跡を行なったのです。なぜそうしたのかを見てみましょう。

      ― マタイ,マルコ,ルカ,ヨハネによる書に基づく。

      • イエスはご自分がメシアなる王であることをどのように教えましたか。

      • イエスはご自分が公正な支配を行なうことをどのように示しましたか。

      • イエスはご自分の王国がこの世のものではないことをどのように明らかにしましたか。

      • イエスはご自分の支配が愛に基づくことをどのように示しましたか。

  • イエスは奇跡を行なう
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • イエスは視覚に障害を持つ人の目に触り,その人をいやす

      セクション18

      イエスは奇跡を行なう

      イエスは奇跡により,王として将来どのようにご自分の力を行使するかを示す

      神はイエスに,他の人間には不可能なことを行なう力を与えました。イエスは,しばしば大勢の人の前で,非常に多くの奇跡を行ないました。それらの奇跡は,不完全な人間には決して排除できない敵や障害物に対してイエスが力を有していることを示しました。幾つか例を考えてみましょう。

      飢えや渇き。イエスの最初の奇跡は,水をぶどう酒に変えるというものでした。後にイエスは二度にわたり,少しのパンと魚だけで,おなかを空かせた何千人もの人々に食事をさせました。どちらの場合にも,人々が食べ切れないほどの量の食物が提供されました。

      病気。イエスは「あらゆる疾患とあらゆる病」に苦しむ人々を治しました。(マタイ 4:23)例えば,視覚や聴覚の障害,重い皮膚病,てんかん,手足の障害などをいやしました。イエスに治せない病気はありませんでした。

      危険な気象現象。ある時イエスと弟子たちが舟でガリラヤの海を渡っていると,猛烈な風あらしが起こりました。弟子たちは恐怖に襲われますが,イエスはただあらしに向かって「静まれ! 静かになれ!」と言います。すると,大なぎになりました。(マルコ 4:37-39)別の時に,イエスは激しいあらしの中で水の上を歩きました。―マタイ 14:24-33。

      邪悪な霊者。邪悪な霊者たちは人間よりはるかに強力です。神に敵対する凶暴な霊者の束縛から逃れられなかった人は少なくありません。しかし,イエスは何度もそうした霊を人々から追い出し,霊の影響力から人々を自由にしました。イエスは邪悪な霊者を恐れませんでした。一方,それらの霊者たちはイエスの権威を知っており,イエスを恐れました。

      死。死はいみじくも「最後の敵」と呼ばれており,それに打ち勝つことのできる人間はいません。(コリント第一 15:26)しかし,イエスは死者を復活させました。例えば,あるやもめの若い息子や,悲嘆に暮れる夫婦の幼い娘を生き返らせました。別の際立った例として,イエスは死んでから4日近くもたっていた親しい友ラザロを,嘆き悲しむ群衆の前で復活させました。イエスに最も激しく敵対していた人たちでさえ,イエスがその奇跡を行なったことを認めました。―ヨハネ 11:38-48; 12:9-11。

      イエスはなぜこれらの奇跡を行なったのでしょうか。イエスが助けた人々は皆,結局のところ死んだのではないでしょうか。確かにそうですが,イエスの奇跡は永続する益をもたらしました。メシアなる王の支配に関する胸の躍るような数々の預言に明確な根拠があることを証明したのです。神に任命された王は,飢えや渇き,病気,危険な気象現象,邪悪な霊者,また死さえも除き去ることができます。そのことに疑問の余地はありません。神からそのような力を与えられていることをすでに実証したからです。

      ― マタイ,マルコ,ルカ,ヨハネによる書に基づく。

      • イエスは,飢えや渇き,病気,危険な気象現象,邪悪な霊者,また死に対して力を有していることをどのように示しましたか。

      • イエスの奇跡から,将来イエスが地を支配する時についてどんなことが分かりますか。

  • イエスは全世界にかかわる預言を述べる
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • イエスはオリーブ山で幾人かの使徒たちと話をする

      セクション19

      イエスは全世界にかかわる預言を述べる

      イエスはご自分の王としての臨在と事物の体制の終結をしるしづける事柄について述べる

      眼下にエルサレムと神殿の見事な景観が広がるオリーブ山で,使徒たちのうちの4人が,イエスの語った事柄について質問をしました。イエスは少し前に,エルサレムの神殿が滅ぼされることを述べていました。もっと前には,「事物の体制の終結」について話していました。(マタイ 13:40,49)それで使徒たちは,「あなたの臨在と事物の体制の終結のしるしには何がありますか」と尋ねます。―マタイ 24:3。

      イエスは答えとして,エルサレムの滅びに先立って何が起きるかを話します。しかし,イエスの言葉は遠い将来にも関係していました。その預言は後に,全世界にかかわる大規模な成就を見ることになるのです。イエスは,幾つかの出来事や世界情勢が組み合わさって一つのしるしとなることを預言しました。そのしるしは,天の王としてのイエスの臨在が始まったことを地上の人々に示します。つまり,エホバ神がイエスを待望のメシア王国の王としたことを示します。そのしるしが現われることは,王国が間もなく悪を取り除いて人類に真の平和をもたらすことを意味します。したがって,イエスが予告した事柄は,古い事物の体制 ― 現存する宗教的,政治的,社会的な体制 ― の終わりと,新しい体制の始まりをしるしづけるものとなります。

      イエスは天の王としてのご自分の臨在期間中に地上で何が生じるかを説明しました。国際的な戦争,食糧不足,大地震が起き,病気が蔓延し,不法が増します。イエスの真の弟子たちは,神の王国の良いたよりを全世界で宣べ伝えます。これらの事柄は,これまでに起きたことがないような「大患難」において頂点に達します。―マタイ 24:21。

      イエスの追随者たちは,その患難が近いことをどのように知るのでしょうか。イエスは「いちじくの木から……学びなさい」と言いました。(マタイ 24:32)いちじくの枝に葉がつくことは,夏が近いことを示す顕著なしるしです。同様に,イエスが予告した事柄がすべて一つの期間に生じることは,終わりが近いことの明確なしるしとなります。イエスは,大患難が始まる正確な日と時刻を知っているのは父だけであると言いました。それゆえ弟子たちにこう勧めています。「ずっと見ていて,目を覚ましていなさい。あなた方は,定められた時がいつかを知らないからです」。―マルコ 13:33。

      ― マタイ 24章と25章,マルコ 13章,ルカ 21章に基づく。

      • イエスの使徒たちはどんなことについてもっと知りたいと思いましたか。

      • イエスが述べたしるしは何を意味しますか。そのしるしにはどんな事柄が含まれますか。

      • イエスは弟子たちにどんな助言を与えましたか。

      キリストの臨在のしるし

      イエスは,現在の腐敗した事物の体制を神が滅ぼす時が近いことを示すしるしについて予告しました。第一次世界大戦に始まり,人類はイエスが預言した事柄を目の当たりにしてきました。世界の宗教,政治,社会の動向は,この事物の体制が終わりへ向かってまっしぐらに突き進んでいることを示しています。イエスは追随者たちに,生き残るには『目ざめていて』確固とした行動を取らなければならないと教えました。主権の論争において神の側にしっかりと立つ必要があるのです。a ―ルカ 21:36。マタイ 24:3-14。

      a イエスの預言についてさらに情報を得たい方は,エホバの証人の発行した「聖書は実際に何を教えていますか」という本の第9章をご覧ください。

  • イエス・キリストは処刑される
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • イエス

      セクション20

      イエス・キリストは処刑される

      イエスは新しい式を制定する。その後,裏切られて杭につけられる

      宣べ伝えて教える業を3年半行なったイエスは,地上で過ごす期間が終わりに近づいていることを知っていました。ユダヤ人の宗教指導者たちはイエスを殺そうとたくらんでいましたが,イエスを預言者とみなしていた民の間で騒動が起きるのではないかと恐れていました。サタンは,イエスの12使徒の一人ユダ・イスカリオテが裏切り者になるよう仕向けます。宗教指導者たちは,イエスを裏切る見返りとしてユダに銀30枚を与えることを約束します。

      イエスは最後の晩に,使徒たちと過ぎ越しを祝います。そしてユダを去らせた後,新しい式 ― 主の晩さん ― を制定します。イエスはパンを取り,祈りをささげてから11人の使徒たちに回し,こう言いました。「これは,あなた方のために与えられるわたしの体を表わしています。わたしの記念としてこれを行ないつづけなさい」。さらに,ぶどう酒についても同じようにし,「この杯は,わたしの血による新しい契約を表わしています」と言いました。―ルカ 22:19,20。

      その晩,イエスは使徒たちに多くのことを話しました。無私の愛を示し合うようにという新しいおきてを与え,こう言いました。「あなた方の間に愛があれば,それによってすべての人は,あなた方がわたしの弟子であることを知るのです」。(ヨハネ 13:34,35)イエスはこれから起ころうとしている痛ましい出来事のゆえに動揺しないよう励ましを与え,使徒たちのために真剣に祈ります。それから皆で賛美を歌い,外に出ます。

      夜のゲッセマネの園で,イエスはひざまずいて心からの祈りをささげます。間もなく,兵士や祭司たちを含む,武器を持った群衆が,イエスを捕縛するためにやって来ます。ユダはだれがイエスであるかを示すために,イエスに近寄って口づけをします。兵士たちがイエスを捕らえると,使徒たちは逃げて行きます。

      ユダヤ人の高等法廷の前に立ったイエスは,自分は神の子であると言います。法廷はイエスが冒とくの罪をおかしたとし,死に値するとみなします。それからイエスはローマ人総督ポンテオ・ピラトの所へ連れて行かれます。ピラトはイエスには何の罪もないと考えますが,処刑を叫び求める群衆にイエスを引き渡します。

      イエスはゴルゴタへ引いて行かれ,ローマ兵によって杭に釘づけにされます。白昼にもかかわらず,奇跡により闇が垂れ込めます。その日の後刻にイエスは死に,大きな地震が起こります。イエスの体は,岩をくりぬいた墓に横たえられました。翌日,祭司たちは墓を封印し,入口を警備させます。イエスは墓に入れられたままにされるのでしょうか。そうではありません。間もなく最大の奇跡が起ころうとしていたのです。

      ― マタイ 26章と27章,マルコ 14章と15章,ルカ 22章と23章,ヨハネ 12章から19章に基づく。

      • イエスはどんな新しい式を制定しましたか。

      • イエスはどういう経緯で死に至りましたか。

      イエスの肝要な役割

      イエスの死は,エホバの目的が成し遂げられる上で極めて重要な役割を果たしました。イエスは神の聖霊の働きによってマリアの胎に宿されたので,完全な人間として生まれ,死を受け継いではいませんでした。しかし,自分の命を差し出し,人間が永遠に生きる見込みを持てるようにしました。不従順になったアダムが失った素晴らしい生活を,アダムの子孫が再び楽しめるようにしたのです。a ―マタイ 20:28。ルカ 1:34,35。ヨハネ 3:16,36。ペテロ第二 3:13。

      a イエスの死が持つ,犠牲としての価値については,「聖書は実際に何を教えていますか」という本の第5章をご覧ください。

  • イエスは生きている!
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • イエスは天へ昇る

      セクション21

      イエスは生きている!

      イエスは追随者たちに現われ,彼らを教えて励ます

      イエスが死んでから三日目に,弟子だった女性たちが,墓の入口をふさいでいた石が転がしのけてあるのを見つけました。なんと墓は空だったのです。

      二人のみ使いが現われ,一人がこう言います。「あなた方は,……ナザレ人のイエスを捜しています。彼はよみがえらされました」。(マルコ 16:6)女性たちは直ちに使徒たちに知らせるために走って行きます。すると,途中でイエスに出会いました。イエスはこう言います。「恐れることはありません! 行って,わたしの兄弟たちに報告し,彼らがガリラヤに行くようにしなさい。彼らはそこでわたしを見るでしょう」。―マタイ 28:10。

      その日の後刻,二人の弟子が,エルサレムからエマオという村に向かって歩いていました。そこへ見知らぬ旅人が加わり,何を話しているのかと尋ねます。実のところそれは復活したイエスでしたが,違う様で現われたため,弟子たちは気づきませんでした。彼らは悲しげな顔で,イエスについて話していたと答えます。すると旅人は,聖書全巻にある,メシアに関連した事柄を説明し始めます。実際イエスは,メシアに関する預言を詳細な点に至るまで成就したのです。a その見知らぬ人がイエスであることに弟子たちが気づいた時,霊者として復活させられたイエスは姿を消します。

      二人の弟子はすぐさまエルサレムに引き返します。使徒たちは戸に錠をかけた部屋で集まっていました。二人が自分たちの経験した事柄を話していると,イエスが現われます。追随者たちは驚き,なかなか信じることができません。イエスはこう言います。『あなた方の心に疑いが起きるのはどうしてですか。このように書いてあります。すなわち,キリストは苦しみを受け,三日目に死人の中からよみがえります』。―ルカ 24:38,46。

      イエスは復活してから40日にわたり,幾度も弟子たちに現われました。500人以上に現われたこともあります。おそらくその時に,イエスは弟子たちに次の重要な割り当てを与えました。「行って,すべての国の人々を弟子とし,……わたしがあなた方に命令した事柄すべてを守り行なうように教えなさい。そして,見よ,わたしは事物の体制の終結の時までいつの日もあなた方と共にいるのです」。―マタイ 28:19,20。

      11人の忠実な使徒たちと最後に会った際,イエスはこう約束しました。「聖霊があなた方の上に到来するときにあなた方は力を受け,……地の最も遠い所にまで,わたしの証人となるでしょう」。(使徒 1:8)それからイエスは天へ昇ってゆき,雲に隠れて見えなくなります。

      ― マタイ 28章,マルコ 16章,ルカ 24章,ヨハネ 20章と21章,コリント第一 15:5,6に基づく。

      a イエスに成就した,メシアに関する預言の幾つかについては,この冊子のセクション14,セクション15,セクション16また「聖書は実際に何を教えていますか」という本の付録「イエス・キリスト ― 約束のメシア」をご覧ください。

      • イエスの弟子たちは,神がイエスを復活させたことをどのように知りましたか。

      • イエスはエマオへ向かっていた二人の弟子に何を説明しましたか。

      • イエスは天へ昇る前に,弟子たちにどんな指示を与えましたか。

      聖霊

      神の聖霊は,宇宙で最も強力な力です。エホバ神はご自分の活動する力である霊を用いて天と地を創造し,人間を導いて聖書を書き記させました。この冊子でこれまで取り上げたすべての奇跡は,霊の力によるものです。イエス・キリストが強力な霊者として復活させられた最大の奇跡もそうです。―創世記 1:2。サムエル第二 23:2。使徒 10:38。ペテロ第一 3:18。

  • 使徒たちは勇敢に宣べ伝える
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 使徒たちはサンヘドリンで話す

      セクション22

      使徒たちは勇敢に宣べ伝える

      迫害にもかかわらず,クリスチャン会衆は急速に発展する

      イエスの昇天の10日後,エルサレムのある家に120人ほどの弟子たちが集まっていました。時は西暦33年,ユダヤ人のペンテコステの祭りの最中です。突然,激しい風の吹きつけるような物音が家を満たし,弟子たちは奇跡的に自分たちの知らない言語で話し始めます。なぜこのような不思議なことが起きたのでしょうか。神がそれらの弟子たちに聖霊を与えたのです。

      家の外には群衆がいました。祭りのために多くの国から人々が訪れていたからです。人々は,自分たちの言語をイエスの弟子たちが流ちょうに話しているのを聞き,非常に驚きます。ペテロは何が起きたかを説明し,神がご自分の霊を「注ぎ出す」という預言者ヨエルの預言に言及して,霊を注がれた人たちに奇跡的な賜物が与えられることになっていたと話します。(ヨエル 2:28,29)聖霊が注がれたことを示すこの強力な証拠は,重要な変化が生じたことを明らかにしました。神の恵みがイスラエルから,新たに設立されたクリスチャン会衆へと移ったのです。受け入れられる仕方で神に仕えたいと願う人は,キリストの追随者になることが必要になりました。

      反対が強まった結果,弟子たちは敵対する人々によって獄に入れられてしまいます。しかし,夜中にエホバのみ使いが獄の戸を開き,宣べ伝え続けるようにと告げます。夜明けに,弟子たちはまさにそのとおりにします。神殿に入ってイエスについての良いたよりを教え始めたのです。反対者たちは激怒し,宣べ伝えるのをやめるよう命じますが,使徒たちはひるまずこう答えます。「わたしたちは,自分たちの支配者として人間より神に従わねばなりません」。―使徒 5:28,29。

      迫害は激しさを増します。あるユダヤ人たちは,イエスの弟子ステファノを冒とくのかどで告発し,石打ちにして殺しました。タルソスのサウロという若者が,その殺害をよしとして見守っていました。それからサウロは,だれでもキリストに従う者を捕らえるためにダマスカスへ向かいます。その道中で,天からの光が彼のまわりにぱっと光り,「サウロ,サウロ,なぜあなたはわたしを迫害しているのか」という声が聞こえます。光で目が見えなくなったサウロが「あなたはどなたですか」と尋ねると,その声は『わたしはイエスです』と答えます。―使徒 9:3-5。

      3日後,イエスはサウロの視力を回復させるためにアナニアという弟子を遣わします。サウロはバプテスマを受け,イエスについて大胆に宣べ伝え始めます。サウロは使徒パウロとして知られるようになり,クリスチャン会衆の熱心な一員になりました。

      イエスの弟子たちは,神の王国の良いたよりをユダヤ人とサマリア人にのみ宣明していました。ある時,神を恐れるローマ人の士官コルネリオにみ使いが現われ,使徒ペテロを呼ぶよう告げます。ペテロは幾人かと一緒に訪れ,コルネリオとその親族に宣べ伝えます。ペテロが話していると,それらの異邦人の上に聖霊が下り,ペテロは彼らがイエスの名においてバプテスマを受けられるようにします。こうして,永遠の命に至る道があらゆる国の人々に開かれました。会衆は,良いたよりを遠く広く伝えるための態勢を整えました。

      ― 使徒 1:1–11:21に基づく。

      • ペンテコステの祭りの最中に何が起きましたか。

      • イエスの弟子たちが行なった伝道に,敵対する人々はどう反応しましたか。

      • 永遠の命に至る道はどのようにあらゆる国の人々に開かれましたか。

  • 良いたよりが広まる
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • パウロはアテネの人々の前で話をする

      セクション23

      良いたよりが広まる

      パウロは陸路や海路を使って伝道旅行をする

      パウロは転向した後,神の王国に関する良いたよりを熱心に宣明しました。今度は,かつて反対者だったパウロ自身が激しい反対を受けるようになります。この精力的な使徒は何度か伝道旅行を行ない,人間に対する神の当初の目的を成し遂げる王国についての良いたよりを遠く広く伝えました。

      最初の伝道旅行の際,パウロはルステラで,生まれつき足のなえていた人をいやします。すると群衆は大声で,パウロと旅仲間のバルナバのことを神々だと言い始めます。二人はやっとのことで,自分たちに犠牲をささげようとする人々をとどめます。しかし,この同じ群衆はパウロに敵対する人々の影響を受け,後にパウロを石打ちにし,死んだものとして放置しました。パウロはその襲撃を生き延び,やがてルステラに戻り,励みとなる言葉を語って弟子たちを強めます。

      ユダヤ人のクリスチャンの中には,非ユダヤ人の信者もモーセの律法の特定の部分に従うべきだと言う人たちがいました。パウロはその問題を,エルサレムにいる使徒や年長者たちに提出します。それらの男子は聖書を注意深く調べ,神の聖霊の導きのもと,諸会衆に手紙を書きました。そして,偶像礼拝や,血および血抜きをしていない肉を食べること,また淫行を避けるようにとの訓戒を与えます。この指示に従うことは「必要な事柄」でしたが,そのためにモーセの律法を守る必要はありませんでした。―使徒 15:28,29。

      パウロは2回目の伝道旅行でベレアを訪れます。現代のギリシャの領土内にある都市です。そこに住むユダヤ人たちは意欲的にみ言葉を受け入れ,パウロの教えを確かめるために日ごとに聖書を調べました。再び反対が起こり,移動することを余儀なくされたパウロは,次にアテネへ行き,学識のあるアテネ人たちの前で力強い話を行ないます。その話は,巧みさ,識別力,雄弁さの点で良い手本となっています。

      3回目の伝道旅行の後,パウロはエルサレムに行きました。神殿に入ると,あるユダヤ人たちが暴徒と化してパウロを殺そうとしますが,ローマ兵が介入し,パウロを尋問します。パウロはローマ市民として,その後ローマ人の総督フェリクスの前で弁明を行ないます。ユダヤ人たちはパウロに対する告発の根拠を何も提出できませんでした。パウロは別のローマ人総督フェストによってユダヤ人の手に渡されないよう,「わたしはカエサルに上訴します!」と言います。フェストは,「カエサルのもとにあなたを行かせよう」と答えます。―使徒 25:11,12。

      ローマ兵がパウロを怒り狂った暴徒から助け出す

      パウロは裁判のために船でイタリアへ連れて行かれます。しかし,旅の途中で難船を経験し,マルタ島で冬を過ごすことになります。ようやくローマに到着したパウロは,借りた家で2年間暮らしました。兵士の監視のもとにありましたが,変わらず熱心なこの使徒は,訪ねてくるすべての人に神の王国について宣べ伝え続けました。

      ― 使徒 11:22–28:31に基づく。

      • パウロがルステラで足のなえた人をいやした後,どうなりましたか。

      • モーセの律法を守ることに関する問題はどのように解決されましたか。

      • パウロはなぜローマへ行くことになりましたか。そこにいる間,何をしましたか。

  • パウロは諸会衆に手紙を書く
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 軟禁中のパウロが手紙を口述する

      セクション24

      パウロは諸会衆に手紙を書く

      パウロの手紙はクリスチャンの組織を強める

      新たに設立されたクリスチャン会衆は,エホバの目的の遂行において重要な役割を果たすことになります。しかし,1世紀のクリスチャンたちはすぐに困難な状況に陥りました。彼らは,外部からの迫害や,内部で生じる難しい問題に面しても,神への忠誠を保つでしょうか。クリスチャン・ギリシャ語聖書には,必要とされていた助言や励ましを与える21通の手紙が収められています。

      そのうちの14通 ― ローマ人への手紙からヘブライ人への手紙まで ― は,使徒パウロによって書かれました。それらの手紙の名称は,それぞれの宛て先にちなんで付けられています。個人に宛てられたものもあれば,特定の会衆に宛てられたものもあります。パウロが手紙の中で取り上げている事柄を幾つか考えてみましょう。

      道徳や行状に関する訓戒。淫行,姦淫,その他の重大な罪を習わしにする人が,「神の王国を受け継ぐことはありません」。(ガラテア 5:19-21。コリント第一 6:9-11)神を崇拝する人たちは,国籍にかかわりなく一致していなければなりません。(ローマ 2:11。エフェソス 4:1-6)困っている仲間を助けるために,快く自分を与えるべきです。(コリント第二 9:7)パウロは,「絶えず祈りなさい」と述べています。崇拝者たちは,祈りのうちにエホバに心情を吐露するよう勧められています。(テサロニケ第一 5:17。テサロニケ第二 3:1。フィリピ 4:6,7)神に祈りを聞いていただくには,信仰を持って祈らなければなりません。―ヘブライ 11:6。

      家族が幸福であるために,どんなことが役に立つでしょうか。夫は自分の体のように妻を愛し,妻は夫に深い敬意を払うべきです。子どもは親に従わなければなりません。それは神に喜ばれることだからです。親は聖書の原則に基づき,愛情をこめて子どもを教え導く必要があります。―エフェソス 5:22–6:4。コロサイ 3:18-21。

      パウロが手紙を書いた場所を示す地図

      神の目的に関する啓発。モーセの律法の多くの面は,キリストが到来するまでイスラエル人を保護し,導くものとなりました。(ガラテア 3:24)しかしクリスチャンは,神を崇拝するためにその律法を守る必要はありません。パウロは,ヘブライ人 ― ユダヤ教の背景を持つクリスチャン ― への手紙の中で,律法の意味や,神の目的がどのようにキリストを通して果たされるかに関し,多くの啓発を与えました。そして,律法下の様々な取り決めに預言的な価値があったことを説明しています。例えば,動物の犠牲は,罪に対する真の許しをもたらすイエスの犠牲の死を予表していました。(ヘブライ 10:1-4)イエスの死により,神は必要のなくなった律法契約を取り消しました。―コロサイ 2:13-17。ヘブライ 8:13。

      パウロの手紙に耳を傾ける初期のクリスチャン会衆

      会衆の適正な組織に関する指示。会衆内で責任を担うことを願う男子は,高い道徳規準を持ち,霊的な資格にかなっていなければなりません。(テモテ第一 3:1-10,12,13。テトス 1:5-9)エホバ神を崇拝する人々は,定期的に集まって励まし合う必要があります。(ヘブライ 10:24,25)崇拝のための集会は,人々を築き上げ,十分に教える場であるべきです。―コリント第一 14:26,31。

      パウロはテモテに2通目の手紙を書いた時,再びローマにいました。投獄され,裁きを待っていたのです。危険を冒してパウロを訪ねたのは,数名の勇敢な人たちだけでした。自分に残された時が短いことを悟っていたパウロは,「わたしは戦いをりっぱに戦い,走路を最後まで走り,信仰を守り通しました」と述べました。(テモテ第二 4:7)それから程なくして殉教したようです。しかし,同使徒の手紙は,今日においても神の真の崇拝者たちにとって導きとなっています。

      ― 以下の手紙に基づく。ローマ,コリント第一,コリント第二,ガラテア,エフェソス,フィリピ,コロサイ,テサロニケ第一,テサロニケ第二,テモテ第一,テモテ第二,テトス,フィレモン,ヘブライ。

      • パウロの手紙には,道徳や行状に関するどんな訓戒が収められていますか。

      • パウロは神の目的がキリストを通して果たされることについてどんな啓発を与えていますか。

      • パウロは会衆の適正な組織に関してどんな指示を与えましたか。

      約束の胤はだれか

      アダムとエバが罪をおかした後,神は象徴的な言葉を用いて蛇にこう告げました。「わたしは,お前と女との間,またお前の胤と女の胤との間に敵意を置く。彼はお前の頭を砕き,お前は彼のかかとを砕くであろう」。(創世記 3:15)聖書は悪魔が「初めからの蛇」であることを示しています。(啓示 12:9)神の約束の胤つまり救出者がだれかということは奥義で,幾世紀にもわたって聖書の中で徐々に明らかにされました。

      アダムとエバが罪をおかしてから約2,000年後,エホバは約束の胤がアブラハムの家系を通して来ることを示しました。(創世記 22:17,18)さらに2,000年ほどして,使徒パウロは胤の主要な部分がメシアつまりイエス・キリストであることを明らかにしました。(ガラテア 3:16)創世記 3章15節と調和して,イエスは処刑された際に比喩的に「かかと」を砕かれました。しかし,神によって復活させられ,「霊において生かされた」のです。―ペテロ第一 3:18。

      神はさらに,14万4,000人の人々が胤の副次的な部分を構成するようにしました。(ガラテア 3:29。啓示 14:1)それらの人々は霊者として復活させられます。そして,天の王国でキリストと共同の相続人となります。―ローマ 8:16,17。

      イエスは天の強大な王として,間もなく悪魔とその胤 ― サタンに従う邪悪な人間や悪霊たち ― を除き去ります。(ヨハネ 8:44。エフェソス 6:12)イエスの支配は,従順な人々すべてに平和と喜びをもたらします。こうして,イエスは蛇の「頭」を砕き,悪魔サタンを完全に滅ぼすのです。―ヘブライ 2:14。

  • 信仰,行状,愛に関する助言
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 聖書筆者が手紙を書く

      セクション25

      信仰,行状,愛に関する助言

      ヤコブ,ペテロ,ヨハネ,ユダは,仲間のクリスチャンを励ますために手紙を書く

      ヤコブとユダはイエスの異父兄弟でした。ペテロとヨハネはイエスの12使徒に含まれていました。この4人は,クリスチャン・ギリシャ語聖書に収められている,合計7通の手紙を書きました。各々の手紙には,筆者の名前が付けられています。霊感のもとに記された訓戒は,エホバへの忠誠を保ち,神の王国に焦点を合わせるよう,クリスチャンを助けるためのものでした。

      信仰を示す。信仰を持っていると言うだけでは十分ではありません。真の信仰は行動に表われます。『実際に,業のない信仰は死んだものなのです』と,ヤコブは書いています。(ヤコブ 2:26)試練に遭うとき,信仰のうちに行動するなら,忍耐が培われます。首尾よく試練に対処するには,神が知恵を与えてくださるという確信のもとにそれを祈り求める必要があります。忍耐すれば,神の是認を得られます。(ヤコブ 1:2-6,12)崇拝者が信仰のうちに忠誠を保つとき,エホバ神はそれにこたえられます。「神に近づきなさい。そうすれば,神はあなた方に近づいてくださいます」と,ヤコブが述べているとおりです。―ヤコブ 4:8。

      クリスチャンの信仰は,誘惑や不道徳な影響力に抵抗できるほど強くなければなりません。ユダは,道徳的な腐敗がはびこっていることを懸念し,「信仰のために厳しい戦いをする」よう仲間のクリスチャンを促しました。―ユダ 3。

      清い行状を保つ。エホバは,ご自分を崇拝する人々が聖なる者であること,つまりあらゆる面で清いことを期待しておられます。ペテロはこう書いています。「あなた方自身もすべての行状において聖なる者となりなさい。なぜなら,『あなた方は聖なる者でなければならない。わたし[エホバ]は聖なる者だからである』と書かれているからです」。(ペテロ第一 1:15,16)クリスチャンには見倣うべき模範があります。『キリストはあなた方のために苦しみを受け,あなた方がその歩みにしっかり付いて来るよう手本を残されました』と,ペテロは述べています。(ペテロ第一 2:21)クリスチャンは神の規準を守るゆえに苦しみに遭うとしても,「正しい良心」を保ちます。(ペテロ第一 3:16,17)ペテロは,神の裁きの日と『義が宿る』約束の新しい世とを待つ間,常に聖なる行状を示し,敬虔な専心を反映した行ないを心がけるよう勧めています。―ペテロ第二 3:11-13。

      「神に近づきなさい。そうすれば,神はあなた方に近づいてくださいます」。―ヤコブ 4:8

      愛を表わす。『神は愛です』とヨハネは書いています。神はイエスを『わたしたちの罪のための犠牲』として遣わすことにより,大きな愛を表わしてくださいました。クリスチャンはどのようにこたえ応じるべきでしょうか。ヨハネはこう述べています。「愛する者たちよ,神がわたしたちをこのように愛してくださったのであれば,わたしたちも互いに愛し合う務めがあります」。(ヨハネ第一 4:8-11)そのような愛を示す一つの方法は,仲間のクリスチャンを温かくもてなすことです。―ヨハネ第三 5-8。

      では,エホバを崇拝する人々はその方への愛をどのように表わせるでしょうか。ヨハネはこう答えています。「そのおきてを守り行なうこと,これがすなわち神への愛だからです。それでも,そのおきては重荷ではありません」。(ヨハネ第一 5:3。ヨハネ第二 6)そのように神に従う人々は,引き続き神に愛していただけることを確信しつつ,『永遠の命を目ざす』ことができます。―ユダ 21。

      ― 以下の手紙に基づく。ヤコブ,ペテロ第一,ペテロ第二,ヨハネ第一,ヨハネ第二,ヨハネ第三,ユダ。

      • クリスチャンはどうすれば信仰を示せますか。

      • 神はご自分を崇拝する人々がどんな行状を保つことを期待しておられますか。

      • 本当に神を愛していることをどのように表わせますか。

  • 楽園が回復される!
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 王国で王座に座しているイエス

      セクション26

      楽園が回復される!

      キリストの治める王国により,エホバはご自分のみ名を神聖なものとし,ご自分の主権を立証し,あらゆる悪を一掃する

      「啓示」もしくは黙示録と呼ばれる,聖書の巻末の書は,全人類に希望を差し伸べています。使徒ヨハネが記したその書には一連の幻が収められており,それらはエホバの目的の成就をもって最高潮を迎えます。

      最初の幻の中で,復活したイエスは幾つかの会衆を褒め,また正します。次の幻では,神の天のみ座の様子を見ることができます。み座の前では,霊の被造物が神を賛美しています。

      神の目的は進展し,子羊イエス・キリストが七つの封印のある巻き物を受け取ります。最初の四つの封印が開かれると,象徴的な騎手たちが世界の舞台に勢いよく登場します。一人目は,白い馬に乗り,王冠を戴いたイエスです。続いて,それぞれ異なる色の馬に乗った騎手たちが現われます。それらは預言的に,戦争,飢きん,疫病を表わしており,そのすべてはこの事物の体制の終わりの日に生じます。第七の封印が開かれると,神の裁きの宣告を表わす象徴的な七つのラッパが吹き鳴らされます。その結果,神の怒りの表明である象徴的な七つの災厄がもたらされます。

      生まれたばかりの男の子として描写されている神の王国が,天で設立されます。戦争が起こり,サタンとその邪悪な使いたちが地に投げ落とされます。大きな声が,『地にとっては災いである』と言います。悪魔は自分の時の短いことを知り,大きな怒りを抱いています。―啓示 12:12。

      ヨハネは,子羊として表わされているイエスが天にいるのを見ます。人類から選ばれた14万4,000人も一緒にいます。それらの人々は,「[イエス]と共に王として支配する」ことになります。こうして「啓示」の書は,胤の副次的な成員が合計14万4,000人であることを明らかにしています。―啓示 14:1; 20:6。

      地の支配者たちが,ハルマゲドンつまり「全能者なる神の大いなる日の戦争」に集められます。彼らは,白い馬に乗って天の軍勢を率いているイエスに対して戦いますが,すべて滅ぼされます。サタンは縛られ,イエスと14万4,000人は「千年」のあいだ地を治めます。千年が終わると,サタンは滅ぼされます。―啓示 16:14; 20:4。

      キリストとその共同支配者たちによる千年統治は,従順な人々にどんな益をもたらすでしょうか。ヨハネはこう書いています。「[エホバ]は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」。(啓示 21:4)地球は楽園になるのです。

      この「啓示」の書をもって,聖書のメッセージは完結します。メシア王国により,エホバのみ名は神聖なものとされ,エホバの主権はとこしえにわたって完全に立証されるのです。

      ― 「啓示」の書に基づく。

      • 象徴的な騎手たちは何を表わしていますか。

      • 神の目的が進展するにつれ,どんな劇的な事柄が生じますか。

      • ハルマゲドンとは何ですか。どんな結末を迎えますか。

      「大いなるバビロン」

      「啓示」の書の中で,すべての偽りの宗教,つまりまことの神と対立する立場を取っている宗教は全体として,「大娼婦」と呼ばれています。その娼婦は「大いなるバビロン」とも呼ばれており,世界の政治勢力を相手に売春を行ないます。「啓示」の書によれば,エホバ神の定めの時に,それらの政治勢力は娼婦を襲って滅ぼします。―啓示 17:1-5,16,17。

  • 聖書のメッセージ ― 概要
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 楽園の地で王国の支配を喜ぶ人々

      聖書のメッセージ

      1. エホバはアダムとエバを創造し,楽園で永遠に生きる見込みを与える。サタンは神のみ名に非難を浴びせ,神の支配権に疑問を投げかける。アダムとエバはサタンの反逆に加わり,自分たちと子孫に罪と死をもたらす

      2. エホバは反逆者たちに刑を宣告し,胤つまり救出者を起こすことを約束する。その者はサタンを打ち砕き,反逆と罪の結果をすべて取り除くことになる

      3. エホバはアブラハムとダビデに,胤つまりメシアの祖先となることを約束する。メシアは将来,王として永久に支配を行なう

      4. エホバは預言者たちに霊感を与え,メシアが人々を罪と死から救い出すことを予告させる。将来メシアは共同支配者たちと共に神の王国の王として統治する。王国は戦争や病気,また死さえも終わらせる

      5. エホバはみ子を地上に遣わし,イエスがメシアであることを示す。イエスは神の王国について宣べ伝え,自分の命を犠牲としてささげる。エホバはイエスを霊者として復活させる

      6. エホバはみ子を天で王として即位させる。その時,この事物の体制の終わりの日が始まった。イエスは地上の追随者たちが全世界で神の王国について宣べ伝えるよう導く

      7. エホバはみ子に指示を与え,王国の支配が地上に及ぶようにさせる。王国は邪悪な政府をすべて打ち砕き,楽園をもたらし,忠実な人々を完全さへと引き上げる。エホバの支配権は立証され,エホバのみ名はとこしえにわたって神聖なものとされる

  • 年表
    聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
    • 年表

      1. 「初めに……」

      2. 西暦前4026年 アダムの創造

      3. 西暦前3096年 アダムの死

      4. 西暦前2370年 洪水の水が降り注ぐ

      5. 西暦前2018年 アブラハムの誕生

      6. 西暦前1943年 アブラハム契約

      7. 西暦前1750年 ヨセフは奴隷として売られる

      8. 西暦前1613年以前 ヨブの試練

      9. 西暦前1513年 エジプトからの脱出

      10. 西暦前1473年 イスラエルはヨシュアに率いられてカナンに入る

      11. 西暦前1467年 カナンの大半の征服が完了する

      12. 西暦前1117年 サウルは王として油をそそがれる

      13. 西暦前1070年 神はダビデと王国に関する約束を結ぶ

      14. 西暦前1037年 ソロモンは王となる

      15. 西暦前1027年 エルサレムの神殿が完成する

      16. 西暦前1020年ごろ 「ソロモンの歌」が書き終えられる

      17. 西暦前997年 イスラエルは二つの王国に分裂する

      18. 西暦前717年ごろ 「箴言」の編さんが完了する

      19. 西暦前607年 エルサレムは滅ぼされる。バビロン捕囚が始まる

      20. 西暦前539年 バビロンはキュロスによって征服される

      21. 西暦前537年 捕囚になっていたユダヤ人がエルサレムに帰還する

      22. 西暦前455年 エルサレムの城壁が建て直される。69週年が始まる

      23. 西暦前443年以後 マラキは預言の書を書き終える

      24. 西暦前2年ごろ イエスの誕生

      25. 西暦29年 イエスはバプテスマを受け,神の王国について宣べ伝え始める

      26. 西暦31年 イエスは12使徒を選ぶ。山上の垂訓を語る

      27. 西暦32年 イエスはラザロを復活させる

      28. 西暦33年ニサン14日 イエスは杭につけられる(ニサンは3月から4月にかけての時期に相当する)

      29. 西暦33年ニサン16日 イエスは復活させられる

      30. 西暦33年シワン6日 ペンテコステ。聖霊が注がれる(シワンは5月から6月にかけての時期に相当する)

      31. 西暦36年 コルネリオがクリスチャンになる

      32. 西暦47-48年ごろ パウロの1回目の伝道旅行

      33. 西暦49-52年ごろ パウロの2回目の伝道旅行

      34. 西暦52-56年ごろ パウロの3回目の伝道旅行

      35. 西暦60-61年ごろ パウロはローマで投獄されている間に手紙を書く

      36. 西暦62年以前 イエスの異父兄弟ヤコブは手紙を書く

      37. 西暦66年 ユダヤ人はローマに対する反乱を起こす

      38. 西暦70年 エルサレムとその神殿がローマ人に滅ぼされる

      39. 西暦96年ごろ ヨハネは「啓示」の書を記す

      40. 西暦100年ごろ 最後の使徒であるヨハネの死

日本語出版物(1954-2026)
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