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  • 原油流出事故 ― ここで起きるわけがない
    目ざめよ! 1989 | 9月22日
    • 原油流出事故 ― ここで起きるわけがない

      『プリンス・ウィリアム海峡で原油流出事故が起きることなど絶対にない。起きるわけがない。航路は広いし,水深も深い。航行上の危険は何もない』。

      一般の人々は言われるままにそう信じていました。ところが不幸なことに,3月24日,金曜日,午前0時4分過ぎ,原油126万バレル(約2億㍑)を積んだスーパータンカー,エクソン・バルディズ号が,航路から2㌔ほど外れ,ブライ・リーフのごつごつした岩場に座礁して,船体に幾つもの穴があくという事故が発生しました。米国アラスカ州バルディズの南,風光明媚なプリンス・ウィリアム海峡のきれいな海に約26万バレル(約4,200万㍑)の原油が流出したのです。

      その大災害が起きた時,舵をとっていたのは免許を持たない3等航海士でした。しかも,エクソン・バルディズ号の進路をレーダーで監視しているはずの沿岸警備隊はタンカーの迷走をとらえることができませんでした。そして,実際に原油が流出した時,アリエスカ・パイプライン・サービス社もエクソン社も,それぞれ万一の事故に備えて立てていた流出原油処理計画を実行することができませんでした。

      座礁したエクソン・バルディズ号の被害を調査するため,深海潜水夫たちが呼ばれました。潜水夫の一人はこう報告しています。

      「ボートでタンカーの所まで行ったが,海面の油はすでに何インチもの深さになっていた。ボートの進んだ跡にも海の水は見えなかった。スーパータンカーの所に着くと,まず気になったのは安全かどうかということだった。船は安定しているのだろうか,我々の頭上にひっくり返るのではなかろうか。船体はブライ・リーフの縁に載っていた。その縁から海底までの深さは数十メートルはある。次の上げ潮で船体の位置が変わりでもすれば,恐らくタンカーは海底まで落ちて大破し,残っている原油100万バレル(約1億6,000万㍑)が流出することになるだろう。

      「我々は,船体,タンクの内側,骨組みなど,船の各部をつぶさに調査した。その間もずっと油は噴出していた。海水と混ざり合うことなく,非常に速い勢いで海面に流れ出ていた。我々がタンクの中に入ったとき,所々にかたまっていた油が我々の吐く空気の泡で押し分けられ,フェースプレートの周りで渦を巻いた。我々がそこにいたのは修理するためではなく,ただ被害の程度を判断するためだった」。

      アリエスカ社の約束では,流出原油閉じ込め防材と油回収器をもって5時間以内に現場に駆けつけるということでしたが,10時間は何もなされず,その後三日間,対策はほとんど講じられませんでした。天候が穏やかだった三日間に閉じ込め防材と回収器を使っていれば被害は大きくならずにすんだかもしれませんが,その穏やかな期間は過ぎてしまいました。月曜日には,風速30㍍の強風がプリンス・ウィリアム海峡に吹き荒れたので,かくはんされた油は水と混合して泡だち,ムースと呼ばれる状態になりました。

      皆がそれぞれ他を非難し始めました。アラスカ州当局者,バルディズの住民,および沿岸警備隊は皆,アリエスカ社とエクソン社がぐずぐずして,天候の良かった最初の三日間を無為に過ごしたと非難しました。中には,沿岸警備隊が経費削減のため「バルディズのレーダーを感度の低いものに替えたので,不幸なタンカーに暗礁の方向に進んでいることを警告できなかった」として警備隊を非難した人たちもいました。エクソン社は,広がった油を分解する分散剤の使用許可を出してくれなかった州と沿岸警備隊が悪いと言いました。

      油膜は2か月の間にブライ・リーフから800㌔のかなたまで伸び,海岸を1,600㌔にわたって汚し,プリンス・ウィリアム海峡の美しい海を2,600平方㌔にわたって覆いました。油の流れはキーナイ・フィヨルド国立公園を過ぎ,キーナイ半島の先端を曲がり,クック湾に入った所で止まりました。しかし油膜はさらに南に広がり,カトマイ国立公園やコディアック島を汚染しました。

      何千人もの人が浜の清掃に雇われました。その仕事に携わったある人はインタビューを受けた際,清掃の方法と結果について次のように述べました。

      「作業員たちは午前4時半から始めて午後10時まで,水圧の高いホースを使って仕事をしました。一部の人々が冷たい水を使い,別の人々が海水の混ざった熱い蒸気を使います。そうした強力な水流を砂利の多い浜辺に放ち,水を地中に染み込ませます。0.5ないし1㍍下にある油が表面に浮いてきたとき,それをホースの水で海へ流し去ります。海に流れた油は,閉じ込め防材の中に囲われ,回収器が来てそれを吸い取ります。彼らは浜辺の200㍍四方の区画から1日に200ないし400バレル(約3万ないし6万㍑)の油を回収します。

      「2週間という期間に彼らはその作業を何度も繰り返し,毎回同じ量の油を回収します。その後,油をよく吸うぼろ切れを人々に持たせて浜辺に座らせ,一つ一つの岩から油をふき取らせるのです。浜辺はきれいになったように見えますが,手を岩間の下や,砂の中に10㌢ほど差し込んでみれば,あのべたべたする油で真っ黒になります。2週間清掃した後でもこういう状態なのです。三日後に戻ってみると,また油がにじみ出て8㌢から16㌢の層になっています。それも次の上げ潮で海に戻るのです」。

      無駄骨ではないでしょうか。そうかもしれません。それでも,その仕事をすればよい報酬が得られるのです。ある作業員は1日に250㌦(約3万5,000円)を稼ぎ,「この分なら1万㌦(約140万円)も簡単に稼げそうだ」と言います。もう一人の作業員は,1日12時間,週に七日働いて2,000㌦(約28万円)近く稼ぎました。「今日は2か所で浜を清掃したが,その浜も潮が満ちれば,明日は必ずまた同じ状態になる」と,その人は言いました。プリンス・ウィリアム海峡に面する浜辺の中には,一面にヘドロ状の油が1㍍の層になっている所もあります。

      エクソン・バルディズ号の船体に穴があき,26万バレル(約4,200万㍑)の原油がプリンス・ウィリアム海峡に流出してしまったあと,この災害を処理するのに何が助けになったでしょうか。海が穏やかだった最初の三日間に閉じ込め防材と油回収器をもって迅速に対応していたなら,流出原油をアラスカ湾にまで入り込ませることなく,プリンス・ウィリアム海峡内にとどめておけたかもしれません。

      分散剤を使用していたなら,助けになったでしょうか。そうは思えません。分散剤は静かな水の中では効を奏しません。この化学物質がかくはんされ,拡散して効果を発揮するには海が波立っていなければなりません。分散剤は穏やかな最初の三日間は役に立たなかったでしょうし,あらしで海が波立っていた四日目には役立ったとしても,それらの化学物質を散布するのに必要な飛行機は,強風のために飛び立つことができませんでした。とにかく,そういう薬剤の使用は物議を醸します。アンカレッジ・デーリー・ニューズ紙の記事は次のように説明しています。

      「分散剤は多分に洗剤のような働きをする。油膜の表面に散布され,海の動揺によってかくはんされると,油は細かい粒になって水中に散らばる。環境保護論者が分散剤を好まないのは,その化学物質が油を海中のあらゆる深さのところにばらまき,生物を高等なものから下等なものまで危険にさらすだけに終わるからだという」。そうだとしても,分散剤は冷たい水の中では効き目が弱いので,「プルドー・ベイの原油には全く効果がなく」,しかも「流出後1日以上たった油にはほとんど役に立たない」のです。

      そのうえ,分散剤はそれ自体有毒です。1967年に,スーパータンカーのトリー・キャニオン号から流出してフランスの海岸に影響を及ぼした膨大な量の原油の処理に使われた分散剤は,油以上の毒性を出したと言われています。「動植物は一掃された」のです。

      アラスカの緊急通信機関の責任者であるピート・ワーペルは次のように述べて,前述の海岸清掃作業者の言ったことが事実であることを示しました。「油はじっとしてはいない。消え去りもしない。今どこかの海岸に付着している油は,海の波と潮の満ち引きによって運び去られ,他の海岸に付着する。それは継続的な災害だ。海岸にどれほど深く油が染み込んでいるかを考えると,それを清掃するのは気の遠くなるような話だ。表面をきれいにしても,染み込んでいる油は,波と潮の満ち引きによって再び表面に浮き上がってくる。人々はいつになったら人間の努力のむだなことが分かるのだろう」。

      結論としてワーペルは,人間の今の科学技術では大規模な原油流出事故に対処することはできないとし,今のところ仕事は自然の作用に委ねざるを得ないと述べています。他の人たちも同意見です。海洋生物学者のケアラン・コウバーンは,「実際のところ,最良の状況下でも,我々には大量の流出原油の10%以上の量を回収する能力はない」と言明しました。ある報道は,「昔ながらのプリンス・ウィリアム海峡の海水から,北アメリカ最大の原油流出事故の痕跡が,自然の力によって完全にぬぐい去られるには,10年か,恐らくはそれ以上の時間がかかるだろう」と述べています。これは,数々の原油流出事故について調査している科学者たちの推測です。

      事故発生から2週間後,アンカレッジ・デーリー・ニューズ紙は,「流出原油を除去しようとしても骨折り損。わずかに成果は見られるが,専門家筋によれば,海峡の環境回復は自然力に依存」という見出しを掲げ,「海洋・大気圏局の局員は,その闘いには勝ち目がない,と最初から言っていた」と伝えました。彼らは,1978年にフランス沖でスーパータンカーのアモコ・カディツ号が引き起こした155万バレル(約2億5,000万㍑)の原油流出事故を含め,過去10年間に起きた大きな原油流出事故をすべて監察してきました。「それらの事故のうち一つとして,人間が流出油をぬぐい取れそうなところまでいった例はない」と彼らは見ています。

      [6,7ページの囲み記事]

      超大型タンカー,超大型汚染

      100階建てのビルを寝かしたような長さの船を想像してみてください。大洋の波をかき分けるへさきが,操縦する人のほぼ400㍍前方にあるような船です。あまりにも大きいので,船体の動きは地球の自転に影響されるのではないかとさえ思った人がいるくらいです。これはスーパータンカー,つまり超大型原油輸送船で,決して想像の所産ではありません。これとほぼ同じ大きさの船舶が多数,海上を定期的に航行しています。なぜでしょうか。今の世界は石油に飢えているからです。タンカーは容量が非常に大きいため,その原油を輸送する方法としては経済的で有利なのです。

      しかし,近年の出来事を見ればおのずと明らかなように,大型タンカーにも欠点があります。まず,その大きな強みが弱みでもあるということです。船体が畏怖を感じさせるほど大きいので,動かすのも操るのも極めて難しく,危険な場合もあるのです。操舵手が,危険を避けるために船を止めたい,あるいは素早く方向を変えたいと思うとき,その基本的な運動の法則(特に,動いている物体は外部からの力が加わらない限り,動きを続けようとする,慣性の法則)は,桁外れに大きな規模で働きます。

      例えば,全長240ないし270㍍のタンカーが原油を満載して普通の速度で航行しているとき(エクソン・バルディズ号は,全長300㍍,原油積載量126万バレル[約2億㍑],時速約22㌔で航行),エンジンを止めても進行は急には止まりません。船は惰力で約9㌔ほど進むでしょう。エンジンを逆回転させても,完全に止まるまでには約4㌔の距離が必要です。錨は役に立ちません。もし錨を降ろせば,錨は海底に食い込み,タンカーの惰力で甲板からぷっつり切れてしまうでしょう。タンカーの操縦も,とてつもなく大きな挑戦です。舵輪を回してから舵が振れるまでに30秒もかかることがあります。それからタンカーが重々しく向きを変えるのに3分かかり,もどかしい思いをするかもしれません。

      操舵装置はへさきから300㍍くらい後方にあり,遠いほうの船側から45㍍離れており,海面から30㍍上方にあるのですから,実際にタンカーの衝突事故が起きるのも驚くべきことではありません。座礁にせよ衝突にせよ,事故が起きれば,原油が漏れて拡散する事態につながりかねません。アフリカ,アジア,ヨーロッパ,および南北アメリカのほかに極地付近でも,かつては汚染の見られなかった海岸がみな,ひどく損なわれてきました。

      しかし,タンカーによる海洋汚染の原因は,大災害となる事故だけではありません。タンカーは年間およそ200万㌧の油を海に投棄します。これまでの調査結果の示すところによると,その油の大半は,空のタンクに残った油を航海中に平気で流し去るといった,日常的に投棄されている油なのかもしれません。ノーエル・モスタートは自著「超大型船」の中で,「タンカーはすべて,いくら管理がゆきとどいていても,幾らかの油を何らかの形で海に落としている。管理のずさんな船は,絶えず海を汚染している。庭のかたつむりのように,自分の後ろに虹色に輝く帯状の廃物の跡を残す場合が少なくない」。

      海洋探検家のジャック・クストーは,環境に対する人類の猛烈な攻撃について強硬な意見を述べたことがありました。彼はこう言いました。「我々は地球破壊者である。自分の受け継いだものをみな破壊している」。

      [7ページの図版]

      一日かけて清掃された浜も,翌日には油で覆われる

      [2ページの図版のクレジット]

      Mike Mathers/Fairbanks Daily News-miner

      [5ページの図版のクレジット]

      Cover photo: The Picture Group, Inc./Al Grillo

  • 原油流出事故 ― 動物に与えた影響
    目ざめよ! 1989 | 9月22日
    • 原油流出事故 ― 動物に与えた影響

      事故発生後最初の数か月間に野生動物の被った影響は悲惨なものでした。アラスカからニューヨーク・タイムズ紙に送られた至急報は次のように伝えていました。「バルディズ近海の島々から,ここより南西500㌔のアラスカ半島にあるカトマイ国立公園の外れに至るまで,被害が広がっていることは明白だ。バルディズ近海の島々ではいま何千頭ものアザラシが汚染された海岸で子を産んでおり,カトマイ国立公園の外れではハクトウワシ,ヒグマ,トドなどが毒された生息地で苦闘している。これまでのところ原油流出事故による生態学上の被害には,少なくとも30種の鳥2万羽,太平洋沿岸のラッコ700頭,およびハクトウワシ20羽の死が含まれている」。死んだ動物の数を記録している生物学者たちによれば,実際の数字は5倍も多いかもしれません。犠牲になった動物のほとんどは発見できません。

      カトマイ国立公園には,ヒグマの世界最大の生息地があります。身長およそ3㍍,体重540㌔のこの大きな動物たちのことを関係当局者たちは案じています。クマたちは,浜辺をうろついて,石油の付いた鳥や魚を食べているのです。当局者たちは,「食物連鎖の中に石油が入り込んだら,これらの動物はどうなるだろう」と心配しています。死んだ魚や鳥を食べたワシは死にかけています。「有毒な石油が体組織に蓄積されれば」死ぬクマも出るものと彼らは考えています。

      キーナイ・フィヨルド国立公園でも同じような心配があります。390㌔に及ぶ東海岸の90%が石油に汚染されました。州からその場所に派遣された生物学者はこう語りました。「今でもまだ海岸に死んだラッコが見つかる。ハクトウワシは死んだラッコを食べるから,ハクトウワシも見つかっている。私は博士号を持つ科学者だが,ここでそれら油の付いた鳥たちが飛び立とうとしてあがいている様子を見ると泣けてくる」。

      ほかにも幾百人もの人が泣いているかもしれず,幾千人もの人が泣きたい気持ちになっているかもしれません。心配する人々は,鳥やラッコから一生懸命に油をぬぐい取ってやりますが,それらの動物の多くは結局死んでしまいます。それは野生動物の保護に関心を抱く人々にとって非常につらい仕事です。

      プリンス・ウィリアム海峡にいるラッコの数は推定1万ないし1万5,000頭とされています。ある生物学者はこの水域のラッコが全滅するのではないかと心配しました。別の生物学者も同じ意見で,ラッコは「1匹もいなくなるだろう」と述べました。そういう観測は悲観的にすぎるかもしれませんが,3分の1が死滅するという観測でも十分に悪いものです。ラッコは,流出油の影響を受けていない場所には沢山いますが,原油で汚染された地域にはほとんど見られません。実際のところ,何千頭のラッコが死んだのか,だれにも分かっていないのです。ラッコは,原油流出によって死ぬと海底に沈みます。数えることは不可能です。見かける数が少なくなったことに基づいて推定する以外にありません。

      大抵の人は,原油流出によって何千という鳥や動物が死んだことを残念に思いますが,幾百万,いや幾兆を数える小動物や微生物が犠牲になったことについてはほとんど考えません。それらの生物も重要であり,創造者が彼らをお忘れになることはありません。「エホバよ,あなたのみ業は何と多いのでしょう。あなたはそのすべてを知恵をもって造られました。地はあなたの産物で満ちています。これほど大きく,広いこの海,そこには無数の動くものがいます。生き物が,小さいのも大きいのも」― 詩編 104:24,25。

      海水の中に散らばったヘドロ状の油は,やがては海底に沈み,多種多様な野生動物のための食物連鎖の最初のものである微生物や動物プランクトンを毒します。その時から有毒化学物質は生物のはしごを登り,最後には人間自身の体に入ります。

      人間はそのはしごと別個に存在しているわけではありません。人間はその一部であり,それに対して責任があります。それは人間の創造者であられる神から与えられた責任です。「わたしは魚と鳥とあらゆる野生動物をあなたに託す」と,エホバは最初の人間にお告げになりました。人間は神の像に造られました。つまり,知恵,力,公正,愛という神の特質を授けられています。それらの特質が備わっていたので,人間は地球と動植物に対して愛ある支配を行なうことができました。地とそこに満ちるものが人間に託されたのは,それらの世話をし,それらを守るためで,搾取したり破壊したりするためではありません。(創世記 1:26-28; 2:15,「今日の英語訳」)エホバ神はご自分の創造物のことを気にかけておられます。わたしたちはどうでしょうか。わたしたちも気にかけるべきです。神は「地を破滅させている者たちを破滅に至らせる」と言明しておられるからです。―啓示 11:18。

      [10ページの囲み記事/図版]

      動物に対する神の気遣い

      神は気にかけておられる:

      「すずめ[でも]……あなた方の父の知ることなくしては,その一羽も地面に落ちません」― マタイ 10:29。

      神は思いやりを示すことを求めておられる:

      『六日の間仕事をする。七日目にはそれを行なわない。あなたの牛やろばが休むためである』― 出エジプト記 23:12。

      「あなたは,脱穀している牛にくつこを掛けてはならない」― 申命記 25:4。

      「あなたは牛とろばを一緒にしてすき返してはならない」― 申命記 22:10。

      「あなたを憎む者の ろばが荷の下でうずくまっているのを見ることがあれば,……必ずそれを解いてやるように」― 出エジプト記 23:5。

      「あなた方のうち,……牛が井戸に落ち込んだ場合,安息日だからといってこれをすぐに引き上げない人がいるでしょうか」― ルカ 14:5。

      神は様々な種類の動物が生き続けるのに必要な備えをしておられる:

      『鳥の巣があなたの前にある場合,……あなたは母鳥をその子と共に取ってはならない』― 申命記 22:6。

      神は食物を供給しておられる:

      「土地の安息はあなた方にとって食物のためとなるのである。……あなたの地にいる野獣のためである」― レビ記 25:6,7。

      「あなたはみ手を開かれます ― 彼らは良いもので満ち足ります」― 詩編 104:28。

      「天の鳥をよく観察しなさい。……あなた方の天の父はこれを養っておられます」― マタイ 6:26。

      神は生存に必要な知恵を与えておられる:

      「それらは本能的に賢い。ありは……夏の間にその食物を備える」― 箴言 30:24,25。

      神はふさわしい敬意を示すよう求めておられる:

      「あなたは子やぎをその母の乳で煮てはならない」― 出エジプト記 23:19。

      [クレジット]

      Anchorage Times photo/Al Grillo

      [8,9ページの図版]

      左端: ゴマフアザラシの赤ちゃん,生後三日目

      左: キバシアビ

      [クレジット]

      Anchorage Times photo/Al Grillo

      下: トド

      プリンス・ウィリアム海峡

  • 原油流出事故 ― 人々に与えた影響
    目ざめよ! 1989 | 9月22日
    • 原油流出事故 ― 人々に与えた影響

      原油流出事故のあった1989年3月24日以来,バルディズの人口は爆発的に増加し,2,800人から1万人へと膨れ上がりました。エクソン社が原油流出事故による環境面の被害を一掃するために高い賃金で幾千人もの人を雇ったのです。多数の人の流入は社会的,経済的な混乱をもたらしました。以前は静かだったこの小さな町の元からの住民がこれを和らげるのは容易なことではありません。

      アラスカの緊急通信機関の責任者であるピート・ワーペルは,日当の高い仕事を求める人々がどっと流れ込んだために生じた変化を幾つか取り上げ,インタビューの際にこう語りました。

      「バルディズに及ぶ長期的な影響は,現時点で考えられる以上に厳しいものになるかもしれない。人々が大挙してバルディズに押し寄せたため,町の種々の設備が使用過剰になった。流出事故から7週間目には,電話会社の中継回線は60本から170本余りに増えた。下水道,電力,小型船の波止場,市のごみ処理場や道路網など,現在の需要に応じられるように設計されているものは一つもなかった。4月の間に乗り物は3,000台から9,600台に急増した。空港発着量も,通常は1日20便だが,ピーク時には680便を超えた。町の能力から言って,これは耐えられないほど大きな衝撃である。

      「人口爆発によって生じた危機的状態は,原油流出や海岸の汚染,鳥やラッコの死,危うい魚卵孵化場,貝類に及ぶ損害などが強調されたため,影が薄れてきた。経済は混乱し,賃金幅は不均衡になっており,商店は信頼できる従業員を見つけるのに苦労している。物価高騰のため,固定給の人々の生活は苦しくなっている。

      「こうした事柄はいずれも,原油流出事故の災難の重大さを小さく見させるものではなく,惨禍の全体像とそれが人々に与えた影響をよりよい視点から見させるものである。バルディズの住民の生活がめちゃくちゃになったことは,幾千もの鳥や動物の死が劇的に報道されたため,影が薄くなっている,と私は思う」。

      長年バルディズに住んでいる人たちが幾人かインタビューを受けました。自分たちの町に人々が殺到したことで,彼らはどんな影響を受けているでしょうか。

      電話会社のある従業員は次のような意見を述べました。

      「事故が発生して2か月になるが,バルディズは全くの混乱状態だ。幾千人もの人が高い賃金の仕事を目当てに今でも集まってきている。いろんな種類の人がいる。警察に追われている人もいて,彼らは逮捕される。売春婦もやって来てせっせと商売をする。子供たちはもはや町を自由に走り回ることができない。親は子供から目を離せないし,もちろん目を離すべきではない。ほったらかしにされている子供もいる。両親がエクソンのために長時間働いているのだ。多くの人が金銭欲にとりつかれた。

      「物価は暴騰した。一夜にして2倍になり,1週間もしないうちにまた2倍になる。貸し家を持っている人なら,一晩貸すだけで500㌦もうけられる。幾つかの部屋を貸せば,同じくらいの収入が得られる。寝いすを置く場所だけでも賃貸しできる。家賃は1月5,000㌦か6,000㌦。中には1月1万3,000㌦の家もあるという。車は1日250㌦で貸し出されている。

      「エクソンが払う賃金は急に上昇した。他のビジネスは太刀打ちできない。従業員はエクソンで働きたくて辞めてしまう。新しい従業員はしばらくはとどまるが,やがて彼らも事故処理の仕事に出かける。レストランの経営は楽ではない。店は1日24時間開かれており,何千人もの人々に食事を出す。過去2か月間に四,五回,店員が入れ替わった店もある。エクソンの払う時間給がどんどん上がるので,店で働く人がいなくなるのだ。病院の従業員は半数がやめてしまった」。

      このお金の魅力 ― お金に困っていて札束を切望している人にとっては,確かに誘惑です。『そうだ,日曜日に働ける。時給は30㌦か50㌦だ。日曜日だから12時間働けば,2倍稼げる。車の費用や請求書の支払いを全部済ませることができる』と考えやすいかもしれません。しかし,それは家族をおろそかにすることにもなり,霊的な価値観を見失うことにもなりかねません。『でも長い間ではない。経済的に立ち直れるまでのほんのちょっとの間だ』と自分に言い聞かせます。そうかもしれませんし,そうではないかもしれません。

      欲求不満から生まれる感情にはもっと不気味なものがあります。ある人は次のように漏らしました。

      「多くの人はエクソン社に対して腹を立てており,過激な行動も表面化している。今は価値体系は崩壊し,ゆがんでいる。人々は,欲求不満や怒りの気持ちから,普通なら嫌悪するような行ないにも,自然に引き寄せられる。多くの人は,原油流出事故が美しいプリンス・ウィリアム海峡や昔から人々の誇りであった幾千もの鳥,ラッコ,アザラシなどの野生動物に及ぼした影響に怒りを抱いている。

      「一部の人々は,腹立ちまぎれにアリエスカ社の車を道路から追い出した。爆破するという脅迫もあった。バルディズではエクソン社の社長が,殺すぞという脅迫を何度か受け,臨時に幾百人ものガードマンが雇われた」。

      ある代理教師はこう述べています。

      「多くの子供は一人で支度をして登校します。私は幼稚園に通う5歳の女の子を知っていますが,その子は朝一人で起きます。母親も父親も何時間も前に流出油の仕事に出かけているからです。朝食を済ませ,学校に行き,帰宅し,夕食を食べ,両親が夜の9時か10時に帰って来るまで独りで過ごします。そういう生活からその子はどんな影響を受けるでしょうか。何を学び取りますか。お金に目がくらんでしまった親がおり,そういう親の子供たちは害を被っています。学校にいる時の子供たちは,余りにも緊張していて勉強どころではありません。教師たちは子供たちに無理強いをせず,物語を読んで聞かせたり,いろいろなゲームをしたりして遊ばせています」。

      ある主婦は,無作法で怒りっぽくなったことに気づいています。

      「過密状態なのでストレスや欲求不満が募ります。そのため,怒りっぽくなり,感情をぶちまけます。物資が限られているときなど,食料品を買いに出かけた女性の中には,自分が買おうとしていたパンやミルクを他の人に持ってゆかれた人もいました。レストランでは,後から来た人たちが割り込み,他の人たちが1時間待っていたテーブルを取ります」。

      次の男性は,人々に生じている事柄についての懸念を表明しました。

      「人口がほとんど3倍になったのですから,この地域への影響はかなり厳しいものになっています。人口約2,800人の町が人口9,000人以上の町になったのです。生活用品を手に入れることや,町の中を動き回ることにさえ問題があります。この小さな町の交通はますます混雑するようになり,動き回ることだけでも欲求不満やストレスの原因になります。

      「勤め口を見つける機会も劇的に変化しました。時給20㌦ないし50㌦という求人があるので,物事の優先順位に関して平衡を保つことが難しくなっています。物質主義によって家族の責任や霊的な価値観が締め出されないようにするのは挑戦です。私たち夫婦のところにも,遠くフロリダ州やニューヨーク州,またテキサス州やオレゴン州にいる友人たちから長距離電話がよくかかってきました。それは皆,ここに仕事があるかどうかを尋ねる電話でした。

      「今の世の中のことですから,どこでも経済面の苦労はありますが,友人たちにはこちらに来ないよう勧めました。彼らはエホバの証人で,私たちもそうですが,私たちは集会に出席したり,神の王国について他の人々に語ったりして霊的な物事を最優先するよう心がけています。彼らにとってもそうするのが最善ですが,今のバルディズのようにストレスの多い状況下では容易なことではありません。物質主義は霊性の成長を妨げるもので,ここではそれが手に負えない状態になっています。

      「『金銭に対する愛はあらゆる有害な事柄の根(です)。ある人たちはこの愛を追い求めて信仰から迷い出,多くの苦痛で自分の全身を刺したのです』という,聖書のテモテ第一 6章10節の言葉のとおりです」。

      これらのインタビューは,原油流出事故の2か月後に行なわれました。環境浄化作業は今ごろまでに完了すると言われていました。その計画が終了する予定日は9月15日でした。原油流出に関連した清掃作業が終わり,幾千もの勤め口がなくなり,投じられた膨大な額のお金が尽きるとき,長年当地に住み,自分たちの霊的な価値観を全く損なわずに守ってきた人々は,必要な調整を行なうことでしょう。

      しかし,バルディズが再びかつての小さな静かな町に戻るまでには何年もかかりそうです。

      [12ページの拡大文]

      「バルディズは全くの混乱状態だ」

      [12ページの拡大文]

      暴力に訴えるぞという脅し

      [13ページの拡大文]

      『金銭に対する愛は,悪の根』

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