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役立つアドバイスを求めて安らぎと幸せへの道
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役立つアドバイスを求めて
サリは,近所の夫婦マオンとエルナがいつも幸せそうにしていることに気づいていました。それで,「今度,秘訣を聞いてみようかしら」とタムに言います。そして,奥さんのエルナに会った時,尋ねてみました。
「そうね。わたしたちにも同じような問題や心配があるのよ」とエルナは言います。「でも,少し前に一冊の本を見つけたの。その本にはわたしたち家族に役立つアドバイスが載っていて,安心できる幸せな生活への道も教えてくれているのよ。それで,ストレスや心配があっても幸せでいられるの」。
サリは興味をそそられました。エルナはその本についてもう少し詳しく説明します。「中近東で書かれたとても古い本なんだけど,宗教を問わず,すべての人のための本なの。2,000以上の言語に翻訳されているので,世界中のほとんどの人が読めるのよ」。さらに,その本が教育者たちによってよく引用されること,多くの国の法律の基礎になっていることも話しました。
その本をぜひ見てみたいと思ったサリは,その日のうちにエルナの家に行きました。そしてその本から,役に立つアドバイスを見せてもらいました。次のような言葉です。
子育て
「少年をその行くべき道にしたがって育て上げよ。彼は年老いても,それから離れないであろう」。
『父たちよ,あなた方の子供をいら立たせてはなりません』。
仕事とお金
「盗む者はもう盗んではなりません。むしろ,骨折って働き,自分の手で良い業を行ない,窮乏している人に分け与えることができるようにしなさい」。
「働こうとしない者は食べてはならない」。
薬物とお酒
『肉と霊のあらゆる汚れから自分を清めようではありませんか』。
「ぶどう酒はあざける者であり,酔わせる酒は騒がしい。それによって迷い出る者はみな知恵がない」。
道徳
「結婚はすべての人の間で誉れあるものとされるべきです。また結婚の床は汚れのないものとすべきです」。
『淫行を避けなさい』。
「女を見つづけてこれに情欲を抱く者はみな,すでに心の中でその女と姦淫を犯したのです」。
家族の中での敬意
「あなたの父と母を敬いなさい」。
「あなたを誕生させた父に聴き従い,ただ年老いたからといって,あなたの母をさげすんではならない」。
「自分を愛するように妻を愛しなさい。一方,妻は夫に対して深い敬意を持つべきです」。
聖書をお持ちの方のために,聖句の箇所を以下に記します。
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すばらしい本安らぎと幸せへの道
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すばらしい本
その晩サリは,仕事から帰って来た夫のタムに,エルナから聞いたことを全部話しました。タムは,興味を引かれましたが,少し懐疑的でした。安心できる幸せな生活への道について,様々な意見を聞いたことがあったからです。でも,ともかくマオンと話してみようと思い,次の土曜日,会いに行きました。
「それは聖書っていう本なんだよ」とマオンは言います。「僕も読んでいるんだけど,内容が正確で,信頼できるんだ」。
タムは疑問をぶつけてみました。「世界のどこを見ても貧しさや苦しみがあるよね。正しい道を教えるって言う宗教や哲学はたくさんあるけど,戦争とか,政治の腐敗,人種差別,貧困とかいった問題は全然解決できていない。聖書も結局,そういうのと変わらないんじゃないかな」。
すると,マオンは聖書の言葉を見せてくれました。「人が人を支配してこれに害を及ぼした」という言葉と,「自分の歩みを導くことさえ,歩んでいるその人に属しているのではありません」という言葉です。まったくそのとおりだ,とタムは思いました。この国でも,ほかの国でも,それが現実です。
聖書が信頼できる理由はほかにもたくさんある,とマオンは説明します。「うちのエルナが君の奥さんに,日常生活に役立つ聖書のアドバイスを見せたと思うけど,聖書が教えているのはそういうことだけじゃないんだ。人類の直面している様々な問題の根本原因も指摘しているんだよ。それにね,聖書は科学的にも正確なんだ」。
タムは半信半疑です。「聖書みたいな大昔の本が現代の問題について述べているとか,科学的に正確だとか,それって本当なのかな」。いったい,だれがこの本を書いたのでしょうか。
「聖書は一人の人が書いた本じゃないんだよ。実際には40人以上の人たちが書いた66冊の小さな本を集めたものでね,1,600年ほどかけて,今から1,900年ぐらい前に書き終えられたんだ。その人たちは,科学的な知識はわずかしかなかったのに,何千年も後になって明らかになったような事実も書いているんだよ。例えば,地球が『無の上に掛かっている』とか,丸い形をしているとかいったこと。こういう事実は,当時まだ知られてなくて,比較的最近になってようやく科学者が解明したことだよね」。
「へー,そうなんだ」とタムが言うと,マオンは別の点も話します。
「昔,バビロンという大きな都が征服されたんだけど,200年も前に聖書はそれを予告していたんだ。バビロンがどんなふうに征服されるかってこともね。でも,もっとすごいことに,征服者である王の名前を,彼が生まれるよりもずっと前に預言していたんだ。聖書には,何百もの預言が収められているんだよ」。
タムが考え込んでいると,もっと驚くようなことをマオンは言います。「今の世界を悩ませているいろんな問題を,聖書は1,900年も前に予告していたんだ」。そして,次のような聖書の言葉を見せてくれました。
聖書は現代の問題を予告していた
「このことを知っておきなさい。すなわち,終わりの日には,対処しにくい危機の時代が来ます。というのは,人々は自分を愛する者,金を愛する者,うぬぼれる者,ごう慢な者,冒とくする者,親に不従順な者,感謝しない者,忠節でない者,自然の情愛を持たない者,容易に合意しない者,中傷する者,自制心のない者,粗暴な者,善良さを愛さない者,裏切る者,片意地な者,誇りのために思い上がる者,神を愛するより快楽を愛する者,敬虔な専心という形を取りながらその力において実質のない者となるからです」。
マオンの説明によると,戦争や病気,食糧不足,地震,犯罪といった問題が世界を苦しめるということも,聖書は預言していました。
自分たち夫婦の経験している問題がはるか昔に聖書で予告されていたことを知って,タムは驚きました。
「聖書って本当にすごい本なんだね」。
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信頼できる約束安らぎと幸せへの道
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信頼できる約束
タムは聞いた事柄をじっくり考えました。聖書について何も知らなかったわけではありません。聖典の一つだということは知っていました。でも,本物の預言が収められているのなら,ただの古い聖典ではないのかもしれません。聖書を書いた人たちは,あのような科学的な事実やずっと先の出来事をいったいどうやって知ったのでしょう。どこから情報を得たのでしょうか。
翌日,タムは妻と一緒にマオン夫婦を訪ね,「その人たちはどうやって知ることができたんだろう」と質問してみました。
神はわたしたちのために,ご自分の約束を聖書に書き記させた
マオンは答えます。「聖書を書いた人たちは著者ではなくて,いわば秘書のように,与えられた情報を書き記したんだよ。聖書の本当の著者は,全人類の父親なんだ」。
「全人類の父親? それってだれなの?」
「最初の人間に命を与えた方なんだ。僕たちの父親にはみんな名前があるけど,その方にも名前があるんだよ」。そう言ってマオンは聖書の詩編 83編18節を開き,読みました。
「その名をエホバというあなたが,ただあなただけが全地を治める至高者である」。
マオンは別の言葉も見せます。そこではエホバが,「終わりのことを初めから,また,まだ行なわれていなかったことを昔から告げる者」と呼ばれています。(イザヤ 46:10)マオンはこの言葉について説明します。「父親はたいてい子どもより経験が豊富で,物事をよく知っているよね。それと同じように,全人類の父親であるエホバは,僕たち人間より知識や知恵が豊かで,将来を予告することさえできるんだ。だから,将来についての情報を与えて聖書に書かせることができたんだよ」。
「エホバは,僕たち夫婦の将来も知っているのかな?」とタムは尋ねます。
「エホバは,一人一人の将来を前もって決めたりはされないんだ。だけど,父親のように,僕たちの問題を知っていて,助けたいと思っておられるんだよ」。
聖書を読むと,安心して幸せに暮らせるようエホバが何をしてくださるかが分かるし,自分の下す決定が現在と将来の自分にどう影響するかも分かる,とマオンは説明します。
なるほど,とタムは思いました。自分も父親として,子どもたちにはぜひ幸せな人生を送らせたい,そのためにできることを何でもしてやりたい,と願っているからです。マオンは,聖書に記されている約束の言葉を幾つか見せました。例えば,こんな言葉です。
「神は地の果てに至るまで戦いをやめさせておられる」。―詩編 46:9。
『彼らは必ず家を建てて住み,必ずぶどう園を設けてその実を食べる。彼らが建てて,だれかほかの者が住むことはない。彼らが植えて,だれかほかの者が食べることはない。わたしの民の日数は木の日数のようになる』。―イザヤ 65:21,22。
「地には穀物が豊かに実り,山々の頂であふれんばかりに実ります」。―詩編 72:16。
「神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」。―啓示 21:4。
聖書によれば,わたしたちの前途にはすばらしい将来がある
こうしたすばらしい約束を知って,タムは感動しました。だれもが公平に扱われる世界,病気や死がなく,すべての人に十分な食物がある世界は,自分がまさに望んでいる世界です。妻のサリも心を動かされましたが,こんなすばらしいことが本当に実現するのかしらと思いました。
「本当なのかなって感じるのは当然のことだと思うよ」とマオンは言います。「でもね,このあいだ話したことだけど,たくさんの聖書預言が正確に成就していたよね。それを考えると,こういう約束も果たされると言えるんじゃないかな。だからこそ聖書の著者は,『書きなさい。これらの言葉は信頼できる真実なものだからである』と保証しておられるんだ」。―啓示 21:5。
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すべてのものは,どのようにして存在するようになったか安らぎと幸せへの道
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すべてのものは,どのようにして存在するようになったか
エホバが約束しておられる事柄を知って,タムはうれしくなりました。しかし,そうした約束を本当に果たせるのでしょうか。エホバが約束すべてを果たせる方かどうかを理解するために,だれでも知っている基本的な事柄を考えてみよう,とマオンは言います。原因と結果の法則です。
そのことは聖書でも説明されていると言って,マオンは次の言葉を見せます。
「家はすべてだれかによって造られる」。―ヘブライ 3:4。
「確かにそうだね」とタムは言います。「家がひとりでにできることはないよね」。
「そう,料理だって,作った人がいなければできないよ」。
自然界のいろいろなものは家よりはるかに複雑で見事にできている,とマオンは説明します。「可憐な花,雄大な山,逆巻く海,果てしない宇宙のことを考えてみよう。家に設計者と建築者が必要で,料理に料理人が必要なら,宇宙にあるすばらしいものすべてはどうだろう。やっぱりだれかが設計して造ったんじゃないかな」。
それはもっともな考え方だ,とタムは思いました。
「聖書によると,すべてのものを設計して造った方がおられるんだ」とマオンは言います。「すべてのものを造ったんだから,当然,とても力の強い方であるはずだよね。聖書はその方を『神』と呼んでいてね,この『神』というのは,聖書の元々の言語では『力ある方』とか『強い方』という意味なんだ。世の中には“神”と呼ばれるものがたくさんあるけど,エホバはすべてのものを造った方なので,まさに全能の神なんだよ」。
どんなものにも設計者と造り手が必要
聖書には,エホバ神の造られた多くのすばらしいもののことが記されています。それを読んでタムは驚きました。例えば,次のような言葉です。
「初めに神は天と地を創造された」。―創世記 1:1。
「エホバが神であることを知れ。わたしたちを造ったのは神であって,わたしたち自身ではない」。―詩編 100:3。
「天は神の栄光を告げ知らせ,大空はみ手の業を語り告げている」。―詩編 19:1。
「天に自分の階段を築き,自ら基を据えた地の上に構築物を設けている者,海の水を呼び出してそれを地の表に降り注がせる者,エホバがその名である」。―アモス 9:6。
エホバ神は,まさに万物を造った方です。とはいえ,単に造っただけではありません。命もお与えになりました。聖書はエホバについて,『命の源はあなたのもとにある』と述べています。(詩編 36:9)エホバは,命の与え主,創造者です。命の源であるゆえに,わたしたちの父親でもあります。それで聖書はこう述べています。「わたしたちすべては,一人の父を有しているのではないか。わたしたちを創造されたのは,一人の神ではないか」。―マラキ 2:10。
エホバは命の源
「なるほど」とタムは言います。「自然界のものをよく見て考えると,設計した方,命を与えた方がいるってことが分かるんだね。それが創造者なんだね」。
妻のサリも身を乗り出して言います。「それに,すべてのものを造る力があるのなら,聖書の約束を全部果たす力もあるはずね」。
二人とも,聞いたことすべてに納得しました。でも,この力強い設計者とは,いったいどんな方なのでしょうか。
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愛と公正の神安らぎと幸せへの道
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愛と公正の神
子どもは親に似ている
「子どもって,親によく似ているよね」とマオンが言うと,タムが答えます。
「うん。うちの娘を見るたびに,母親に似てるってつくづく思うよ。性格もそっくりだし」。
「そうだね。僕たちの父親である方についても同じことが言えるんだよ。僕たち人間も含め,エホバの造ったいろいろなものを見ると,エホバがどんな方か,どんな性格の方なのか分かるんだ」。
「へー,そんなふうに考えたことはなかったな」。
「聖書にそう書いてあるんだよ。ローマ 1章20節なんだけど,読んでみるね。『神の見えない特質,すなわち,そのとこしえの力と神性とは,造られた物を通して認められるので,世界の創造以来明らかに見える』」。タムは,どういう意味なのか分からないようです。
「じゃあね,タム,子どもへの親の愛について考えてみよう。君も含めて,良い親は子どものことをいつも気にかけているよね。子どもは親の言うことを聞かなかったり,親に敬意を示さなかったりするかもしれないけど,親は子どもを愛して養うよね。なぜだろう。それはね,子どもに対する自然な愛情を,エホバが親に植えつけておられるからなんだよ。親が子どもを愛するのは,人間に対するエホバの愛を受け継いでいるからなんだ」。
愛のあるエホバは,生きていくのに必要なものを与えてくださっている
説明は続きます。「エホバは,ご自分のことを知らない人たちも養っておられるんだ。ご自分の造ったものを通してね。だから聖書のマタイ 5章45節にはこう書かれているんだよ。『父は邪悪な者の上にも善良な者の上にもご自分の太陽を昇らせ,義なる者の上にも不義なる者の上にも雨を降らせてくださるのです』。雨や太陽は大事だよね。それがあるから,僕たちは食べ物を作って生きていけるんだ。しかもエホバは,人間が感謝してもしなくても,必要なものを与えてくださっている。これは,エホバが愛の神だということの証拠じゃないかな。聖書も,愛はエホバの一番の特質で,エホバの本質だと言っているんだよ。ここ,ヨハネ第一 4章8節に,『神は愛だからです』とあるよね」。
次に,公正という特質に話は移ります。「君も良い親だから,子どもたちを公平に愛しているよね。そして,人を敬うように教えたり,立派な大人になるのに必要な規準を教えたりしているだろう? 人間には公正を強く求める気持ちがあって,自分や家族が公平に扱われることを願うよね。なぜだと思う? これもやっぱり,創造者の特質を受け継いでいるからなんだよ」。
そしてマオンは,エホバ神に関する次のような聖句を見せます。
わたしたちが公正を愛するのは,公正を愛するエホバによって創造されたからです。わたしたちはエホバの像に,つまりエホバの特質を持つ者として造られています。それで,そうした特質を生活の中である程度,表わすことができるのです。(創世記 1:27)とはいえエホバは,何が正しくて何が正しくないかを人間に決めさせてはおられません。子どもである人間のために規準や法を定めておられます。人間がその法に従わないとき,不公正が生じます。
「話したいことがもう一つあるんだ」とマオンは言います。「二人とも知っているかもしれないけど,現代の法律はいろいろな点で,何千年も前に書かれた聖書の法律と似ているんだよ」。タムとサリにとって,こうしたことを聞くのは初めてです。
「例えば,たいていの国の法律は殺人や盗みを禁じているし,国によっては姦通を禁じる法律もあるよね。聖書は,そういうことを3,500年も前に禁じていたんだ。僕たちは,何が正しいかに関するエホバ神の規準に沿って生きるとき,エホバの公正さに倣えるし,満たされた気持ちで幸せに暮らせるんだよ」。
悪い行ないを禁じる法律はエホバの公正さを反映している
マオンの話を聞いて二人は,エホバが愛と公正の神であることを理解しました。これまでずっと,愛と公正は人間関係において特に重要だと感じていました。子どもにも愛情深く公平に接するよう心がけています。そして今,そうした気持ちがあるのは創造者エホバ神の特質を受け継いでいるからだ,ということが分かりました。
エホバの特質を知って,タムは胸が躍りました。エホバが自分にとって現実的な存在になったのです。それで,自分も妻や子どもにもっと愛を示さなくては,と考えるようになりました。エホバに倣って愛情深い公平な人になりたい,と思ったのです。
「それはいいことだね」と,マオンはうれしそうに言います。「そういう考え方を聖書は勧めているんだよ。とても有名な言葉なんだけどね」。そして,聖書を開き,次の言葉を読みます。
「自分にして欲しいと思うことはみな,同じように人にもしなければなりません」。―マタイ 7:12。
エホバには愛と公正のほかにもすばらしい特質がまだまだある,とマオンは言います。タムとサリはエホバの特質をもっと知りたいと思いました。
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深い知恵と強大な力の神安らぎと幸せへの道
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深い知恵と強大な力の神
神のほかの特質も神の造られたものから分かる,とマオンは言って,次のような興味深い聖句を見せます。
「エホバよ,あなたのみ業は何と多いのでしょう。あなたはそのすべてを知恵をもって造られました。地はあなたの産物で満ちています」。―詩編 104:24。
「ちっちゃな虫にもエホバの知恵が表われているんだよ」とマオンは言います。「例えば,聖書も述べているんだけど,アリには本能的な知恵があるよね」。
そして,植物の葉をかみ切ってせっせと巣に運ぶアリについて話します。アリがそうするのはなぜでしょうか。アリは「本能的に賢い」と聖書は述べています。では,アリをそのように賢く造ったのはだれでしょうか。アリに本能的な知恵を組み込んだのはだれですか。天地を造り出した方エホバがそうなさった,と聖書は答えています。―箴言 30:24,25。
本能的な知恵は偶然に生じたのではない
「確かに,そういう本能的な知恵を持つ生き物には,設計して造った方がいるはずだね」とタムは言います。
するとマオンは,タムたちが考えてもみなかったようなことを述べます。「僕たちが生きていること自体,エホバの知恵のおかげなんだよ」。なぜそう言えるのでしょうか。
地球が自転しているので,わたしたちは生きていける
地球には生き物にぴったりな環境が整っていて本当にすごいと思う,とマオンは言います。例えば,地球の自転と公転の速度はちょうどよいので,太陽のエネルギーが地球全体にうまく行き渡ります。大気には様々な気体が理想的な割合で混ざり合っており,その貴重な大気が逃げないように地球の引力が引き止めています。とはいえ,その引力は強すぎないので,わたしたちは自由に動くことができます。さらに地球には,生命の維持に欠かせない水が大量にあります。土の中には養分が含まれていて,その養分が水に溶けて植物に吸収され,植物は育っていきます。
「こういうことすべてが偶然に生じたとはとても考えられないって,僕は思うんだ」とマオンは言います。「命に必要なものすべては,計り知れない知恵を持つエホバ神が造られたに違いないよね」。
タムとサリはうなずきます。
マオンは,神の別の特質に話を向けます。力という特質です。エホバの力について聖書が何を教えているのか知りたい,とタムは思いました。マオンは次の言葉を見せます。
「ああ,主権者なる主エホバよ! あなたご自身が,あなたの大いなる力と伸ばされたみ腕とによって天と地を造られたのです」。―エレミヤ 32:17。
「エホバの力がどれほど大きいかは,太陽のことを考えると分かるんだよ。天気のいい日に外に出ると,太陽の暖かさを感じるよね。太陽の力がどれほど強いか,知ってる?」
「うーん。夏になるとすごく暑いよね」とタムは答え,サリも「そうね」と言います。
太陽を造った方にはどれほどの力があるのだろう
マオンが以前に読んだ資料によると,太陽の中心核の温度は摂氏1,500万度です。もしそこから針の頭ほどの量の物質を取り出して地球上に置くと,発する熱のために,半径150㌔以内に近づくことは危険です。太陽は毎秒,何億個もの核爆弾に相当するエネルギーを放出しているのです。
「太陽にそれほどすごい力があるのなら,その太陽を造った方にはどれほどの力があるんだろう」とマオンは言います。「想像を絶するよね。太陽は,創造者エホバの持っておられる無限の力のほんの小さな証拠にすぎないんだよ」。
二人は,なるほどと思いました。マオンが言うように,こうした驚くべきものすべてが偶然に生じたとは考えられません。創造者がおられるに違いありません。創造者エホバは人間の目に見えないとはいえ現実の存在である,ということがだんだん分かってきました。エホバが造られたものには,エホバのすばらしい愛と公正と知恵と力が表われているのです。
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すべての問題は解決される安らぎと幸せへの道
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すべての問題は解決される
タムは,エホバについて聞いたことすべてに納得がいきました。しかし,気になることがあり,こう尋ねます。「エホバが力の強い,愛の神で,すべてのものを造られたのなら,どうして世の中にはこんなにたくさんの問題があるんだろう。僕たちがいろいろなことに悩まされるのはなぜなんだろう」。
「もっともな疑問だね。そう思う人は少なくないよ」とマオンは言います。「エホバ神の特質を考えると,人間が今のような悪い状態にあることをエホバが望んでおられるはずがないよね。どうしてこんな状態になっているのか,それを理解するには,神がそもそも地球に関してどんな目的を持っておられたのかを知る必要があるんだ。そして,その目的がどうなったのか,という点もね」。
それからマオンは,エホバ神が地上での創造を終えた時にどうお感じになったかを説明するために,次の聖句を見せます。
「神は自分の造ったすべてのものをご覧になったが,見よ,それは非常に良かった」。―創世記 1:31。
エホバが地上にお造りになったものの中でとりわけ輝かしい存在だったのは,アダムとエバという名の最初の人間男女でした。エホバの創造されたものはすべて完全でしたが,この二人も完全な人間として,つまり地球上で永遠に生きる者として創造されました。神は二人を,エデンの園と呼ばれる美しい場所に住まわせました。そこには,幸せな生活に必要なものがすべて備わっていました。何も不足はなかったのです。(創世記 2:8,9)エホバは二人に,子どもをもうけて地を満たし,地球を管理するように,とお命じになりました。(創世記 1:28)やがて地球全体が大きな楽園となり,そこで完全な人間家族が幸せに暮らすのです。なんとすばらしい見込みでしょう。
では,そうならなかったのはなぜですか。マオンは,その理由を簡潔に説明している聖書の言葉を見せます。
「一人の人を通して罪が世に入り,罪を通して死が入り,こうして死が,すべての人が罪をおかしたがゆえにすべての人に広がった」。―ローマ 5:12。
愛のある父エホバ神は,アダムとエバに規則つまり規準をお与えになりました。その規準に従うなら,生き続けて楽園を管理することができます。(創世記 2:15-17)知恵のある父エホバは,ご自分に従うよう二人に強制するのではなく,二人が子どもとして従うことを自ら選んで父への愛を表わすようにされました。わたしたちと同様,アダムとエバには選択の自由があったのです。二人はどうしたでしょうか。
残念なことに,アダムとエバは創造者の指示に従わず,自分たちのしたいとおりにしました。そのため二人は,罪のある者となりました。罪があるとは,完全さから外れているという意味です。アダムとエバはだんだん年老いてゆき,やがて死にました。規準に従わないなら死ぬ,とエホバ神が言われたとおりになったのです。―創世記 2:17。
わたしたちすべてはアダムとエバの子孫なので,不完全さを受け継いでいます。そのため,年老いて死にます。しかし人類に関するエホバの目的は変わっていない,とマオンは説明します。愛のある父エホバは今でも,人間が地上の楽園で幸せに生きることを願っておられます。マオンは次の聖句を見せます。
「天の創造者,まことの神,地を形造られた方,それを造られた方,それを堅く立て,それをいたずらに創造せず,人が住むために形造られた方,エホバ」。―イザヤ 45:18。
地球に関する神の当初の目的は達成される
マオンはタムとサリに,聖書のすばらしい約束を思い出させます。病気や痛みや苦しみはなくなり,すべての人に十分な食物とふさわしい住まいがあり,もはや死ぬこともありません。こうした事柄は,人類に関する神の当初の目的の一部であり,その目的は不変です。人間は地上の楽園で永遠に生きるのです。マオンは次の言葉を見せます。
「義なる者たちは地を所有し,そこに永久に住むであろう」。―詩編 37:29。
これはエホバ神の約束であり,必ず果たされます。
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安らぎと幸せ ― 実現は近い!安らぎと幸せへの道
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安らぎと幸せ ― 実現は近い!
正直で善良な人たちが地球上に満ちて互いに愛を示し合うようになる,ということを知って,タムとサリは胸が躍りました。食糧不足も病気も死もない世界,だれもが安心して幸せに暮らせる世界になるのです。すぐにでもそうなってほしいと思いました。
「いつ,そうなるんだろう」とタムは尋ねます。
「それはいい質問だね,タム」とマオンは言います。「イエスっていう人のこと知ってる?」
「うん,少しは知ってるよ。良いことを教えた人だよね。でも僕の質問とどんな関係があるんだい?」
「今から2,000年くらい前に,イエスの弟子たちが君と同じ質問をしたんだよ」とマオンは説明します。「質問に答えて,イエスは『しるし』を教えたんだ。そのしるしは幾つもの出来事が合わさったもので,それらの出来事すべてが同じ時代に生じたなら,約束された変化が近いことが分かるんだよ」。―マタイ 24:3。
変化が近いことを示す「しるし」。あなたも目にしていますか
「しるし? 詳しく聞きたいな」。
「そのしるしにはいろんな事柄が含まれていて,全部,聖書に書かれているんだよ」と言って,マオンは聖書を開きます。「例えば,こんなことなんだ」。
『国民は国民に,王国は王国に敵対して立ち上がる』。―マタイ 24:7。
『食糧不足がある』。―マタイ 24:7。
「不法が増す」。―マタイ 24:12。
『大きな地震がある』。―ルカ 21:11。
『そこからここへと疫病がある』。―ルカ 21:11。
こういうことはどれも,いま生じている,とタムとサリは思いました。だからこそ,将来に不安を感じているのです。
「こういうしるしが表われているので,エホバ神による支配が地球全体に及ぶ時は近い,と分かるんだよ」とマオンは言います。「聖書によると,その支配は,神の王国と呼ばれる政府によって行なわれるんだ」。そして次の聖句を見せます。そこには,神の王国が間もなく行なう事柄が予告されています。
「それらの王たちの日に,天の神は決して滅びることのないひとつの王国を立てられます。そして,その王国はほかのどんな民にも渡されることはありません。それはこれらのすべての王国を打ち砕いて終わらせ,それ自体は定めのない時に至るまで続きます」。―ダニエル 2:44。
「神の王国がこの地球を支配する時,悪や不正や腐敗はすべて完全に取り除かれるんだ。考えるだけでうれしくなるよね」とマオンは言います。
そういう平和な世界でぜひ暮らしたい,とタムとサリも思いました。タムはこう尋ねます。
「そのすばらしい世界で暮らすために,しなければならないことが何かあるのかな」。
「そのとおりだよ。価値のあるものを手に入れるには努力が必要だよね。アダムとエバの場合もそうだったんだけど,二人がどうなってしまったか,覚えてる?」
「神の指示に従わなかったので,楽園と永遠の命を失ってしまったんだよね」。
「そうだね。今の僕たちにもエホバは指示を与えておられるんだ」とマオンは言います。「エホバは間もなくこの地球を楽園にされるんだけど,そこで暮らしたいと願う人は,エホバについて学んで,エホバの指示を知り,それに従って生活する必要があるんだよ」。
タムは納得しましたが,自分たちにそれができるだろうか,と思いました。
安らぎと幸せへの道を歩むように,エホバは招いてくださっている
「エホバ神に従うことは重荷じゃないんだ。愛のある父エホバが指示しておられることはすべて,僕たちの最善の益になるからね」とマオンは言います。「エホバは,平和な新しい世界への道を教えるだけでなく,ご自分に従ってその道を歩むようにと招いてくださっているんだよ。この聖句にあるとおりなんだ」。
「わたし,エホバは,あなたの神,あなたに自分を益することを教える者,あなたにその歩むべき道を踏み行かせる者である。ああ,あなたがわたしのおきてに実際に注意を払いさえすれば! そうすれば,あなたの平安は川のように,あなたの義は海の波のようになるであろうに。そして,あなたの子孫は砂のように,あなたの内なる所から出る末孫は砂粒のようになるであろうに。人の名がわたしの前から断ち滅ぼされることも,滅ぼし尽くされることもないであろうに」。―イザヤ 48:17-19。
タムとサリは,この言葉に温かさを感じました。二人とも家族の益を心から願っています。正義の行き渡る平和な世界で子どもたちと一緒に暮らす ― それこそ最善の生き方です。
「エホバ神が教えてくださっている事柄を学んで,それに従おうと努力するなら,こういう祝福を得ることができるんだよ」とマオンは言います。
「どうやって学んだらいいのかな。僕たちに教えてくれる?」
「もちろん,僕もエルナも喜んでそうするよ! ちょうどいいものを持っているんだ。君たちが安らぎと幸せへの道を見つけて歩んでいくのに,きっと役に立つと思うよ」。
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